■本の蒐集記録(2008年5-6月)


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2008/06/29(Sun)
●W・デ・ラ・メア 著/柿崎 亮 訳
『デ・ラ・メア幻想短篇集』(国書刊行会)
●川名 澄 編訳
『わたしは誰でもない エミリ・ディキンソン詩集』(風媒社)

19世紀末〜20世紀前半の英国を代表する詩人、幻想小説家ウォルター・デ・ラ・メア。
わたしはデ・ラ・メアの、夢幻的な魅力にあふれる子ども向けの作品や詩集が大好きです。
『デ・ラ・メア幻想短篇集』は、そんなデ・ラ・メアの幻想短篇、本邦初訳10篇を含む計11篇がおさめられた、ファン垂涎の一冊。
デ・ラ・メアの大人向けの作品群、主に怪奇譚がとりあげられており、「子どものための物語集」(Collected Stories for Children, 1947)などにおさめられた幻想物語とは、また味わいが違っています。
怪奇譚といっても、それぞれ話の結びがまことにデ・ラ・メアらしい人情味にあふれていて、なんともいえず心あたたまる作風。
またすでに多数の邦訳がなされている、巻頭に収録の「謎」は、やはりデ・ラ・メアの珠玉の一篇だと思いました。

『わたしは誰でもない』は、19世紀のアメリカに生きた女性詩人エミリ・ディキンソンの新訳詩集。
ディキンソンの訳詩集は好きで集めているので、この新しい一冊もさっそく購入しました。
収録作品は全62篇。2行から8行ほどまでの短詩のみが選ばれており、訳には原詩の韻やリズムを伝えるための工夫が感じられます。
見開きの右ページに原詩、左ページに訳詩がレイアウトされ、表紙カバーなどの装幀は、ディキンソンの好んだ白が基調となっています。
読みやすい短詩ばかりの詩集なので、ディキンソンの詩に初めて触れる読者にも、おすすめかもしれません。
 ことば

口にだしていうと
ことばが死ぬと
ひとはいう
まさにその日から
ことばは生きると
わたしがいう

『わたしは誰でもない』25ページより

→「ウォルター・デ・ラ・メアの本」はこちら
→「エミリー・ディキンソンの本」はこちら

→Amazon「デ・ラ・メア幻想短篇集
わたしは誰でもない―エミリ・ディキンソン詩集

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2008/06/22(Sun)
●Norica Panayota 著
『ルーマニアの森の修道院』(産業編集センター)
●石井好子 著
『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』(暮しの手帖社)

旅と雑貨の本の蒐集、まだまだ続きます。
『ルーマニアの森の修道院』は、著者の経歴などはまるで存じ上げなかったし、ルーマニアについて特に興味をもっていたわけでもなかったのですが、「森」と「修道院」というキーワードに惹かれて購入。
修道院をめぐる旅って、どんなのだろう? ていうか、修道院って旅行者が泊まったりできるものなんだ?
『ルーマニアの森の修道院』では、さほど長くないテキスト、著者の手になる旅行時の写真とイラストで、ルーマニアの生活や文化、そして修道院滞在の様子が、たのしく紹介されています。
実はルーマニアにはたくさんの修道院があり、世界遺産に登録されている有名なところもあります。旅行者が滞在することもできるし、また若者が修道生活に入るのも、ごく自然なことなのだそうです。
日本人にとってはなじみのない、だからこそとても魅力的な世界。著者もヴァラティク修道院を訪れた際の印象を、「ハリー・ポッター!?魔法にかかったかのようなファンタジーの世界」と書いています。
うーん、わかる。回廊や壁画の美しさ、日本人にとってはまさにファンタジー。
でもルーマニアの人々にとっては、これが日常、日々くりかえされている営みなんですよね。
ちょっと雑貨というテーマから外れているのだけど、かわいい女子向けのデザインで、マニアックな世界を親しみやすく紹介してくれている、興味深い一冊でありました。

『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』は、下記で紹介した『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』の姉妹編。
「巴里」から20年の時を経て書かれた料理エッセイ。レシピとともに紹介されるおいしそうなお料理の数々、その描写のきどらなさ巧みさは相変わらずですが、年齢を重ね夫と父を亡くした著者の筆には、「巴里」のときにはなかった人生の陰影が刻まれて、しんみりさせられる部分もあります。
装幀・装画は花森安治、渡辺ゆきえ。「巴里」「東京」ともに代表的な料理エッセイ、ぜひあわせて読みたい2冊です。

