■本の蒐集記録(2008年3-4月)


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2008/04/26(Sat)
●マリヤッタ・クレンニエミ 作/マイヤ・カルマ 絵/渡部 翠 訳
『オンネリとアンネリのおうち』(プチグラパブリッシング)
●岡崎武志 著『女子の古本屋』(筑摩書房)

『オンネリとアンネリのおうち』は、子ども向けのおはなしに、挿絵がついたスタイルの一冊。 友人と、大阪の本屋さん古本屋さんめぐりをしているとき(下記2008/04/19の記事にて紹介)、マリメッコのショップでディスプレイされているのを見かけて、表紙のあまりのかわいさに惹かれて購入しました。
フィンランドを代表するテキスタイルブランド「マリメッコ」のショップに飾られていたわけは、この本が、フィンランドの有名な児童文学作品だから。

オンネリとアンネリ、よく似た名前をもつふたりの小さな女の子。
夏休みのある日、ふたりは「正直なひろいぬしさんにさしあげます。」と書かれたふうとうを拾い、その中には大金が。 ふたりはお金を受け取るつもりはなかったのですが、ひょんなことからそのお金で、ふたりで暮らすのにぴったりの、小さなおうちを買うことになるのです。
かわいらしい家具調度、庭も洋服もなにもかも揃った素敵なおうちでの、ふたりだけの夏の暮らしが始まります。

フィンランドの作家マリヤッタ・クレンニエミさんの物語は、かわいらしく楽しい展開。大人にとっては「そんなことあり得ない」と思ってしまう場面もありますが、そんなことあり得なくっても良いのです。これは”物語”なんですから。
同じくフィンランドの挿絵画家マイヤ・カルマさんのイラストもまた、かわいらしい! 表紙カバーのカラー絵も、中のモノクロにピンクのさし色が映えるイラストも、乙女心をくすぐります。
訳者はトーベ・ヤンソンの著書の翻訳で知られる渡部 翠さん。アンネリの一人称が、かわいらしく訳されています。
…なんだか「かわいらしい」ばかり言っていますが。
表紙カバーをはずしてもピンク、見返しもピンク、この愛らしさは、ほんとうに女の子にぜひおすすめ。また夏休みのおはなしということで、夏に読むのにぴったりの、読後感もさわやかな一冊です。

『女子の古本屋』は、筑摩書房のPR誌「ちくま」での、岡崎武志さんによる連載「古本屋は女に向いた職業 女性古書店主列伝」を単行本化したもの。
これは「ちくま」連載時から愛読していて、単行本化を待ち望んでおりました。
ネット古書店「海月書林」店主、市川慎子さんはじめ、いま古本の世界で熱い!女子の活躍が、丁寧に紹介されています。
それぞれの古書店主さんたちの、生き様というか人生が垣間見えて、ほろりとしたり、勇気をもらえたりする、楽しい一冊です。
浅生ハルミンさんのイラストもかわいい。

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2008/04/19(Sat)
●小沼 丹 著『埴輪の馬』(講談社文芸文庫)

友人と、大阪の本屋さん古本屋さんめぐりを敢行。
心斎橋から北堀江エリアを徒歩+地下鉄で移動。「スタンダードブックストア」「colombo」「ベルリンブックス」「貸本喫茶ちょうちょぼっこ」の4つのお店を訪れました。

