■本の蒐集記録(2010年9-10月)


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2010/10/26(Tue)
●利倉 隆 構成・文
『バーン=ジョーンズ 眠り姫 イメージの森のなかへ』(二玄社)

バーン=ジョーンズ 眠り姫 (イメージの森のなかへ) バーン=ジョーンズの連作「いばら姫」がどうしても見たかったので買いました。本格的な画集を買ったほうが良いのかな〜、でも高いし…でもでも、この本も安いわけではないし…などと、さんざん迷ったすえだったのですが、これが、とっても素敵な画集でした!

二玄社の、子ども向け美術書シリーズ「イメージの森のなかへ」の一冊。
子ども向けにわかりやすい絵の解説がついていて、もちろん大人が読んでも興味深いです。
美術鑑賞初心者(それはわたしです)には、値のはる本格的な画集を買う前の、そして美術館や展覧会へ足を運ぶ前の、導入として良いと思います。
収録点数は少ないけれど、選ばれている絵はどれも素敵。
連作「いばら姫」だけでなく、象徴主義絵画にも影響を与えたという「黄金の階段」や、「コフェチュア王と乞食の少女」「ヴィーナスの鏡」、連作「ペルセウス」から「呪われた頭部」「ペルセウスとグライアイ」、「欺かれたマーリン」…と、有名な作品はばっちりとりあげられているし、友人の娘を描いたという肖像画「ケイティ・ルイス」も、くつろいだ雰囲気の絵で良いなあと思いました。

大判で、印刷もきれいで、ディテールの見せ方も工夫が凝らされており、本格的な画集より重くもないので、バーン=ジョーンズの格調高い絵の数々を、うっとり眺めるのに最適の一冊。

→Amazon「バーン=ジョーンズ 眠り姫 (イメージの森のなかへ)

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2010/10/19(Tue)
●Jeff A. Menges 編『Once Upon a Time...A Treasury of Classic Fairy Tale Illustrations』(Dover Publications)

Once Upon a Time . . . A Treasury of Classic Fairy Tale Illustrations 挿絵黄金時代の頃に活躍した画家たちの挿絵作品アンソロジー。
黄金時代の三大画家アーサー・ラッカム、エドマンド・デュラック、カイ・ニールセンほか、ウォルター・クレイン、ウォーリック・ゴーブル、ハリー・クラーク、ギュスターヴ・ドレ、ロビンソン兄弟などの、Fairy Taleの挿絵作品がされています。

アイルランド生まれの幻想的な挿絵画家ハリー・クラークの作品は、Fairy Tales from Hans Andersen, 1916 からカラープレートが5点。これは『アンデルセン童話集』として新書館から邦訳版が出ていて、ハリー・クラークの挿絵作品がモノクロも含めすべて収録されています。(→『アンデルセン童話集』【Amazon】)
個人的にはウィリアム・ヒース・ロビンソンとチャールズ・ロビンソンの挿絵がちょっとでも見られたことがうれしいです。
たった3点だけど、チャールズ・ロビンソンの The Happy Prince and Other Tales by Oscar Wilde, 1913 からの挿絵が美しい〜。チャールズ・ロビンソン挿絵の『The Happy Prince』はAmazonで取り扱いあり(→『The Happy Prince (Everyman's Library Children's Classics)』【Amazon】)。
…英語が読めれば買いますが〜…(^^;

→「挿絵本のたのしみ」はこちら
→「ウォルター・クレインの絵本」はこちら

→Amazon「Once Upon a Time . . . A Treasury of Classic Fairy Tale Illustrations

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2010/10/12(Tue)
●Mary Carolyn Waldrep 編『By a Woman's Hand: Illustrators of the Golden Age』(Dover Publications)

By a Woman's Hand: Illustrators of the Golden Age (Dover Books on Fine Art) 挿絵黄金時代の頃に活躍した女性画家の挿絵作品アンソロジー。
ケイト・グリーナウェイ、ベアトリクス・ポター、ジェシー・W・スミス、ウィルビーク・ル・メールなど有名画家の作品も含まれていますが、アンソロジーの良いところは、それほど(日本では)有名でない画家の作品が多数とりあげられているところ。
Florence Harrison、Helen Stratton、Elizabeth Shippen Green、Jessie Marion King、Elenore Plaisted Abbott、Ida Rentoul Onthwaite、Anne Anderson、Dorothy Pulis Lathrop、Virginia Frances Strrettなどなど…。
みんな幻想的な美しい挿絵を描いていて、眺めるだけで楽しい一冊。

