■ロジャー・デュボアザンの絵本

〜しゃれたタッチと色彩感覚〜


●ロジャー・デュボアザン ― Roger Duvoisin ―

1904年、スイスのジュネーヴに生まれる。
美術学校を卒業したのちアメリカに渡り、帰化。息子のために絵本を作ったことがきっかけで、子どもの本の世界に入る。
主な作品に『がちょうのぺチューニア』(冨山房)、『ごきげんなライオン』(福音館書店)、『ぼくはワニのクロッカス』(童話館出版)などがある。
1948年、『しろいゆき あかるいゆき』(BL出版)でコルデコット賞受賞。 1980年6月、モリスタウンにて永眠。



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「きんいろのとき」

「クリスマスのまえのよる」

「しろいゆき あかるいゆき」

「はる・なつ・あき・ふゆ いろいろのいえ」

「マリーのお人形」

「ゆくえふめいのミルクやさん」



「きんいろのとき」

ゆたかな秋のものがたり
アルビン・トレッセルト 文/ロジャー・デュボアザン 絵/江國香織 訳
(ほるぷ出版)
きんいろのとき―ゆたかな秋のものがたり
きりぎりすがなきはじめたら、秋の気配。夜がながくなり、こがねいろの小麦がゆたかに実り、畑からは刈りとり機の音がひびきます。
やがて最初の霜がそっとおりると、木々は赤に金色にうつくしく染まり、りすたちは森で木の実を集めては、ひみつのあなにかくします・・・。

ゆきの降り始める様子を静かに描いた『しろいゆき あかるいゆき』と同じく、トレッセルトとデュボアザンのコンビによる作品。
『ゆくえふめいのミルクやさん』と同じく見返しも凝っていて、秋に実る野菜や果物、瓶詰め、はちみつなどの絵が描かれています。さらにテキストのまわりを囲む絵も素敵。デュボアザンのしゃれたタッチは、大人が眺めても楽しめます。
夏の終わりから晩秋へ、うつろう季節をじっくりと見つめる、ゆたかな時間が綴られたテキスト。金色にかがやくように見える黄色が目に鮮やかで、これは海の向こうの秋の風景を描いた絵本だけれども、読んでいて、日本の身近な紅葉の美しさも、また思い出されてくるのです。

→秋の絵本の紹介はこちら

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「クリスマスのまえのよる」

クレメント・C・ムーア 詩/ロジャー・デュボアザン 絵/こみや ゆう 訳
(主婦の友社)
クリスマスのまえのよる (主婦の友はじめてブック おはなしシリーズ)
サンタクロースのイメージを決定づけたクレメント・クラーク・ムーアの有名な詩に、ロジャー・デュボアザンが絵を添えたクリスマス絵本。
アメリカでの初版は1954年ですが、日本初紹介とのこと。デュボアザンも『The Night Before Christmas』の絵本を手がけていたとは、なんとも嬉しい驚きです。

この本はまず判型が変わっていて、ぐんと縦長の本なのですけど、版元サイトによると「イブの夜にプレゼントをいれるくつしたに入るようにとデザインされた」サイズなのだそう。デュボアザンは、この縦長のかたちをうまく生かして、煙突の高さや、クリスマスツリーの大きさを表現しています。
古い絵本らしく、カラーなのだけど使われている色数が少ないのも特徴。赤・青・黄・緑・黒で刷られた見開きと、赤・黒のみの見開きとが交互になっていて、これもクラシカルな味わいがあって良いし、デュボアザンは限られた色味で充分クリスマスの雰囲気を表現していて、さすがだなあと思います。
煙突のある色とりどりの家、屋根に積もった白い雪、青い夜空、黄色いお月さま、鮮やかな緑のツリー、サンタさんの赤い服…。

デュボアザンの描く古き良きアメリカの家庭のイブの光景は、あたたかみがあり、煙突を上り下りするサンタさんの姿はなんともユーモラス。まるぽちゃの身体に白い長いひげ、赤い服で緑のプレゼントの袋をかつぎ、煙突を身軽に下りてくる姿は、これぞサンタ・クロースという感じ。
あ、ツリーに飾られたオーナメントを思わせる、にぎやかで楽しい見返しも、もちろん素敵。
またまたクリスマスのお気に入り絵本が増えました。

→YouTubeで洋書版の朗読の動画を発見、中の絵を確認できます。

→「The Night Before Christmas―特選クリスマスの絵本―」はこちら

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「しろいゆき あかるいゆき」

アルビン・トレッセルト 作/ロジャー・デュボアザン 絵/江國香織 訳
(BL出版)
しずかなよるに ふうわり おっとり
きたのそらから しいんと しろく
ひひと ふる ふりつもる こっそりと まいおりて
しずかなよるに ふうわり おっとり 

『しろいゆき あかるいゆき』冒頭の詩より抜粋

iconicon 秋の訪れを鮮やかに描いた『きんいろのとき』と同じく、トレッセルトとデュボアザンのコンビによる作品。
この『しろいゆき あかるいゆき』は、ふたりが組んでつくったはじめての絵本とのこと。 トレッセルトの詩的な文章と、デュボアザンの色数をおさえた絵で、季節のうつろいが美しく切りとられています。