「スタンダードブックストア」は、個性的な品揃えの新刊書店。ここには「ベルリンブックス」セレクトの古本や、かわいい雑貨も置いてあり、会計前の本も持ち込みOKのカフェが併設されていました。
「colombo」は、雑貨と古本のお店。青いカーペットが印象的な店内には、海外で買い付けてきたかわいい雑貨や古本が、おしゃれにレイアウトされていて、看板猫のジャンゴがお出迎えしてくれました。かわいい〜。
「ベルリンブックス」は、昭和初期のレトロモダンな建築も見所の、大阪農林会館の中に入っています。ここはまさに古本屋、という感じで、森田たまや平出隆などの古本をたくさん発見! 悩みに悩んで小沼 丹の『埴輪の馬』を一冊だけ購入しました。結局、文庫本を一冊だけかい…と思いつつ。
「貸本喫茶ちょうちょぼっこ」は、本好きの女性4人が運営する私設図書室。会員制で本の貸出をしていて、閲覧のみの利用はワンドリンク制とのことで、わたしと友人はアイスチャイを注文し、棚にぎっしり並べられた本をあれこれと手にとって眺めながら頂きました。
高野文子の『黄色い本』とか、『サラ・ミッダのガーデンスケッチ』とか。売り物ならば買いたいところでしたが…。

どこもそれぞれに個性があって面白く、とても楽しい1日となりました。
いま、こういった若い人たちの古本屋さんが、熱いですねえ。

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2008/04/15(Tue)
●須賀敦子 文/酒井駒子 画『こうちゃん』(河出書房新社)
●ほし よりこ 著『きょうの猫村さん 3』(マガジンハウス)

『こうちゃん』は、随筆家・須賀敦子さんのテキストに、人気絵本作家・酒井駒子さんが絵を寄せた一冊。
須賀敦子さんは『ミラノ 霧の風景』『コルシア書店の仲間たち』などの著書があり、お名前は知っていて興味はあったのだけれども、今まで読んでみたことはありませんでした。
この「こうちゃん」と題された一篇は、『須賀敦子全集』(河出書房新社)にも収録されているもので、一読して、ふしぎな、難解な、美しい文章という印象を受けました。
「こうちゃん」という、実在と、非実在とのはざまにあらわれる、ふしぎに懐かしいちいさな男の子について綴られた、短い文章。
あまりに繊細で、なにか著者の心の中の、いちばんたいせつな部分を書いたものという気がして、読んでいて少し胸が痛む。
とにかく、もっと年齢を重ねないと、この文章に込められた気持ちが、ほんとうにはわからないかもしれない。
酒井駒子さんの絵は、挿絵というよりは独立した作品になっていて、難解ながらも美しいテキストとのコラボレーションを堪能できます。

『きょうの猫村さん 3』は、ネット発大人気マンガの待望の新刊。
やっぱり猫村さんのかわいさには癒される〜。
でもストーリーの中だるみ感はやはり否めない。
あんまりにも人気があると、ストーリーの進め方も難しいんでしょうね。
とりあえずは、猫なのに働き者の家政婦、猫村さんのがんばりを見習うべし。

→酒井駒子『金曜日の砂糖ちゃん』の紹介はこちら

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2008/04/08(Tue)
●ルイーズ・ファティオ 文/ロジャー・デュボアザン 絵/江國香織 訳『マリーのお人形』(BL出版)

『マリーのお人形』は、『しろいゆきあかるいゆき』でコルデコット賞を受賞した、ロジャー・デュボアザンの絵本。
この絵本では、テキストをデュボアザンの夫人であるルイーズ・ファティオが担当していて、これがなんともガーリーでかわいらしい一冊に仕上がっているのです。

パリの街の骨董品店のウインドウに飾られている、美しいアンティークドール。ペルシャのつぼや、中国のティーポットに囲まれて、彼女は孤独でした。一緒に遊んでくれる、小さな女の子に出会えるのを待っていたのです。
そんなお人形を、毎日ウインドウの向こうから見つめていたのが、郵便屋さんの娘のマリーでした…。

お話の舞台設定が素敵で、まさに女の子のための絵本という感じ。
デュボアザンの絵は、パリのおしゃれな街並みや、クラシカルな骨董品店の様子、お人形のレーシーなドレスなどを、濃いピンクと黄色の少ない色味で雰囲気いっぱいに描いていて、眺めているだけで幸せな気持ちになります。
デュボアザンの絵本はたくさんあって、どれも魅力的なのですが、なかにはこんなにかわいらしい一冊もあるんですね。

