■The Night Before Christmas―特選クリスマスの絵本―


“Happy Christmas to all, and to all a good-night.”

クリスマスのまえのばん、サンタクロースがやってくる。トナカイの引くそりに乗り、プレゼントの詰まった袋をかついで…。
こんな現代のサンタクロースのイメージは、1823年に発表されたクレメント・クラーク・ムーアの詩「A Visit from St.Nicholas(聖ニコラスの訪れ)」がもとになっています。 現在では「The Night Before Christmas(クリスマスのまえのばん)」として親しまれるこの楽しい詩には、たくさんの絵本作家さんが絵を添えていて、どれも素敵なものばかり。子どもも大人も楽しめる、クリスマスのとっておきの絵本なのです。
このページでは、管理人が好きな作家さんの作品や、サブダのポップアップ絵本など数冊を紹介します。



↓クリックすると紹介に飛びます。


ターシャ・テューダー「クリスマスのまえのばん」

リスベート・ツヴェルガー「クリスマスのまえのばん」

ジェシー・W・スミス「クリスマスのまえのばん」

ロジャー・デュボアザン「クリスマスのまえのよる」

ロバート・サブダ「The Night Before Christmas」

ニルート・プタピパット「The Night Before Christmas」

→その他のクリスマス絵本はこちら



●ターシャ・テューダー


「クリスマスのまえのばん」

改訂新版
クレメント・クラーク・ムア 詩/ターシャ・テューダー 絵/中村妙子 訳(偕成社)
ターシャテューダー クリスマスのまえのばん
サンタクロースのイメージを決定づけたクレメント・クラーク・ムーアの有名な詩に、ターシャ・テューダーが絵を添えたクリスマス絵本。
ぬくもりと幻想的な雰囲気とがみごとに合わさった、ターシャらしい『クリスマスのまえのばん』です。

藍色の夜空をバックに、楕円の枠の中におさめられた絵は、サンタクロースが、コーギ・コテージと思われる家を訪れる様子を描いています。
部屋の中の家具調度、雑貨、愛らしい動物たち。どれもターシャの住まいコーギ・コテージに、実際にあるものばかり。
そして雪深い冬の夜、月明かりに照らされて、トナカイたちの引くサンタクロースのそりが登場する場面の、神秘的で美しいこと。
ターシャの描くサンタクロースは、輪郭もはっきりしない、妖精のような小人のおじいさん。
こんなサンタ像が、いちばんリアリティがあるなと感じるのは、わたしがケルト好き、妖精好きだからでしょうか。
煙突を、さっと幻のようにのぼっていくところなんか、なるほどと思いました。
あと、ターシャの絵本はいつも、見返しも凝っていて、この一冊でも見所のひとつになっています。 楽しそうな動物たちの音楽会。クリスマスのまえのばんなら、こんなことも起こりそう。

コーギ犬や猫、ねずみなど、ちいさな動物たちとサンタクロースがくりひろげる、クリスマスのまえのばんの楽しい光景。
大人も子どもも、家族みんなで、クリスマスにページを繰るのにふさわしい絵本だと思います。

→ターシャ・テューダーの絵本の紹介はこちら

→Amazon「ターシャテューダー クリスマスのまえのばん

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●リスベート・ツヴェルガー


「クリスマスのまえのばん」

クレメント・クラーク・ムーア 詩/リスベート・ツヴェルガー 絵/江國香織 訳
(BL出版)
クリスマスのまえのばん
サンタクロースのイメージを決定づけたクレメント・クラーク・ムーアの有名な詩に、リスベート・ツヴェルガーが絵を添えたクリスマス絵本。
とってもツヴェルガーらしい一冊、やっぱり彼女の絵は大好きです。

まず見返しに、トナカイや子どもたちが輪になって手をつないでいる様子が、雪の結晶のようなかたちにデザインされています。
その「雪の結晶」が、銀色や金色で、中のページにもおしゃれに配置されています。
あと、最初と最後に、ベッドに入っている、かわいいねずみが描かれていて、「それこそねずみいっぴき、めざめているものはありませんでした」という一文からくる絵なのだと思いますが、 こういう絵にする場面の選び方が、まさにツヴェルガー。
子どもたちよりトナカイやねずみなどの動物が、とってもユーモラスにかわいく描かれているところや、深いのに透明感のある繊細な色使いなども、もちろん素敵。
クリスマス絵本らしく、きらりと光る銀色や金色が効果的に使われていて、画面にアクセントをつけています。

