■クラフト・エヴィング商會の本

〜架空の商品、売ってます〜


クラフト・エヴィング商會は、吉田篤弘・吉田浩美の両氏(お2人はご夫婦です)を中心とした制作ユニット。
ユニット名は稲垣足穂の本に出てきた「クラフト・エヴィング的な」という言葉から付けられたそう。 不思議であたたかくて懐かしい、そんな本をたくさん制作しておられます。すばらしい装幀もまた、お2人の手によるものです。
クラフト・エヴィング商會名義の本の他、お2人の娘さん(?)である吉田音ちゃん名義の本、またソロ作品もあります。

*クラフト・エヴィング商會 新刊情報
→Amazon「おかしな本棚」(2011/04)やっぱりおもしろい!

*吉田篤弘 新刊情報
→Amazon「木挽町月光夜咄」(2011/11) webちくま連載の単行本化。
→Amazon「モナ・リザの背中」(2011/10)
→Amazon「水晶萬年筆 (中公文庫)」(2010/07)
*『水晶萬年筆』は、『十字路のあるところ』を改題、加筆して文庫化したもの。
→Amazon「パロール・ジュレと紙屑の都」(2010/03)
→Amazon「圏外へ」(2009/09)



↓タイトルをクリックすると紹介に飛びます。

●クラフト・エヴィング商會の本

「どこかにいってしまったものたち」

「クラウド・コレクター」

「クラウド・コレクター」(文庫版)

「すぐそこの遠い場所」

「すぐそこの遠い場所」(文庫版)

「らくだこぶ書房21世紀古書目録」

「ないもの、あります」

「じつは、わたくしこういうものです」

「テーブルの上のファーブル」

「アナ・トレントの鞄」

●吉田音の本

「Think−夜に猫が身をひそめるところ」

「Bolero−世界でいちばん幸せな屋上」

●吉田篤弘の本

「フィンガーボウルの話のつづき」

「つむじ風食堂の夜」

「針がとぶ」

「百鼠」

「78(ナナハチ)」

「十字路のあるところ」

*吉田篤弘のその他の本

●吉田浩美の本

「a piece of cake」

●その他関連本

「グラフィック・デザイナーの仕事」

「犬」クラフト・エヴィング商會プレゼンツ

「猫」クラフト・エヴィング商會プレゼンツ




●クラフト・エヴィング商會 名義の本


「どこかにいってしまったものたち」

クラフト・エヴィング商會 著(筑摩書房)
どこかにいってしまったものたち ――どこかにいってしまったものたちのカタログ――

クラフト・エヴィング商會の最初の本。
なので、はじめてクラフトさんの本を買うという方におすすめ。
クラフト・エヴィング商會の先代が商っていたという、今はどこかにいってしまった懐かしい品々を、 残されたパンフレットやパッケージの写真をもとにご紹介、という趣向なのですが。
実は、写真の古びたチラシや商品が入っていた箱など、すべてクラフトさんたちの手づくり。 これらの作品を架空の設定で味わい、空想することを楽しむ本なのです。

すべてが架空のおはなしであることを、明かさないでほしかった、という声もあるようですが、いえいえ。
この一冊で、クラフト・エヴィング商會の紡ぎ出す「架空」にハマること、うけあいです。

→Amazon「どこかにいってしまったものたち
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「クラウド・コレクター/雲をつかむような話」

クラフト・エヴィング商會 著(筑摩書房)
クラウド・コレクター―雲をつかむような話 ――すぐそこにある遠い場所への旅――

クラフト・エヴィング商會の紡ぎ出す「架空」に興味のある方、またはすでにハマッたという方におすすめ。
クラフト・エヴィング商會の先代・吉田傳次郎が、アゾットという国を旅したときに書きつけた手帳をもとに、 その不思議な国の物語と、傳次郎の心の軌跡が綴られていきます。
傳次郎がアゾットから持ち帰った、おみやげの品々の写真もふんだんに盛り込まれた豪華な本。

そして、これもまた架空のおはなし。
アゾットから持ち帰った美しい品々や、傳次郎が書きつけたという手帳までが、すべてクラフトさんたちの手づくり。
どうでしょう、<AZOTH−アゾット>という、奇妙な名をもつ架空の国を、旅してみたくなりませんか?

