■バージニア・リー・バートンの絵本

〜1冊の絵本のなかで、長いながい時が流れる〜


●バージニア・リー・バートン ― Virginia Lee Burton ―

1909年、アメリカのマサチューセッツ州に生まれる。父はマサチューセッツ工業大学の学監、母はイギリス出身の詩人兼音楽家。
カリフォルニアの美術学校で絵とバレーを学び、1931年、彫刻家ジョージ・ディミトリオスと結婚。 以後、海辺の小さな村フォーリー・コーヴに定住し、画家、デザイナー、絵本作家として活躍した。
主な絵本作品に、『はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー』『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』(ともに福音館書店)などがある。
1943年、『ちいさいおうち』でコルデコット賞を受賞。1968年、没。



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「ちいさいおうち」

「せいめいのれきし」



「ちいさいおうち」

ばーじにあ・りー・ばーとん 文と絵/いしい ももこ 訳(岩波書店)
ちいさいおうち (大型絵本 (3))
むかしむかし、しずかないなかに、ちいさいおうちがありました。とてもじょうぶに建てられた、丘の上のきれいなうちのまわりには、りんごが花さき、ひなぎくが揺れ、子どもたちは小川や池で遊びました。
やがて遠くに見えていた町の灯りが近づいてくると、丘を切り崩して自動車の走る道ができ、畑のなかにアパートや、学校や、駐車場ができ…。ちいさいおうちに住むひとはなくなって、開発はどんどん進んでいきました。もう、いなかは町になってしまったのです…。

『ちいさいおうち』は、アメリカの絵本作家バージニア・リー・バートンの、あまりにも有名な作品。この古典絵本の魅力については、すでに多くの人が語りつくしているわけですが、手にとってみて、つくづく、やっぱり素晴らしい作品だと唸らされました。
一冊のなかで流れる長いながい時間、それを最後までぐいぐい読ませる、絵・物語・デザインのテクニック。
この絵本を読むひとは誰でも、「ちいさいおうち」の運命に、ひきこまれ、心動かされるに違いありません。
都市開発が、どこまでもどこまでも、とどまることなく進んでいくさま。その変化の激流のなかで、ちいさいおうちは忘れ去られ、すっかりみすぼらしくなって…。
長い間子どもたちに親しまれてきた作品ですが、ここに描かれたテーマとメッセージは、現代の大人たちこそ、さまざまな読み取り方ができ、深く共感できるのではないかと思います。

岩波書店からは、<岩波の子どもの本>シリーズのなかの一冊として、小型で安価な版も刊行されていますが、やはり原書の雰囲気により近いものをと思い、大型絵本のほうを購入しました。画面構成、見返しの絵などに、デザイナーでもあったバートンのこだわりが感じられます。カバーをとった表紙のデザインも必見。
1943年の、コルデコット賞受賞作品です。

→Amazon「ちいさいおうち (大型絵本 (3))

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「せいめいのれきし」

地球上にせいめいがうまれたときからいままでのおはなし
バージニア・リー・バートン 文・絵/石井桃子 訳(岩波書店)
せいめいのれきし―地球上にせいめいがうまれたときからいままでのおはなし (大型絵本)
『せいめいのれきし』は、『ちいさいおうち』で長い時の流れを、たくみなデザインで描いてみせたバートンが、8年を費やして完成させたという作品。
地球の誕生から現在まで、気の遠くなるような時間の流れを、5幕8場の劇に見立てて描いた、じつに壮大な絵本です。
くらい宇宙に太陽が生まれ、地球が生まれ、地球の上に生命が生まれ、恐竜が大地を闊歩し、やがて人間が誕生して…。

子どもの頃、宇宙や星のこと、恐竜の図鑑なんかが大好きだったのですが、この絵本には図鑑をめくるのに似た楽しみがあります。
子どもたちはこの生命の歴史絵巻に、きっとわくわくするはず。
でも、大人にとっても、この絵本は読みごたえ充分です。
はてしない宇宙のくらやみに、地球という星ができて、そのまるい星の上で、あまりに多くの生物が生まれ、栄え、滅びて…。 人間だけが特別ということはなくて、わたしたちもまた、長いながいいのちの連なりのひとつで、やがては絶滅して、またあたらしい種が誕生する。この絵本を読むと、それがけっして、悲しいことや恐ろしいことではないと分かります。
不思議な、驚異に満ちたこの星の、生命のものがたり。
バートンの誠実な言葉が、読後、しずかに胸に残ります。
いますぎていく一秒一秒が、はてしない時のくさりの、新しいわです。
いきものの演ずる劇は、たえることなくつづき――いつも新しく、
いつもうつりかわって、わたしたちをおどろかせます。

『せいめいのれきし』76ページより

→Amazon「せいめいのれきし―地球上にせいめいがうまれたときからいままでのおはなし (大型絵本)

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