〜ポップでおしゃれなイラスト、旅する絵本作家〜
●ミロスラフ・サセック ― Miroslav Sasek ―
1916年、チェコスロヴァキアのプラハに生まれる。
絵本作家、イラストレーター。プラハで建築を、パリで芸術を学び、その後ドイツのミュンヘンに移住。 1959年に発行された子どものための旅行絵本『This is Paris』は、そのデザイン性の高さで、子どものみならず大人までも魅了。 世界の都市を旅しながら描かれた「This is …」シリーズは、18冊にのぼる。 『This is London』で、ニューヨーク・タイムズ選定最優秀絵本賞(1959年)を、 『This is New York』で、ニューヨーク・タイムズ誌選定最優秀絵本賞(1960年)、アメリカ青少年クラブ児童文学最優秀賞(1961年)を受賞。 1980年、ドイツのミュンヘンにて永眠。享年63歳。 |
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「ジス・イズ・アイルランド」ミロスラフ・サセック著/松浦弥太郎 訳(ブルース・インターアクションズ) |
『ジス・イズ・アイルランド』は、管理人にとって一冊目の<ジス・イズ・シリーズ>。
<ジス・イズ・シリーズ>との出会いのきっかけは、管理人お気に入りの雑誌『アルネ』でした。
これはイラストレーターの大橋歩さんがひとりで企画、編集、写真取材をして作っておられる、ほのぼのとした良い雑誌で、 この雑誌のBOOKページにレビューを寄せていらっしゃるのが、古書店「COW BOOKS」の代表であり、また雑誌『暮しの手帖』の編集長でもある松浦弥太郎氏。 『アルネ』の17号で、松浦弥太郎氏が紹介していたのが、ミロスラフ・サセックの絵本<ジス・イズ・シリーズ>の中の一冊、『ジス・イズ・ロンドン』。 翻訳を氏が手がけて復刻されたこのシリーズ、著者のサセックが世界中の都市を旅して、その土地の魅力を紹介している旅行絵本のシリーズで、 ずっと表紙絵には惹かれていたのだけれど、『アルネ』のレビューをきっかけに、手にとってみようという気になったのでした。 シリーズもので世界中の都市が紹介されているし、どの本から手にとろうかなと考えたとき、やっぱりまずはアイルランドだろうということで(ケルト文化に興味があるので)、『ジス・イズ・アイルランド』を購入。 これがとっても素敵な一冊だったんです。 <ジス・イズ・シリーズ>は、一冊ずつに基調となる色があり、見返しもそれぞれに工夫があるのですが、アイルランドにふさわしい色といえば、やっぱり緑ですよね。 『ジス・イズ・アイルランド』の表紙は、深い緑。見返しには緑の中に、ハープやパブや、三つ葉のクローバーやケルト十字といった、アイルランドのシンボルが描かれていて。 最初にアイルランドという国の苛酷な歴史が簡単に紹介され、それからはサセックの筆で描かれる、緑あふれるアイルランドの風景が、たっぷりと楽しめます。 緑の中に白い石垣が積み上げられた、どこか荒涼としてものがなしいアイルランドの農村の風景は、J.M.シングの紀行文『アラン島』の描写を思い起こさせます。 やっぱりわたしはアイルランドになぜだか惹かれる。 ですが、アイルランドにとくに興味がないという人でも、この絵本には名所旧跡、パブがたくさんある街並み、ギネスビール、街行く人々の様子などなど、 アイルランドの魅力が美しい絵でわかりやすく紹介されていて、きっと楽しめると思います。 サセックの絵がなんとも味わい深いんですよ〜。 まさに、絵本で旅気分、なのです。 →Amazon「ジス・イズ・アイルランド」 |
「ジス・イズ・パリ」ミロスラフ・サセック著/松浦弥太郎 訳(ブルース・インターアクションズ) |
旅する絵本作家サセックが、世界中の都市を訪れ、その土地の魅力を紹介している旅行絵本<ジス・イズ・シリーズ>。