→Amazon「クラウド・コレクター―雲をつかむような話
→セブンネットショッピング「クラウド・コレクター 雲をつかむような話icon

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「クラウド・コレクター<手帖版>雲をつかむような話」

クラフト・エヴィング商會 著(ちくま文庫)
単行本『クラウド・コレクター/雲をつかむような話』を、全面的に書き直して再編集した文庫本。 写真を使わず、物語とイラストで構成。
単行本とはひと味違う、「絵物語版クラウド・コレクター」を楽しむことができます。

→Amazon「新版 クラウド・コレクター (ちくま文庫)
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「すぐそこの遠い場所」

クラフト・エヴィング商會 著(晶文社)
すぐそこの遠い場所 ――アゾットの事典は、ページをめくるたびに
中身が変わる――


クラウド・コレクターとセットで読むのがおすすめ。もちろん、単品でも充分楽しめます。
クラフト・エヴィング商會の先代・吉田傳次郎が旅した国、アゾット。
傳次郎はアゾットについて書かれた事典を、大切に持っていました。彼の孫であり商會の三代目でもある吉田浩美氏が、 書棚の隅にしまいこまれていた、その事典をひらいてみると……。

またまたこんな架空の設定で、不思議で懐かしい国アゾットについて、事細かに解説。
<ガルガンチュワの涙><星屑膏薬><雲母印本>など、カラー写真で紹介されるアゾットの品々はやっぱり手づくり。
「見るたびに中身が変わる」と、傳次郎氏がそう言い残したこの事典をひらけば、いつでも心が連れ去られます。
夕方の匂いがする、アゾットへ。

→Amazon「すぐそこの遠い場所
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「すぐそこの遠い場所」

クラフト・エヴィング商會 著(ちくま文庫)
単行本『すぐそこの遠い場所』を、オールカラーで文庫化。
かばんやポケットに入れて持ち歩ける<アゾット>として、おすすめ。
外出先でちょっとくたびれた時、そっと取り出してページをめくれば、心はすぐに<アゾット>へ。

→Amazon「すぐそこの遠い場所 (ちくま文庫)
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「らくだこぶ書房21世紀古書目録」

クラフト・エヴィング商會 著/坂本真典 写真(筑摩書房)
らくだこぶ書房21世紀古書目録 ――未来から届いた古書目録――

筑摩書房のPR誌『ちくま』に連載されていたものを単行本化。
わたしがはじめてクラフト・エヴィング商會に接したのが、この「ちくま」連載時でした。
本書に収載されている「羊羹トイウ名ノ闇」を目にして、たちまちその世界に吸い込まれ、クラフト・エヴィング商會って、いったい何?と思ったものです。 このときの「ちくま」は、いまも大事にとってあります。

西暦2052年の京都に店を構える<らくだこぶ書房>。ある日クラフト・エヴィング商會に、この「未来の古本屋」から古書目録が届きます。 目録にはおかしな古本の紹介がずらり。添えられた手紙にあるとおり注文してみると、毎月一冊ずつ「未来の古本」が届きはじめました。
吉田浩美氏の手で丁寧につくられた「未来の古本」たちは、もちろんカラー写真で紹介。
吉田篤弘氏による本の紹介文がまたふるっています。

→Amazon「らくだこぶ書房21世紀古書目録
→セブンネットショッピング「らくだこぶ書房21世紀古書目録icon

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「ないもの、あります」

クラフト・エヴィング商會 著(筑摩書房)
ないもの、あります ――堪忍袋の緒、舌鼓、左うちわ、売ってます――

『月刊アドバタイジング』(株式会社・電通発行)および『ちくま』に連載されていたものを単行本化。
ユーモアと、ちょっぴりからしも利いた作品が読みたいという方におすすめ。
<転ばぬ先の杖><目から落ちたうろこ>果ては<冥途の土産>まで。 古今東西より取り寄せた「よく耳にはするけれど、一度としてその現物を見たことがない」ものたちの目録という趣向。
それぞれの商品は、丁寧なイラストと、辛口コピーで紹介されています。