江國香織さんの訳は、江國さんらしく難しい言葉がいろいろ使われていたり、ところどころフランス語のカタカナ表記に、日本語訳のルビがふられている会話部分もあり、絵本が子どものためのものであるとすれば、もしかして評価のわかれるところかもしれません。
けれども子どもって、難しい漢字や言い回しの意味がよくわからなくても、大人びた感じがしてけっこう好きだったりするし(わたし自身がそうでした)、そこから新しい言葉をおぼえていくという一面もあると思うので、大人が考えるより問題ないのではないでしょうか。

それからこの絵本、なんとお人形のためのちいさな絵本がついているんです!
この絵本のお人形とマリーのように、読者がお人形と一緒に読むことができるよう、『マリーのお人形』をそっくりそのまま小さくしたミニ絵本。
わたしはこのミニ絵本つき、というところに惹かれて買ってしまったのですが(^^;
『マリーのお人形』は、子どもも大人も、女の子の心をもつ人なら楽しめる、素敵な一冊だと思いました。

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2008/03/29(Sat)
●森 麗子 著『木立をすぎる時間 森麗子画文集』(求龍堂)
●岸田衿子 著/古矢一穂 絵『草色の切符を買って』(青土社)

『木立をすぎる時間』は、恵文社一乗寺店(Click!)のサイトでレビューを見て、どうしても欲しくなってしまい購入。
森 麗子さんという方は、染め、刺し、織り、アップリケなどの技術を自在に使った「ファブリックピクチャー」という作品を発表しておられるそうで、 わたしはまったく存じ上げなかったのですが、作品集が多数刊行されています。
この『木立をすぎる時間』は、ファブリックピクチャー作品に、北欧を訪れた際の印象などを中心に綴られたテキストが添えられた画文集。
ファブリックピクチャーというものを初めて目にしたのですが、あたたかくて、やさしくて、かわいくて、しずかな、とても美しい本に仕上がっています。
この一冊でしか作品を拝見してはいませんが、森 麗子さんにとって、ファブリックピクチャーというのは詩なんだなあ、などとしみじみ感じたりしました。

岸田衿子さんの言葉に惹かれ、詩集に続きエッセイ集『草色の切符を買って』を購入。
だって、『草色の切符を買って』というタイトルだけでも、思わず欲しくなってしまいませんか?
この本には、主に「上・信国境に近い、六里ヶ原周辺について書いたもの」(あとがきより)がまとめられていて、岸田衿子さんの山小屋暮らしの様子を知ることができます。
読んでいると、木々の緑のにおい、山の土のにおいが感じられてくる、なんとも清々しい文章。
その文章のはざまに、岸田さんの、あの不思議な味わいの詩、その詩作の秘密が垣間見えてくるようです。
この本では、古矢一穂さんの絵が、カラーで、大きくたくさんレイアウトされていて、それもまた、「草色の切符を買って」出かけた先の、山の空気を読者に伝えてくれます。

→岸田衿子 著/安野光雅 絵『ソナチネの木』の紹介はこちら

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2008/03/22(Sat)
●岸田衿子 詩『いそがなくてもいいんだよ』(童話屋)
●水内喜久雄 選・著/古矢一穂 絵
『たいせつな一日 岸田衿子詩集』(理論社)

『ソナチネの木』を読んで、岸田衿子さんの言葉に惹かれるものを感じ、詩集を2冊購入。
岸田衿子さんの詩、有名なのに、いままでほとんど知らずに過ごしてきてしまいました。
学生時代は、詩というジャンルにはさほど興味がなくて、小説ばかり読んでいたのだったのに、最近はあのころ見過ごしていたエッセイや詩を手にとることが多い。
エミリー・ディキンソンの詩に出会ったとき、これがわたしが読みたかった詩だと、”発見”したような気になったものですが、岸田衿子さんの詩も、やっぱりそう。
なんだかこんなふうに、年を重ねていくことで、自分がほんとうに好きなものが、少しずつわかっていくのでしょうか。

