〜グレイッシュな色彩、素朴なタッチ〜
●ささめや ゆき
1943年、東京に生まれる。
1985年、ベルギー・ドメルフォフ国際版画コンクールにて銀賞を受賞。1995年『ガドルフの百合』(宮澤賢治 文/偕成社) で第44回小学館絵画賞を受賞。 1999年、挿絵の仕事に対して講談社出版文化賞さし絵賞を受賞。 絵本・挿絵の他、エッセイも発表している。 |
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「ヴァン・ゴッホ・カフェ」シンシア・ライラント 作/中村妙子 訳/ささめや ゆき 絵(偕成社) |
カンザス州フラワーズ。のんびりとした町のメイン・ストリートに、そのカフェはありました。
むかし劇場だった建物のかたすみにあったので、カフェにはいつも魔法がつきまとっていました。
レジの上にかかった「愛犬、大歓迎」という札。パイののった回転皿の上に、とまってわらっている磁器のメンドリ。女性用トイレの壁に描かれたむらさき色のアジサイ。 「おかえり、ここはきみの家」と歌う、ちいさな茶色のプレイヤー…。 あたたかなカフェの壁にしみこんでいる魔法がひとたび目をさますと、ふしぎで素敵なことが、次々と起こるのです。 やがてヴァン・ゴッホ・カフェという名の、ふしぎなカフェがあるといううわさが広がります。 まるで夢のような、ミステリーのような、すばらしい油絵のようなカフェがあるといううわさです。 この本は、ささめや ゆき氏の挿絵に惹かれて、手にとりました。表紙カバーのカラー絵が、とっても素敵なんです。 タイトルにも惹かれます。「ヴァン・ゴッホ・カフェ」だなんて、どんなに素敵なカフェの物語なんだろうと想像がふくらみます。 読んでみると、シンシア・ライラントさんによる物語は面白くて、あたたかくて、やさしくて、ほんとうにお気に入りの一冊になりました。 ジャンルとしては、児童文学ということになるのでしょうか? 本文中のイラストはモノクロで、ヴァン・ゴッホ・カフェの、かざりけのないあたたかな雰囲気がよく伝わってきます。挿絵にも、ふしぎな魔法が宿っているのかも。 →Amazon「ヴァン・ゴッホ・カフェ」 |
「マルスさんとマダムマルス」絵と文 ささめや ゆき (原生林) |
これは、大人のための絵本です。
舞台は、ノルマンディ半島の先端に位置する海辺の小さな村、エッケールドルヴィル。 作者自身であるところの画家サリューがすごした、地図にものらないさびしい村での春夏秋冬が、 美しい油絵とシンプルな文章で、淡々と描かれています。 町でただ一軒のカフェの二階で暮らすサリューが出会った、やさしい人々。 涙もろい大家のマルスさん、料理好きのマダムマルス、気のよわい愛犬スプリンター。 彼らは、思い出の中でいつまでも、変わらぬ日々の営みを、くりかえしているのです。 この世の中に、変わらないものなどありません。ただ心の中にだけ、永遠に変わらないやさしい日々があり、 その思い出は灯台のように、行く手を照らしつづけるのです。 管理人の絵本蒐集のきっかけになった、たいせつな一冊。 →Amazon「マルスさんとマダムマルス」 |