■エルサ・ベスコフの絵本

〜明るい色彩で写実的に描かれる、幸せな子どもの世界〜


●エルサ・ベスコフ ― Elsa Beskow ―

1874年、スウェーデンのストックホルムに生まれる。児童文学作家・絵本作家。 6人の子どもを育てながら、数多くの物語、絵本を残した。その作品は世界中で、何世代にもわたって愛されている。
1952年、子どもの本に対するスウェーデンの最高賞、ニルス・ホルゲション賞を受賞。1953年、没。
1958年、スウェーデン図書館協会は、彼女の業績に因んで「エルサ・ベスコフ賞」を創設した。



↓タイトルのあいうえお順です。
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「いちねんのうた」

「おひさまがおかのこどもたち」

「おひさまのたまご」

「ちいさな ちいさな おばあちゃん」

「どんぐりぼうやのぼうけん」

「ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん」

「ペレのあたらしいふく」

「もりのこびとたち」

「ラッセのにわで」



「いちねんのうた」

エルサ・べスコフ 絵と文/石井登志子 訳(フェリシモ出版)
いちねんのうた
少年ウッレと妹のブリータ、末の妹のチビちゃん。3人の兄妹たちが過ごす、スウェーデンの楽しい一年が、リズミカルな詩と美しい絵とで表現されている、素敵な絵本です。 スウェーデンの年中行事については、わかりやすい解説も付されています。

1月から12月まで、季節の移り変わりを描いたべスコフの12枚の絵は、ほんとうにため息がでるほど美しい! 1月の行事「12日節」の絵など、とっても可愛いです。
12日節は、クリスマスから数えて12日目の1月6日。キリスト教国では、この12日節まで、クリスマスのお祝いが続くんですよね。 解説には、「今ではまれになりましたが、エルサ・べスコフが子どもの頃、12日節にはまだ、頭に星のついた三角帽子をかぶった男の子が、当方の三博士になって、 ヘロデ王と一緒に、もらいものを入れる袋をもったユダをつれて、 近所を回ったり、聖書のクリスマスの物語を題材にした寸劇を演じたりしていました」とあります。
とにかく子どもたちが可愛く、非常に美しい絵なので、こんな行事も、今ではまれになったのだと思うと、とっても淋しいです。

『いちねんのうた』は、他にも花や植物、妖精、子どもたちの生き生きと遊ぶ様子などが、大判の絵本いっぱいに描かれ、べスコフの絵の素晴らしさを堪能できる一冊になっています。

→Amazon「いちねんのうた

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「おひさまがおかのこどもたち」

エルサ・べスコフ 作・絵/石井登志子 訳(徳間書店)〜3歳から〜
おひさまがおかのこどもたち
この絵本は、「おひさまがおか」と呼ばれる屋敷で暮らす子どもたちの、楽しい夏の日々を描いています。
初出は1898年、べスコフ初期の作品です。ストーリーは特になく、マロニエの木陰でのブランコやシーソー遊び、森のなかの秘密の場所での野いちごつみ、 夏のとっておきの楽しみである湖での水あそびなど、いくつもの美しい絵に、ごく短い文章が添えられています。

文章が短く、明るい絵で彩られているので、ちいさい子どもにも楽しめると思います。 また大人なら、その詩情に満ちた美しい絵を眺めるだけでも、心が癒されるのではないでしょうか。
日本にはない「夏至まつり」などの行事や、北欧ならではの白夜と夏の喜びを知ることができるのも、魅力のひとつです。

→「夏の絵本」はこちら

→Amazon「おひさまがおかのこどもたち

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「おひさまのたまご」

エルサ・べスコフ 作・絵/石井登志子 訳(徳間書店)〜5歳から〜
おひさまのたまご
この絵本は、森のちいさな住人たちが、落し物のオレンジをめぐって繰り広げる、楽しい騒動を描いています。
森に住む妖精は、ある日「おおきな だいだいいろの まるいもの」が落ちているのを見つけます。 空を見上げると、雲の間には明るいおひさま。おひさまがたまごを落としてしまったと思った妖精は、 森の仲間たちにニュースを知らせに走ります。

オレンジをおひさまのたまごだと勘違いする、その着想が愛らしく、物語への興味を誘います。 展開もスムーズで、次々と個性ゆたかな森の仲間たちが登場し、読者を退屈させません。
ベスコフの絵の魅力は、りすや小鳥だけでなく、かえるやとかげなどの、女の子には嫌われがちな小動物もたくさん描かれていること。 この作品では「わらいがえるレストラン」の絵が必見。食事をとる、つぶらな瞳のとかげが、可愛い。

→Amazon「おひさまのたまご

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「ちいさな ちいさな おばあちゃん」

エルサ・べスコフ 作/いしいとしこ 訳(偕成社)
あるところに、ちいさな ちいさな おばあちゃんが いました。おばあちゃんは、ちいさな ちいさな いえにすんでいました。

『ちいさな ちいさな おばあちゃん』より

ちいさなちいさなおばあちゃん (世界の絵本) こんなふうに始まる、ちいさな ちいさな おはなし。
べスコフのデビュー作は、彼女が幼い頃から祖母に語り聞かされていた、昔からのお話を絵本にしたものなのだそうです。

訳者の解説によると、べスコフは、ウォルター・クレイン(Click!)の展覧会を見て、この絵本の着想を得たのだとか。 アール・ヌーヴォーの影響を受けた飾り枠が素敵な作品で、すべての絵が、ゼラニウムやねこやなぎなどの植物をモチーフにした、まあるい枠の中に描かれているのです。 まあるい飾り枠のなかにおさまったちいさな絵は、どれもシンプルでかわいく、さりげなくスウェーデンの生活習慣が描きこまれていたりして、細部まで見入るのも楽しいです。
文章は短く、「ちいさな ちいさな」という繰り返しのリズムが、魔法の呪文のようで印象的。もちろん、ちいさなお子さんへの読み聞かせにも向いていると思います。