個人的にうれしかったのは、Dorothy Pulis Lathrop による「The Three Mulla-Mulgars」の挿絵が収録されていたこと。「The Three Mulla-Mulgars」は、デ・ラ・メアの幻想物語で、『ムルガーのはるかな旅』(または「三匹の高貴な猿」)として邦訳出版されているけど、現在は絶版(なぜ!?)になっている作品。
Dorothy Pulis Lathrop は、同じくデ・ラ・メアの『妖精詩集』(ちくま文庫)の挿絵も描いていて、幻想的な画風なんですよね〜。
好きな挿絵画家をたくさん見つけることのできる、お買い得のアンソロジーです。

→「挿絵本のたのしみ」はこちら
→「ウォルター・デ・ラ・メアの本」はこちら

→Amazon「By a Woman's Hand: Illustrators of the Golden Age (Dover Books on Fine Art)

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2010/10/05(Tue)
●F・H・バーネット 作/砂川宏一 訳・解説『白い人たち』(文芸社)

白い人たち 『小公女』『秘密の花園』などの児童文学作品で知られるバーネット。
『白い人たち』は、バーネット女史の「幻の名作」なのだそうで、わたしも今まで手にとったことがありませんでした。
原題は”The White People”。
この本は初の完訳版で、この本が出るまでは、あの川端康成による抄訳があるだけだったそうです。
スコットランドの荒野に立つ、古いふるい城に住む少女イゾベル。父も母も亡くしてひとりぼっちの彼女は、亡くなった人の姿を見る力を持っていました。彼女は透き通るように白く見える彼らのことを「白い人たち」と呼んでいました。 けれども彼女は自分の見ている「白い人たち」が、亡くなった人たちであることに気づいてはいませんでした。世話係のジーンと図書室の管理人アンガスは、そんなイゾベルを静かに見守り、思いやり深く育てていきました…。

舞台や設定がゴシック小説かオカルトのようですが、読んだ印象は、もっと静かで、純粋で、きれいなものという感じでした。
あざとい演出や煽情的な表現はまるでなく、亡くなった人が見えるという不思議なことも、不思議なこととして描かれてはいません。
不思議な亡くなり方をした母を持ち、自分自身が幽体離脱のような経験をしたことのあるイゾベルは、「わたしには死というものは信じられないような気がしますけど。」と語ります。
イゾベルが敬愛する作家ヘクター・マクネアン氏は、その言葉にこう答えます。
「死が信じられないのですか? それはすばらしい」
「もしも、わたしたちみんなが信じていないとしたら、どんなにすばらしいことか! また、どんなに美しいことか!」
バーネットはキリスト教への信仰心があつく、聖書をよく研究しており、またスコティッシュ・ケルトの伝承や世界観も背景にして、「人は死んだらどうなるか」という根源的な問いに、ひとつの答えを提示しているのです。
わかりやすい言葉で、子どもにも読めるように、そして淡々と冷静に書かれているので、とくに神秘主義的な雰囲気があるわけではなく、誰でも読んで楽しみ、深く考えることのできる、良い作品だと思いました。

→バーネット『小公女』『秘密の花園』の紹介はこちら

→Amazon「白い人たち

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2010/09/28(Tue)
●マリー・ブレア 絵/ルース・クラウス 文/谷川俊太郎 訳
『わたしはとべる』(講談社)
●モンゴメリ 著/谷口由美子 訳『青い城』(角川文庫)

わたしは とべる (講談社の翻訳絵本クラシックセレクション) ディズニーのアニメーション映画「シンデレラ」「ふしぎの国のアリス」「ピーター・パン」などの草案を手がけたマリー・ブレア。
マリー・ブレアは、数多くの絵本も出版しており、なかでも『わたしはとべる』は、1951年の刊行以来、読み継がれ愛されてきた作品なのだとか。

