■荒井良二の絵本

〜子どもが描いたような、どこまでも自由な絵〜


●荒井良二 ― あらい りょうじ ―

1956年、山形県生まれ。日本大学芸術学部卒業。
1999年、『なぞなぞのたび』(フレーベル館)でボローニャ児童図書展特別賞受賞。『森の絵本』(講談社)で講談社出版文化賞絵本賞受賞。
2005年、スウェーデンの児童少年文学賞であるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を授賞。
主な絵本作品に『ユックリとジョジョニ』(ほるぷ出版)、『バスにのって』『スースーとネルネル』(ともに偕成社)、『そのつもり』(講談社)などがある。
現代日本を代表する絵本作家であり、絵本のみならず、広告、舞台美術など幅広い分野で活躍している。東京都在住。



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「森の絵本」

「ルフラン ルフラン」

「ルフラン ルフラン2 本のあいだのくにへ」



「森の絵本」

長田 弘 作/荒井良二 絵(講談社)
森の絵本
しずかな森の中。どこかでよぶ声がします。「いっしょに ゆこう」「きみの たいせつなものを さがしにゆこう」と。
声に誘われて、わたしたち読者は、忘れていた大切なものを、ひとつひとつ思い出してゆきます。 水のかがやき、花々のいろ、子どもたちのわらいごえ、クッキーのにおい、本の中にある思い出、 星のかがやきにも似た自分の夢――

荒井氏の絵本は、子どもにも楽しいだろうけれど、大人が読むと、また深い味わいを感じられるものが多いのではないでしょうか。この絵本はそんな一冊。
詩人である長田弘氏の文章は、厳選された簡単な言葉でつづられていながら、その意味するところは深遠。
ページをひらくとあらわれる、どこまでもつづく緑の森の絵は(いつもの荒井氏のタッチとは少し違うかな?おさえた印象で、緑色がとてもきれい)、読者を森の奥へ、自分の心の奥底へと、しずかに導いてくれます。

→長田 弘『深呼吸の必要』の紹介はこちら
→「大人のための絵本―心の奥に響く言葉」はこちら

→Amazon「森の絵本

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「ルフラン ルフラン」

荒井良二 著(プチグラパブリッシング)
ルフラン ルフラン
ルフランはひっこしのとちゅう、道でおもちゃみたいな「おうかん」を見つけます。おとしぬしに届けてあげるため、森への道に入ると、森と地面のすきまがあいて、ルフランはその中に吸い込まれてしまいました…!

いまさら説明する必要もないであろう有名な絵本だけれど、やっぱり『ルフラン ルフラン』は、とても素敵な一冊です。
ほんとうにちいさな女の子が描いたようなルフランの姿といい、あかるい黄色が印象的な色使いといい、ところどころに草花の写真が貼りこまれたコラージュの手法といい、何が言いたいんだか明確にはわかりにくいお話といい…。
「ルフラン」というのはフランス語で、詩・音楽などのリフレイン、繰り返しという意味。この繰り返しが多用されたリズム感のあるテキストが良いのです。
ルフラン ルフラン ひっこし ひっこし
おうちが ゆっくり はしります
ルフラン ルフラン
「おうちがゆっくりはしります」というのは、ルフランのひっこしは、車輪がついたおうちごと、移動するものだから。
ルフランはおうちごと、森と地面のすきまに吸い込まれてしまうんですよね。なんとも不思議なルフランの道行き。読み込めば、奥深い意味が隠れていそうです。

ひとによっては、この子どもが描いたような絵が苦手という場合も、またはっきりしないお話がいまひとつという感想も、あるかもしれませんが…。
でもやっぱり、多くの人が良いという絵本は良いものなのだなあと、改めて感じ入るのでした。

→Amazon「ルフラン ルフラン

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「ルフラン ルフラン2 本のあいだのくにへ」

荒井良二 著(プチグラパブリッシング)
ルフランルフラン2 本のあいだのくにへ
『ルフラン ルフラン』の続編。
ひっこしのとちゅう、「じめんのほんのなか」に吸い込まれたルフラン。そこでは、何にも書かれていない、まっしろい本を、みんなが夢中で読んでいました。ルフランもまっしろい本のページをめくり、自由にお話を始めます…。

本のあいだのくにで、自由にお話を作り出し、冒険する。本好きならこのストーリーに、惹かれずにはいないはず。
「本の中に入る」という設定からは、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』が思い出されます。
絵はやっぱりコラージュの技法が使われていて、ルフランの冒険が、大胆な色使いと迫力ある構図で表現されています。
子どもが描いたような絵、なのだけれど、子どもでも、ちょっと成長すると、こじんまりときれいに整ったマンガっぽい絵を描くようになってしまうこの国で、こんなにもめちゃくちゃな絵を、大人が描くのって、ほんとに難しいと思う。だから荒井氏の絵はすごいな、と思う。
表紙絵にコラージュされたレースのリボンや、見開きの、水色の地に黄色で刷られたルフランの絵がかわいいです。

→ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』の紹介はこちら

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