■庭・ガーデニングの絵本



美しい庭、庭の楽しみが描かれた絵本たち。

ヤナギランにヒレハリ草、風にうなずくウシノシタグサ、
ラシャカキ草にヨモギギク、シモツケ草にセキチクに、ワンランに、
野趣あふれるヤナギタンポポ、茶色のハチラン、フウリン草、
クローバーにワレモコウ、香りの高いタイムにうっとり
まるでこの庭はオベロンの野のよう。

―ウォルター・デ・ラ・メア『孔雀のパイ』所収「後家さんの花壇」より


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「おじいさんの小さな庭」

「ぐんぐんぐん みどりのうた」

「サラ・ミッダのガーデンスケッチ」

「シェイクスピアの花園」

「ターシャ・テューダーのガーデン」

「庭の小道から」

「ぼくの庭ができたよ」



「おじいさんの小さな庭」

ゲルダ・マリー・シャイドル 文/バーナデット・ワッツ 絵/ささき たづこ 訳
(西村書店)
おじいさんの小さな庭
花や小鳥とお話ができるおじいさん。おじいさんは、素朴で小さな自分の庭を、とても気に入っていました。 ところがある日、庭でいちばん小さいヒナギクが、おとなりに住んでいるお金持ちの、広い庭に行きたいと、だだをこねだして…。

絵もおはなしも、心あたたまる素敵な一冊。
おはなしは、子どもへのおやすみ前の読み聞かせにもぴったりという感じの、短いものです。
絵は、ワッツの夢幻味あふれる色彩感覚に圧倒されます。ワッツは”色彩の魔術師”と呼ばれるブライアン・ワイルドスミスに師事したとのこと。 一見、幼子が描いたようにみえるタッチなのに、画面全体をよく眺めてみると、色のあわせ方重ね方が、ひじょうに洗練されていることに驚かされます。
ほんとうに、おじいさんの庭の描写の美しいこと! ことに青を基調とした夜の庭の表現が際立っています。

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「ぐんぐんぐん みどりのうた」

デービッド・マレット 文/オラ・アイタン 絵/脇 明子 訳(岩波書店)
ぐんぐんぐん―みどりのうた (大型絵本)
るんるんるん はるかぜの
においが してきたら
ぼくは たがやすんだ
ちいさな はたけ

『ぐんぐんぐん みどりのうた』より

庭づくりの楽しさをうたったアメリカの子どもの歌に、オラ・アイタンが素朴な絵を添えた一冊。 巻末には楽譜もついていて、読み聞かせるだけでなく、弾いたり歌ったりして楽しむこともできます。

この絵本の絵は、なんといっても明るい色彩が魅力。ページを開くと目に飛び込んでくる、空の青、大地の緑、男の子の着ているチョッキの赤。 たっぷりの絵の具で塗られた色の、なんとも鮮やかで美しいこと。
絵の枠からはみ出して描かれる、太陽や雲、ひまわり、虹、からす、はしごなど、レイアウトものびやかで素敵です。
大地の力をうたいあげるテキストと絵とがあいまって、眺めていると、太陽のまぶしさや土のにおいを思い出す感じ。ほんとうに癒されます。
見返しに描かれた野菜や果物の絵も、かわいいんですよ。

簡単に、ざっと筆を走らせて描いただけのように見える、オラ・アイタンの絵。 けれどもページを開くたび、いつも新鮮な気持ちがするのです。

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「サラ・ミッダのガーデンスケッチ」

サラ・ミッダ 著/橋本 槇矩 訳(サンリオ)
サラ・ミッダのガーデンスケッチ (1983年)
ながいこと憧れだった『サラ・ミッダのガーデンスケッチ』、Amazonマーケットプレイスでようやく手に入れました〜。

