■本の蒐集記録(2009年3-4月)


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2009/04/29(Wed)
●高橋ヨーコ 写真『イースト・サイド・ホテル』(ピエ・ブックス)
●シェイクスピア 著/福田恆存 訳『夏の夜の夢・あらし』(新潮文庫)

イースト・サイド・ホテル (Photo+) 雑誌『クウネル』などで名前をお見かけしていたカメラマンの高橋ヨーコさん。蒼井優ちゃんの写真集などでも知られていますよね。
『イースト・サイド・ホテル』は、ピエ・ブックスの、Photo+(フォトプリュス)というシリーズのなかの一冊で、ちいさな写真集。
ルーマニアやアルメニアやブルガリアやモスクワなどを旅した折の、「いろんな寝床」の写真がおさめられています。
ちょっとうらさびれた雰囲気のホテルの部屋、生活感あふれる遠い国の誰かのおうちの様子。
いけてなさそうな風景なのに、お、このカーテンかわいい、壁紙も、ベッドリネンも、お皿の花模様も…となるのは、高橋ヨーコさんならではの切り口で撮られた写真だからなのでしょう。
やはりピエ・ブックスの本は、ブックデザインがおしゃれで素敵です。

『夏の夜の夢・あらし』は、ふと読みたくなって購入。
おなじく岩波文庫の『サロメ』でも思ったのだけれど、やっぱり福田恆存の訳が美しい。
妖精たちがたくさん登場するシェイクスピアの幻想劇。イギリス挿絵黄金時代、『夏の夜の夢』にアーサー・ラッカムが、『あらし(テンペスト)』にエドマンド・デュラックが絵を寄せたのは有名ですよね。
デュラックの『テンペスト』は持ってますが、新書館版のラッカム挿絵の『真夏の夜の夢』はまたも絶版…。
新書館さん、あれもこれも重版よろしくお願いします…。

→アーサー・ラッカム/エドマンド・デュラックの紹介はこちら

→Amazon「イースト・サイド・ホテル (Photo+)
夏の夜の夢・あらし (新潮文庫)

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2009/04/28(Tue)
●荒井良二 著
『ルフラン ルフラン2 本のあいだのくにへ』(プチグラパブリッシング)

ルフランルフラン2 本のあいだのくにへ 『ルフラン ルフラン』の続編を購入。
ひっこしのとちゅう、「じめんのほんのなか」に吸い込まれたルフラン。そこでは、何にも書かれていない、まっしろい本を、みんなが夢中で読んでいました。ルフランもまっしろい本のページをめくり、自由にお話を始めます…。

本のあいだのくにで、自由にお話を作り出し、冒険する。本好きならこのストーリーに、惹かれずにはいないはず。
ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』を思い出すなあ。
絵はやっぱりコラージュの技法が使われていて、ルフランの冒険が、大胆な色使いと迫力ある構図で表現されています。
子どもが描いたような絵、なのだけれど、子どもでも、ちょっと成長すると、こじんまりときれいに整ったマンガっぽい絵を描くようになってしまうこの国で、こんなにもめちゃくちゃな絵を、大人が描くのって、ほんとに難しいと思う。だから荒井氏の絵はすごいな、と思う。
表紙絵にコラージュされたレースのリボンや、見開きの、水色の地に黄色で刷られたルフランの絵がかわいい。

→「荒井良二の絵本」はこちら
→ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』の紹介はこちら

→Amazon「ルフランルフラン2 本のあいだのくにへ

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2009/04/20(Mon)
●ヨゼフ・パレチェク 絵/リブシェ・パレチコヴァー 文/木村有子 訳
『ちいさなよるのおんがくかい』(アットアームズ)
●大橋利枝子 著『ずっと好きなもの』(地球丸)

1981年にフレーベル館から刊行されていた『ちいさなよるのおんがくかい』、2009年3月にアットアームズから復刊されました。
最近、すっかりヨゼフ・パレチェクの絵に魅了されているわたしには、うれしい便り。この絵本は、短い詩のような14のおはなしと、色鮮やかなイラストで構成されています。
表紙の絵からして、なんとも幻想的で美しい〜♪
お花、カラフルなしまもよう、歩くさかな…夢のような幻のようなパレチェクの絵の魅力を、じっくり堪能することができる一冊です。
(リンクはアマゾンに貼ってますが、アマゾンでは現在在庫切れで、定価より高い値のついたユーズド商品しかありません。bk1ではまだ在庫ありなので、興味ある方はチェックしてみてください)

