■ジビュレ・フォン・オルファースの絵本

〜あたたかい眼差しと様式美、芸術的な古典絵本〜


●ジビュレ・フォン・オルファース ― Sibylle von Olfers ―

1881年、東プロイセンのメットゲテンで、貴族の家柄に生まれる。
早くから絵を習い、画家であり作家でもあった叔母、マリー・フォン・オルファースから大きな影響を受ける。
20代半ばで修道院に入り、その後、美術教師をしながら宗教画や絵本の創作を続ける。
肺病を患い、1916年、34歳で永眠。

↓タイトルのあいうえお順です。
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「うさぎのくにへ」

「風さん」

「ちょうちょのくに」

「ねっこぼっこ」

「森のおひめさま」

「ゆきのおしろへ」

「うさぎのくにへ」

ジビュレ・フォン オルファース 作/秦 理絵子 訳(平凡社)
うさぎのくにへ
ここは、みどりの森のなか。むくむくちゃんと、ぷくぷくちゃん。森番しているおとうさんが、きのことりをしてる間に、 うさぎのかあさんに連れられて、うさぎのくにへ。 てづくりの、うさぎのふくを着せてもらって、こうさぎたちの仲間いり。

この絵本では、森に迷い込んだふたりの子どもが、無事に家に帰りつくまでのおはなしが、楽しく描かれています。 森に暮らすうさぎたちの様子が、愛らしく生き生きと描かれ、リズミカルな短い文章とあわせて、 子どもへの読み聞かせにぴったりではないかなと思います。
うさぎの描写がとにかく秀逸。かわいすぎず、リアルすぎず、こうさぎたちの表情が丁寧に描き分けられ、 それぞれの個性がよくわかります。カラーの絵の上部に、モノクロで描かれた植物や小鳥の絵もかわいく、春の森の様子をよく伝えています。

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「風さん」

ジビュレ・フォン オルファース 作/秦 理絵子 訳(平凡社)
風さん
元気な風さん、いいごきげん。こぶねをうかべて、あそんでる、岸べのハンスの手をとります。 さあいこう、ずっととおくまで。野原をつっきり、木にのぼり、落ち葉をまいあげ、雲にのる。
ふたりのすてきな、秋の一日。

この絵本では、子どもどうしの出会いと成長、自然と触れ合う楽しさなどが、短い文章と美しい絵で表現されています。
風の精らしき「風さん」と少年ハンスとの出会いは、エルサ・ベスコフ『ラッセのにわで』を連想させますが、 べスコフの絵が素朴で身近な愛らしさに満ちているのと比べて、オルファースのそれは、やはり様式美が際立っています。
『ラッセ…』では、庭という小さな空間に、種々多様な植物たちが共存している様子が丁寧に描写されていますが、この作品では、 風さんとハンスとの楽しい遊びの様子が、生き生きと描かれています。
遊びに興じる子どもたちの姿と美しい秋の景色が、ページを繰るごとにあらわれ、読者の目を楽しませてくれます。

→エルサ・ベスコフ『ラッセのにわで』の紹介はこちら
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「ちょうちょのくに」

ジビュレ・フォン オルファース 作/秦 理絵子 訳(平凡社)
ちょうちょのくに
とおいとおい、はるかなくにで、しあわせにくらす、ちょうちょたち。さなぎのこどもは、花のおにわであそんだり、 とんぼのおねえさんに、ダンスをならったり。やがて春の誕生日がやってきて、かがやく光の使いから、ちょうちょの羽をもらいます。

この絵本は、オルファースの死後出版された遺作です。
ちょうちょという、子どもにとっては親しみ深い生き物たち。 ちいさな命がさなぎから蝶へと成長する過程を、オルファース独特の、やさしいファンタジーで描いています。
この絵本の絵は、荘厳としか表現のしようがありません。蝶たちが花を愛でる庭園は、天国もかくやと思われる美しさ。 金の槍を手にした太陽の使いや、春風の中を飛びかう色とりどりの羽の蝶たちは、 まさに天使のよう。最後の、夕べのちょうちょの行列の絵は、はるかな幻想の世界へと、読者を誘います。

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「ねっこぼっこ」

ジビュレ・フォン オルファース 作/秦 理絵子 訳(平凡社)
ねっこぼっこ
「さあ おきなさい こどもたち もうすぐ春が やってくる」
ねっこぼっこは土のなか、大地のかあさんの声でめざめます。 そとのせかいにくりだして、よろこびの春、かがやく夏を楽しんで、秋にはまた、大地のかあさんの、おうちのなかへ。

この絵本は、四季のめぐりの美しさを、親しみ深く自然によりそって描いた作品です。
大地に育まれたちいさな虫や野の花たちを、オルファースは「ねっこぼっこ」という、愛らしい子どもの姿で描いています。 この「ねっこぼっこ」の視点が、読者を容易に絵本の中へ誘い込み、 季節のうつりかわりや、ちいさな命の大切さを思い起こさせてくれるのです。
様式美を感じさせる、左右対称の草花の飾り罫や、宗教画に出てくる天使のように愛らしい「ねっこぼっこ」たち。 わたしはこの一冊で、オルファースの絵の虜になったのでした。

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「森のおひめさま」

ジビュレ・フォン オルファース 作/秦 理絵子 訳(平凡社)
森のおひめさま
森のちいさな、おひめさま。金のくつに、赤いふく。からすの先生とおべんきょう、動物たちとあそびのじかん、 きのこぼっこの、おはなしきいて。やがて星のこどもがやってきて、かえりみちを、てらします。 きょうもたくさん、わらってあそんだ。

この絵本は、子どもがたのしく一日を過ごす様子を、美しく生き生きと描いた作品です。
「森のおひめさま」は、健康な子どもの姿そのもの。動物や植物と直にふれあい、元気に遊びます。 「つゆのこ」や「きのこぼっこ」「星のこども」といった登場人物たちの、天使のような愛らしさは、 子どもの感受性がとらえた自然の美しさを伝えてくれます。
すべての絵が、左右対称の草花の飾り罫(ユーゲント様式というのだそうです)のなかに描かれているのが美しく、 おとぎの世界に向かって開かれた、魔法の窓をのぞきこむような感覚を、読者に与えてくれます。

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「ゆきのおしろへ」

ジビュレ・フォン オルファース 作/秦 理絵子 訳(平凡社)
ゆきのおしろへ
マリーレンちゃん、まどべにすわり、ひとりぼっちでおるすばん。すると、そらからまいおりた、ゆきのこたちがさそいます。 「ゆきの女王のくにへ いこうよ」ぎんのそりにはこばれて、ついたところは、きらきらひかる、こおりのおしろ。

この絵本は、ファンタジーの世界に遊ぶ子どもを、あたたかい眼差しで素朴に描いた、オルファースの処女作です。 ゆきの女王のくにへ出かけていき、また戻ってくるというお話の筋立ては、完成されたファンタジーのかたちを踏まえています。
ゆきの女王といえばアンデルセン童話を思い出しますが、この絵本に登場するのは、母性にあふれたやさしい女王です。
主人公マリーレンちゃんを、ゆきのおしろに誘う<ゆきのこ>たちの愛くるしさ。 おしろに住んでいる女王さまの神々しくもやさしい眼差し。 どれをとっても、オルファースの絵の美しさに、うっとりさせられます。
ゆきのおしろから帰ってきたマリーレンちゃんを出迎える、 美人のおかあさんの横顔などは、どことなく、作者オルファースの写真の横顔と似ているような気がします(^-^)

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