■バーバラ・クーニーの絵本

〜万人に愛される、誠実で端正な画風〜


●バーバラ・クーニー ― Barbara Cooney ―

1917年、ニューヨーク市ブルックリンに生まれる。
スミス・カレッジとアート・スチューデント・リーグで美術を学ぶ。
1959年に『チャンティクリアときつね』、1980年に『にぐるまひいて』でコルデコット賞を、 1982年に『ルピナスさん―小さなおばあさんのお話―』(すべてほるぷ出版)で全米図書賞を受賞。
80冊以上の絵本の画を描く。
2000年3月、没。



↓タイトルのあいうえお順です。クリックすると紹介に飛びます。


「エマおばあちゃん」

「エミリー」

「おおきな なみ」

「クリスマス人形のねがい」

「しらゆきべにばら」

「空がレースにみえるとき」

「ちいさな曲芸師バーナビー」

「にぐるまひいて」

「満月をまって」

「ルピナスさん」

「わたしは生きてるさくらんぼ」



「エマおばあちゃん」

ウェンディ・ケッセルマン 文/バーバラ・クーニー 絵/もき かずこ 訳
(徳間書店)〜5歳から〜
エマおばあちゃん
72歳のエマおばあちゃんは、ひとり暮らし。誕生日にふるさとの絵をもらいますが、思い出のなかの村とは、なんだか違っています。 ある日とうとうおばあちゃんは決心し、自分でふるさとの絵を描きはじめます。絵を描くという、たいせつな時間を得て、 おばあちゃんはもう、ひとりぼっちでも淋しいとは思わなくなりました。

この絵本は、たくさんの子どもや孫がいながら、ひとり暮らしを続けるおばあちゃんの孤独について描いた作品です。 最初は、ひとりぼっちの淋しさを感じていたおばあちゃんですが、絵を描くようになってからは、 たったひとりの充実した時間を知るようになるのです。この孤独のテーマは、大人にとって深く考えさせられます。
文章はとてもわかりやすく、エマおばあちゃんが描いた絵の数々は、ほんとうに色彩ゆたかで、子どもから大人まで楽しめる作品になっていると思います。

*エマおばあちゃんのように、おばあちゃんが描いた故郷の絵の数々
→グランマ・モーゼス『モーゼスおばあさんの四季』の紹介はこちら
→「ヘレン・ブラッドレイの絵本」はこちら

→Amazon「エマおばあちゃん
→セブンネットショッピング「エマおばあちゃんicon

▲トップ


「エミリー」

マイケル・ビダード 作/バーバラ・クーニー 絵/掛川恭子 訳(ほるぷ出版)
エミリー
少女の家のむかいにある黄色い家に、20年近くも家の外に出たことがないという、女の人が暮らしていました。町の人々は彼女のことを、”なぞの女性”と呼んでいました。
ある日ブルーベルの花とともに、少女の家に手紙が届きます。それが”なぞの女性 ”エミリーとの、不思議な交流のはじまりでした。

この絵本は、アメリカの詩人エミリー・ディキンソンと少女とのふれあいを描いた作品です。 まるでひきこもりのような暮らしをしていた風変わりな詩人が、かぎられた、小さな、けれどもすばらしい世界に生きていたことを、 作者のあたたかいまなざしから知ることができます。
表紙から最後のページまで、とにかくクーニーの絵が美しく、心に響いてきます。この本の絵は、イラストボードにシルクをはり、 下地に石膏を二度ぬったうえに、アクリル絵の具と色鉛筆、パステルなどを使って描かれているとのことです。 またアマーストの風景や、エミリー・ディキンソンの生家などを、精密にスケッチした上で描かれた絵の数々は、 クーニーの絵本に対する思い入れの深さを感じさせます。
この一冊をきっかけに、エミリー・ディキンソンの詩と出会えたことは、わたしにとって大きな喜びです。

→エミリー・ディキンソンの本の紹介はこちら

→Amazon「エミリー
→セブンネットショッピング「エミリーicon

▲トップ


「おおきな なみ」

ブルックリン物語
バーバラ・クーニー 作/掛川恭子 訳(ほるぷ出版)〜6歳から〜
おおきな なみ―ブルックリン物語 小さなハティーは、絵をかくのが大好き。
成功した材木商の家に生まれた彼女は、華やかな暮らしの中でも、浜辺を散歩し、あれくるう波の声をきく時間をたいせつにしていました。
成長した彼女はやがて、大きく盛り上がっては砕ける波の囁きをききながら、決心します。すばらしい絵をかく、画家になることを。

