19世紀後半の英国で活躍した三人の画家、ケイト・グリーナウェイ、ウォルター・クレイン、ランドルフ・コールデコット。 |
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▼ケイト・グリーナウェイ |
「窓の下で」 |
「ハメルンの笛ふき」 |
▼ウォルター・クレイン |
「シェイクスピアの花園」 |
「マザーグースの塗り絵」 |
▼ランドルフ・コールデコット |
「Ride a-Cock-Horse and Other Rhymes and Stories」 |
▼ケイト・グリーナウェイ― Kate Greenaway ―
1846年、ロンドンに生まれる。
父ジョン・グリーナウェイは彫版師。父の友人で、彫版師、印刷業者であったエドマンド・エヴァンスのすすめで、最初の絵本『窓の下で』を刊行し人気を博する。 親友であり美術評論家のジョン・ラスキンは、彼女の絵を高く評価し、『ハメルンの笛ふき』を「あなたの最良の作品」と絶賛している。 生涯独身を通し、絵本を描きつづけ、1901年、55歳で没。 絵本史上最大の人気作家であり、その業績に因んで、1956年、イギリス図書館協会が「ケイト・グリーナウェイ賞」を創設した。 →「連想美術館」ケイト・グリーナウェイのページを参照する |
「窓の下で」ほるぷクラシック絵本ケイト・グリーナウェイ 作/しらいしかずこ 訳(ほるぷ出版) |
窓の下は わたしのお庭よ『窓の下で』は、こんな詩ではじまる、美しい絵本です。ケイト・グリーナウェイが自身の詩に絵をつけたもので、 この一冊の中に、彼女の独創的な世界が広がっています。 <ほるぷクラシック絵本>シリーズの中の一冊で、装幀にもクラシックで優美な雰囲気が感じられるのが嬉しいところ。 詩も絵も数が多く、それでいてどのページも充実しています。絵はすべて構図に工夫があり、細部の描写にも神経がゆきとどいています。 牧歌的な風景の中で遊ぶ子どもたちの、愛らしく古風な服装が特徴的。詩は童謡のようで、マザーグースよりやさしく繊細な印象です。 邦訳版のグリーナウェイ絵本の中では、イチオシの一冊。 ※<ほるぷクラシック絵本>は、黎明期の絵本づくりの名匠・名工の技を、原本から複版し甦らせた贅沢なシリーズ絵本。 ですが、現在でも流通しているのは、ケイト・グリーナウェイ『窓の下で』と、ハインリッヒ・ホフマン『もじゃもじゃペーター』の2冊だけ。 コルデコット、イワン・ビリービン、エルンスト・クライドルフ等の美しい絵本がラインナップされているこのシリーズ、ぜひ全作品復刊してほしいものです。 →ハインリッヒ・ホフマン『もじゃもじゃペーター』の紹介はこちら →Amazon「窓の下で (ほるぷクラシック絵本)」 |
▼ウォルター・クレイン ― Walter Crane ―
1845年8月15日、イングランドのリヴァプールに生まれる。
安価な絵本シリーズとして普及した「トイブック」において、日本の浮世絵の技法をいち早く用い、商業美術の世界に新風をもたらす。 その後ウィリアム・モリスと出会い、アーツ・アンド・クラフツ運動に参加、ケルムスコット・プレスのデザイナーとして活躍した。 1915年、没。 「トータルデザイン」を目指したモリスとクレインの合作『輝く平原の物語』は、現在日本でも晶文社から邦訳刊行されており、クレインの美しい挿絵23葉のすべてが収録されている。またスウェーデンの絵本作家エルサ・ベスコフも、クレインの絵に影響を受けている。 →「連想美術館」ウォルター・クレインのページを参照する |
「シェイクスピアの花園」ウォルター・クレイン 著(マール社) |
『シェイクスピアの花園』は、イングリッシュ・ガーデンとシェイクスピアの戯曲からイマジネーションをふくらませたクレインの美しい絵本『Flowers from Shakespeare's Garden』(1906)の復刻版です。