1982年にヴィクトリア&アルバート・ミュージアムのイラスト賞を受賞しているというこの本。邦訳版は函入りで、布装の英語版と、和訳の冊子が2冊組みになっているという豪華な装幀。
布装の英語版のページを繰ると、これはまさに絵本というよりサラ・ミッダの画集。イギリス人の大好きな「庭」への思いが込められた、宝石のように美しい絵がたくさんおさめられています。
とにかく色が美しい! いくとおりもの緑でいくつもの植物が描き分けられていて、この色をぼんやり眺めるだけでも、英国の庭の素晴らしさを思わずにはいられない。
またサラ・ミッダの手描き文字の素晴らしさ、ところどころ種や押し花を使ったコラージュのようなレイアウトの楽しさ、散りばめられたシュールなイラストの、スパイスのようにぴりりとした味わい。
どれをとっても美しい、宝石箱のような本です。
この見返しのところに蔵書票(エクスリブリス)を模した洒落た絵が描かれているのも、たまらん!

あまいイメージを思い描いていたサラ・ミッダのガーデンスケッチ、実際に手にとってみると、やっぱりいい意味でイメージがくつがえされました。
見逃しそうなんだけれど、一見やさしい絵の中に、シュールなセンスが間違いなく潜んでいて、やっぱりナーサリーライム(マザーグース)の国の人だなあと嬉しくなります。
サラ・ミッダの魅力は、あたたかい自然の描写だけでなく、その中にぴりっとしたシュールなセンスが見え隠れするところにあると思うのですが、どうでしょうか。
この『ガーデンスケッチ』は1983年初版、1992年に新版が出ていますが、どちらも絶版。なぜでしょう。復刊してくれないので中古を手に入れましたが、でも復刊してほしいです。

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「シェイクスピアの花園」

ウォルター・クレイン 著(マール社)
シェイクスピアの花園
『シェイクスピアの花園』は、イングリッシュ・ガーデンとシェイクスピアの戯曲からイマジネーションをふくらませたクレインの美しい絵本『Flowers from Shakespeare's Garden』(1906)の復刻版です。
ローズマリー、三色スミレ、ヒナギク、野バラなど、シェイクスピアの戯曲に登場する花々が、美しく擬人化されて描かれています。

1ページに1種類の花の絵、シェイクスピアの戯曲からの短い引用が添えられ、絵の下に、ちいさく日本語訳が刷られています。
表紙カバーをはずした本体の表紙が原本と同じデザインになっていたり、紙も真っ白でなく生成りだったりと、クレインのクラシカルな絵の雰囲気を楽しめるよう装幀も工夫されています。
巻末にはクレインの作品と生涯について詳細な解説があり、これも楽しい。
イギリスではシェイクスピア作品はなじみ深いものですが(あらゆるイギリスの小説に、シェイクスピアの引用が見られますものね)、戯曲に登場した植物をテーマに造園された「シェイクスピアの庭」なんてものが、ほんとうにあるのだそうです。

擬人化された花々は、花の特徴を生かした美しい衣装をまとっていて、二人の淑女として描かれたカーネーションの絵など、当時の中産階級以上の女性たちの優雅な様子を思わせます。
こういった花の擬人化は、ベスコフやオルファース、クライドルフ等の絵本でなじんでいる人も多いと思います。クレインの絵は優雅で大人向けといった感じで、絵本好きな人は一見の価値ありではないでしょうか。

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「ターシャ・テューダーのガーデン」

トーバ・マーティン 著/リチャード・W・ブラウン 写真/相原真理子 訳
(文藝春秋)
ターシャ・テューダーのガーデン
大型・ソフトカバーの写真集。ターシャの友人トーバ・マーティンさんの文章と、リチャード・W・ブラウン氏の写真とで、 ターシャの夢のように美しい庭が紹介されています。
世界中のガーデナーの憧れであるターシャの庭は、テレビなどでも紹介され、ガーデナーのみならず、日本でも多くの人の知るところとなっています。
「この世の楽園」――ターシャが手放しで自慢する庭の光景は、ガーデニングに興味のない人でも、きっと魅了されるはず。