→Amazon「ルーマニアの森の修道院 (私のとっておき)
東京の空の下オムレツのにおいは流れる

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2008/06/15(Sun)
●ナカムラユキ 著『パリ雑貨日記 新装版』(mille books)
●マーガレット・ワイズ・ブラウン 作/レナード・ワイズガード 絵/よしがみきょうた 訳『きこえる きこえる なつのおと』(小峰書店)

かわいいくておしゃれな旅と雑貨の本。
といえば、やっぱりパリ紹介の本は外せないだろうと思い、いろいろ探してみたのだけど、パリ関連の本というのはとても多い。ほんとうに人気のある街なんだなあと思う。
『パリ雑貨日記』は、見るからに華やかなパリの本というわけではありません。どちらかというと地味な一冊かも。
著者のナカムラユキさんは、イラストレーターであり、京都北白川でアトリエショップ「trico+」(トリコプリュス)を運営していらっしゃいます。
古いもの、文房具、そしてもちろんパリが大好きという著者の好みを反映してか、『パリ雑貨日記』の表紙は、こぶりのノートのような、シンプルだけどかわいいデザイン。本の背が赤い製本テープで綴じられているところ、手作り感があって良いです。
内容は、「trico+」のサイト上で連載していた、2004年のパリでの雑貨買い付け日記を本にしたもの。
2005年初版、2007年に装幀を変えて新装版を発行、その際に書き下ろしページが加えられています。
中身のデザインは、著者自身が撮影したポラロイドやデジカメ写真と、横書きのテキスト、そしてイラストが、センスよくレイアウトされていて、とてもかわいいです。
大判の写真はないのだけれど、ちまちまとかわいい写真や、サイト上で連載されていたためのざっくばらんなテキスト、のびのびした描線のイラストに、余白を多くとったレイアウト、これら全体のバランスが何ともわたし好み。
これはナカムラユキさんの他の著書を集めなければ、と思ってしまいました。

『きこえる きこえる なつのおと』は、夏の絵本が欲しいなと思ったのと、表紙のくっきりと鮮やかな美しさに惹かれて購入。
マーガレット・ワイズ・ブラウンとレナード・ワイズガードのコンビでは、他に何冊も、この「おとのほん」シリーズが刊行されています。
『きこえる きこえる なつのおと』では、こいぬのマフィンが聞いた、夏の牧場のいろんな「おと」が描かれています。
「おと」を絵とテキストで表現するなんて難しそうだけれど、デザイン性にすぐれた絵と、想像力ゆたかなテキストで「なつのおと」が鮮やかに切りとられていて、さすがはワイズ・ブラウンとワイズガードの黄金コンビ、と思わせます。
使われている色数は多くはないのに、さわやかな夏の牧場の様子がよく伝わる画面。見返しの絵も素敵なんです。

→Amazon「パリ雑貨日記
きこえる きこえる なつのおと (世界の絵本コレクション)

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2008/06/08(Sun)
●おさだゆかり 著『北欧雑貨をめぐる旅』(産業編集センター)
●フランソワーズ 文・絵/きじまはじめ 訳
『まりーちゃんとおおあめ』(福音館書店)

かわいいくておしゃれな旅と雑貨の本を探す日々。
雑貨といえば北欧。そんなストレートな思いつきで選んだのが、『北欧雑貨をめぐる旅』。
著者のおさだゆかりさんは、アフタヌーンティーのバイヤーを経て、オンラインショップ「SPOONFUL」をたちあげたという方。
「SPOONFUL」はサイトのイメージカラーが明るいイエローなのだけど、この『北欧雑貨をめぐる旅』も、イエローを効かせたすっきりとした装幀。
内容は、たっぷりの写真に短いテキストが添えられたスタイルで、ストックホルムの空の青さや、北欧のセカンドハンドのグッドデザイン、ハンドクラフト雑貨のあたたかみなどが紹介されています。
なかでも、スウェーデンの森の中のサマースクールで、2週間ハンドクラフトを学んだ際の滞在日記には、興味をひかれました。
北欧の短い夏、緑あふれる森。森の木を使ってスプーンを彫ったり、かごを編んだり。こんなところで、こんなふうに、夏を過ごしてみたいものです。
ちなみに産業編集センターの旅や雑貨の本は、オールカラーでも、お値段がけっこう手頃なのが嬉しい。

