■ヘレン・ブラッドレイの絵本

〜20世紀初頭の英国の暮らし〜


●ヘレン・ブラッドレイ ― Helen Bradley ―

1900年、イギリス、ランカシャーに生まれる。
60才になってから、自分が子どもだった頃に暮らした小さな町リースの風景を、孫に見せるため絵を描きはじめる。 その絵は、素朴なタッチで20世紀初頭の英国の風俗をよく伝えている。
邦訳絵本に『ミスカーターはいつもピンクの服』『ミスカーターといつもいっしょに』『お茶においでになった女王さま(*現在絶版)』(すべて暮しの手帖社)がある。


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「ミスカーターはいつもピンクの服」

「ミスカーターといつもいっしょに」



「ミスカーターはいつもピンクの服」

ヘレン・ブラッドレイ 著/暮しの手帖翻訳グループ 訳(暮しの手帖社)
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1900年生まれのイギリスのおばあちゃまが、自分が子どもだった頃の暮らしを、孫に見せようと描いた絵。この絵本は、そんな絵の数々に、著者による説明が添えられた一冊。
ヘレン・ブラッドレイのタッチは、グランマ・モーゼスのそれに似て素朴ですが、あたたかく愛情に満ちて、20世紀初頭の英国の暮らしを、それはよく伝えています。

巻頭に4ページ、著者による当時の暮らしの説明が付されていますが、それによるとヘレン・ブラッドレイの家は、中流以上のお金持ちだったよう。父親の事業は順調で、リースという小さな町の、ヴィクトリア風の家に住んでいたのだそうです。また父方の祖父が、自然のゆたかなブラックプールに建てた大きな家で、休暇を楽しんだりもしたということです。
午後のお茶のあとの散歩、お墓参り、お茶会ごっこ、せともの市、砂浜での凧あげ…当時の建物や景色のなかに、小さく、たくさんの人間が描きこまれた絵は、なんだかドールハウスをのぞきこむような楽しさがあります。隅々までじっくり眺めても飽きない。
当時のパレードやお葬式の様子などは見開きで大きく描かれ見ごたえがありますが、部屋の中での針仕事や、大きなかまどのあるパン屋さんなど室内を描いた絵も、とても丁寧に細部まで描かれていて興味深いです。

ちなみに「ミスカーター」というのは、近所に住む独身のご婦人で、いつもピンクの服を着ているのです。ミスカーターは銀行の支店長テイラーさんのことが好きなようで、この二人の関係も絵の見所だったりします。

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「ミスカーターといつもいっしょに」

ヘレン・ブラッドレイ 著/暮しの手帖翻訳グループ 訳(暮しの手帖社)
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1900年生まれのイギリスのおばあちゃまが、自分が子どもだった頃の暮らしを、孫に見せようと描いた絵。この絵本は、そんな絵の数々に、著者による説明が添えられた一冊。
ヘレン・ブラッドレイのタッチは、グランマ・モーゼスのそれに似て素朴ですが、あたたかく愛情に満ちて、20世紀初頭の英国の暮らしを、それはよく伝えています。

巻頭に4ページ、やはり著者による当時の暮らしの説明が付されています。それによるとこの本は、1907年のクリスマス・イヴから、1908年のクリスマス・イヴまでの一年が描かれた一冊ということのようです。
上記『ミスカーターはいつもピンクの服』とは、似ているようで違う場面が描かれています。町での買い物の絵は、窓から見えるお店の中の様子、布地を選ぶご婦人方がなんとも楽しそう。休暇の前のお洗濯の絵には、当時の手動の洗濯機が描かれています。 「父はこのせんたく機がご自慢でしたが、母や叔母たちやセアラには、かえって大へんでした」という説明が、なるほどと面白いです。早春の夕方の散歩や、ウィンドミア湖畔や公園へのお出かけの絵などは、気持ちよく美しく楽しそう。
なんとも興味深いのが「お葬式のお茶の支度」の絵。窓外に棺を載せた馬車と大勢の参列者、室内では喪服姿のご婦人方が、忙しそうにテーブルにお皿やお料理を並べる様子が描かれています。 「お葬式のお茶には、いろいろな支度がいります。気も転倒しているアリス・アン一人では、とても無理です」「「どうしましょう。ハムが足りないわ、こんなに大勢ですもの」と、母は心配しました」などの説明とともに、やっぱり昔のイギリスでもお葬式(の料理の支度!)は大変だったんだなあと思いました。

女性ならではの目線で描かれた絵は、当時の英国の暮らしの様子がよくわかるし、現代日本の読者にも共感できる部分がたくさんあります。
人の暮らしは、洋の東西や時代を問わず、存外変わらないものだなあ、などとしみじみ感じたことでした。

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