■ジェシー・W・スミスの絵本

〜愛らしい子どもたち〜


●ジェシー・ウィルコックス・スミス ― Jessie Willcox Smith ―

1863年、アメリカ、フィラデルフィア生まれ。イラストレーター。
16歳でデザイン学校に入学、後にペンシルバニア芸術院で学ぶ。愛らしい子どもを描くことに優れ、広告、雑誌、児童書、絵本のイラストを数多く手がけた。1935年、没。
代表的な仕事に、キングズリー『水の子どもたち』の挿絵、ヨハンナ・シュピリ『アルプスの少女ハイジ』の挿絵、マクドナルド『北風のうしろの国』『お姫さまとゴブリンの物語』の挿絵、マザーグース絵本、絵本『クリスマスのまえのばん』、雑誌『Good Housekeeping』のカバーイラストなどがある。

*ジェシー・W・スミスがどんな絵を描いているか詳しく知りたい方は、こちらのページ(→子どものための美しい庭「秘密の花園 My Secret Garden」)を参照してください。ケイト・グリーナウェイやウォルター・クレインとともに、スミスの絵が多数紹介されています。楽しいですよ。

↓クリックすると紹介に飛びます。


「クリスマスのまえのばん」

「Jessie Willcox Smith: American Illustrator」



「クリスマスのまえのばん」

クレメント・C・ムーア 作/ジェシー・W・スミス 絵/ごとう みやこ 訳(新世研)
クリスマスのまえのばん
クリスマスのまえのばん、サンタクロースがやってくる。トナカイの引くそりに乗り、プレゼントの詰まった袋をかついで…。
こんな現代のサンタクロースのイメージは、1823年に発表されたクレメント・クラーク・ムーアの詩「A Visit from St.Nicholas(聖ニコラスの訪れ)」がもとになっています。現在では「The Night Before Christmas(クリスマスのまえのばん)」として親しまれるこの楽しい詩には、たくさんの絵本作家さんが絵を添えていて、どれも素敵なものばかりです。
スミスによる『クリスマスのまえのばん』は、1912年、およそ100年前に出版されたもので、クラシカルな雰囲気の絵がとても美しいです。

テキストは英詩に日本語訳が添えられているかたち。翻訳によって詩の印象はとても変わるので、原詩が載っているのは参考になります。後藤美也子さんによる日本語訳は、リズミカルで口ずさみやすいように訳されています。
端正で美しい絵からは、100年前の風俗を読み取ることができ、たいへん興味深いです。暖炉の前につりさげられた靴下、マントルピースの上の燭台や時計、天蓋つきのベッド、雪のつもった煉瓦づくりの煙突…。
英文の頭文字が、美しいデザインが施された絵のようになっているのも、古い外国の絵本らしいなあと嬉しくなる。
とりわけ印象的なのは、サンタクロース(St.Nicholas)が赤でなく黒い毛皮を着ていることで、サンタのイメージの変遷も知ることができます。

→「The Night Before Christmas―特選クリスマスの絵本―」はこちら
→マクドナルド『北風のうしろの国』の紹介はこちら

→Amazon「クリスマスのまえのばん
→セブンネットショッピング「クリスマスのまえのばんicon

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「Jessie Willcox Smith: American Illustrator」

Edward D.Nudelman 著(Pelican)
Jessie Willcox Smith: American Illustrator
ジェシー・ウィルコックス・スミスは、19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカで活躍したイラストレーター。クラシカルでとても美しい絵を描いたイラストレーターなので、上記『クリスマスのまえのばん』以外に、入手容易なスミスの挿絵本・絵本の邦訳版がほとんどないのはとても残念なことです。
『Jessie Willcox Smith: American Illustrator』は、洋書ですが、スミスのイラストが多数収録されていて、Amazonや紀伊國屋書店BookWeb等で入手可能です。

この本は全144ページで、そのうち46ページまでがスミスの生涯と仕事について英文で解説されており、あとのページにはColorplateが105点収録。雑誌(『Good Housekeeping』など)のカバーイラスト、R.L.スティーヴンソン『子どもの詩の園』、キングズリー『水の子どもたち』、ヨハンナ・シュピリ『アルプスの少女ハイジ』、マクドナルド『北風のうしろの国』『お姫さまとゴブリンの物語』、オールコット『若草物語』、マザーグース絵本等々、代表的なイラストがとりあげられています。
これらColorplateは、大判の1ページに1点、または2点と大きくレイアウトされていて、スミスによる愛らしい子どもたちの絵を、服装や背景の草花、雑貨などの細部までじっくり鑑賞できます。

『北風のうしろの国』の挿絵は3点収録されていますが、スミスによる「北風」の姿は、どことなくラファエル前派の画家たちが描いたファム・ファタルのようでした。あと主人公のダイアモンドが愛くるしい…。 『北風のうしろの国』は良質の児童文学でありファンタジーなので、スミス挿絵の邦訳も、あれば良いのになあと思います。現在日本で刊行されているハヤカワ文庫版の、アーサー・ヒューズの挿絵も美しいのですけれど。
マザーグースの挿絵は7点収録されています。羊飼いのボー・ピープも、マフェットのお嬢さんも、つむじまがりのメアリー嬢(このイラストは見開きいっぱいにレイアウトされています!)もかわいい。
ヨハンナ・シュピリ『アルプスの少女ハイジ』の挿絵は5点(うち1点は雑誌『Good Housekeeping』のカバーイラスト)収録、ハイジといえば日本ではアニメでの元気な子どもとしてのイメージが強いと思うのだけど、スミスの描くハイジは、途中で(たぶんフランクフルトからアルムへ帰ってきたあと)髪も伸びて娘さんらしくなっていて、なんだか新鮮。
あと(おそらく)婦人向け雑誌(『Good Housekeeping』など)の表紙の絵も、多数収録されているのが興味深かったです。この時代、雑誌の表紙はイラストだったんですよね〜。スミスが、『Good Housekeeping』のカバーとして『不思議の国のアリス』のイラストを描いていたのも驚きでした。

→マクドナルド『北風のうしろの国』の紹介はこちら
→ヨハンナ・シュピリ『アルプスの少女ハイジ』の紹介はこちら
→オールコット『若草物語』の紹介はこちら
→ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』の紹介はこちら

→Amazon「Jessie Willcox Smith: American Illustrator

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