〜丁寧で繊細なタッチ、ふしぎな遠近感をもつ構図〜
●アンジェラ・バレット ― Angela Barrett ―
ロンドン在住のイラストレーター。
1955年、イギリスのエセックス州ホーンチャーチに生まれる。王立美術大学でイラストレーションを学び、子どもの本の分野で活躍。神秘的な雰囲気をたたえた絵で高い評価を得る。 主な絵本作品に『スノーグース』『絵本 アンネ・フランク』『絵本 ジャンヌ・ダルク伝』(すべてあすなろ書房)などがあるほか、多くの児童書の挿絵、本のカバーイラストなども手がける。 |
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「白雪姫」ジョゼフィーン・プール 文/アンジェラ・バレット 絵/島 式子 訳(BL出版) |
はだは雪のように白く、くちびるは血のように赤く、髪は黒檀のようにまっ黒な、美しい王女、白雪姫。
姫を生んだお妃さまが亡くなったあと迎えられた新しい王妃は、わがままで欲深く、嫉妬深い女性でした。
王妃は魔法の鏡を持っていて、この世で一番美しいのはあなただと、鏡が答えてくれるたびに満足しておりましたが、白雪姫が成長したある日、鏡は、王妃は白雪姫の美しさにはかなわないと告げたのです。 ねたましさから白雪姫を憎むようになった王妃は、姫を殺してしまおうと企んで・・・。 ずっと気になっていたイラストレーター、アンジェラ・バレット。 どの作品を最初に手にとるべきか迷ったすえ、この『白雪姫』を購入したのですが、何とも美しい一冊で、すっかりアンジェラ・バレットの絵の世界にひき込まれてしまいました。 丁寧で繊細なタッチ、大胆な構図で描かれる白雪姫の世界。 アンジェラ・バレットの絵は、画面に広大な奥行きがあって、この『白雪姫』では、その奥へ奥へと広がる空間に、おとぎ話ならではの魔法の空気がたちこめています。 大人向けの上品な絵柄で、登場人物も、ディズニーのような幼い感じでなく、リアルに描かれているので、物語にひめられた残酷さも際立ちます。 見開きの、まっしろい雪の上におちた血のひとしずくが、美しくておそろしい。 アンジェラ・バレットの絵の魅力を堪能できる、珠玉の絵本です。 →こみね ゆら 絵『しらゆきひめ』の紹介はこちら |
「キッチンの窓から」スーザン・ヒル 文/アンジェラ・バレット 絵/ウィルヘルム菊江 訳(西村書店) |
冬のティータイム、クリスマスのごちそう、イギリスの伝統料理プディングについて。春の始まりを告げるイースター、夏は楽しいピクニック、秋にはゼリーやチャツネなどのビン詰めづくり。
季節ごとのイギリスのキッチンの風景を、レシピをまじえて綴ったスーザン・ヒルのエッセイに、アンジェラ・バレットが精緻な挿絵を添えた一冊。 テキストが多いですが、イラストもたくさん収録されているので、大人向けの絵本と言っていいかと思います。 バレットの絵は、画面の奥へ奥へと見る者の視線を誘う、ふしぎな遠近感をもつ構図が多く、見開きで描かれたキッチンの様子など、たいへん美しいです。 またスーザン・ヒルのテキストもたいへん面白く、ティータイムやピクニックを楽しむ英国のライフスタイルへの憧れがつのります。 色々な文学作品からのさりげない引用も興味深く、ピクニックについての文章で言及されていた、ケネス・グレーアムの『たのしい川べ』を読んでみたくなりました。(↓読んでみました!面白かった〜^^) →ケネス・グレーアム『たのしい川べ』の紹介はこちら |
「庭の小道から」英国流ガーデニングのエッセンススーザン・ヒル 文/アンジェラ・バレット 絵/新倉せいこ 訳(西村書店) |
わたしの心の中にある理想的な空想の庭は、永久にたどりつけない、手に入らないところにあります。夢の中でしか通れない扉の向こうにあるのです。『庭の小道から』は、『キッチンの窓から』の姉妹編。 著者スーザン・ヒルの庭への思い入れ、ガーデニングのこだわりについて書かれたエッセイに、アンジェラ・バレットが幻想的で美しい挿絵を添えています。 「バラの庭」「子どもたちの庭」「自然のままの庭」「夜の庭」「水の庭」など、テーマごとに綴られた著者の庭へのこだわりは、本格的な庭づくりをやったことがない、だけどいつかやってみたいと憧れている、わたしのような読者にも面白く読めます。 細密に描かれたバレットの庭の絵は、英国式庭園の精髄を感じさせる美しさ。 絵の中に入っていって、美しい庭のあちこちを眺め、しばし時を忘れるもよし。また上記の引用のように、バレットの絵に刺激された想像力で、理想の庭を心に描いてみるのも楽しいのではないでしょうか。 →「庭・ガーデニングの絵本」はこちら →Amazon「庭の小道から―英国流ガーデニングのエッセンス」 |
アンジェラ・バレットの絵本に興味をもったなら…
ロンドン出身のイラストレーター「サラ・ミッダの絵本」はこちら