女の子が、「ことりは とべる/わたしだって とべる」「わたしは なれる/なんにでも/それが わたし」 と、無邪気に歌いあげる内容で、谷川俊太郎氏が訳されたテキストは、短く、口ずさみやすく、巻頭には歌えるように楽譜もついています。
「むっつり かい/わたし かい」「はこぶの らくだ/らくらくだ」なんていう言い回しは、さすが詩人の谷川俊太郎氏の訳だなあ、という感じ。
原文のルース・クラウス氏もまた詩人で、センダックの『あなはほるもの おっこちるとこ』などのテキストも手がけており、子どもの言葉づかいやものの見方をよくとらえて作品にしている人です。
絵は、クラシカルな雰囲気なのだけど、古びた感じはまったくしなくて、グラフィカルな画面。 女の子のきている服のテキスタイルも見逃せないし、壁紙やカーテンやインテリアもかわいい。
カラフルな色使いと、女の子と動物たちがころころと元気にたわむれる様子に、眺めているだけで気持ちが明るくなる一冊です。

青い城 (角川文庫) 『赤毛のアン』で有名なモンゴメリは、大人向けの小説も書いています。この『青い城』はそんな作品のひとつ。
一族の見栄やプライドに縛られ、孤独でみじめな日々を送っているオールド・ミス(でも29歳ですよ、まだ…)の主人公ヴァランシー。心の中の「青い城」でだけ、自由にふるまい、美を愛する心を満足させてきた彼女が、ある日、医師から余命1年だと告げられ、悔いのない人生にするために、ついに立ち上がります。

夢のようなハッピーエンドのラブストーリーで、そこはご都合主義的なんだけれど、素晴らしいのはカナダの自然の美しい描写や、ヴァランシーの親族に対する皮肉たっぷりの観察眼、ユーモアを忘れない心、そして、「青い城」を夢見る想像力。
辛辣な観察眼とユーモアで、人間の俗物的な側面を巧みに描写する…というあたりは、オースティンを彷彿させます。多くの人には甘い少女小説と思われているであろう『赤毛のアン』でも、モンゴメリのそういった側面は見られましたから。
モンゴメリ独特の感覚といえばやはり、「青い城」として描かれる、奔放で繊細な想像力。やっぱり彼女はケルトをルーツにもつ夢見る人なのだなあと思いました。
でも、「青い城」は、特殊な人間だけが見る夢ではないのです。作中で、ヴァランシーと心を通わせる友人シシイが言っています。「だれでも、青い城をもっているんだと思うわ。ただ、それぞれが違った名前をつけているだけよ。あたしにもあったわ―昔のことだけど」と。
わたしにとっての「青い城」は…と、自分の心の中の風景を、ふと見つめなおすきっかけにもなると思います。
美しく幸せな、思わず一気読みしてしまう小説です。

→センダック『あなはほるもの おっこちるとこ』の紹介はこちら
→『赤毛のアン』の紹介はこちら
→「ジェイン・オースティンの本」はこちら

→Amazon「わたしは とべる (講談社の翻訳絵本クラシックセレクション)
→Amazon「青い城 (角川文庫)

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2010/09/21(Tue)
●萩尾望都 作/こみね ゆら 絵
『トリッポンのこねこ』『トリッポンとおばけ』『トリッポンと王様』(教育画劇)

トリッポンのこねこ 少女漫画家としてカリスマ的な人気を誇る萩尾望都さんのお話に、こみね ゆらさんが絵を寄せた、<トリッポン>シリーズ。
この3冊の絵本を手にとる人の中には、萩尾望都さんのお話に惹かれて…という方も多いのでしょう。
実はわたしは萩尾望都さんの漫画をまったく読んだことがなくて、ただ不思議なお話と、こみねさんの絵に惹かれてこの絵本を購入しました。

この3つのお話は、「不思議」へのはっきりとした入口(ナルニアに通じる洋服箪笥だとか)はなくて、突然不思議が始まります。
主人公の男の子トリッポン(名前の響きも不思議)が、飼い猫を探して林の奥へと入っていくと、そこに突然「ねこの国入口」という看板がかかった、大きな大きなねこの首が転がっていたり(『トリッポンのこねこ』)。
「星つりにいこうよ」と、おばけがトリッポンの部屋の窓をたたいて誘ってきたり(『トリッポンとおばけ』)、森をさんぽしていて出会ったこびとの王様にトリッポンが捕まってしまったり(『トリッポンと王様』)。
これら不思議なお話に、淡くてやさしいようで深いこみねさんの絵は、ぴったり合っていると思いました。