この絵本は、クーニーの母親の、小さかった頃の思い出をもとに描かれた作品です。 クーニーがドイツ系移民の三代目で、ひいおじいさんも母親も画家だったことがわかります。 周囲の環境と自分の心をしっかりと見据えて、生きる道を選んでいく主人公ハティーのモデルは、 クーニーの母親であり、またクーニー自身の姿が投影されてもいるのでしょう。
当時の、アメリカにわたって成功した人々の華やかな暮らしぶりが描かれた絵も素敵ですが、 ハティーが愛した海の絵も、それぞれに表情が違っていて、そのどれもが美しいです。

→Amazon「おおきな なみ―ブルックリン物語
→セブンネットショッピング「おおきななみ ブルックリン物語icon

▲トップ


「クリスマス人形のねがい」

ルーマー・ゴッデン 文/バーバラ・クーニー 絵/掛川恭子 訳(岩波書店)
クリスマス人形のねがい (大型絵本)
これは、ねがいごとのお話です。
主人公のお人形の名前はホリー。ホリーは可愛がってくれる人に出会うことをねがっていました。 そして、イブの日に孤児院からとびだした女の子アイビーは、お人形をプレゼントされることをねがっていたのです。

この一冊は、ゴッデンが”The Holly and the Ivy”(ヒイラギとツタ)という賛美歌の題名をモチーフに書いたクリスマスの物語に、クーニーが挿絵を添えて絵本にしたものです。
文章が多く、おはなしは長めですが、ストーリーテリングの上手さが際立ち、するすると読めてしまいます。子どもたちも、きっとひきつけられるはず。
クーニーの絵は、丁寧でやさしく、寒い雪の情景を描きながらも、見る者になぜかあたたかみを感じさせます。 クーニーの絵筆が描く、古き良き時代の西洋のクリスマスの情景は、大人の心にも、あたたかい灯をともしてくれるのです。

→「クリスマスの絵本」はこちら
→「人形たちの絵本」はこちら

→Amazon「クリスマス人形のねがい (大型絵本)
→セブンネットショッピング「クリスマス人形のねがいicon

▲トップ


「しらゆき べにばら」

グリム童話
バーバラ・クーニー 絵/鈴木 晶 訳(ほるぷ出版)
しらゆき べにばら―グリム童話 おかあさんと3人で、貧しくとも仲良く暮らしている、しらゆきとべにばらの姉妹。
快活なべにばらと、おとなしくて気だてのやさしいしらゆきは、ふたりとも働きもので、おかあさんをよく助けていました。 ある冬の夜、3人のちいさな家に、大きな黒いクマが、寒さを逃れてやってきて…。

スケッチ風のタッチで描かれたモノクロの絵に、濃いピンクのさし色が映える、クーニーとしては異色の画風。
でもこの画風が、『しらゆき べにばら』という物語にぴったり。
ページをめくるとすぐ、標題紙の見開きの左側に、しらゆきとべにばら姉妹の絵が挿入されているのですが、この一葉からしてすでに何とも美しく、あっという間に物語世界に引き込まれてしまいます。
出かけるときは必ず手をつなぎ、なんでもふたりで分け合うほど仲の良い、しらゆきとべにばら。ふたりが着ている可愛いエプロンドレス、森にイチゴをつみに出かける様子、家の中のかまどや糸車の描写…。
モノクロと濃いピンクの濃淡のみで描かれる、乙女心をくすぐる世界。
女の子にはぜひぜひおすすめの一冊です。

→「乙女のための絵本」はこちら

→Amazon「しらゆき べにばら―グリム童話
→セブンネットショッピング「しらゆき べにばら グリム童話icon

▲トップ


「空がレースにみえるとき」

エリノア・L・ホロウィッツ 文/バーバラ・クーニー 絵/白石かずこ 訳
(ほるぷ出版)
空がレースにみえるとき ビムロスの夜を知っていますか?
空がレースにみえるこの夜には、かわうそがうたい、ユーカリの木がおどり、草はグズベリージャムみたいになってしまうのです。 約束さえ守れば、このふしぎな夜にくり広げられるパーティに、わたしたちも参加できるのですって。

この絵本は、誰しも子どものころに、こわいながらもわくわく感じた、真夜中の不思議と神秘を、 イマジネーション豊かに描いた作品です。物語というよりも、子どもの想像力が描き出す夢のおはなしという感じで、 かわうそたちの歌や、パーティに参加した少女たちがうたう歌など、リズミカルな文章は読み聞かせにぴったりと言えるでしょう。
この本の絵は、板に水彩、色鉛筆、クレヨンで描かれたもので、「ぜんぶがふしぎの世界のむさらき色にかわってしま」うという、 ビムロスの夜の楽しさと美しさをよく伝えています。