派手さはないのだけれど、品のある、しずかな、美しい『クリスマスのまえのばん』。
BL出版や太平社のツヴェルガー作品の邦訳版は、表紙の日本語のフォントやレイアウトもおしゃれなので、クリスマスのオーナメントや小物とともに部屋に飾るもよし。 そしてイブにはぜひページを繰って、トナカイたちと夜空を駆けるサンタさんに思いを馳せたい一冊です。

→リスベート・ツヴェルガーの絵本の紹介はこちら

→Amazon「クリスマスのまえのばん

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●ジェシー・W・スミス


「クリスマスのまえのばん」

クレメント・C・ムーア 作/ジェシー・W・スミス 絵/ごとう みやこ 訳(新世研)
クリスマスのまえのばん
ジェシー・W・スミスは、1863年フィラデルフィア生まれの挿絵・絵本画家で、愛らしい子どもを描くことに長け、マザーグースやマクドナルド『北風のうしろの国』ほか、多くの作品のイラストを手がけています(とっても美しい画風なので、邦訳版がほとんどないのは残念)。
スミスによる『クリスマスのまえのばん』は、1912年、およそ100年前に出版されたもので、クラシカルな雰囲気の絵がとても美しいです。

テキストは英詩に日本語訳が添えられているかたち。翻訳によって詩の印象はとても変わるので、原詩が載っているのは参考になります。後藤美也子さんによる日本語訳は、リズミカルで口ずさみやすいように訳されています。
端正で美しい絵からは、100年前の風俗を読み取ることができ、たいへん興味深いです。暖炉の前につりさげられた靴下、マントルピースの上の燭台や時計、天蓋つきのベッド、雪のつもった煉瓦づくりの煙突…。
英文の頭文字が、美しいデザインが施された絵のようになっているのも、古い外国の絵本らしいなあと嬉しくなる。
とりわけ印象的なのは、サンタクロース(St.Nicholas)が赤でなく黒い毛皮を着ていることで、サンタのイメージの変遷も知ることができます。

→「ジェシー・W・スミスの絵本」はこちら
→マクドナルド『北風のうしろの国』の紹介はこちら

→Amazon「クリスマスのまえのばん
→セブンネットショッピング「クリスマスのまえのばんicon

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●ロジャー・デュボアザン


「クリスマスのまえのよる」

クレメント・C・ムーア 詩/ロジャー・デュボアザン 絵/こみや ゆう 訳
(主婦の友社)
クリスマスのまえのよる (主婦の友はじめてブック おはなしシリーズ)
サンタクロースのイメージを決定づけたクレメント・クラーク・ムーアの有名な詩に、ロジャー・デュボアザンが絵を添えたクリスマス絵本。
アメリカでの初版は1954年ですが、日本初紹介とのこと。デュボアザンも『The Night Before Christmas』の絵本を手がけていたとは、なんとも嬉しい驚きです。

この本はまず判型が変わっていて、ぐんと縦長の本なのですけど、版元サイトによると「イブの夜にプレゼントをいれるくつしたに入るようにとデザインされた」サイズなのだそう。デュボアザンは、この縦長のかたちをうまく生かして、煙突の高さや、クリスマスツリーの大きさを表現しています。
古い絵本らしく、カラーなのだけど使われている色数が少ないのも特徴。赤・青・黄・緑・黒で刷られた見開きと、赤・黒のみの見開きとが交互になっていて、これもクラシカルな味わいがあって良いし、デュボアザンは限られた色味で充分クリスマスの雰囲気を表現していて、さすがだなあと思います。
煙突のある色とりどりの家、屋根に積もった白い雪、青い夜空、黄色いお月さま、鮮やかな緑のツリー、サンタさんの赤い服…。

デュボアザンの描く古き良きアメリカの家庭のイブの光景は、あたたかみがあり、煙突を上り下りするサンタさんの姿はなんともユーモラス。まるぽちゃの身体に白い長いひげ、赤い服で緑のプレゼントの袋をかつぎ、煙突を身軽に下りてくる姿は、これぞサンタ・クロースという感じ。
あ、ツリーに飾られたオーナメントを思わせる、にぎやかで楽しい見返しも、もちろん素敵。
またまたクリスマスのお気に入り絵本が増えました。