トリッポンとおばけ トリッポンと王様 3冊のうちでとりわけ気に入ったのは、『トリッポンとおばけ』でしょうか。
「星つりにいこうよ」とおばけが誘いにくるという、設定自体に惹かれますし、こみねさんが描くおばけは、ちっともこわくなくて犬みたいなぬいぐるみみたいな感じ。首(?)のあたりに緑色のリボンを巻いています。
林の中の小さい池で、ボートにのって、水面にうつった夜空の星をつる場面が印象的。水の色が不思議に明るくて。
「星が池でつれるなんておもわなかった」「どこでつれるとおもったの?」「ときどき、ひとの目のなかにあるよ」なんてやりとり、トリッポンもキザだねえと思ったら、おばけが「ばかだね」「目のなかにどうやってつり糸をたれるの」だって。
なんともユーモラスなセンス、萩尾望都さんってこういう文章を書く人だったんですね。
どうやって星をつるのか、星をつる方法は、読んでみてのお楽しみ。
最後の見開き、トリッポンが天の川を、星魚といっしょに泳ぐ夢を描いた絵は、とても美しくて幻想的。ぜひご覧あれ。

→「こみね ゆらの絵本」はこちら

→Amazon「トリッポンのこねこ
→Amazon「トリッポンとおばけ
→Amazon「トリッポンと王様

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2010/09/14(Tue)
●こみね ゆら 著『にんぎょうげきだん』(白泉社)
●竹下文子 作/こみね ゆら 絵『あらいぐまのアリス』(童心社)

にんぎょうげきだん 絵本雑誌「MOE」に連載されたものを加筆・再構成して単行本化した、こみね ゆらさんの絵本『にんぎょうげきだん』。
こみねさんの絵の魅力が、ぎゅっとつまったような素敵な一冊です。
ちいさな人形たちが、自分たちよりちいさな人形を操って、人形劇をしながら旅をするというお話。
人形作家でもあるこみねさんらしい題材で、やっぱりドールハウスをのぞきこむような楽しみを与えてくれます。
人形たちが旅の途中疲れて立ち寄った家には、おばあさんとむすめさんが住んでいますが、ここでのエピソードもしみじみと心温まります。そしてどこか淋しくて。
夜のどうぶつたちに人形劇を披露する場面も好き。深い色合いで描かれる夜の野原の風景が、美しくて淋しい。
「MOE」の絵本は、やっぱり大人向けの絵本だと思います。巻末ににんぎょうげきだんの世界を立体で楽しめるペーパークラフトつき。
それからこの絵本、紙が真っ白でなく生成りでマットで、でも絵の印刷や色もきれいなんです。装幀は、酒井駒子『BとIとRとD』も手がけている名久井直子さん。
名久井さんの装幀は、いつもかわいいけどかわいすぎなくて好きです。

あらいぐまのアリス (絵本・こどものひろば) 『あらいぐまのアリス』は、竹下文子さんのテキストにこみね ゆらが絵をつけたもの。
女の子とおかあさんが読むのにぴったりの、愛らしい一冊です。
あらいぐまのアリスは、のんびりや。いつもおかあさんに「はやく はやく」と言われてしまいます。でもアリスは、かたづけもおふろも歯磨きも、のんびりゆっくりとしかできないんです。
そんなアリスが、おともだちとピクニックに出かけるのですが…。
あらいぐまや、ぶたさん、はりねずみ、りすにうさぎにことり、こみねさんの描く動物たちがかわいい。やっぱり、ぬいぐるみみたいで。
この絵本の絵は、色が明るくてきれい。アリスがピクニックの途中で花や魚やきいちごを見つける場面の、画面構成といい色といい、明るくて楽しい気持ちになれます。
のんびりやのアリスにだからこそ、見える景色があるんですよね。

→「こみね ゆらの絵本」はこちら
→「人形たちの絵本」はこちら
→酒井駒子『BとIとRとD』の紹介はこちら

→Amazon「にんぎょうげきだん
→Amazon「あらいぐまのアリス (絵本・こどものひろば)

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2010/09/07(Tue)
●市川里美 画/矢川澄子 文
『あなたもいますよ あそぶこどもたち』『みんなともだち』(冨山房)