→Amazon「空がレースにみえるとき
→セブンネットショッピング「空がレースにみえるときicon

▲トップ


「ちいさな曲芸師バーナビー」

バーバラ・クーニー 再話・絵/末盛千枝子 訳(すえもりブックス)
ちいさな曲芸師バーナビー
もう何百年も前のこと、旅から旅へと曲芸をして歩く、バーナビーという名の少年がいました。 バーナビーには、お父さんもお母さんもいません。歌って踊って曲芸をし、お金をもらっていました。 冬の寒さの中、曲芸を見てくれる人もいなくなったとき、寂しさにたえかねたバーナビーを助けたのは修道士。 バーナビーは神様のために働く修道士たちとともに、修道院で暮らすことになりますが…。

フランスではよく知られた古い伝説「聖母マリアの曲芸師」のお話を、クーニーが語りなおし、美しい絵を添えた、珠玉の作品。 クーニーはこの絵本のためにフランスで精力的に取材を行い、「聖母マリアの曲芸師」のお話がおさめられた、13世紀の写本までを実際に確かめてから、制作にとりかかったのだとか。 このことは、絵本の最初で、作者自身の言葉で語られています。
自分の息子を「バーナビー」と名づけるほどの思い入れをもって描かれた絵の数々は、美しく、あたたかく、そして厳かです。
中世の古めかしい街並み、城、修道院。開かれた写本のさりげない描写も、そのページの挿絵が「受胎告知」の場面であるとわかるほど、綿密に描きこまれています。
聖母マリアと天使たちが現れる奇跡の場面などは、神聖な美しさの中に、クーニー独特の、あたたかでやさしい手触りも感じられ、ほんとうに素晴らしいです。

またクーニーの再話による物語も素敵。キリスト教的なお話で、聖母マリアが現れるという「奇跡」など、日本人にはなじみにくい部分もあるかもしれません。 けれどもバーナビーの純粋な思いを、彼の見出した希望を、周囲の人々がちゃんと受けとめてくれるという結末は、誰の心も、あたたかい灯火で照らすはず。
字を知らないバーナビーが、自分にできる唯一のこととして、聖母マリアにささげつづけた「曲芸」。生きとし生けるものの、ひたむきに生きる姿こそ、祈りそのものなんだなあと、深く心に染み入ります。

カバーをはずすと表紙は赤い布張り、曲芸をするバーナビーの姿が箔押しされています。クリスマスの絵本としても、おすすめの一冊です。

→クリスマスの絵本の紹介はこちら

→Amazon「ちいさな曲芸師バーナビー
→セブンネットショッピング「ちいさな曲芸師バーナビーicon

▲トップ


「にぐるまひいて」

ドナルド・ホール 文/バーバラ・クーニー 絵/もき かずこ 訳(ほるぷ出版)
〜4歳から〜
にぐるまひいて 10月、とうさんは荷車に牛をつなぎ、家族が一年かけて作り育てたあらゆるものを積み込んで、10日がかりで町へ出かけます。 にぎわう市場で、とうさんはすべての品物、荷車、牛さえも売り、家族にささやかなおみやげを買って、家へ帰ります。 そしてまた、同じだけれどもあたらしい、日々の営みをくりかえしてゆくのです。

この絵本は、19世紀初頭の、アメリカ・ニューイングランド地方の生活を描いた作品です。 木版に描くという古いアメリカの手法を用いた絵がうつくしく、 また文章も短いので、小さい子どもへの読み聞かせにも良いのではないでしょうか。
「古き良き時代」などとよく言いますが、この絵本に描かれている平凡な日々の暮らしは、 貧しくとも平和で、うつくしい生き方なのではないかと思います。 アメリカが、現代文明が、わたしたちが失ってしまったものは何か、大人にとって考えさせられる作品でもあります。

→Amazon「にぐるまひいて
→セブンネットショッピング「にぐるま ひいてicon

▲トップ


「満月をまって」

メアリー・リン・レイ 文/バーバラ・クーニー 絵/掛川恭子 訳
(あすなろ書房)
満月をまって
満月になったら、手作りのかごをハドソンに売りに行く、とうさん。 少年ははやく自分も町に連れていってほしいと、満月を待ち望みます。 とうさんから教わって、ちゃんとかごを作れるようになった時、一緒に町に行くことを許された少年は、憧れていた町で、山に住む自分たちへの差別と偏見にあうのです。