わたしはこれ、歯医者の長ーい待ち時間に読みましたが、痛い治療へのコワさが紛れてちょうど良かったです。 商品番号・第6番<先輩風>の宣伝文句には、思わずぷふっと笑ってしまいました。
巻末には、赤瀬川原平氏のエッセイ『とりあえずビールでいいのか』もついています。

※文庫版には『テーブルの上のファーブル』から1品、書き下ろしが2品追加されています。カバー装画は、おなじみ「ゆっくり犬」です。

→Amazon「ないもの、あります」(単行本)、 「ないもの、あります (ちくま文庫)」(文庫)
→セブンネットショッピング「ないもの、ありますicon」(単行本)、 「ないもの、ありますicon」(文庫)

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「じつは、わたくしこういうものです」

クラフト・エヴィング商會 著/坂本真典 写真(平凡社)
じつは、わたくしこういうものです ――実在する、架空の人物たちの物語――

雑誌『太陽』(平凡社)に連載されていたものを単行本化。
クラフト・エヴィング商會が「もの」ではなく「ひと」をテーマに本をつくると、どうなるか?を知りたいという方におすすめ。
<月光密売人>や<地暦測量士>、<コルク・レスキュー隊>に<シチュー当番>。不思議な職業に就く「わたくし」たちが語る、すてきな物語。 「わたくし」たちの「いい顔」と、彼らにまつわるさまざまな「もの」たちは、坂本真典氏のすばらしい写真で紹介。

え?てことは、彼らは実在するの?
彼らの正体については、巻末の『じつは、わたくし本当はこういうものです』をご覧ください。
わたしはこの本を読んで、ぜひ<冬眠図書館>の5人目の司書になりたい!と思いました。<紅茶当番>ということで、どうでしょう?

→Amazon「じつは、わたくしこういうものです
→セブンネットショッピング「じつは、わたくしこういうものですicon

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「テーブルの上のファーブル-moonshiner-」

クラフト・エヴィング商會 著(筑摩書房)
テーブルの上のファーブル ――散りばめられた物語の断片――

クラフト・エヴィング商會の本にはいつも、「moonshiner/月下密造通信」というリーフレットがついています。
このリーフレットだけでも、とても丁寧につくられていて読むのが楽しみなのですが、 「号外版」とあるのが、クラフトさんたちらしい思わせぶりな伏線。
いつかきっと出ると読者の間で信じられていた「moonshiner」の第1号が、この本なのです。

この本には、目次もノンブルもありません。クラフト・エヴィング商會のこれまでの本の断片と、これからの本の断片が そこここに散りばめられた、雑誌のような絵本のような本。
「クラフト・エヴィング商會・第二期を始めるための最初の本」ということで、正直「新しいかたち」をまだ少し模索中なのかな?とも感じました。
ともあれ、クラフト・エヴィング商會の今後の活躍を、大いに期待しています。

→Amazon「テーブルの上のファーブル
→セブンネットショッピング「テーブルの上のファーブルicon

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「アナ・トレントの鞄」

クラフト・エヴィング商會 著(新潮社)
アナ・トレントの鞄 ――探し求めた鞄の中身は――

昔みた映画の中に登場した、ひとつの鞄。主人公アナ・トレント嬢が手にしていたその鞄に出会うため、 クラフト・エヴィング商會が、再び仕入れの旅に出た――
鞄を探す旅の途上で仕入れた品々を、カラー写真とともに紹介する商品カタログ。さまざまな趣向の本を経て、原点に回帰したような一冊で、 カバーの色も『どこかにいってしまったものたち』を彷彿させる、赤。ですが、もとどおりの地点に帰ったのではなく、 らせんを描いて一つ上の階にやって来た、という感じでしょうか。

