■本の蒐集記録(2010年11-12月)


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2010/12/27(Mon)
●フランシス・スポールディング 著/吉川節子 訳
『ホイッスラー』(西村書店)
●黒江光彦 解説『シャルダン 新潮美術文庫 15』(新潮社)

ホイッスラー (アート・ライブラリー) 『ホイッスラー』は、西村書店の「アート・ライブラリー」シリーズの一冊。
ジェームズ・マクニール・ホイッスラーは、印象派の影響もありますが、独自の作風を展開した画家として知られています。
『西洋絵画史WHO'S WHO』(→Amazon「西洋絵画史WHO’S WHO―カラー版」)を見ていて、「灰色と黒のアレンジメント:画家の母の肖像」という絵が気になったので、画集を手にとってみました。
「アート・ライブラリー」シリーズは画集の中では安価で、気軽に買えるところが魅力です。なにしろ安価だから、印刷がとてもきれいというわけにはいかないのですが…。
でもこの画集には、わたしが見たいと思っていたホイッスラーの主だった作品が収録されていたので、興味深く眺めました。
なんというか、乙女心をくずぐる絵も多いのです。「ピアノ」「緑とバラ色のハーモニー:音楽室」「白のシンフォニー」のシリーズ、それから何といっても「グレーと緑のハーモニー:シスリー・アレグザンダー嬢」は必見。肖像画なのだけど、女の子の着ている服がかわいい。
ホイッスラーは、この少女の服のデザインを自分で決めたのだそうです。おしゃれで完璧主義な人だったのですね。

→「サルヴァスタイル美術館」で、ホイッスラーの作品を確認!

シャルダン (新潮美術文庫 15) 『シャルダン』は、新潮美術文庫の一冊。これも安価でありがたいシリーズ。
ジャン・シメオン・シャルダンは、ロココ時代のフランスの画家で、ただ単にこの表紙の絵に惹かれたのです。
そういえば『西洋絵画史WHO'S WHO』をめくっていて、「銅製の貯水器」という、ただ、でんとした貯水器を描いただけの絵が、ロココっぽくなくて印象に残っていたのでした。
この小さな画集を買ってみたら、シャルダンの絵は、どれもほんとうに誠実で堅実で率直で、優美で繊細なロココの雰囲気とは一線を画しています。
むしろフェルメールをはじめとする17世紀オランダ絵画の影響が感じられて、ロココはちょっとな〜とひいてしまう日本人(?)の心にも響く感じ。
愛らしい絵や美しい絵もいろいろありますが、老妻をありのままに描いた「シャルダン夫人の肖像」が、なんともあたたかみが感じられて好きです。

ずっと遠まきに見ていた西洋絵画も、時代ごとのファッションや風俗が垣間見えてきたりして、だんだん面白くなってきました。

→「サルヴァスタイル美術館」で、シャルダンの作品を確認!

→Amazon「ホイッスラー (アート・ライブラリー)
→Amazon「シャルダン (新潮美術文庫 15)

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2010/12/20(Mon)
●須賀敦子 著『須賀敦子全集 第5巻』(河出文庫)
●ロベルト・ズッカーレ マティアス・ヴェニガー マンフレット・ヴントラム 著『ゴシック』(タッシェン)

須賀敦子全集〈第5巻〉イタリアの詩人たち、ウンベルト・サバ詩集ほか (河出文庫) 『須賀敦子全集 第5巻』には、単行本としてまとめられたイタリア詩人の紹介『イタリアの詩人たち』と、翻訳『ウンベルト・サバ詩集』、それから「ミケランジェロの詩と手紙」「歌曲のためのナポリ詩集」の翻訳が収録されています。
『イタリアの詩人たち』の中で、須賀さんはサバについてこう書いています。
すべての真の芸術作品と同じように、サバの詩は、まんまと私を騙しおおせていたのに違いない。
須賀敦子の読者は、同じことを彼女の作品に対して思うことでしょう。
須賀敦子のミラノに、ヴェネツィアに、アッシジに。憧れつづけて実際に訪れたとしても、そこにはきっと(須賀さんがトリエステについて書いているように)「現実の都市の平凡な営み」があるだけで、わたしたち読者は、彼女にまんまと騙されていたことに、そのときに気づくのでしょう。
「真の芸術作品」に、たやすく騙されてしまうのは、とても楽しいことです。

ゴシック (ニューベーシック) 『ゴシック』は、タッシェンのベーシック・ジャンルシリーズの一冊。
13世紀から15世紀にかけての、ヨーロッパのゴシック、国際ゴシックの絵画を集めた画集です。
ゴシックは、最近では「ゴス」とか呼ばれて(?)、なんだか本来の様式とは違うイメージでとらえられてしまっている気がしますが…。
本来の様式って何かと聞かれると、まあわたしもよくわからないんですけど(^^;)
この画集には、チマブーエ、ジョット、シモーネ・マルティーニなどの有名な画家の作品から、「グラーツの聖母の画家」や「ウィルトンニ連祭壇画の画家」などと作品の名で呼ばれる画家たちの作品がおさめられ、詳細な解説もついていて、ゴシック絵画について知りたい向きにはおすすめです。
それはともかくこの表紙(フーケの「ムランの聖母子」という有名な絵)が、ちょっと怖いというか、わたしは好きでないのですが…。
この表紙の絵は異色なほうで、ゴシックってもっと金色で幻想的で、敬虔で優美な感じの作品が多いとわたしは思うので、ひるまず手にとってみてくださいね。
→「サルヴァスタイル美術館」で、ゴシック美術について確認!