2000年に死去した、クーニー最後の作品。
今から100年以上前、アメリカのニューヨーク州ハドソンから、それほど遠くない山間で、かごをつくって暮らしていた人たちの物語です。
木々の声をきき風のことばを知る、かごつくりの人々の、貧しくとも素朴でうつくしい暮らし。 ハドソンの町の人々の偏見と差別に悩み、かごつくりの仕事が嫌になってしまった主人公の少年に、職人のひとりが言った言葉が、印象的です。
「風からまなんだことばを、音にしてうたいあげる人がいる。詩をつくる人もいる。風は、おれたちには、 かごをつくることをおしえてくれたんだ」
著者のあとがきによると、彼らがつくったかごは、博物館や民芸品のコレクションのなかに、 いまでもたくさん残っているそうです。山に住む人たちが、風の声をききながら編んだかごは、 いつまでも使える、丈夫ですばらしいかごだったのです。

父母や仲間に支えられ、やがて一人前の職人へと成長していく少年。最後に、彼は言います。  
「風が、ぼくのなまえをよんでくれたんだ」
山の木々と風の歌、かごつくりの人たちのうつくしい心が、クーニーの絵からしずかに、けれども確かに、伝わってきます。

→「月の絵本」はこちら

→Amazon「満月をまって
→セブンネットショッピング「満月をまってicon

▲トップ


「ルピナスさん」

小さなおばあさんのお話
バーバラ・クーニー 作/掛川恭子 訳(ほるぷ出版)〜6歳から〜
ルピナスさん―小さなおばあさんのお話
海を見下ろす丘の上に住むルピナスさん。彼女はこどもの頃、おじいさんと約束しました。 「世の中を、もっとうつくしくするために」何かをするということを。 大人になり、遠い国々を旅したあと、 彼女が約束を果たすためにやったこと。それは海辺の村を、大好きなルピナスの花で一杯にすることでした。

この絵本は、ルピナスさんと呼ばれたひとりの女性の、ひとつの生き方を描いた作品です。 彼女はおじいさんと約束をし、はじめは何をすれば良いのかわかりませんでしたが、自分の頭で考え、自分の心で感じて、 やがてひとつの答えを見つけます。 「世の中を、もっとうつくしくする」方法に、ただひとつの、正しい答えはありません。 だからこそ、一人ひとりが希望をもって、生きていくことができるのではないでしょうか。
ページをめくるたびに、色づかいのやさしい絵が、ひとの心と世界のうつくしさを伝えてくれます。

→春の絵本の紹介はこちら

→Amazon「ルピナスさん―小さなおばあさんのお話
→セブンネットショッピング「ルピナスさん 小さなおばあさんのお話icon

▲トップ


「わたしは生きてるさくらんぼ」

ちいちゃな女の子のうた
デルモア・シュワルツ 文/バーバラ・クーニー 絵/白石かずこ 訳
(ほるぷ出版)〜5歳から〜
わたしは生きてるさくらんぼ―ちいちゃな女の子のうた ”わたしは 生きてる さくらんぼ”
ちいちゃな女の子はうたいます。リンゴや花、魔法使い。 うたいながら女の子は、いろんなものになるのです。大人たちが笑い出すまで。 ”なぜって おとなたちは かなしいのよ” あか、金、みどり、青。毎朝あたらしくなるわたし。だけど ”わたしは いつも わたしでしょう”

この絵本は、ちいちゃな女の子のうたに託して、生きることのよろこび、この世界に在ることのすばらしさを伝えた作品です。
”わたしは いつも わたしでしょう” ”わたしは いつも あたらしくなるのよ” 詩人でもある作者が、ちいちゃな女の子に託した言葉は、 子どもにとってはリズミカルで楽しく、大人にとっては深遠な意味をもっています。
女の子が、あか、金、みどり、青になるページの絵は、眺めているだけで、自分もその色の世界に溶け込んでいきそうです。 この本で、わたしはクーニーの絵のとりこになりました。

→Amazon「わたしは生きてるさくらんぼ―ちいちゃな女の子のうた
→セブンネットショッピング「わたしは 生きてる さくらんぼ ちいちゃな女の子のうたicon

▲トップ



バーバラ・クーニーの絵本に興味をもったなら・・・

アメリカを代表する絵本作家「ターシャ・テューダーの本」はこちら
アメリカの古典絵本「バージニア・リー・バートンの絵本」はこちら
いやしの本棚流「乙女のための絵本」はこちら


おすすめ絵本 Index へ戻る


■HOME