このカタログに載っている品々は、『どこかにいってしまったものたち』とは違い、いたってシンプル。 詳細なパンフレットもついておらず、たたずまいも、あっさりとしています。
だからこそ読者は、この本では語られていない、いくつもの物語を空想することができるのです。

→「アナ・トレントの鞄」の読書日記はこちら

→Amazon「アナ・トレントの鞄
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●吉田 音 の本


「Think−夜に猫が身をひそめるところ」

<ミルリトン探偵局シリーズ・1>
吉田 音 著(筑摩書房)
Think―夜に猫が身をひそめるところ (ミルリトン探偵局シリーズ 1)
吉田篤弘・浩美夫妻の娘さん、吉田音ちゃんの初めての本。
中学生の音ちゃんが、近所に住んでいる学者・円田さんとふたりで<ミルリトン探偵局>を結成。 黒猫シンクが散歩のたびに持ち帰ってくる、さまざまな「もの」たちにまつわる謎を推理します。
キーワードは<猫とホルンとビスケット>。音ちゃんの一人称で語られる話と、 それぞれに独立した3つの短編が、微妙にからみあいながら展開していきます。

装幀がとてもかわいらしく、音ちゃんの住む街の風景や、シンクのおみやげの写真もふんだんに盛り込まれているのですが、 さて、吉田音なる少女は、はたして実在するのでしょうか?
それは読んでみてのお楽しみ、ということにしておきましょう。
ちなみにミルリトンというのは、作中で「この世でいちばんおいしいお菓子」と説明されていて、 ぜひ食べてみたいなと思っていたのですが、とあるお店で偶然このお菓子に出会ったときは、物語を思い出して嬉しかったものです。

→Amazon「Think―夜に猫が身をひそめるところ (ミルリトン探偵局シリーズ 1)」(単行本)
夜に猫が身をひそめるところ Think―ミルリトン探偵局シリーズ〈1〉 (ちくま文庫)」(文庫)

→セブンネットショッピング「Think 夜に猫が身をひそめるところicon」(単行本)
夜に猫が身をひそめるところ Thinkicon」(文庫)

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「Bolero−世界でいちばん幸せな屋上」

<ミルリトン探偵局シリーズ・2>
吉田 音 著(筑摩書房)
Bolero―世界でいちばん幸せな屋上 (ミルリトン探偵局シリーズ 2)
『Think 夜に猫が身をひそめるところ』の続編。
今回は円田さんが小説を書こうとして、音ちゃんと一緒にいろいろアイデアをひねります。 シンクの謎めいたおみやげも、ふたりの想像力をかきたてますが、果たして円田さんの小説は完成するのか?
キーワードは<猫とカフェと幻のレコード>。音ちゃんの一人称で語られる話と、それぞれに独立した4つの短編とで構成された 「世界でいちばん幸せな屋上」の物語。今回も、たくさんの写真が物語を彩ります。

『Think』を構成する短編のひとつ「奏者−10月のホルン−」の続編「奏者U−予期せぬ出来事」が、ほんとうに面白くて、 個人的に大好きです。今後、<ミルリトン探偵局シリーズ>が続くのであれば(どうやらそのようですが)、 この「奏者」のシリーズも続けてほしいなと思います。

→Amazon「Bolero―世界でいちばん幸せな屋上 (ミルリトン探偵局シリーズ 2)」(単行本)
世界でいちばん幸せな屋上 Bolero―ミルリトン探偵局シリーズ〈2〉 (ちくま文庫)」(文庫)

→セブンネットショッピング「Bolero 世界でいちばん幸せな屋上icon」(単行本)
世界でいちばん幸せな屋上 Boleroicon」(文庫)

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●吉田篤弘 の本


「フィンガーボウルの話のつづき」

吉田篤弘 著(新潮社)
フィンガーボウルの話のつづき ――世界の果てには、あたたかな食堂がある――

クラフト・エヴィング商會の物語作者である吉田篤弘氏の、初めてのソロ作品。 しずかな時間、ゆっくりと流れる時間を過ごしたいという方に、おすすめの一冊。
読後、じんわりとあたたかい懐かしさがこみ上げてきます。