ゆきの降り始める様子を、ゆうびんやさん、おひゃくしょうさん、おまわりさんと彼のおくさん、 子どもたちとうさぎたちの眼差しをとおして、ゆっくりと丁寧に描いてある一冊。
グレー・黄色・赤・白のみで構成された絵は、冬の寒さと雪の冷たさ、しんしんと雪の降る夜のしずけさ、同時に家の中のあたたかさを感じさせ、なんとも味わい深いです。
テキストは、上記に引用した冒頭の詩の、江國香織さんの訳が印象的。またおはなしの結びが、奇をてらうわけでなく秀逸で、とても素敵だと思いました。
冬の夜にページを繰るのにぴったりの、しずかでおだやかな絵本。
コルデコット賞受賞作品です。

→「冬の絵本」はこちら

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「はる・なつ・あき・ふゆ いろいろのいえ」

ロジャー・デュボアザン 作/やましたはるお 訳(BL出版)
はる・なつ・あき・ふゆ いろいろのいえ
いなかの古い家に移り住んだ4人家族。よろい戸や壁のペンキを自分たちで塗りなおすことにして、どんな色にしたいか、ひとりひとり提案します。赤、黄、茶、緑…。どれも素敵な色なのですが、あれこれと考えたすえ、最後に家族が選んだ色は?

この絵本は2007年に邦訳されましたが、描かれたのは1956年。50年以上も前の作品だけれども、デュボアザンの絵はやっぱりおしゃれ。
見返しも美しい絵本が多いデュボアザンですが、この本の見返しには、あれっ?と思うような色が塗りたくられています。でもこれが、内容と関連した工夫なんですよね。
とっても素敵な色づかいの絵本をたくさん発表しているデュボアザンの、色についての考え方が反映されたおはなしは、とても興味深いです。

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「マリーのお人形」

ルイーズ・ファティオ 文/ロジャー・デュボアザン 絵/江國香織 訳
(BL出版)
マリーのお人形
パリの街の骨董品店のウインドウに飾られている、美しいアンティークドール。ペルシャのつぼや、中国のティーポットに囲まれて、彼女は孤独でした。一緒に遊んでくれる、小さな女の子に出会えるのを待っていたのです。
そんなお人形を、毎日ウインドウの向こうから見つめていたのが、郵便屋さんの娘のマリーでした…。

『マリーのお人形』は、テキストをデュボアザンの夫人であるルイーズ・ファティオが担当していて、これがなんともガーリーでかわいらしい一冊!
お話の舞台設定が素敵で、まさに女の子のための絵本という感じ。
デュボアザンの絵は、パリのおしゃれな街並みや、クラシカルな骨董品店の様子、お人形のレーシーなドレスなどを、濃いピンクと黄色の少ない色味で雰囲気いっぱいに描いていて、眺めているだけで幸せな気持ちになります。
デュボアザンの絵本はたくさんあって、どれも魅力的なのですが、なかにはこんなにかわいらしい一冊もあるんですね。

江國香織さんの訳は、江國さんらしく難しい言葉がいろいろ使われていたり、ところどころフランス語のカタカナ表記に、日本語訳のルビがふられている会話部分もあり、絵本が子どものためのものであるとすれば、もしかして評価のわかれるところかもしれません。
けれども子どもって、難しい漢字や言い回しの意味がよくわからなくても、大人びた感じがしてけっこう好きだったりするし(わたし自身がそうでしたし、「赤毛のアン」もそうですよね〜^^)、そこから新しい言葉をおぼえていくという一面もあると思うので、大人が考えるより問題ないのではないでしょうか。

それからこの絵本、なんとお人形のためのちいさな絵本がついているんです!
この絵本のお人形とマリーのように、読者がお人形と一緒に読むことができるよう、『マリーのお人形』をそっくりそのまま小さくしたミニ絵本。
わたしはこのミニ絵本つき、というところに惹かれて買ってしまったのですが(^^;
『マリーのお人形』は、子どもも大人も、女の子の心をもつ人なら楽しめる、素敵な一冊だと思いました。

→「人形たちの絵本」はこちら

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「ゆくえふめいのミルクやさん」

ロジャー・デュボアザン 作・絵/山下明生 訳(童話館出版)
ゆくえふめいのミルクやさん
まい日まい日、くる日もくる日も、ミルクを配達し、おくさんたちとお天気の話をするのに嫌気がさしたミルクやさん。
ある日、愛犬シルビアとともに、気のむくままに配達トラックをぶっとばし、くりかえしの日常から抜け出して、やがて森の中の湖のほとりにたどり着きますが・・・。

絵もテキストもデュボアザンが手がけた作品で、日々の仕事にちょっとうんざり気味の人(わたし?)に、ぴったりの一冊。
この絵本のミルクやさんみたいに、わたしも、通勤バスの決まった停留所で降りないで、終点の、海の見えるところまで行ってしまいたい!
誰しもそんなふうに思ったことはあるはずで、でも現実にはなかなかできないから、ときどきこのミルクやさんに感情移入して、日常からの逃避行を味わったりして。

絵は色彩感覚が独特で、とってもしゃれたタッチで描かれていて、見れば見るほど味わいあり。
見返しにもカラフルな絵が描かれているところが、絵本好きにはポイント高し、なのです。

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