■本の蒐集記録(2012年2-4月)




『ON READING』
Andre Kertesz 写真(NORTON)

2012/04/22

On Reading ハンガリー出身の写真家、アンドレ・ケルテスの写真集。
ケルテスは初期には小型カメラでスナップショット的な写真を撮ったり、のちディストーション・シリーズと呼ばれる実験的な写真にも挑戦したりと、多様な作風で知られる写真家なのだそう。
この本はタイトルどおり、道端や公園や学校、電車の中と、あらゆるところで本を読む人々の姿がとらえられた、モノクロの写真集です。
本だけでなく新聞や書類を読んでいる姿もあったり、積み上げられた本がいっぱいの部屋の写真もあったり、「ん?この写真は?」と思ったら、絵の中の人が本を読んでいたりと、ちらりとユーモアがのぞくのもたのしい。
裏表紙にもなっている、ベレー帽をかぶったヒゲのおじさんがベンチで新聞を読んでいる写真では、おじさんの後ろで牛(!)も新聞をのぞいているみたいで、くすりと笑えたりするんですよ。
わたし自身が本好きだからか、人が本を読んでいる姿は、なんだか好もしいです。
人の指でページを繰られる本の佇まいも、夢中で本を読む人の姿も、ひとしく美しく感じられる、魅力的な一冊。

→「本棚の奥のギャラリー[写真篇]」はこちら

→Amazon「On Reading

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『さぼてん』
北見葉胡 著(講談社)

2012/04/08

さぼてん (講談社の創作絵本) 北見葉胡さんが絵もおはなしも手がけた絵本。
現在、絶版状態なので、Amazonマーケットプレイスで購入しました。
これがいい絵本なんです。何がいいって、細部まですごく凝っているんです。
表紙カバーの折り返し部分(そで)、見返し、ノンブル、奥付といった、普段見逃しがちな本の細部にまで、素敵な絵が描き込まれているんです。
こういうこだわりのある本は、いい本に決まっています。
中身はもちろん、北見さんの不思議でシュールな魅力満載。かわいいようで、ちょっと毒のある絵が、なんともいいんですよね。
多肉植物っぽいものがたくさん生えている不思議な世界。主人公のソマリーコは猫のような顔をしていてサロペットジーンズをはいて二足歩行。奇妙なちいさい生き物たちもそこかしこに(画面の外にまで!)顔をのぞかせるので、ページのすみずみまで見逃せない。
この『さぼてん』が、いちばん北見さんらしいというか、北見さんワールドの原点のようにも感じます。
こんないい絵本が、なぜ絶版状態なのか…(たしかにちょっとマニアックかもしれない?)。いまは大人が絵本を読む時代(?)なので、こういう作品は喜ばれるのでは。
ぜひ復刊してほしいものです。

→北見葉胡さんの他の絵本の蒐集記録はこちら

→Amazon「さぼてん (講談社の創作絵本)

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『わたしの小さな古本屋』
田中美穂 著(洋泉社)

2012/04/01

わたしの小さな古本屋〜倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間 倉敷の古本屋「蟲文庫」。
筑摩書房のPR誌「ちくま」での、岡崎武志さんによる連載「古本屋は女に向いた職業 女性古書店主列伝」でその存在を知って以来、気になる古本屋さんです(岡崎武志さんの連載は『女子の古本屋』として単行本化、のち文庫化されました)。
『わたしの小さな古本屋』は、これまで苔の本など手がけてこられた店主の田中美穂さんが、満を持して(?)書かれた「蟲文庫」についての本!
即、買いました。読みました。
なんとも不思議に落ち着く本です。「会社を辞めた日、古本屋になろうと決めた。」そうオビには書かれていて、ひとりで古本屋をたちあげた女性の一代記ともなりそうな話が語られているにもかかわらず、行間に流れる空気は、なんともほのぼの。
肩肘はらない田中さんの姿勢が見えるようで、この本を読んだこの感じが、おそらくそのまま「蟲文庫」の雰囲気なんだろうなと想像する。
なんだか、変わりゆく時間の流れのなかの、灯台のあかりのような古本屋さん。
いつかは行ってみたいですね。

→『女子の古本屋』の蒐集記録はこちら

→Amazon「わたしの小さな古本屋〜倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間
→Amazon「女子の古本屋 (ちくま文庫)

