〜子どもにも、大人にも〜
このページでは、子どもの本と思われているけれども、じつは奥が深いムーミンの世界をご紹介します。
トーベ・ヤンソンの原作童話の他、トーベと弟ラルスによる漫画、トーベが描いたムーミン絵本をとりあげます。 大人の心をもしみじみと打つ、ムーミン谷への旅を、ぜひあなたも。 |
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トーベ・ヤンソンTove Jansson (1914-2001)画家、風刺漫画家、小説家、童話作家。
1914年、フィンランドのヘルシンキに生まれる。スウェーデン系フィンランド人。父は彫刻家、母は挿絵画家。 15歳以降、ストックホルム、パリなどで絵を学び、はやくから画家として活躍。雑誌の挿絵やフレスコ画などを手がける。 1948年に出版した童話『たのしいムーミン一家』が大評判となり、その後、一連の「ムーミンシリーズ」は世界中で多くの読者を得る。 1954年からはロンドンの「イヴニング・ニューズ」紙に、漫画『ムーミントロール』の連載を開始。 『彫刻家の娘』『少女ソフィアの夏』(ともに講談社)、『誠実な詐欺師』(筑摩書房)など、おとな向けの著書も多数執筆。 1958年、『ムーミン谷の冬』でエルサ・ベスコフ賞を、1966年には、国際アンデルセン大賞を受賞。 2001年6月27日、没。享年86歳。 |
▼ムーミントロール ムーミン家のひとり息子。 こころやさしい性格。 |
▼ムーミンママ ムーミントロールのおかあさん。 家族思いで世話好き。 |
▼ムーミンパパ ムーミントロールのおとうさん。 冒険好きで、小説も書きます。 |
▼スノークのおじょうさん ムーミントロールの友だち。 女の子らしく、前髪が自慢。 |
▼スナフキン ムーミントロールの友だち。 孤独と自由を好みます。 |
▼ちびのミイ ムーミン一家の養女。 思ったことをはっきり言う性格。 |
▼スニフ ムーミントロールの友だち。 臆病でちゃっかりした性格。 |
▼スノーク スノークのおじょうさんの兄。 物知りで几帳面な性格。 |
▼ミムラねえさん ちびのミイのお姉さん。 マイペースな恋多き乙女。 |
▼おしゃまさん 水浴び小屋に住んでいます。 物事に動じず飄々とした性格。 |
▼フィリフヨンカ 数多くのフィリフヨンカが登場。 とがった鼻に細い体が特徴。 |
▼ヘムレンさん 数多くのヘムレンさんが登場。 好きなことに熱中する性格。 |
▼ニョロニョロ 物言わぬ不思議な生き物。 電気を食べて生きています。 |
▼モラン 孤独な女の魔物。まわりの ものを凍らせてしまいます。 |
▼めそめそ 狼に憧れる小さな犬。 めそめそ、おどおどしています。 |
▼トフスランとビフスラン へんな言葉をしゃべる、 小さな仲睦まじい夫婦。 |
▼フレドリクソン ムーミンパパの友だち。海の オーケストラ号を作りました。 |
▼ヨクサル ムーミンパパの友だち。 スナフキンのおとうさん。 |
▼ロッドユール ムーミンパパの友だち。 スニフのおとうさん。 |
▼ソースユール ロッドユールの奥さん。 スニフのおかあさん。 |
▼ミムラ夫人 ちびのミイ、ミムラ姉さん、 スナフキンのおかあさん。 |
▼ホムサ 数多くのホムサが登場。 内気なホムサ・トフトなど。 |
▼ミーサ 原作童話とコミックスに登場。 コンプレックスが強く、悲観的。 |
▼スティンキー コミックスに登場。 色々と悪だくみをします。 |
「たのしいムーミン一家」トーベ・ヤンソン 著/山室 静 訳(講談社) |
長い冬眠から目覚めたある春の日、ムーミン谷の仲間たちが見つけた、まっ黒いシルクハット。
そのシルクハットは実は「まもののぼうし」で、やがて次々とふしぎな騒動が巻き起こります。
はじめてムーミン童話を読むという方におすすめ、タイトル通りのたのしい一冊。 ムーミントロールたちの、明日を思い煩うことのない無邪気さや、次から次へと好奇心のままに行動するところなど、 子どもが読むと共感できて面白く、大人が読むと羨ましく感じるのではないでしょうか。 そして子どもも大人もきっと、ムーミン屋敷へ行ってみたいと思うはず。 「いつでも満員」で、「だれでもすきなことをやって、あしたのことなんか、ちっとも気にかけ」ないという、すばらしいムーミン屋敷へ。 →Amazon「新装版 たのしいムーミン一家 (講談社文庫)」(文庫) |