パリは、いろんな意味で憧れの街。華やかで、かわいくて、おしゃれで、美しい、そんなイメージ。 このパリ紹介の表紙は、赤。トリコロールカラーのうちの一色。表紙にコラージュされたメトロの切符に、じっと見入る。 見返しはオレンジで、渋い霧のロンドンとは違って(でもロンドンにはつよく惹かれる)、やっぱり華やかな配色。 本の装幀は、見返しも凝っているものが嬉しいけれど、この<ジス・イズ・シリーズ>は、最初の見返しと最後の見返しで、微妙に絵が違っているのも見所。 このパリ編は、パリに向かうスケッチブックをもった旅人(おそらくサセック自身)が、パリを発つときには、ベレー帽にあごひげをはやした、モンマルトルの芸術家っぽい風貌になっているところがニクい演出。 中身ももちろん期待どおりのパリの風景がひろがっていて、バゲットを持って歩く老婦人や、ノートルダム寺院、サン・ジェルマン・デ・プレ、ビストロにカフェ、ルーブル美術館、まだまだ名所旧跡がいっぱい。 またセーヌ川沿いの古本屋さんや、シャ・キ・ぺシュ通り、かっこいいギャルソン、のみの市なんかが描かれているところ、 メトロの切符やホーム、お花屋さんなどが、「かわいい」「キュート」といった切り口でとりあげられているところなど、やはり大人も見逃せない、センスあふれる素敵な絵本だなあと思います。 →Amazon「ジス・イズ・パリ」 |
「ジス・イズ・ヴェニス」ミロスラフ・サセック著/松浦弥太郎 訳(ブルース・インターアクションズ) |
旅する絵本作家サセックが、世界中の都市を訪れ、その土地の魅力を紹介している旅行絵本<ジス・イズ・シリーズ>。
世界遺産でもあるヴェニスの街には、やっぱりつよい憧れがあります。 だって、あんな不思議な水上都市、ほかにあるでしょうか? 海の上に浮かぶ街、運河、そこにかかるたくさんの橋、迷路のように入り組んだ路地、美しい広場、歴史ある建造物…。まるで幻想小説の中に出てくる架空の都市のようではありませんか! サセックの描くヴェニス紹介はやっぱりとても素敵で、この一冊の基調となる色は、さわやかな水色。 ロンドン編やアイルランド編のどんよりとした曇り空から一転、ページを繰るたびに、アドレア海のあかるい陽射しを感じさせる青空が広がっています。 ヴェニスは有名な都市ですから、紹介されている内容はすっかりおなじみのものかもしれませんが、サセックの筆になるヴェニスの風景というのがまた、味わい深くて良いのです。 夜のグランド・カナルの絵などは、とても幻想的で美しい一葉となっています。 →Amazon「ジス・イズ・ヴェニス」 |
「ジス・イズ・ロンドン」ミロスラフ・サセック著/松浦弥太郎 訳(ブルース・インターアクションズ) |
旅する絵本作家サセックが、世界中の都市を訪れ、その土地の魅力を紹介している旅行絵本<ジス・イズ・シリーズ>。
サセックの絵がとにかくおしゃれで、気になる都市の絵本を少しずつ集めたいなと思い、アイルランドに続いてチョイスしたのがロンドン。 一冊ずつに基調となる色があるこのシリーズ、『ジス・イズ・ロンドン』の表紙の色は灰色。ロンドン特有の濃い霧の色、どんより曇った空の色です。 見返しも霧、標題紙をめくってみても、霧でなんにも見えません。 でも次にページを繰ると、暗い霧がさあっと晴れて、ロンドンの街が姿を現します! サセックが案内してくれるロンドンは、なんとも魅力的な都市。 スーツ姿の紳士たちや、たくさんの歴史的建造物、赤い2階建てバスや、くまの毛皮で作った帽子をかぶったバッキンガム宮殿の衛兵さんたち。 また水色のギンガムチェックのワンピースを着た学生さんたちや、紅茶のために1日4回のおやすみをとることや、みんなが芝生のある公園でくつろぐ様子までもきちんと描かれているところが、サセックの旅行案内の素晴らしさではないでしょうか。 まだ見ぬ憧れの街ロンドン。 うらやましいのはやっぱり、紅茶のための休息時間、かなあ(日本人も、こんなふうに優雅に休み時間を過ごすべきですよね〜)。 →Amazon「ジス・イズ・ロンドン」 |
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