『まりーちゃんとおおあめ』は、フランソワーズのまりーちゃんシリーズの絵本のなかの一冊。
ずっと品切れになっていたものが、ついに復刊! しかも限定でなく継続的に! というのでさっそく購入。
もう手に入らないのかな、と思っていたのだけど、こういうふうに古くても良い本が復刊されることは、とても嬉しいです。
この『まりーちゃんとおおあめ』は、洪水で動物たちみんなと避難するというおはなしなので、いつものまりーちゃんシリーズのカラフルさはなく、色遣いはおさえめなのですが、ぱたぽんもまでろんもやっぱりかわいいし、最後はもちろんハッピーエンド。
洪水の話といえば、『ムーミン谷の夏まつり』を思い出しますが、子どもにとっては台風や大雨や浸水なんて、ちょっとわくわくするようなイベントなんですよねぇ。
ムーミントロールたちも、なんだかんだで楽しそうだったし・・・。
いまは災害のニュースも多いので、大変なことが起こっても、この絵本のように、最後にはおひさまがきらきら輝きますように、と願わずにはいられません。
とにかくこの復刊は、まりーちゃんファンには朗報なのでした(^^)

→『ムーミン谷の夏まつり』の紹介はこちら

→Amazon「北欧雑貨をめぐる旅 (私のとっておき)
まりーちゃんとおおあめ (世界傑作絵本シリーズ・アメリカの絵本)

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2008/06/01(Sun)
●les deux 著
『旅のコラージュ バルト3国の雑貨と暮らし』(ピエ・ブックス)
●石井好子 著
『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(暮しの手帖社)

ピエ・ブックスの旅や雑貨やアート関連の本はどれもかわいくて、サイトで中身の画像を見て、これはいいな〜と思って購入したのが、『旅のコラージュ バルト3国の雑貨と暮らし』。
les deuxというのは、名古屋の雑貨店「le petit marche(プチマルシェ)」の店主である滝村美保子さんと、イラストレーター松尾ミユキさんによる、「旅とモノ」をテーマにしたユニットとのこと。 『旅のコラージュ バルト3国の雑貨と暮らし』をはじめとした書籍や、リトルプレスなど発行されています。
この本では、北欧に面するバルト海沿岸の3国、エストニア・ラトヴィア・リトアニアで作られている、素朴で愛らしい雑貨がたくさん紹介されています。 短いテキストと、写真、コラージュが、かわいくレイアウトされていて、バルト3国のことをよく知らなくても、眺めるだけで楽しい一冊です。
バルト3国、おそらくはさまざまな厳しい歴史も乗り越えてきた国々で作られる、なんとも素朴な雑貨たち。おばあちゃんたちが必ず頭に巻いている鮮やかなスカーフ、色とりどりの民族衣装・・・。どの写真もかわいくて心踊ります。
コラージュ好きなわたしは、各国紹介の扉ページや旅日記、ページのそこここに散りばめられたコラージュにも、じっと見入ってしまいます。

『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』は、言わずと知れた暮しの手帖社のロングセラー。
初刷は昭和38年。シャンソン歌手である石井好子さんの、食べ物・料理にまつわるエッセイ。
まだ駆け出しで巴里に暮らしていたころの思い出や、フランス周辺のヨーロッパの国々のお料理も、レシピとともにたくさん紹介されています。
もちろん古いエッセイだから、現代日本ではもう、ここに紹介されているほとんどの料理は、珍しいものではなくなっています。
でもそれでも、この本はおもしろい。
読んでいると、必ずおなかがすいてくる。簡単にできそうに書かれているレシピに、思わず作ってみたくなる。
当時はただ憧れでしかなかったであろうヨーロッパ、カタカナの料理たち。それを紹介する石井好子さんの、けっして気取らない文章が、ロングセラーの理由でしょうか。
装本は、『暮しの手帖』を創刊した花森安治。表紙カバーや、テキストにそっと添えられたクラシックなイラストも見逃せません。

→Amazon「旅のコラージュ バルト3国の雑貨と暮らし
巴里の空の下オムレツのにおいは流れる

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2008/05/25(Sun)
●堀井和子 著『2日目のプティ・デジュネ』(KKベストセラーズ)
●堀井和子 著『ヴァカンスのあとで』(幻冬舎文庫)