「ムーミン谷の彗星」トーベ・ヤンソン 著/下村隆一 訳(講談社) |
彗星が地球にぶつかって、世界が滅びてしまうのではないかと、ムーミン谷は大騒ぎ。
ムーミントロールとスニフは彗星について調べるため、遠くの天文台に出発します。
旅の途中でスナフキンや、スノークのおじょうさんたちに出会って…。
「たのしいムーミン一家」より前のおはなしで、深刻でドラマティックな一冊。 子どもたちの好奇心や楽天的な性格が、危機を前にした旅さえも、楽しいものにしています。 物語の後半は、いよいよ彗星がせまり、ムーミン谷は終末的な様相を呈してきますが、 「でも、冒険物語じゃ、かならず助かることになっているんだ」というスナフキンの言葉どおり、 新しい朝を迎える、すてきなハッピーエンドが、読者を待っています。 →Amazon「新装版 ムーミン谷の彗星 (講談社文庫)」(文庫) |
「ムーミン谷の仲間たち」トーベ・ヤンソン 著/山室 静 訳(講談社) |
9編の作品がおさめられた、さまざまな味わいが楽しめる短篇集。ムーミン一家が登場する作品のほか、
スナフキン、ホムサ、フィリフヨンカ、へムレンさん、スニフを主人公にした短篇もあります。
楽しくわかりやすいお話もありますが、とりわけ印象的なのは「この世のおわりにおびえるフィリフヨンカ」という一篇。 主人公のフィリフヨンカは神経質で完璧主義。正体不明の恐怖と不安に怯えています。 やがて、世界の終わりがくるという妄想にとりつかれて…。このフィリフヨンカはおそらく、心の病気なのです。 これは、子どもには難しい内容で、大人向けの作品と言えるかもしれません。 ときに自律神経失調症に悩まされることのあるわたしにとっては、とても興味深いお話でした。 →Amazon「新装版 ムーミン谷の仲間たち (講談社文庫)」(文庫) |
「ムーミン谷の夏まつり」トーベ・ヤンソン 著/下村隆一 訳(講談社) |
6月のムーミン谷をおそった、火山の噴火と大洪水。ムーミン屋敷は水につかり、ムーミン一家と仲間たちは、
流されてきたふしぎな家にとりあえず移り住みます。その家は、実は劇場だったのです!
ムーミン童話のなかでも、とっておきのたのしい一冊。 この作品では、登場人物たちが思わぬハプニングで離れ離れになり、 それぞれの物語が進行していくのですが、最後、劇場での初日興行で、すべてのプロットがひとつに集約されます。 わくわくさせられる、巧みなストーリーテリング。劇場という非日常的空間の魅力も描かれ、クライマックスはとても感動的です。 災害を悲壮感なく乗り越える、ムーミン一家の、愛すべき無知と無邪気さに癒されます。 →Amazon「新装版 ムーミン谷の夏まつり (講談社文庫)」(文庫) |
「ムーミン谷の冬」トーベ・ヤンソン 著/山室 静 訳(講談社) |
雪に閉ざされたムーミン谷。みんなと一緒に冬眠していたムーミントロールは、春が来る前に、
たった一人、目が覚めてしまいます。そうして彼ははじめて、冬の世界の厳しさと美しさを知ることになるのです。
ムーミン童話の奥深さを感じることができる、うつくしい一冊。 わたしもこの本ではじめて、北欧の冬がどういうものかを知りました。太陽が、一日のうち、ほとんど顔を出さないということ。 あまりにも深い雪のこと。そして、海の氷が、春のあたたかさで割れる音。 そのきれいな顔を見つめたら、誰でも凍りついてしまうという氷姫、魔物のモラン、子りすの死とお葬式などが、作品に陰影を与えています。 けれども最後には、クロッカスの芽吹く、春が廻ってくるのです。 →Amazon「新装版 ムーミン谷の冬 (講談社文庫)」(文庫) |
「ムーミンパパの思い出」トーベ・ヤンソン 著/小野寺百合子 訳(講談社) |
愛する奥さんと子どもたちに囲まれて、おだやかな日々を送るムーミンパパ。ある日、かぜをひいて気弱になっていたパパに、
ムーミンママは「思い出の記」を書くことを薦めます。乗り気になったパパは、書けたぶんだけ、