今回購入した2冊は、『忘れた秋』『あかるい日の歌』『ソナチネの木』などの既刊から編まれたアンソロジー。
そのため2冊のうちには重複して収録されている作品もあります。
『いそがなくてもいいんだよ』は、こぶりの文庫サイズのハードカバーという、童話屋のかわいい詞華集のシリーズ。 『たいせつな一日』は、A5判型の単行本で、理論社の「詩と歩こう」というシリーズのなかの一冊です。
どちらの本にも、古矢一穂さんの、繊細で美しい草花の絵が添えられています。

岸田衿子さんの詩は、感受性のつよい少女が書いたようで、でもとても年取ったおばあさんが書いたような、不思議な味わいです。
峠道を
ちょうちょのあとから
のぼってゆくと
ちょうちょはいなくなり
わたしだけのぼってゆきます

森へ ちょうちょと
入ってゆくと
わたしがいなくなり
ちょうちょだけ とんでゆくのが
見えます

「あかるい日のうた」より
(この詩は『いそがなくてもいいんだよ』『たいせつな一日』
2冊ともに収録されています)

→岸田衿子 著/安野光雅 絵『ソナチネの木』の紹介はこちら
→エミリー・ディキンソンの紹介はこちら

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2008/03/15(Sat)
●スーザン・ヒル 文/アンジェラ・バレット 絵/新倉せいこ 訳
『庭の小道から』(西村書店)
●ケネス・グレーアム 文/石井桃子 訳
『たのしい川べ』(岩波少年文庫)

アンジェラ・バレットの絵に魅せられ、『キッチンの窓から』の姉妹編、『庭の小道から』を購入。
著者スーザン・ヒルの庭への思い入れ、ガーデニングのこだわりについて書かれたエッセイに、アンジェラ・バレットが幻想的で美しい挿絵を添えています。
「バラの庭」「子どもたちの庭」「自然のままの庭」「夜の庭」「水の庭」など、テーマごとに綴られた著者の庭へのこだわりは、本格的な庭づくりをやったことがない、だけどいつかやってみたいと憧れている、わたしのような読者にも面白く読めます。
細密に描かれたバレットの庭の絵は、英国式庭園の精髄を感じさせる美しさ。
絵の中に入っていって、美しい庭のあちこちを眺め、しばし時を忘れるのもまたよし、なのです。

『キッチンの窓から』で言及されていた、ケネス・グレーアムの『たのしい川べ』を、これを機会に読んでみようと購入。
『クマのプーさん』のA.A.ミルンなどに多大な影響を与えたイギリス児童文学の名作にもかかわらず、大人になるまで未読だったわけですが、読んでみると「名作」と呼ばれる意味がよくわかりました。
ネズミやモグラ、ヒキガエルといった小動物が主な登場人物として描かれた、ファンタジーとも呼べる作品で、おはなしの筋立ては、読者をはらはらどきどきさせながら展開し、時折くすりと笑える場面もたくさんある楽しいもの。
けれども何が素晴らしいと言って、詩情ゆたかに描かれる、イギリスの田園風景の美しさといったら!
読んでいるうち、ネズミやモグラたちが楽しく暮らす、川べのおだやかな景色が心のなかにゆっくりと広がって、何とも心地よいのです。
子ども向けなどとあなどるなかれ、「名作」と呼ばれる本の中にはいつも、子どもも大人も魅了する濃密な作品世界があり、その本の扉をひらく読者を、ひとしく迎え入れてくれるのです。
ちなみに挿絵は、『クマのプーさん』の挿絵も手がけるE.H.シェパード。この物語には、アーサー・ラッカムをはじめ幾人かの画家の挿絵が存在するようですが、普及したのはシェパードの挿絵ということのようです。
シェパードが描く生き生きと愛らしい動物たちの姿も、この本の魅力のひとつとなっています。

