■オラ・アイタンの絵本

〜素朴な筆づかいの魅力と、色彩の美しさ〜


●オラ・アイタン ― Ore Eitan ―

1940年、イスラエルのテル・アビブ生まれ。
エルサレムのビザレル美術アカデミーを卒業。同校で絵を教えるかたわら、子ども向けの絵本を多数発表、内外で高い評価を得ている。
日本で紹介されている作品には、『でてこいミルク!』『おひさまがしずむよるがくる』(ともに福音館書店、2007年1月現在品切れ状態、中古品なら入手可能)、『編みものばあさん』(径書房、これは他の作品とまったく違う画風)がある。 エルサレム在住。



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「ぐんぐんぐん みどりのうた」

「ハンナのあたらしいふく」



「ぐんぐんぐん みどりのうた」

デービッド・マレット 文/オラ・アイタン 絵/脇 明子 訳(岩波書店)
ぐんぐんぐん―みどりのうた (大型絵本)
るんるんるん はるかぜの
においが してきたら
ぼくは たがやすんだ
ちいさな はたけ

『ぐんぐんぐん みどりのうた』より

庭づくりの楽しさをうたったアメリカの子どもの歌に、オラ・アイタンが素朴な絵を添えた一冊。 巻末には楽譜もついていて、読み聞かせるだけでなく、弾いたり歌ったりして楽しむこともできます。

この絵本の絵は、なんといっても明るい色彩が魅力。ページを開くと目に飛び込んでくる、空の青、大地の緑、男の子の着ているチョッキの赤。 たっぷりの絵の具で塗られた色の、なんとも鮮やかで美しいこと。
絵の枠からはみ出して描かれる、太陽や雲、ひまわり、虹、からす、はしごなど、レイアウトものびやかで素敵です。
大地の力をうたいあげるテキストと絵とがあいまって、眺めていると、太陽のまぶしさや土のにおいを思い出す感じ。ほんとうに癒されます。
見返しに描かれた野菜や果物の絵も、かわいいんですよ。

簡単に、ざっと筆を走らせて描いただけのように見える、オラ・アイタンの絵。 けれどもページを開くたび、いつも新鮮な気持ちがするのです。

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「ハンナのあたらしいふく」

イツァク・シュヴァイゲル・ダミエル 作/オラ・アイタン 絵/小風 さち 訳
(福音館書店)
ハンナのあたらしいふく (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
ハンナは、ちいさなおんなのこ。おかあさんが縫ってくれた、サバスに着るまっしろい服が、嬉しくてなりません。
おふろに入り、縫いたての服を着て、しあわせな気持ちで出かけるハンナ。ところが、途中で出会ったおじいさんの、重い荷物を運ぶのを手伝ったとき、まっしろの服に黒いすみのあとがついてしまいました。
きょう、はじめてきた服なのに。悲しむハンナでしたが…。

ほんとうに心洗われる一冊。おはなしは、子どもに読み聞かせるのにもちょうど良い文章の量で、とてもわかりやすいです。
ハンナが、新しいまっしろい服を着ていることなど忘れて、おじいさんの重い荷物を運ぶのを手伝ってあげるのですが、そのときの科白が素敵。 「おじいさん てつだっても いい?」
押し付けがましくないこんな言葉、なかなか言えるものではありません。わたしもハンナを見習わなければ、なんて思いました。

そして、なんといっても美しい絵の魅力。オラ・アイタンの絵は、絵の具の質感や、色づかいが素晴らしいです。
ハンナのまっしろのあたらしい服が、最後、お月さまの銀色にひかりかがやく様子など、銀色に塗られているわけではないのに、ほんとうに銀色にひかっているように見えました。
ちなみにサバスというのは、ユダヤ教の安息日のことで、ユダヤの人たちは、金曜日の日没から土曜日の日没まで、仕事をやすみ、神様のことを思いながら過ごすのだそうです。

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