スタイリストさんや雑貨屋さんが書いた、かわいいくておしゃれな旅と雑貨の本…。
ということでまず思いついたのが、堀井和子さんの本でした。
料理スタイリスト、粉料理研究家、エッセイストなどなどの肩書きをお持ちの堀井和子さん。雑誌などでも、ほんとうによくお見かけします。
『2日目のプティ・デジュネ』は、南仏旅行の思い出を中心に綴られた、旅のエッセイ。
写真や著者自身のイラストもまじえ、旅先でのプティ・デジュネ(朝ごはん)や、素敵だったホテルやお庭、活気あふれるマルシェの様子などが、おしゃれに語られています。
いわゆる、旅のおともに持っていって役立つようなガイドブックではなく、旅のイメージを喚起させてくれる、おしゃれな雰囲気にひたらせてくれる、といった本。
レンタカーでゆっくりとマイペースに巡る、南仏プロヴァンスの旅・・・訪れるのは名所旧跡でなく、街の人々の生活の場であるマルシェや蚤の市や雑貨店・・・そんな旅をしたことがないわたしは、もう、ひたすら憧れます。

『ヴァカンスのあとで』は、ゆったりしたヴァカンスの時のなかで心動かされた「ふとしたこと」、ヴァカンスのあとも残るその思い出やエネルギーを、ふりかえりながら綴られたエッセイ。
1992年に徳間書店より刊行された単行本が文庫化されたもの。
『2日目のプティ・デジュネ』はすべて外国の旅のおはなしですが、こちらは日本の旅や雑貨のこと、著者の暮らしまわりのちょっとしたことなども、とりあげられています。
やはり写真や著者自身のイラストがあり、それからエッセイの一篇ずつに、レシピも添えられています。

2冊とも、写真・イラストより文章の量が多く、ガイドブック的な本ではありません。おしゃれな写真が添えられた、気軽に読める、旅と雑貨のエッセイです。

→Amazon「2日目のプティ・デジュネ
ヴァカンスのあとで (幻冬舎文庫)

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2008/05/18(Sun)
●大段まちこ/堀江直子 著
『かわいいイギリスの雑貨と町』(ピエ・ブックス)
●スティーヴン・ミルハウザー 著/柴田元幸 訳
『イン・ザ・ペニー・アーケード』(白水社)

『かわいいイギリスの雑貨と町』は、表紙のシンプルなかわいさと、「イギリス」というキーワードに惹かれて手にとりました。
いろいろな雑誌や書籍で活躍されているおふたり、写真家の大段まちこさんと、スタイリスト堀江直子さんの共著。 おふたりが訪ねた、ロンドンとコッツウォルズ地方のかわいいものたちが、たくさん紹介されています。
一般的には、どんよりしたくもり空と霧、古めかしく重々しい石造りの建造物のイメージが先行するであろうイギリスを、「かわいい」という切り口で旅すると…。
天井からアンティークのティーカップがモビールのようにぶらさがっているディスプレイが素敵な、おとぎ話のようなティールーム。
紅茶好きには憧れの、本場のアフタヌーンティーとクリームティーのおはなし。
「プディングクラブ」という、イギリス伝統のお菓子を楽しむイベントについて。
英国の美しい庭が楽しめるキューガーデン。赤い壁のキューパレスの写真のかわいいこと!
イギリスの美しいカントリーサイド、はちみつ色の町コッツウォルズ。ここはブランケット発祥の地であり、かのウィリアム・モリスが愛した村があるところ…。
まだまだここに書ききれないくらい、かわいくて美しいものたちが、大段まちこさんのふんわりとした色彩の写真と、シンプルなテキストと、すっきり洗練されたレイアウトで楽しめます。
こういう、どちらかというと女性向けの、かわいい旅と雑貨の本は、いま多く出版されていますよね。 ちょっとこの本で興味がそちらに向いたので、いろいろ買ってみようかと思います。

『イン・ザ・ペニー・アーケード』は、ミルハウザーの本の2冊目。
1冊目もまだ読み進んでいないのに、一体いつになったら読めるだろうか…。
でも、ダンセイニの諸作品やアンデルセンの「ナイチンゲール」を思い出させる「東方の国」が気になって、つい買ってしまいました。

→「ロード・ダンセイニの本」はこちら
→「アンデルセン童話の世界」はこちら
→ウィリアム・モリスの本の紹介はこちら

→Amazon「かわいいイギリスの雑貨と町
イン・ザ・ペニー・アーケード (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

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2008/05/10(Sat)
●ささめや ゆき 著『ヘッセの夜カミュの朝』(集英社)