あなたもいますよ―あそぶこどもたち 繊細なタッチ、ふんわりやさしい色使いが素敵な、市川里美さんの絵本。
『あなたもいますよ』は、市川さんのデビュー作。『みんなともだち』も市川さんの初期作品です。
市川さんの初期の絵本はケイト・グリーナウェイの作風と共通するとも言われますが、『あなたもいますよ』と『みんなともだち』は、まさにグリーナウェイやル・メールを彷彿させます。

この2冊の絵本は、どちらもとくにストーリーはなく、遊びたわむれる大ぜいの子どもたちが淡い色彩で細やかに描かれ、遊びの様子を要約した矢川澄子さんの短いテキストが添えられています。
フランスに暮らした経験をもつ市川さんの絵は、やっぱりどことなくフランス風。描かれた家や家具や雑貨、庭や公園や町並みは、少し昔のヨーロッパの風景のようです。
またセピア調のごく淡い色使いが、ノスタルジックな雰囲気をかもし出しています。
みんなともだち 子どもたちも、子どもたちの着ている服も、背景の壁紙の模様も、玩具も草花も、とにかくちまちま小さく描きこまれていて、すみずみまでゆっくりと眺めるのが何といっても楽しい。
はっきり言って、こういう絵本が結局大好きなんですよね〜。
市川さんの絵本では『春のうたがきこえる』も素晴らしいけれど、『あなたもいますよ』は、いちばん好きかもしれない。

この初期絵本2冊は、絶版だと思っていたのだけど、ネット書店をあちこちチェックしていたら、たまたま絵本ナビShopとAmazonで在庫ありになっていたので、即購入。
市川さんの初期絵本は、グリーナウェイやル・メールが好きな大人たちにきっと好まれるはずなので、「大人こそ絵本を」とうたわれている昨今、もっと刷られて流通すればいいのになあと思う。

→「市川里美の絵本」はこちら
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→Amazon「あなたもいますよ―あそぶこどもたち
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2010/09/01(Wed)
●高宮利行 解説『水の女 溟き水より From the Deep Waters 改訂版』(エディシオン・トレヴィル)

水の女  溟き水より From the Deep Waters (〓.T.Classics) 『水の女 溟き水より From the Deep Waters 改訂版』は、水と女を扱った19世紀ヨーロッパの絵画を集めた画集で、エディシオン・トレヴィルのエーテー・クラシックス(E´.T.classics)シリーズの一冊。
アーサー・ヒューズやミレーの「オフィーリア」、ウォーターハウスの「シャロットの女」「ヒュラスと妖精たち」、バーン=ジョーンズの「ヴィーナスの鏡」などラファエル前派の有名な作品から、ギュスターヴ・ドレの版画、クリムトの絵画、この画集で(わたしが)初めて名前を知った画家の作品まで、「水」と「女」をテーマにした美しく妖しい絵がフルカラーで43点収められています。
表紙の絵は、フレデリック・レイトンの「漁師とセイレーン」です。

印象的だったのはギュスターヴ・ドレの「イレイン」。華やかな色彩の作品群の中で、ドレの作品だけがもちろんモノクロなのだけど、細密な版画で、背景の城の雰囲気といい、まさにアーサー王伝説の世界!
わたしが初めて名前を知った画家の作品としては、ジョン・アトキンソン・グリムショーの「イレイン」と「シャロットの女」が、けっこう好きでした。おとぎ話めいた妖しい雰囲気に満ちていて。
やさしい訴え ラモー作品集 ジョン・メリッシュ・ストラドウィックも、初めて知った画家。『水の女』に収録されている「キルケとスキュラ」は、キルケの表情がおそろしいけど、上品な画面。
検索してみたら、「やさしい訴え ラモー作品集」というCDのジャケットに使われている絵(左がそのCDの画像)が、ストラドウィックの「When Apples were Golden and Songs were Sweet, But Summer had Passed away」(1906)という作品でした。
ラモーのCDを探していて、このCDのジャケットの絵が綺麗で素敵だなあと憶えていたのだけど、てっきりバーン=ジョーンズの絵かと思っていました(…物知らず…)。

有名な作品も鑑賞できて、好きな画家も増える、素晴らしい画集。装幀も美しいので、ページを繰れば、「水の女」のロマンの世界に浸りきることができます。

→Amazon「水の女 溟き水より From the Deep Waters (〓.T.Classics)

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