みんなに「思い出の記」を語ってきかせるようになります。若き日のパパの、冒険の数々を…。
ムーミンパパの青春時代の冒険を綴った、たのしい一冊。 この本では、ムーミンパパの知られざる生い立ちや、登場人物たちの意外な関係が明らかになり、 物語世界はさらに奥深さを見せます。「思い出の記」の劇的な展開と、パパの思い出に皆で聴き入る、 現在のムーミン一家の様子との対比が、物語を重層的にしています。 →Amazon「新装版 ムーミンパパの思い出 (講談社文庫)」(文庫) |
「ムーミンパパ海へいく」トーベ・ヤンソン 著/小野寺百合子 訳(講談社) |
おだやかで安らげる家庭を築いたムーミンパパ。毎日が平和すぎて、物足りなくなったパパは、
ある日ムーミンママとムーミントロール、養女であるちびのミイを連れ、海へ出ます。
慣れ親しんだムーミン谷を捨て、さびしい孤島の、燈台もりになるために。
ムーミン童話の文学的な魅力が際立つ、大人にもおすすめの一冊。 この本の主役はパパで、ママとムーミントロールとちびのミイ以外には、ムーミン谷の仲間たちは登場しません。 舞台は海と燈台の島で、全体的に淋しく厳しい雰囲気をたたえています。実際にフィンランド湾の岩の島、クルーヴ・ハルで毎夏を過ごしたトーベ・ヤンソンでなければ、島暮らしをこんなふうには描けないのではないでしょうか。 語の筋はたのしい部分もありますが、登場人物の内面を掘り下げる描写が多いので、子どもより大人にとって面白い物語になっていると思います。 →Amazon「新装版 ムーミンパパ海へいく (講談社文庫)」(文庫) |
「ムーミン谷の十一月」トーベ・ヤンソン 著/鈴木徹郎 訳(講談社) |
へムレンさんにホムサ・トフト、フィリフヨンカ、スクルッタおじさん。彼らはそれぞれ、
ムーミン谷の明るさとあたたかさを求め、ムーミン屋敷を訪れます。ところが、たのしいムーミン一家は、旅に出ていて留守。
がらんとした家の中。冬も間近の、ひっそり静まり返ったムーミン谷。そこへミムラねえさんと、スナフキンがやって来て…。
美しく澄み切った自然と、登場人物の幾重もの心のひだを描き切ったムーミン童話の最終巻は、大人にこそ、ぜひおすすめしたい一冊。 ファンタジーでありながら、魔法も不思議もなんにもない。孤独な登場人物たちは、様々な悩みを抱えて生きるわたしたちの姿そのもの。 最後までムーミン一家が登場しないことによって、幸せなムーミン谷の風景が、いっそう深く読者の心に刻みつけられる本書は、 「ポスト・ムーミン」と呼ばれる大人向けの小説群への作風の変化を予感させる、トーベ・ヤンソン渾身の一作。 ムーミン童話の真髄が、ここにあります。 →Amazon「新装版 ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)」(文庫) |
「小さなトロールと大きな洪水」トーベ・ヤンソン 著/冨原眞弓 訳(講談社) |
ムーミン童話の、記念すべきほんとうの第一作。
プレ・ムーミンとも呼べそうな、ごく初期に書かれたこの作品は、他のムーミン童話とは雰囲気が異なり、挿絵のムーミントロールも、顔がずいぶん細長く描かれています。 作者の序文によると、もともとムーミントロールは「風刺まんがをかくときサインがわりにつかっていた、怒った顔をした生きもの」だったということです。 戦争のさなか、仕事はいきづまり、絵をかいても暗い色調の絵ばかりになってしまった時、 「怒った顔をした生きもの」を主人公にして、「むかし、むかし、あるところに」で始まる、たのしいおとぎ話を書こうと思ったのだそうです。 不安や苦難を乗り越えて、最後にはハッピーエンドを迎えるこの作品には、作者ヤンソンさんの、つよさとやさしさが滲み出ています。 →Amazon「小さなトロールと大きな洪水 (講談社文庫)」(文庫) |
▼ラルス・ヤンソン ― Lars Jansson ―
1926年、フィンランドのヘルシンキに生まれる。
15歳のとき、冒険小説『トルトゥーガの宝』でデビュー。推理小説やピカレスク小説を発表。 姉のトーベを助けてムーミン・コミックスを軌道に乗せ、1960年から1975年まではひとりで連載を続けた。 2000年7月31日、没。 |