大好きな、ささめや ゆき氏の絵。
雑誌「すばる」の表紙として描かれた絵は、どれも素敵で、こういう作品を集めた画集があったら、必ず買うのになあと思っていました。
そうしたら、やっぱり出た!
『ヘッセの夜カミュの朝』は、1998年1月号から2005年12月号の「すばる」の表紙を飾った、96点のささめや氏の絵の中から、60点が収録されています。
「すばる」の表紙といえば、文学、映画、演劇をテーマに描かれた絵の数々。
スタンダール「赤と黒」、モーム「月と六ペンス」、サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」、コクトー「恐るべき子供たち」などなど…。
実はどれも読んだことなかったりして。でも絵を見ているだけでも、面白い。
「ルバイヤート」は、数少ない既読作品なので興味をひかれました。オマル・ハイヤームによるこの詩集には、エドマンド・デュラックも挿絵を描いていますよね。
「サロメ」も、オーブリー・ビアズリーの挿絵があまりに有名で、絵に添えられた作者のコメントでも、サロメの図はビアズリーの絵で決まりなのに、無謀にも挑戦してしまった、とあります。
でもささめや氏のサロメも印象的。赤が際立つ一葉です。
他にも「デミアン」「異邦人」「ゴッホとゴーギャン」、どれも素朴な筆遣いのようでいて、なんだかおしゃれな印象の、ささめや氏の絵がとても魅力的。
『ヘッセの夜カミュの朝』というタイトルも良いし、装幀も品がよい、美しい画集です。

→「ささめや ゆきの絵本」はこちら
→エドマンド・デュラックの紹介はこちら
→オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』の紹介はこちら

→Amazon「ヘッセの夜 カミュの朝

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2008/05/03(Sat)
●ミロスラフ・サセック 著/松浦弥太郎 訳
『ジス・イズ・パリ』(ブルース・インターアクションズ)
●スティーヴン・ミルハウザー 著/柴田元幸 訳
『バーナム博物館』(白水社)

旅する絵本作家サセックが、世界中の都市を訪れ、その土地の魅力を紹介している旅行絵本<ジス・イズ・シリーズ>。
サセックの絵がとにかくおしゃれで、気になる都市の絵本を少しずつ集めていこうと、今回チョイスしたのは芸術の都パリ。
パリは、やっぱりいろんな意味で憧れの街。華やかで、かわいくて、おしゃれで、美しい、そんなイメージ。
このパリ紹介の表紙は、赤。トリコロールカラーのうちの一色。表紙にコラージュされたメトロの切符に、じっと見入る。
見返しはオレンジで、渋い霧のロンドンとは違って(でもロンドンにはつよく惹かれる)、やっぱり華やかな配色。
本の装幀は、見返しも凝っているものが嬉しいけれど、この<ジス・イズ・シリーズ>は、最初の見返しと最後の見返しで、微妙に絵が違っているのも見所。 このパリ編は、パリに向かうスケッチブックをもった旅人(おそらくサセック自身)が、パリを発つときには、ベレー帽にあごひげをはやした、モンマルトルの芸術家っぽい風貌になっているところがニクい演出。
中身ももちろん期待どおりのパリの風景がひろがっていて、バゲットを持って歩く老婦人や、ノートルダム寺院、サン・ジェルマン・デ・プレ、ビストロにカフェ、ルーブル美術館、まだまだ名所旧跡がいっぱい。
またセーヌ川沿いの古本屋さんや、シャ・キ・ぺシュ通り、かっこいいギャルソン、のみの市なんかが描かれているところ、 メトロの切符やホーム、お花屋さんなどが、「かわいい」「キュート」といった切り口でとりあげられているところなど、やはり大人も見逃せない、センスあふれる素敵な絵本だなあと思います。

『バーナム博物館』は、耽美的で幻想的な作風といわれるスティーヴン・ミルハウザーの短篇集。
ずっと気になっていたけれど手にとっていなかったミルハウザー、友人が面白かったというので、やはり読んでみようと購入。
『バーナム博物館』というタイトルに惹かれたのですが、訳者あとがきによると、ミルハウザーは博物館というモチーフを好んで描いているのだとか。
この短篇集は、どちらかというと実験的な作品が多く収録されているようだけど、冒頭の「シンバッド第八の航海」など、原典である『アラビアン・ナイト』を読んだことがないわたしにも、充分面白く読めました。
ちなみに『バーナム博物館』収録「幻影師、アイゼンハイム」は映画化されていて、現在上映中とのことです。

→「ミロスラフ・サセックの絵本」はこちら

→Amazon「ジス・イズ・パリ
バーナム博物館 (白水uブックス―海外小説の誘惑)

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