雑貨やインテリア、ファッションのかわいいスタイリングで人気の大橋利枝子さん。
『ずっと好きなもの』は、雑誌『天然生活』での連載に加筆して単行本化したもの。実は連載時から、はやく単行本にならないかな〜と思ってました(^^)
大橋さんのセレクトするものはどれも、かわいいけれど、かわいすぎない、絶妙な匙加減。とても好きです。
この本では、森永ビスケットのチョイスだとか、牛乳石鹸だとか、普通〜のものも、「ずっと好きなもの」としてとりあげられていて、そこが興味深い。
きもの好きの大橋さんの本棚に、森田たまの「もめん随筆」も発見(最近文庫化されたのじゃなくて、古本の)!
そうやってすみずみまで眺めて、かわいいものを選ぶ目を養おうと思っています。

→「かわいい旅と雑貨の本」はこちら
→森田たま『もめん随筆』の紹介はこちら

→Amazon「ちいさなよるのおんがくかい (チェコの絵本シリーズ)
ずっと好きなもの (天然生活ブックス)

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2009/04/16(Thu)
●荒井良二 著『ルフラン ルフラン』(プチグラパブリッシング)

ルフラン ルフラン 荒井良二氏がヨゼフ・パレチェクの絵本の翻訳をしていたことから、そういえば荒井さんの絵本は一冊しか持ってないなあ、と思い出して、以前から気になっていた『ルフラン ルフラン』を購入。
いまさら説明する必要もないであろう有名な絵本だけれど、やっぱり『ルフラン ルフラン』は、とても素敵な一冊です。
ほんとうにちいさな女の子が描いたようなルフランの姿といい、あかるい黄色が印象的な色使いといい、ところどころに草花の写真が貼りこまれたコラージュの手法といい、何が言いたいんだか明確にはわかりにくいお話といい…。
ひとによっては、この子どもが描いたような絵が苦手という場合も、またはっきりしないお話がいまひとつという感想も、あるかもしれませんが…。
でもやっぱり、多くの人が良いという絵本は良いものなのだなあと、改めて感じ入るのでした。

→「荒井良二の絵本」はこちら

→Amazon「ルフラン ルフラン

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2009/04/13(Mon)
●フランシチェク・フルビーン 文/イジー・トゥルンカ 絵/木村有子 訳
『おとぎばなしをしましょう』(プチグラパブリッシング)
●フーケー 作/柴田 治三郎 訳『水妖記(ウンディーネ)』(岩波文庫)

おとぎばなしをしましょう チェコの人形アニメの巨匠であり、たくさんの絵本も描いているイジー・トゥルンカ。
『おとぎばなしをしましょう』は、チェコをはじめヨーロッパに伝わる昔話を、短い詩のように語りなおしたものに絵が添えられた、ちいさな絵本です。
なんとも素朴でかわいらしい味わいのある絵。不思議ななつかしさを感じるタッチ。
イジー・トゥルンカの絵本では、『ほたるの子ミオ』が欲しいなあと思うのだけれど、絶版。いつか重版されることを願いつつ。

『水妖記(ウンディーネ)』は、ふと読みたくなって購入。
フーケーの書いたこの幻想的な物語には、アーサー・ラッカムが絵を寄せているのだけれど、新書館版のラッカム挿絵のウンディーネは、やはり絶版。これもいつか重版されることを願う。
あと確か、赤毛のアンシリーズのなかで、アンが読んだ本としてフーケーのウンディーネがあげられていたように思う。うろ覚えだけれど…。
アンはジョージ・マクドナルドの『北風のうしろの国』のことにも言及している。
このサイトでとりあげた本たちが、一冊でも、アンやミス・コーネリア言うところの「ヨセフを知る一族」の選んだ本と同じだとしたら嬉しい。

→アーサー・ラッカムの紹介はこちら
→ジョージ・マクドナルド『北風のうしろの国』の紹介はこちら

→Amazon「おとぎばなしをしましょう
水妖記―ウンディーネ (岩波文庫 赤 415-1)