→YouTubeで洋書版の朗読の動画を発見、中の絵を確認できます。

→ロジャー・デュボアザンの絵本の紹介はこちら

→Amazon「クリスマスのまえのよる (主婦の友はじめてブック おはなしシリーズ)
→セブンネットショッピング「クリスマスのまえのよる

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●ロバート・サブダ


「The Night Before Christmas: A Pop-Up
(Classic Collectible Pop-Up)」

Clement Clarke Moore 著/Robert Sabuda 絵(Little Simon)
The Night Before Christmas Pop-up (Classic Collectible Pop-Up)
言わずと知れたロバート・サブダのポップアップ絵本…とは言いながら、わたしはポップアップ絵本、いわゆる仕掛け絵本というものに、「大人なのに、今さら飛び出す絵本なんて…」などといった気持ちも抱いていたのです。
けれど「紙の魔術師」とも呼ばれるロバート・サブダの作品、クリスマスの機会に一冊は手にしてみたいと思い、この『The Night Before Christmas』を購入。
開いてみて、洗練された、精巧な仕掛けに感動しました!
サブダの作品には、他にももっと凝った作りのものがあるようですが、『The Night Before Christmas』には、シンプルな美しさがありますね。
白い紙のポップアップが映える、背景の洗練された配色。
これは…飛び出す絵本というよりは、紙のオブジェ、芸術作品だと思います。
わたしはクリスマスの時期、この絵本を開いた状態で部屋に飾って楽しんでいます。

オブジェとして大人の鑑賞に堪えうる作品でありながら、サブダのポップアップ絵本は、子どもの気持ちによりそうような遊び心も忘れていません。
ひとを喜ばせる贈り物として、これほどふさわしい絵本はないかも。
ギフトにぴったりのサブダ作品は他にもたくさんあるので、クリスマスに毎年一冊ずつ選ぶのも楽しいのではないでしょうか。

(※こんな作品が流通にのっていること自体がすごい、とは思いますが、やはり値段は普通の絵本より高め。 わたしはアマゾンの洋書ストアで、20%オフで買いました。ポップアップ絵本、という性質上、中身が英語でも問題はないと思いますので、アマゾンでのオフ価格での洋書購入はおすすめです)

→Amazon「The Night Before Christmas Pop-up (Classic Collectible Pop-Up)

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●ニルート・プタピパット


「The Night Before Christmas:
A Magical Cut-Paper Edition」

Clement C. Moore 著/Niroot Puttapipat 絵(Candlewick Press)
The Night Before Christmas: A Magical Cut-Paper Edition
『The Night Before Christmas』の仕掛け絵本。絵を手がけられているニルート・プタピパットさんは、タイで生まれ育ち、ランナー王国の王女の血をひいていて(!)、現在はロンドン在住とのこと。『アラジン【Amazon】』の仕掛け絵本等も作っていらっしゃるようです。
この一冊は、仕掛け絵本といっても、大きなポップアップは最後の見開きだけで、「A Magical Cut-Paper Edition」とあるように、絵の窓の部分の紙が切り抜かれていて、向こう側が見えるといったような、ごくシンプルな仕掛けが多いです。

おなじ『The Night Before Christmas』の仕掛け絵本なら、紙の魔術師ロバート・サブダの目をみはるようなポップアップ(上記に紹介)がありますが、この絵本の特徴は、絵が繊細なシルエット画で、サブダの世界とはまた違ったクラシカルな雰囲気を作り上げているということでしょうか。
西洋の古いシルエット画を思わせる絵に、赤、緑、金のさし色が映えて、クリスマスらしい画面になっているし、最後の見開きのポップアップも繊細で美しいです。

わたしが購入したのは洋書版。邦訳版も出ていますが、洋書版にくらべて割高です。
英語が読める、または『The Night Before Christmas』の詩の内容を知っている人なら、洋書版を買ったほうがお得かもしれません(テキストが英語のほうが、なんとなくおしゃれな気もする…^^;)。
小学校以上の女の子、またはクラシカルな絵本が好きな大人の女性への、クリスマスプレゼントに良さそうな一冊です。

→Amazon「The Night Before Christmas: A Magical Cut-Paper Edition」(洋書)
→Amazon「クリスマスのまえのよる (しかけえほん)」(邦訳版)

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クリスマスの絵本、まだまだあります!

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