「世界の果てにある、小さな食堂を舞台にした物語」を書きあぐねている「私」(おそらくは作者自身)の物語を軸に、16の短編がひとつながりになっています。
吉田篤弘氏の他の本ともゆるやかにつながっており、そこがまた面白いところ。 そもそも、クラフト・エヴィング商會関連の本はすべて、ひとつながりなのかもしれませんが。

※文庫版には書き下ろし一篇が加えられており、カバー装画も単行本とは異なります。どちらも吉田篤弘氏のシンプルで素敵なイラストです。

→Amazon「フィンガーボウルの話のつづき」(単行本)
フィンガーボウルの話のつづき (新潮文庫)」(文庫)

→セブンネットショッピング「フィンガーボウルの話のつづきicon」(単行本)
フィンガーボウルの話のつづきicon」(文庫)

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「つむじ風食堂の夜」

吉田篤弘 著(筑摩書房)
つむじ風食堂の夜 ――懐かしい小さな街、懐かしい小さな食堂――

『フィンガーボウルの話のつづき』で、「私」が書きあぐねていた「小さな食堂の物語」。おそらくそれが、このつむじ風食堂の物語なのでしょう。
あたたかく包み込んでくれるような夜闇を、そっと切りとって本にしたような、シンプルで素敵な装幀。しずかな夜、眠りにつく前などに読む本としておすすめです。

月舟町の十字路に、ぽつんとひとつ灯をともす、小さな食堂。そこに集まる人々の、特別なことなど何も起こらない、けれどもやさしい物語。
物語の語り手である「私」は、やはり作者自身がモデルのよう。食堂がたっている場所「十字路」は、季刊『小説トリッパー』連載の『十字路のあるところ』にもつながるキーワードです。

「月舟町」を舞台としたこの物語は、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』とともに、「月舟町三部作」として、吉田篤弘の作品の中でも根強い人気を誇ります。
三部作の三作目は、まだ刊行されていないようですが(2011年9月現在)、『つむじ風食堂の夜』は篠原哲雄監督、八嶋智人主演で映画化もされています。

→Amazon「つむじ風食堂の夜」(単行本)、 「つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)」(文庫)
→セブンネットショッピング「つむじ風食堂の夜icon」(文庫)

→Amazon「つむじ風食堂の夜 [DVD]」、 「つむじ風食堂の夜 [Blu-ray]
*映画はDVD化されてます。

→Amazon「それからはスープのことばかり考えて暮らした」(単行本)
それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)」(文庫)
*『それからはスープ〜』も、心あたたまる、とても素敵なおはなしです。おすすめ。

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「針がとぶ」

Goodbye Porkpie Hat
吉田篤弘 著(新潮社)
針がとぶ Goodbye Porkpie Hat ――てのひらの中に包み込んだ小さな光――

<月と旅と追憶>とをキーワードに、静かに響きあう七つの短編。
タイトルの『針がとぶ』は、レコードの針がとぶことです。レコードになじみのない世代には「?」という感じかもしれませんが(わたしもだけどさ)。

太陽みたいなつよくて明るい光じゃなくて、かすかで小さなやさしい光を、そっと心に灯してくれる物語。
やっぱり他の本ともつながりあっていて、『フィンガーボウルの話のつづき』や『Bolero』との符号があちこちに見当たります。
まだまだ符合はあると思うので、読んで探してみてください。見つかると、きっと嬉しいから。

ちなみに、印象的なカバー挿画はミヒャエル・ゾーヴァ。クラフト・エヴィング商會のお二人は、ミヒャエル・ゾーヴァさんがお好きなのですね。

→Amazon「針がとぶ Goodbye Porkpie Hat
→セブンネットショッピング「針がとぶ Goodbye Porkpie Haticon

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「百鼠」

吉田篤弘 著(筑摩書房)
百鼠 ――はじまりの前の物語――

まだ何もはじまらない、これから何かがはじまる前の物語たち。それは、希望を孕む物語ということでもあります。
「一角獣」「百鼠」「到来」の三編がおさめられていますが、おすすめはやはり表題作の「百鼠」でしょう。