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2009/04/06(Mon)
●クラウス・ボーン 文/ヨゼフ・パレチェク 絵/荒井良二 訳
『イグナツとちょうちょ』(プロジェクトアノ)

イグナツとちょうちょ (チェコの絵本シリーズ) ヨゼフ・パレチェクの色使いや愛らしいタッチに見せられ、4冊目を購入。
自転車が大好きで、曲乗りの練習ばかりやっていて働かないというイグナツが主人公の、心あたたる素敵なお話。
アンデルセン童話とはまた違う世界が、パレチェクの筆で描かれていて、この絵本もたいへん美しい一冊に仕上がっています。
パレチェクらしい鮮やかな色使いや、草花の描写とともに、イグナツのいかにも自由人といった服装や、部屋に置かれたこまごました雑貨、手入れされたかわいい自転車などにも注目。
訳は、人気絵本作家荒井良二氏です。

→「荒井良二の絵本」はこちら

→Amazon「イグナツとちょうちょ (チェコの絵本シリーズ)

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2009/03/30(Mon)
●ロード・ダンセイニ 著/小林 晋 訳『二壜の調味料』(早川書房)
●すぎうら さやか 著『あかずきん』(白泉社)

宇宙的視野をもつアイルランドの幻想小説家、ロード・ダンセイニ。
最近では河出文庫からダンセイニ幻想短篇集成も刊行されていて、けっこうメジャーな作家として認識されてきたのか(?)、ついにダンセイニ卿の幻のミステリ短篇集『二壜の調味料』が邦訳されました!
その昔、江戸川乱歩が絶賛したという表題作「二壜の調味料」、タイトルは聞いたことありましたが、いや〜、こんなふうに立派な一冊の本になって読める日が来るとは思わなかったな〜(←失礼です)。
頭脳明晰な青年リンリーと、調味料のセールスをしているスメザーズのコンビが事件を解決するシリーズ9篇を含む、全26篇を収録。
カバーの内容紹介では「ブラックユーモアとツイストにあふれるミステリ短篇集」なんて書かれているし、〈クイーンの定員109〉にも選ばれている作品なのだけれど、読んでみると本格ものというより、かなりのんびりまったりとした、郷愁あふれる癒し系ミステリです。

あかずきん 『あかずきん』は、人気イラストレーター杉浦さやかさんによる、最強にかわいい「あかずきん」絵本。
何と言ってもあかずきんのファッションがかわいい。パフスリーブ、ワンストラップの靴、白いレースのペチコートがのぞく赤い木の実模様のスカートに、水色ストライプのエプロンをあわせて…。
暮らしや雑貨関連の著書の多い杉浦さやかさんの『あかずきん』は、たくさんの「あかずきん」絵本のなかでも、かわいいディテールを楽しむための一冊に仕上がっているのではないでしょうか。

→「ロード・ダンセイニの本」はこちら

→Amazon「二壜の調味料 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
あかずきん

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2009/03/23(Mon)
●エルンスト・クライドルフ 文・絵/おおつかゆうぞう 訳
『ふゆのはなし』『くさはらのこびと』(福音館書店)

小人や花の精の出てくるクラシカルな画風の絵本が好きで、べスコフやオルファースの作品は持っているのですが、エルンスト・クライドルフの邦訳絵本はなぜかすべて絶版。とても好みの画風なのに、これまで入手できませんでした。
それがこの3月、福音館書店の復刊絵本20選のなかに、エルンスト・クライドルフの2冊が含まれているのを知り、さっそく購入!
2冊とも、なんて美しい絵本。作者のゆたかな想像力、自然を見つめる繊細な眼差し。
何と言っても小人たちの様子が、とてもかわいい!小人の、軽くてすばしこい感じ、自然の中でちいさく幸せに暮らしている雰囲気が、よく伝わってきます。
限定とはいえ復刊されたことを喜ぶとともに、どうしてこんな素晴らしい絵本が絶版になるんだろうと、いつものように悲しむ。

→「エルサ・べスコフの絵本」はこちら
→「ジビュレ・フォン・オルファースの絵本」の紹介はこちら

→Amazon「ふゆのはなし (世界傑作絵本シリーズ・スイスの絵本)
くさはらのこびと (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)