一見気取らないようでいて、実は細部まで計算されつくしたターシャの庭。 とにかくさまざまな種類の花が、あちこちでからまりあい、大きなかたまりになって咲いているのですが、色彩の調和がとれていて、どの場所を切り取っても絵になるのです。
やはり挿絵画家としてのセンスで、絵を描くように庭づくりをされているからなのでしょうね。実際ターシャの絵本には、自分の庭の草花がたくさん描かれていますし、 絵の題材にするために栽培されている花もあるそうです。

また、ハーバード大学で絵画を学んだというリチャード・W・ブラウン氏の写真が素晴らしく、どのページを開いても、ほんとうに絵のように美しいです。
この写真集では、トーバ・マーティンさんの語りで、ターシャとブラウン氏との心あたたまる交流の様子も知ることができ、庭づくりをめぐるエピソードの数々も、面白く読めました。
誰もが癒される、おすすめの写真集です。

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「庭の小道から」

英国流ガーデニングのエッセンス
スーザン・ヒル 文/アンジェラ・バレット 絵/新倉せいこ 訳(西村書店)
わたしの心の中にある理想的な空想の庭は、永久にたどりつけない、手に入らないところにあります。夢の中でしか通れない扉の向こうにあるのです。

『庭の小道から』95ページより

庭の小道から―英国流ガーデニングのエッセンス 『庭の小道から』は、『キッチンの窓から』の姉妹編。
著者スーザン・ヒルの庭への思い入れ、ガーデニングのこだわりについて書かれたエッセイに、アンジェラ・バレットが幻想的で美しい挿絵を添えています。
「バラの庭」「子どもたちの庭」「自然のままの庭」「夜の庭」「水の庭」など、テーマごとに綴られた著者の庭へのこだわりは、本格的な庭づくりをやったことがない、だけどいつかやってみたいと憧れている、わたしのような読者にも面白く読めます。
細密に描かれたバレットの庭の絵は、英国式庭園の精髄を感じさせる美しさ。
絵の中に入っていって、美しい庭のあちこちを眺め、しばし時を忘れるもよし。また上記の引用のように、バレットの絵に刺激された想像力で、理想の庭を心に描いてみるのも楽しいのではないでしょうか。

→アンジェラ・バレットの絵本の紹介はこちら

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「ぼくの庭ができたよ」

ゲルダ・ミューラー 作/ささき たづこ 訳(文化出版局)
ぼくの庭ができたよ ぼだいじゅ通りの、広い庭のある家へ引っ越してきた「ぼく」たち家族。 荒れ果てた庭を、町でいちばんきれいにしようと、家族みんなで計画をたてます。 芝を植えてテラスをつくり、花をたくさん咲かせたいというお母さん。「ぼく」は自分の庭をつくることにし、 妹のカロリーネも野菜を育てる自分のスペースをもらうことに。
お父さんが、みんなの言うとおりに庭の絵をかいてくれて、さあ、家族の素敵な庭づくりが始まります。

庭づくりの様子が一からわかりやすく描かれたこの絵本。読んでいると、自分でも庭をつくってみたい、と思わずにはいられません。
お父さんの描いた庭の絵や、庭しごとの道具、芝生づくりの手順、初心者はどんな花や野菜を育てればよいのか、等々、 庭づくりの各段階が丁寧な絵で詳細に描かれており、とても参考になります。
また、家族での庭づくりをきっかけに、おとなりさんや友だちとの交流の輪が広がっていく様子も微笑ましいです。
夏の庭で友だちとおいしい手作りジュースを飲む様子、夜の庭でろうそくをともして家族でおしゃべりする様子など、庭への憧れがつのる一冊。

→ゲルダ・ミューラーの絵本の紹介はこちら

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命の息吹を感じさせる、春に読みたい絵本たち「春の絵本」はこちら


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