ムーミン・コミックス(全14巻)@ 黄金のしっぽ
A あこがれの遠い土地 B ムーミン、海へいく C 恋するムーミン D ムーミン谷のクリスマス E おかしなお客さん F まいごの火星人 G ムーミンパパとひみつ団 H 彗星がふってくる日 I 春の気分 J 魔法のカエルとおとぎの国 K ふしぎなごっこ遊び L しあわせな日々 M ひとりぼっちのムーミン トーベ・ヤンソン + ラルス・ヤンソン 著/冨原眞弓 訳 (筑摩書房) |
ムーミン・コミックスは、トーベ・ヤンソンと弟ラルス・ヤンソンによって描かれた漫画です。 1954年、ロンドンの「イヴニング・ニューズ」紙に登場するや、たちまち人気を博し、世界中の新聞に転載されたのだとか。 1960年以降は、ラルス・ヤンソン氏が1人でさらに15年もの間、連載を続けたのだそうです。 筑摩書房から刊行されたこのシリーズは、祖父江慎氏による装丁がとても素敵で、1冊に2〜4話の作品が収録されています。 ムーミン一家をはじめ、童話でおなじみのキャラクターたちの他、 コミックスにしか登場しないゲスト・キャラクターの活躍も魅力のひとつです。 風刺漫画家でもあったトーベ・ヤンソン一流の、ぴりりとスパイスの効いたパロディが楽しめる、 コミカルでユーモラスな作品の数々は、半世紀も前に描かれたもののはずなのに、まったく古さを感じさせません。 文明に毒され、時間に追われ、くたくたに疲れきっている現代人にこそ、うったえかけてくるお話ばかりです。 癒しの物語として、特におすすめなのが、第12巻に収録されている「ふしぎなごっこ遊び」。 この作品は、トーベ・ヤンソンさんが自身の思い出をもとに描かれたのだそうです。 ムーミン屋敷のお隣に引っ越してきた、フィリフヨンカとその子どもたち。何事にも几帳面で堅苦しいフィリフヨンカは、 ムーミン一家のあまりにのんきな暮らしぶりを見て、ムーミンママに、お手伝いを雇ってきちんと家事をやったほうがいいと忠告します。 あれこれと悩んだ末、結局お手伝いを雇うことにしたムーミンママですが、やってきたのは、 被害妄想とも言える悲観的な考えで頭をいっぱいにしたミーサと、マスクをかぶって顔をかくした彼女の愛犬インクでした。 このミーサとインクが、楽天的なムーミン一家との交流の中で、徐々に心を開いていく過程が、とても楽しく描かれています。 臆病なミーサが「ごっこ遊び」を通して、それまでの自分の殻を脱ぎ捨て、すっかり明るく変身するエンディングは、 幸せに満ちて感動的です。 世間の常識や既存の価値観を、ユーモアを交えながら風刺し、読者の思い込みを気持ちよくひっくり返してくれる、 ムーミン・コミックス。底抜けに楽しく、しかも読み応えのある、奥深い漫画です。 →Amazon「ムーミン・コミックス」 |
「ムーミン谷へのふしぎな旅」トーベ=ヤンソンのムーミン絵本トーベ・ヤンソン 作・絵/渡部 翠 訳 (講談社) |
美しい水彩で描かれた、幻想的な1冊。
平和な日常に退屈して、ごきげんななめのスサンナ。「いっそのこと、なにもかも、めちゃめちゃ世界になーれ!」 そう言ってスサンナがめがねをはずすと、めがねはすーっと消え、別のめがねが現れます。 スサンナが新しいめがねをかけてみると、見慣れた風景はすっかり様変わりしてしまいました。 猫は魔物に、森はマングローブの木の沼に、海の水もなくなって、ほんとうに、めちゃめちゃ世界になってしまったのです! スサンナは、へムレンさんやスニフたちと一緒に、ムーミン谷を探して、ふしぎな旅を始めます…。 めちゃめちゃ世界の、暗く荒れ果てた光景が、最後にたどりつくムーミン谷の明るさを際立たせています。 ムーミン谷の花畑でみんなが顔をそろえる絵は、最高に美しいです。 →Amazon「ムーミン谷へのふしぎな旅 (トーベ・ヤンソンのムーミン絵本)」 |
トーベ・ヤンソンは、大人むけの小説も執筆しています
「トーベ・ヤンソンの本」はこちら
トーベ・ヤンソン挿絵のアリス!
「不思議の国のアリス」トーベ・ヤンソン 絵の紹介はこちら
「ムーミンの世界」に興味をもったなら…
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