ローズマリー、三色スミレ、ヒナギク、野バラなど、シェイクスピアの戯曲に登場する花々が、美しく擬人化されて描かれています。 1ページに1種類の花の絵、シェイクスピアの戯曲からの短い引用が添えられ、絵の下に、ちいさく日本語訳が刷られています。 表紙カバーをはずした本体の表紙が原本と同じデザインになっていたり、紙も真っ白でなく生成りだったりと、クレインのクラシカルな絵の雰囲気を楽しめるよう装幀も工夫されています。 巻末にはクレインの作品と生涯について詳細な解説があり、これも楽しい。 イギリスではシェイクスピア作品はなじみ深いものですが(あらゆるイギリスの小説に、シェイクスピアの引用が見られますものね)、戯曲に登場した植物をテーマに造園された「シェイクスピアの庭」なんてものが、ほんとうにあるのだそうです。 擬人化された花々は、花の特徴を生かした美しい衣装をまとっていて、二人の淑女として描かれたカーネーションの絵など、当時の中流階級以上の女性たちの優雅な様子を思わせます。 こういった花の擬人化は、ベスコフやオルファース、クライドルフ等の絵本でなじんでいる人も多いと思います。クレインの絵は優雅で大人向けといった感じで、絵本好きな人は一見の価値ありではないでしょうか。 →「エルサ・ベスコフの絵本」はこちら →Amazon「シェイクスピアの花園」 |
「マザーグースの塗り絵」ウォルター・クレインのアンティーク絵本よりウォルター・クレイン 画(マール社) |
『Walter Crane's Painting Book』は、1889年に出版された、世界で初めての「塗り絵」のための本で、ウォルター・クレインの絵本の中から選んだ絵が収録されています。
『マザーグースの塗り絵』は、『Walter Crane's Painting Book』の復刻版で、とても丁寧に作られています。 表紙カバーをはずした本体の表紙は、原本と同じデザイン、紙は真っ白でなく生成りで、アンティーク絵本の雰囲気が伝わってきます。 見開きの左ページに塗り絵用の線画、右ページにクレインのカラー画が配置され、クレインの絵をお手本にしながら色を塗っていく形式になっています。 しかもこの復刻版では、復刻部分に色を塗るのは抵抗があるだろうということで、巻末に画用紙にセピア色の線画を印刷した、現代の読者用の塗り絵ページがついているのです。う〜ん、こまやかな心遣い。 収録された絵は「マザーグース」「イソップ物語」「ゲーテ」「ライム」などをモチーフに描かれたもの。「マザーグース」の絵は、「ホカホカ十字パン」「ジャックとジル」「わたしは三艘の船を見た」「桑の木のまわりを」など6葉。 絵のもととなっている原詩とその日本語訳、クレインの生涯や作品についての解説も付されています。 クレインの絵は、日本の浮世絵の技法から採り入れた、はっきりした輪郭線を特徴としているので、なるほど塗り絵には最適であろうと思われます。 この本でクレインの絵だけをじっくり見てみると、やっぱりケイト・グリーナウェイやエルサ・べスコフにつながるものを感じますが、彼女らの絵もまた輪郭線がはっきり描かれているんですよね。 輪郭線をはっきり描く、といえばカール・ラーションの絵も思い出されますが、彼もまた日本の浮世絵に影響を受けたと言われています。クレインと、グリーナウェイ、ラーションは、生きた時代も重なっていますし、当時のヨーロッパでのジャポニスムの影響の大きさがうかがえます。 なにはともあれ、この一冊は当時の雰囲気を偲ばせる、優雅でクラシカル、たいへん贅沢な塗り絵本なのです。 →「エルサ・ベスコフの絵本」はこちら →Amazon「マザーグースの塗り絵―ウォルター・クレインのアンティーク絵本より」 |
▼ランドルフ・コールデコット― Randolph Caldecott ―
1846年3月22日、イングランドのチェスターに生まれる。
彫版師エドマンド・エヴァンスととともに、マザーグースなどを題材とした子ども向けの絵本を多色木版で制作、独創的かつ多作の画家として名声をあげる。 絵が文章をふくらませ、独自の表現を担うという、現代絵本の基礎を築いた。 1886年、没。 その業績にちなんで、1937年、アメリカ図書館協会が「コールデコット賞」を設立。メダルのデザインも、コールデコットの『ジョン・ギルピンの愉快なお話』『六ペンスの うたをうたおう』の絵から採られている。 →「連想美術館」ランドルフ・コールデコットのページを参照する |
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