→A.A.ミルン『クマのプーさん』の紹介はこちら
→アーサー・ラッカムの紹介はこちら

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2008/03/08(Sat)
●スーザン・ヒル 文/アンジェラ・バレット 絵/ウィルヘルム菊江 訳
『キッチンの窓から』(西村書店)
●森田たま 著『もめん随筆』(中公文庫)

『キッチンの窓から』は、アンジェラ・バレットの絵に魅せられて購入。
春・夏・秋・冬のイギリスのキッチンの風景を、レシピをまじえて綴ったスーザン・ヒルのエッセイに、アンジェラ・バレットが精緻な挿絵を添えています。
テキストが多いですが、イラストもたくさん収録されているので、大人向けの絵本と言っていいかと思います。
バレットの絵はやはり、画面の奥へ奥へと見る者の視線を誘う、ふしぎな遠近感をもつ構図が多く、とても美しいです。
またスーザン・ヒルのテキストもたいへん面白く、ティータイムやピクニックを楽しむ英国のライフスタイルへの憧れがつのります。 色々な文学作品からのさりげない引用も興味深く、ピクニックについての文章で言及されていた、ケネス・グレーアムの『たのしい川べ』を読んでみたくなりました。

『今昔』を読んで、すっかり魅了されてしまった、森田たまの随筆。
絶版になってしまったたくさんの著作が復刻されないものかと思っていたら、タイミングよく『もめん随筆』が中公文庫で復刊されました!
『もめん随筆』は、随筆家森田たまのデビュー作とのこと。
内田百閧竓H川龍之介との交流、竹久夢二の半衿のことや、生まれ育った札幌での、まるで『赤毛のアン』のような暮らしぶりなど、内容は盛りだくさん。
森田たまの文章はさらりとしていて、気軽にちょこちょこ読むのにとても良いので、文庫での復刊というのは持ち運びやすくて嬉しいです。
ハンディでありながら表紙カバーの市松模様もかわいらしい。
ネット古書店「海月書林」店主、市川慎子さんによる解説も見逃せません。

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2008/03/01(Sat)
●デュ・ボウズ・ヘイワード 作/マージョリー・フラック 絵/羽島葉子 訳『ふわふわしっぽと小さな金のくつ』(パルコ出版)
●ジョゼフィーン・プール 文/アンジェラ・バレット 絵/島 式子 訳
『白雪姫』(BL出版)

『ふわふわしっぽと小さな金のくつ』は、もうただピンク色の表紙の愛らしさに目をひかれて購入しました。
「イースター」という、日本人にはあまりなじみのないキリスト教の行事をもとにしたおはなしで、イースターバニーになりたいと願ううさぎ「ふわふわしっぽ」が主人公。
たくさんの子どもがいて毎日忙しいふわふわしっぽが、子どもの頃からの夢をかなえようと奮闘する、大人の女性にとっても読みごたえのあるテーマが内包されています。
絵は、『アンガスとあひる』などの作品で知られるマージョリー・フラック。クラシカルでかわいい絵柄で、うさぎたちがほんとうに愛らしく描かれています。

『白雪姫』は、ずっと気になっていたイラストレーター、アンジェラ・バレットの絵本。
どの作品を最初に手にとるべきか迷ったすえ、『白雪姫』を購入したのですが、これが何とも美しい一冊で、すっかりアンジェラ・バレットの絵の世界にひき込まれてしまいました。
丁寧で繊細なタッチ、大胆な構図で描かれる白雪姫の世界。
アンジェラ・バレットの絵は、画面に広大な奥行きがあって、この『白雪姫』では、その奥へ奥へと広がる空間に、おとぎ話ならではの魔法の空気がたちこめています。
大人向けの上品な絵柄で、登場人物も、ディズニーのような幼い感じでなく、リアルに描かれているので、物語にひめられた残酷さも際立ちます。
見開きの、まっしろい雪の上におちた血のひとしずくが、美しくておそろしい。
アンジェラ・バレットの絵の魅力を堪能できる、珠玉の絵本です。

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