主人公は天上の<階段都市>に暮らす<朗読鼠>。 彼は、三人称しか使ってはならない天の住人でありながら、禁じられた一人称への憧れ止みがたく、 やがて天から見れば「死」と同義と言われる、地上に降り立つことになります。
<風司><命名師><水蒸気投影><雷楼>等々、想像力をかきたてられるキーワードが一杯の天上都市。 クラフト・エヴィング商會の物語作者ならではの舞台設定と言えるでしょう。

→Amazon「百鼠」(単行本)、 「百鼠 (ちくま文庫)」(文庫)
→セブンネットショッピング「百鼠icon」(単行本)、 「百鼠icon」(文庫)

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「78(ナナハチ)」

吉田篤弘 著(小学館)
78(ナナハチ) ――78回転で回るちいさな世界――

「その昔、世界は78回転で回っていた」
LPレコードでもなく、シングルレコードでもなく、もうずっと昔に見当たらなくなってしまったSPレコード。
蓄音機でなければ聴くことができない、78回転で回るレコードに刻まれた、懐かしい音楽をモチーフに、いくつもの物語が紡がれてゆきます。

少年の頃の夏の日の、廃線の終着駅をめざす短い旅を描いた「オリエンタル・ツイストドーナツ」。 <78(ナナハチ)>という名のSPレコード専門店に並べられた、SPレコードが語る、店主と常連客の日々のつれづれ「第三の男」。 とある小さな楽団<ローリング・シェイキング&ジングル>の、ささやかな始まりについてのお話「ゆがんだ球体の上の小さな楽団」…。
全部で13のちいさな物語のかけらが、すべてかすかに響きあい、読み終えたあと、懐かしくてやさしくてあたたかい、ひとつながりの物語の輪郭が、おぼろげに感じられてくるのです。
丁寧に奏でられた、13の楽曲が詰まった、一枚のアルバムのように。

→「78(ナナハチ)」の読書日記はこちら

→Amazon「78(ナナハチ)」(単行本)、 「78 (小学館文庫)」(文庫)
→セブンネットショッピング「78icon」(単行本)、 「78icon」(文庫)

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「十字路のあるところ」

吉田篤弘 文/坂本真典 写真(朝日新聞社)
十字路のあるところ ――街でひろった、六つの異界の断片――

「小説トリッパー」の連載に、加筆・修正を施して単行本化した一冊。
クラフト・エヴィング商會の物語作家、吉田篤弘氏がつづる文章と、写真家、坂本真典氏が撮った実在の街の風景とで、 六つのやさしい物語絵巻を織り上げています。

吉田篤弘氏の物語の素晴らしさは、いつも、ほっこりとあたたかみのあること。 そして、日常にまぎれこんでいる、ささやかな物語=異界の断片を、何でもないもののように拾い上げ、手にひらに載せて、ほら、と見せてくれること。
この本では、物語に坂本真典氏の写真が織り込まれることで、現実と非現実とがまじりあう、独特の雰囲気がひろがっています。
吉田浩美・吉田篤弘の両氏による装幀は、カバーが透け感のある白で、表紙のうすい緑色がかすかに透けて見えるようになっています。 タイトルの文字も、オビも、あそび紙も、しおり紐も緑系統で統一。
内容と調和した、渋い体裁の一冊になっています。

→「十字路のあるところ」の読書日記はこちら

→Amazon「十字路のあるところ
→セブンネットショッピング「十字路のあるところicon

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*吉田篤弘のその他の本(どの本も、ほっこり和みの一冊です)
という、はなし 空ばかり見ていた それからはスープのことばかり考えて暮らした 小さな男 * 静かな声