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『私の小さなたからもの』
石井好子 著(河出書房新社)

2012/04/01

私の小さなたからもの シャンソン歌手として、音楽事務所所長として、そしてエッセイストとして活躍された石井好子さん。
2010年に亡くなられてから、追悼特集のムックが編まれたり、単行本が文庫化されたりと、ふたたびその業績が見直され、喜びをもって迎えられているようです。
『私の小さなたからもの』は、すでに絶版となっている『私のプチ・トレゾール』ほか雑誌などに発表されたエッセイを収録、新たな装いをほどこした一冊。
先に刊行された『バタをひとさじ、玉子を3コ』と同じく、佐々木美穂さんのイラストがあしらわれた、おしゃれな装幀も魅力のひとつ。
やっぱり石井好子さんのエッセイはいいなあと思う。読みやすく、異国情緒にあふれた、豊かな文章が、素敵な装幀と相まって、ページを繰るのが楽しくて仕方ない。

→『バタをひとさじ、玉子を3コ』の蒐集記録はこちら

→Amazon「私の小さなたからもの

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『ジョットという名の少年 羊がかなえてくれた夢』
パオロ・グアルニエーリ 文/ビンバ・ランドマン 絵/ せきぐちともこ 訳
(西村書店)

2012/03/18

ジョットという名の少年―羊がかなえてくれた夢 画家ジョット・ディ・ボンドーネについて、「羊の伝説」をもとに描かれた絵本。
ジョットは、西洋美術を語る上で決定的に重要な画家であり、須賀敦子のエッセイのなかでも、その作品について幾度も触れられています。
「羊の伝説」というのは、少年ジョットが、羊の番をしながら、だれに習うこともなく岩に描いた羊の絵を、チマブーエが通りがかりに偶然目にし、その才能におどろいて弟子にしたという話。
けれどもこの絵本は、お堅い伝記絵本というわけではなくて、伝説をもとに描かれた分かりやすいフィクションであり、絵の好きなジョット少年の夢に向かって生きる姿が、魅力的な絵で表現されています。
ミラノ生まれのビンバ・ランドマンの絵は、金色を巧みに用いて、ルネサンス以前の、中世イタリアの雰囲気をよく醸し出しており、ジョットのフレスコ画を彷彿させる青を基調とした見開きの一葉など、ことに美しいです。
大きな絵の上部や下部の、小さい枠の中にも細々と絵が描かれており、「小鳥への説教」などジョットの有名なフレスコ画を模した絵も描き込まれていたりして、すみずみまで見逃せません。

→『ジョットとスクロヴェーニ礼拝堂』の蒐集記録はこちら

→Amazon「ジョットという名の少年―羊がかなえてくれた夢

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『ジョルジョ・モランディ』
岡田温司 監修(フォイル)

2012/03/10

ジョルジョ・モランディ 日本初、ジョルジョ・モランディの画集。
モランディ(1890-1964)は、イタリア、ボローニャの出身で、ごくシンプルに抽象化された食器や花を終生描き続けた人。20世紀の孤高の静物画家と言われています。
モランディのことはよく知らないし、本物の作品を見たこともないのだけど、一目見たら忘れられない静謐な絵に惹かれ、画集が欲しいなと思っていたのです。
洋書画集は読めないし、高いし…と悩んでいたら、ようやく日本でも画集が刊行されて。
やっぱりモランディの絵、いいなあ。単純に、この色とか。形而上絵画とかキュビズムとか、何もわからないんだけど、しんと見入ってしまう。
ルイジ・ギッリによるモランディのアトリエを撮影した写真も17点収録。
ソフトカバーで持ちやすく、おしゃれな装幀で、モランディの絵をじっくり鑑賞できます。

→Luigi Ghirri 写真『Atelier Morandi』の蒐集記録はこちら

→Amazon「ジョルジョ・モランディ
→フォイル『ジョルジョ・モランディ』販売ページ(中の画像が確認できます)

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『Willy Pogany Rediscovered』
Willy Pogany 著/Jeff A. Menges 編(Dover Publications)