→「ウォルター・クレインの絵本」はこちら

→Amazon「ちいさなちいさなおばあちゃん (世界の絵本)

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「どんぐりぼうやのぼうけん」

エルサ・べスコフ 作・絵/石井登志子 訳(童話館出版)
どんぐりぼうやのぼうけん
この絵本は、いたずらな兄弟、どんぐりぼうやのオッケとピレリルの、ちいさな冒険を描いています。
風にさらわれる、かしわの葉っぱに乗って、空高く飛ばされたどんぐりぼうやたち。 落ちたところは小人のおばあさんたちの洗濯やさん。仕事をだいなしにしたおわびに、森じゅうの家に洗濯物を運ぶことになった2人ですが…。

はじばみのヌッタ、マロニエの子どもたち、りすのスバンス氏などの個性ゆたかな登場人物と、森の風景。 ベスコフ得意の擬人化された自然の描写が秀逸で、味わいとしては『もりのこびとたち』に似ています。もちろん、どちらも面白いです。
ベスコフの描く子どもや小人、動物たちは、ほんとうにかわいらしくて元気いっぱい。 最後のページの、夜のパーティの絵が楽しそうで、仲間に入りたくなってしまいます。

→Amazon「どんぐりぼうやのぼうけん

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「ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん」

エルサ・べスコフ 作・絵/おのでら ゆりこ 訳(福音館書店)
〜読んであげるなら4才から じぶんで読むなら小学校初級から〜
ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん (世界傑作絵本シリーズ)
おかあさんの誕生日の贈り物にするため、ブルーベリーとこけももを摘みに、森に入ったプッテ。 なかなか見つけられず、きりかぶにこしかけ泣いているプッテの足元に、ちいさなちいさな小人のおじいさんが現れます。 ブルーベリーもりのおうさまと名乗るおじいさんの魔法で、小人ほどにちいさくなったプッテは、ふしぎで楽しい一日の冒険をします。

ベスコフの絵本の中でも、わたしのイチオシの作品。とにかく絵が美しい。原書から製版したという色鮮やかな絵が、贅沢にも片面印刷されています。 陽射しのあふれる自然の風景、元気に遊ぶこどもたちの様子。絵の枠にあしらわれた草花や小動物の愛らしさ。うっとり見ほれてしまうクオリティです。
読者もプッテとおなじく小人になって、絵の中の世界へ入り込み、森の空気を胸いっぱいに吸い込むことができるでしょう。

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「ペレのあたらしいふく」

エルサ・べスコフ 作・絵/おのでら ゆりこ 訳(福音館書店)
〜読んであげるなら4才から じぶんで読むなら小学校初級から〜
ペレのあたらしいふく (世界傑作絵本シリーズ―スウェーデンの絵本)
この絵本は、少年ペレが、自分で世話しているこひつじの毛から、あたらしいふくを作るまでを描いた作品です。
こひつじの毛をかりとって、その毛をすき、糸をつむいで、青く染め、青い糸から布を織り、ひとそろいの服に仕立てあげます。 最後にできあがった服をきて、ペレはこひつじに言うのです。
「あたらしいふくをありがとう!」

シンプルなおはなしの、何とすばらしいことでしょう。現代の生活では実感することの難しい、 自然の恵みへの感謝のこころや、手仕事のよろこびを知ることができます。
やさしい色づかいの絵も素敵です。草花や道具類の描写のこまやかさ、動物や人間のゆたかな表情。 素朴な暮らしのあたたかさが、すべてのページから伝わってきます。

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「もりのこびとたち」

エルサ・べスコフ 作・絵/おおつか ゆうぞう 訳(福音館書店)
〜読んであげるなら4才から じぶんで読むなら小学校初級から〜
もりのこびとたち (世界傑作絵本シリーズ―スウェーデンの絵本)
この絵本は、深い深い森の奥で暮らす、こびとのこどもたちの楽しい毎日を描いた作品です。
松の木の根元の小さなうち。赤地に白い点のある、きのこに模したぼうし。 こわいこわい、としよりトロル。ようせいたちとのシーソー遊び。森の仲間が集まるふくろう学校。うさぎとのそり遊び。春の小川での水遊び。

森好き、そして小人好きのわたしには、タイトルを見ただけで、買わずにはいられませんでした。 絵本の中のこびとの森は、やっぱり素敵な、心躍る小さな世界でした。
絵は、動物たち、かえるやへびやふくろうの描写がリアルで、作者の誠実なまさざしが感じられます。 自然が身近だった時代だからこそ、このような森が描けたのかもしれません。

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「ラッセのにわで」

エルサ・べスコフ 作・絵/石井登志子 訳(徳間書店)〜5歳から〜
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この絵本は、少年ラッセが実りゆたかな秋の庭で体験した、不思議なできごとを描いた作品です。
ラッセは「くがつ」と名乗る男の子と出会い、ふたりで庭の植物たちと遊びます。 まるすぐりの子どもたち。まめばたけのかかし。やさしいりんご夫人。はなのむすめさんたち。 ラッセは庭の木や草や花々と、楽しい時間を過ごすのです。

擬人化された植物たちや、彼らのうたう楽しい歌。 植物も人間と同じように、生きてそこに在るということが、とてもわかりやすく表現されていると思います。
ときにユーモラスに、ときに美しく擬人化された植物たちの絵は、それぞれの特徴をよく捉えており、 自然が身近にあったからこそ育まれた、木や草花への共感と愛情を感じました。

→秋の絵本の紹介はこちら

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