●吉田浩美 の本


「a piece of cake」

吉田浩美 著(筑摩書房)
a piece of cake ――ささやかなものを愛する幸せ――

クラフト・エヴィング商會の店主・吉田浩美氏の初めてのソロ作品。
タイトルの<a piece of cake>は「ひと切れのケーキ」という意味のほかに「朝めし前さ」という意味があるそうです。
ケーキのひと切れのようにささやかな本を、「朝めし前さ」の何てことない気軽さでつくってゆけたらという、 作者の願いが込められています。

作者がひとつひとつ、幸せな気持ちで手作りした小さな本が12冊つまった、小さな本。それぞれの本たちは、いつものように 坂本真典氏の写真で紹介。本をいとおしむ作者の気持ちが、ひしひしと伝わってきます。
この本自体はちょっとこぶりで、ピンクのオビと、おそろいのしおりひもが、とてもかわいい装丁です。

→Amazon「a piece of cake
→セブンネットショッピング「a piece of cakeicon

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●その他関連本


「グラフィック・デザイナーの仕事」

太陽レクチャー・ブック001
祖父江慎,角田純一,グルーヴィジョンズ,
クラフト・エヴィング商會,他 著/平林享子 編(平凡社)
グラフィック・デザイナーの仕事
現在、第一線で活躍するグラフィック・デザイナーたちが、デザイナーという仕事についてレクチャーする本。
祖父江慎、角田純一、グルーヴィジョンズ、クラフト・エヴィング商會の4組のデザイナーが、各々の仕事について語っています。

クラフト・エヴィング商會は<クラフト・エヴィング商會流・本のつくり方「残りものでいかにおいしいゴハンをつくるか」> と題して、商會のはじまり、『クラウド・コレクター』を例にした本のつくり方、<吉田音>ちゃんの秘密などについて話しています。 デザイナー志望の人のみならず、ファンにとっても興味深いおはなしです。

→Amazon「グラフィック・デザイナーの仕事
→セブンネットショッピング「グラフィック・デザイナーの仕事icon

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「犬」

クラフト・エヴィング商會プレゼンツ
川端康成,幸田文,志賀直哉,林芙美子,他 著(中央公論新社)
犬―クラフト・エヴィング商会プレゼンツ
1954年(昭和29年)に中央公論社より発行された単行本『犬』を底本とし、 新たにクラフト・エヴィング商會の創作・デザインを加えて再編集したもの。下記『猫』とデザインが対になっています。

9人の(教科書にも載っている)有名な作家たちが、愛すべき犬たちとの暮らしを綴った幻の随筆集。
巻末には、『テーブルの上のファーブル』と『a piece of cake』に登場する<ゆっくり犬>のおはなし、 『ゆっくり犬の冒険<距離を置くの巻>』も収録されています。

→Amazon「犬―クラフト・エヴィング商会プレゼンツ」(単行本)、「犬 (中公文庫)」(文庫)
→セブンネットショッピング「犬 クラフト・エヴィング商会プレゼンツicon」(単行本)

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「猫」

クラフト・エヴィング商會プレゼンツ
大佛次郎,谷崎潤一郎,寺田寅彦,柳田國男,他 著(中央公論新社)
猫―クラフト・エヴィング商会プレゼンツ
1954年(昭和29年)に中央公論社より発行された単行本『猫』を底本とし、 新たにクラフト・エヴィング商會の創作・デザインを加えて再編集したもの。上記『犬』とデザインが対になっています。

11人の(教科書にも載っている)有名な作家たちが、きまぐれな猫たちに魅せられて綴った珠玉の随筆集。
巻末には、<ミルリトン探偵局シリーズ>に登場する黒猫<シンク>のおはなし『忘れもの、探しもの』も収録されています。

→Amazon「猫―クラフト・エヴィング商会プレゼンツ」(単行本)、「猫 (中公文庫)」(文庫)
→セブンネットショッピング「猫 クラフト・エヴィング商会プレゼンツicon」(単行本)

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クラフト・エヴィング商會の本に興味をもったなら…
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