〜繊細な描線と淡い色彩、愛らしい子どもたち〜
●ヘンリエット・ウィルビーク・ル・メール
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「Mary, Mary, Quite Contrary」Golden Days Nursery RhymesHenriette Willebeek Le Mair 著(Warne) |
Mary, Mary, quite contrary, ”Mary, Mary Quite Contrary”より 邦訳版の入手がなかなか難しいル・メールの絵本ですが、洋書ならAmazonで購入できます。こちらはル・メールが絵を描いたマザーグース絵本『Our Old Nursery Rhymes』(1911)、『Little Songs of Long Ago』(1912)から、12の歌と挿絵が収録されたこぶりの一冊。 見開きの一方のページにテキスト、もう一方にフルカラーのイラストが配置され、その草花の飾り枠のなかに描かれた絵の繊細で美しいことといったら! わたしが最初に購入したル・メールの絵本はこの『Mary, Mary, Quite Contrary』ですが、ひとめ見てル・メールの絵の世界にすっかり心を奪われてしまいました。 淡くやさしい色彩、クラシックで、様式美に満ちていて。 美しく飾られた素敵な部屋のなかの”Little Jack Horner”もかわいいし、おとぎ話ふうの景色の中に遊ぶ”Georgie Porgie”も夢のようで…。 ケイト・グリーナウェイのマザーグースとの比較もおもしろく、”Little Jack Horner”などは、グリーナウェイとル・メールでこんなにも違うものか〜と、感心してしまいました。 グリーナウェイの絵では「グリーナウェイ・ファッション」ともいわれる子どもたちの古風な服装が、ル・メールの絵では楕円形などの繊細な草花の飾り枠が特徴的(ほかにもいろいろな特徴はありますが)。 グリーナウェイはもちろん好きだけれど、ル・メールの絵のほうが空間的な広がりや幻想味を感じます。飾り枠がやはり別世界をのぞく窓のような役割を果たしているのでしょうか。 マザーグースは有名な歌だし、英語が読めなくても安心して楽しめる洋書絵本です。 →Amazon「Mary, Mary Quite Contrary (Golden Days Nursery Rhymes)」 |
「Lavender's Blue」Golden Days Nursery RhymesHenriette Willebeek Le Mair 著(Frederick Warne Publishers Ltd) |
Polly put the kettle on, ”Polly put the kettle on”より 邦訳版の入手がなかなか難しいル・メールの絵本。この洋書は、Amazonマーケットプレイスで購入しました。こちらは上記紹介の2冊と同様、ル・メールが絵を描いたマザーグース絵本『Our Old Nursery Rhymes』(1911)、『Little Songs of Long Ago』(1912)から、11の歌と挿絵が収録されたこぶりの一冊。 ブックデザインも上記2冊と同じで、見開きの一方のページにテキスト、もう一方にフルカラーのイラストが配置されています。 草花の飾り枠のなかに描かれたル・メールの絵の繊細で美しいことといったら、一葉、一葉、飽きずじっくり見入ってしまいます。 ”Mary Had a Little Lamb”は、日本でもおなじみのメリーさんのひつじ。メリーさんがひつじを連れて歩く風景が、いかにもル・メールらしい、左右対称のお屋敷の庭。 ”Oh Dear, What Can the Matter Be?”の絵など、乙女の憧れがぎゅっとつまった可愛らしさ! 白い家具調度やハープがおかれた部屋の、 花柄のカーテンがかかった窓辺で、人待ち顔の女の子、彼女の白いドレスも可憐…。 ケイト・グリーナウェイのマザーグースと比較するなら、”Polly put the kettle on”、”Jack and Jill”が興味深い。 ”Polly put the kettle on”は、英語がわからなくてもシンプルで親しみやすい詩で好きなのですが、グリーナウェイの絵だと、メイドさんのお茶会なのかなと思えたのだけど、ル・メールの絵だとお部屋には豪華なシャンデリアがあったりして、優雅な上流家庭のイメージ。 平野敬一 監修『マザー・グース 2』(講談社文庫) の解説によると、Polly と Sukey というのは Mary と Susan の愛称で、18世紀中葉のイギリスの中流家庭では、ごくありふれた名前だったとのこと。とすると、Polly と Sukey は中流家庭のお嬢さんということなのですね。ふうむ。 ”Jack and Jill”は、ケイト・グリーナウェイのほかに、アーサー・ラッカムの挿絵なども思い浮かびますが、ジャックとジルが丘で転ぶという一つの場面を一葉の絵で描いた二人に対して(*)、ル・メールはジャックとジルが丘をのぼっていく場面を左の楕円の中に、転ぶ場面を右の楕円の中に描き、ふたつの楕円の飾り枠をつなぎあわせることによって、二つの場面を一葉の絵で表現しています。 ル・メールのマザーグースでは、このふたつの楕円の中に絵を描く、いわば二コマ漫画のような手法がよく用いられており、左と右で場面が転換しているのが楽しいです。 収録されているのは有名な歌ばかり、英語が読めなくても安心して楽しめる洋書絵本です。 *ケイト・グリーナウェイには、ジャックとジルが丘をのぼっていく場面を描いた一葉もあります。 →ル・メール”Jack and Jill”の絵、「子どものための美しい庭」で鑑賞できます(音楽が流れるページです) →Amazon「Lavender's Blue (Golden Days nursery rhymes)」 |
「A Little Book of Childhood」Golden Days nursery rhymesHenriette Willebeek Le Mair 著(Frederick Warne Publishers Ltd) |
邦訳版の入手がなかなか難しいル・メールの絵本ですが、洋書ならAmazonで購入できます。
この絵本は、マクドナルド「お姫さまとゴブリンの物語」やルイス・キャロル「不思議の国のアリス」、クリスティーナ・ロセッティ「ゴブリン・マーケット」やエドガー・アラン・ポー「アナベル・リー」などの物語や詩作品に寄せた挿絵が、27点収録されています。 見開きの一方のページに数行の引用文、もう一方にフルカラーのイラスト、おそらくは一葉の絵を部分的に切り取ってあるのではないかと思いますが、綺麗にレイアウトされています。 あいくるしい子どもたちの姿が繊細に描かれていて、どの絵も素敵。女の子たちの贅沢でかわいい服装やお部屋の様子、草花の描写など、乙女心をくすぐられること間違いなしです。 英語が読めなくても(それはわたしです ^^;)、安心してル・メールの美しい絵を楽しむことができる、こぶりの一冊。 →Amazon「A Little Book of Childhood (Golden Days nursery rhymes)」 |
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