2012/03/04

Willy Pogany Rediscovered (Dover Fine Art, History of Art) ウィリー・ポガニーのイラスト作品集。Dover Publicationsの安価なペーパーバック版で、洋書ですがイラスト中心です。
ポガニーはハンガリー生まれの挿絵画家で、イギリスでギフトブックを描いて成功し、その後アメリカに渡りハリウッドでも活躍しました。
この本では作品が時系列に並べられ、ポガニーの絵柄の変遷がよく分かるようになっています。
わたしが惹かれるのは、やはり英国のギフトブック、「ローエングリン」や「パーシバル」、「タンホイザー」などの挿絵でしょうか。幻想的で美しいイラスト多数。モノクロのイラストなど凄味があります。
アメリカにわたってからは、カラフルでポップな絵柄に変わり、「マザーグース」や「不思議の国のアリス」などの挿絵を手がけていますが、アリスはヴィクトリア朝のアリスではなくて、ショートカットでモダンな服装をしています。
また<岩波の子どもの本>シリーズの一冊『金のニワトリ』は、いまも日本で人気の絵本ですが、これもギフトブックの絵柄とはまったく違っています。
デュラックやニールセンなども絵柄は変遷していますが、ポガニーは絵柄を変えたことでアメリカでも人気を博したというのが興味深いですね。

→ラッカム、デュラック、ニールセン「挿絵本のたのしみ」はこちら

→Amazon「Willy Pogany Rediscovered (Dover Fine Art, History of Art)
→Amazon「金のニワトリ (岩波の子どもの本)

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『Rapunzel』
Jacob Grimm 著/Sarah Gibb 絵(Albert Whitman & Co)

2012/02/26

Rapunzel: Based on the Original Story by the Brothers Grimm 最近、日本でも『王国のない王女のおはなし』が出版されたサラ・ギブ。
こちらはサラ・ギブが描くラプンツェルの絵本で、洋書です。
ポップでカラフルな画面と、シルエット画とが組み合わされて、ことさらかわいい一冊に仕上がっています。
グリム童話の暗さや怖さはなく、ラプンツェルの閉じ込められている塔の中も、ピンク色のカーテンがかけてあったりして快適そう(笑)
とにかく家の中の調度品や雑貨、食べ物などが細かく描かれているので、女の子が喜びそうです。
この作品も邦訳出版されないのかな?と思いました。

→「グリム童話の絵本」はこちら

→Amazon「Rapunzel: Based on the Original Story by the Brothers Grimm
→Amazon「王国のない王女のおはなし

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『星を運ぶ舟』
前田昌良 著(求龍堂)

2012/02/12

星を運ぶ舟 画家、前田昌良氏の作品集。
表紙を見ただけでなんとなく惹かれるものがあったのですが、前田昌良氏というのは、『アルネの遺品』の表紙絵を手がけられた方だったんですね。
絵とおもちゃを組み合わせた作品たちは、静謐で、懐かしくて、手のひらの中に包み込んだ小さな宝物のよう。
あ〜、この雰囲気、やっぱり『アルネの遺品』にぴったり!
造本が丁寧で、こぶりのサイズといい、手にもった感じがとてもいい。
小川洋子さんによるプロローグ『星座を描く少年』も収録されています。

→『アルネの遺品』の紹介はこちら

→Amazon「星を運ぶ舟

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『鉱物見タテ図鑑 鉱物アソビの博物学』
フジイキョウコ 編・著(ブルース・インターアクションズ)

2012/02/12

鉱物見タテ図鑑 鉱物アソビの博物学 (P-Vine Books) おしゃれな鉱物図鑑。
雲母や水晶、蛍石といった鉱物を、書物や羽や薔薇に見立てて撮られた写真と、稲垣足穂や宮沢賢治からの引用をまじえた鉱物の解説とで構成されています。
「鉱石花園」「地界古書」「天体観測所」「鉱石ドロップ」…見立てのセンスがどことなくクラフト・エヴィング商會を思わせます。
ふふ、もちろん「地界古書」というのは雲母を書物に見立てたもので、解説にはクラフト・エヴィング商會『クラウド・コレクター』からの引用が。
とにかく写真が美しくて、眺めているだけでも楽しい一冊。

→「クラフト・エヴィング商會の本」はこちら

→Amazon「鉱物見タテ図鑑 鉱物アソビの博物学 (P-Vine Books)

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