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2009/03/16(Mon)
●ハンス・クリスチャン・アンデルセン 文/ヨゼフ・パレチェク 絵/石川史雅 訳『はだかの王さま』(プロジェクトアノ)

はだかの王さま (チェコの絵本シリーズ) ヨゼフ・パレチェクのアンデルセン絵本3冊目。
おなじみのお話ですが、パレチェクの描く王さまや、2人のいかさま師がとても愛らしくて、どうにも憎めない。
この絵本も色使いがやはり素晴らしく、お城や町の描写には見入ってしまいます。
表紙のピンクのボーダーのかわいさや、タイトルの「王」の文字のデザインにも注目です。

→「アンデルセン童話の世界」はこちら

→Amazon「はだかの王さま (チェコの絵本シリーズ)

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2009/03/09(Mon)
●ハンス・クリスチャン・アンデルセン 文/ヨゼフ・パレチェク 絵/石川史雅 訳『おやゆびひめ』(プロジェクトアノ)
●伊勢英子 著『旅する絵描き パリからの手紙』(平凡社)

おやゆびひめ (チェコの絵本シリーズ) ヨゼフ・パレチェクの絵に魅せられ、『人魚ひめ』に続き『おやゆびひめ』を購入。
『人魚ひめ』は大人っぽい雰囲気の絵柄でシリアスな場面も多数ありましたが、『おやゆびひめ』は愛らしい色使いで楽しい場面がたくさん描かれた一冊。
木や花や建物の大きさが非現実的なバランスで描かれているのや、チョウやツバメの羽の模様など、パレチェク独特のタッチが素敵。
何よりパレチェクならではの鮮やかな色彩は、大人が眺めてもうっとりの美しさです。

『旅する絵描き パリからの手紙』は、絵本『ルリユールおじさん』誕生の秘密が書かれた、創作的エッセイ。
一人の絵描きである著者が、パリで一人のルリユール(製本職人)と出会い、滞在して彼の仕事の様子やパリの街をスケッチし、それらのスケッチが『ルリユールおじさん』として結実したことがよくわかります。
巻末には『ルリユールおじさん』のエスキス(下絵)も掲載されていて、『ルリユールおじさん』を読んで感動したなら、この一冊も見逃せません。
文章や多数のスケッチから、パリの空気が感じられるのも嬉しい。

→「アンデルセン童話の世界」はこちら
→絵本『ルリユールおじさん』の紹介はこちら

→Amazon「おやゆびひめ (チェコの絵本シリーズ)
旅する絵描き―パリからの手紙

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2009/03/02(Mon)
●ハンス・クリスチャン・アンデルセン 文/ヨゼフ・パレチェク 絵/石川史雅 訳『人魚ひめ』(プロジェクトアノ)
●井岡美保 著
『カナカナのかわいいロシアに出会う旅』(産業編集センター)

人魚ひめ (チェコの絵本シリーズ) 蒐集記録、再開。本のデータを残しておくために・・・。
ちょこっと、ひとことずつコメントを添えていこうと思います。

にわかにチェコ絵本に興味がわいたので、ヨゼフ・パレチェク『人魚ひめ』を購入。
ヨゼフ・パレチェクは、有名なチェコの画家なのに、いままでまったくその作品を手にとってきませんでした。
とても美しい絵! 色使いといい、非現実的な木やお花の描写といい、眺めているとアンデルセン童話の夢幻の世界に惹きこまれます。

『カナカナのかわいいロシアに出会う旅』は、かわいい旅と雑貨の本。
著者の井岡美保さんは、奈良でカフェ「カナカナ」と雑貨店「Roro」を運営していらっしゃいます。
ロシアのかわいいものを最初に紹介したのは、やはりスタイリストの岡尾美代子さんだと思うのですが、この本はまるごと一冊ロシアを扱っていて、実際の旅に役立つ情報もたくさん。
章タイトルのページが、ロシアのかわいい布を使ったコラージュになっているところなど、ぐっとひきつけられます。

→「アンデルセン童話の世界」はこちら
→「かわいい旅と雑貨の本」はこちら

→Amazon「人魚ひめ (チェコの絵本シリーズ)
カナカナのかわいいロシアに出会う旅

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