〜子どもから大人まで魅了するナンセンス絵本〜
●佐々木マキ ― ささき まき ―
1946年10月18日、神戸市に生まれる。京都市立美術大学中退。
漫画家、絵本作家、イラストレーター。 主な絵本作品に『ぶたのたね』『ムッシュ・ムニエルをごしょうかいします』(ともに絵本館)、『まじょのかんづめ』(福音館書店)、『ねむいねむいねずみ』(PHP研究所)などがある。 イラストの仕事も数多く、村上春樹の著書のカバー装画などが有名。 京都在住。 |
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「おばけがぞろぞろ」ささき まき 作(福音館書店) |
「びろ〜〜〜〜ん」
木のうろからあらわれたのは、ぞぞまるちゃん。 転がった緑色のびんの中から出てきたのは、もものりくん。 ごみばこから、公園の水道の蛇口から、銅像の鼻の穴から・・・おかしな名前のおばけたちが次々と飛び出してきて、いっしょにあそぼう!としんごちゃんを誘います。 『おばけがぞろぞろ』は、福音館の幼児絵本シリーズ。 たぶんきっと、子どもとお母さんたちの間では有名な一冊なのでは? 冒頭でいきなりびろ〜んとあらわれる「ぞぞまるちゃん」。「もものりくん」に「おろむかくん」、「ぞんびえくん」に「おびるべちゃん」、変な名前と姿のおばけたちが、まさにぞろぞろ。 この名前の、まったく意味のない響き(おろむか、とかさ〜)・・・う〜ん、これが子どもにウケないわけがない! →Amazon「おばけがぞろぞろ (幼児絵本シリーズ)」 |
「変なお茶会」佐々木マキ 作・画(絵本館) |
オオイワ カメタロウ氏のもとに届いた招待状。さっそく電気自転車で出かけます。
ライプールの理髪師スミラ君はゾウに乗って。ナントの公証人デュブウ夫妻は飛行機で、それからヤギで。 アントワープの靴屋ホッホ兄妹は五人乗りの自転車。デンバーのお針子ミニー嬢はちいさな車輪のついた靴(ローラースケートではないのです)。 世界中から、いろんな人が、いろんな乗り物にのって、目的地に集まってきます。一年に一度の、とっておきのお茶会のために・・・。 「変なお茶会」というタイトルと、表紙のおつきさまの絵に惹かれ、購入したこぶりの一冊。装幀が凝っているとの評判に、手にしてさっそくカバーをはずしてみたら…。 うぐいす色と黄土色の中間のような、くすんだ色合いの布張りの表紙の真ん中に、縦書き・明朝体・黒い文字で、「変なお茶会」と箔押しされてあるのです! レトロ感あふれる素晴らしい装幀に脱帽。この表紙だけを見れば、明治の文豪の幻の傑作の初版本かとさえ思えます(いやほんとに!)。 もちろん装幀だけでなく本の中身もまた良しで、子どもには変な乗り物や聞きなれない地名や名前が面白いだろうし、大人にはマッチ箱を想起させる絵が味わい深く、ナンセンスな中にもほのぼの感を漂わせるおはなしに癒されること間違いなし。 さすが1979年の初版からロングセラーを続けるだけのことはあるなあ、と唸らされました。 最後のページは、まさに癒し本。 微笑むおつきさまの横顔に、添えられたひとことが、安らかな眠りへと読者を誘います。 (……ココアを飲んで、おやすみなさい) →Amazon「変なお茶会」 |
「やっぱりおおかみ」佐々木マキ 作・絵(福音館書店) |
おおかみは、もういない。みんなそう思っていますが、一匹だけ生き残っていた、こどものおおかみがいました。
ひとりぼっちのおおかみは、毎日、仲間を探してさまよいます。「どこかに だれか いないかな」「おれに にたこは いないかな」 うさぎたちの住む街、ぶたの集まる市場、しかたちの公園・・・どこへ行っても、いくら探しても、おおかみの仲間はいませんでした・・・。 この絵本、なんとなくタイトルや、佐々木マキ氏独特のコミカルなタッチから、面白い絵本なのかなと想像していたら大間違い。 ひとりぼっちのおおかみの、底知れない淋しさ。おおかみの目を通して描かれた街の風景は、うさぎや、ぶたや、しかたちがどんなにたくさん暮らしていても、けっして自分を受け入れてはくれないという、寒々しいものに感じられます。 やっぱりひとりぼっちのおおかみ・・・けれどもエンディングは、清々しく、素晴らしいものです。 ここまで主人公の孤独を描ききった絵本というのも、珍しいのでは。 この絵本、とても有名な作品なので、ネットで検索すると実はあちこちで、おはなしの内容を知ることができてしまいます。 でも、まっさらな気持ちで読んでみるほうが良いかもしれません。 とりわけ、「絵本なんて子どものもの」と思っている、大人たちは。 →Amazon「やっぱりおおかみ(こどものとも絵本)」 |
佐々木マキの絵本に興味をもったなら・・・