→Amazon「須賀敦子全集〈第5巻〉イタリアの詩人たち、ウンベルト・サバ詩集ほか (河出文庫)
→Amazon「ゴシック (ニューベーシック)

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2010/12/13(Mon)
●須賀敦子 著『須賀敦子全集 第4巻』(河出文庫)
●須賀敦子 松山 巖 アレッサンドロ・ジェレヴィーニ 芸術新潮編集部 著『須賀敦子が歩いた道』(新潮社)
●佐藤達生 木俣元一 著
『図説 大聖堂物語―ゴシックの建築と美術』(河出書房新社)

須賀敦子全集〈第4巻〉 (河出文庫) とんぼの本 須賀敦子が歩いた道 読めば読むほど魅了される須賀敦子の文章。
『須賀敦子全集 第4巻』には、『遠い朝の本たち』『本に読まれて』と、1991年〜1997年に発表された書評・映画評などが収録されています。
『須賀敦子が歩いた道』は、新潮社の「とんぼの本」シリーズの一冊で、これは「芸術新潮」2008年10月号の特集を再編集したものということです。
須賀さんのエッセイを読んでいて、アッシジの風景や、シモーネ・マルティーニの絵や、トリエステの坂道ってどんなふうなのか、ちょっと知りたいなと思ったとき、この本はとても便利です。
『須賀敦子全集』の編集委員のお一人でもある松山巖氏が、須賀さんがモランディの絵を好きだったと書いていらして、ああやっぱりそうなんだ〜と納得したり。
フラ・アンジェリコも、須賀さんのお好きな画家のひとりとして触れられていて、須賀さんのエッセイを読む前からフラ・アンジェリコ好きだったわたしは、なんとなく「ふふふ」と思ってしまいました(要するにミーハーなんですよ〜^^;)。

図説 大聖堂物語―ゴシックの建築と美術 (ふくろうの本) 『図説 大聖堂物語』は、須賀さんのエッセイに出てくる大聖堂についての記述に、がぜん興味が湧いたので購入(ミーハーだから〜^^;)。
いや、もともとなんとなく、ゴシックの大聖堂って好きだなあとは思っていたけど、ゴシックとは、大聖堂とは、なんて考えたこともなかった。
でも興味あるものについて、ちょっとしたことを知るだけでも、とても面白い。
たとえば<修道士カドフェル>シリーズを読んでいて、教会堂の中の描写が出てくるけど、側廊とか袖廊とか内陣とか、具体的にどこのことを指すのか、よくわからなかったのが、これを読めばなるほど〜という感じだし。
大聖堂のあの特徴的な、外壁にとりつけられたアーチ、あれが巨大な建物を支えるための大発明フライング・バットレス(飛び梁)というものだったとわかって、確かウジェーヌ・アジェの写真のなかにも、このフライング・バットレスの部分を映した写真があったよな〜と思ったり。
あと単純に、ゴシックの大聖堂の姿が好きなので、もっといろんな大聖堂の写真を見たいな〜なんて思いました(そりゃ実際に見に行くのがいちばん良いのだろうけど)。

→<修道士カドフェル>シリーズの紹介はこちら

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→Amazon「とんぼの本 須賀敦子が歩いた道
→Amazon「図説 大聖堂物語―ゴシックの建築と美術 (ふくろうの本)

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2010/12/06(Mon)
●千足伸行 解説『ユトリロ 新潮美術文庫 46』(新潮社)
●井上輝夫〔ほか〕著『ユトリロと古きよきパリ』(新潮社)

iconicon ユトリロは、日本で人気のある画家の一人ではないでしょうか。
…そのわりには、容易に手に入る画集が少ないのは、なぜだろうという感じですが。

新潮美術文庫は、安価でハンディで、作品解説も簡潔で、初心者の美術鑑賞にぴったりだと思います。
見開きにひとつのカラー図版と短い解説文という構成で、巻末に画家の人生と作品を紹介するエッセイと、年表が付されています。
このユトリロ編では、32の作品を収録。千足伸行氏の作品解説は、突き放したような厳しさもあり、そのことがかえって誠実さを感じさせるし、巻末のエッセイ「祈りのモンマルトル」は、大変わかりやすく興味深いものでした。

『ユトリロと古きよきパリ』は、新潮社の「とんぼの本」シリーズの一冊で、ユトリロが描いたパリの風景とともに、当時の絵はがきや現在の写真を配して、「古きよきパリ」の姿を追うというもの。
興味深かったのが、横江文憲氏による「パリ 絵画と写真の出会い」という文章で、ウジェーヌ・アジェのパリ写真が紹介され、ユトリロとアジェには通うものがあると綴られています。
アジェの写真も、ユトリロの絵も、なんとなく好きだなと思っていたので、そうか二人には似たところがあるのか〜、と納得させられました。
無論ユトリロは、白が色彩の、モンマルトルが世界のすべてではないことをよく知っていた。しかしユトリロはモンマルトルに生き、そこの石畳や石壁に、家々の閉ざされた窓や扉に、ちょうどモディリアーニが、よく知る人々の顔に見てとったものを、 つまり自然を見失い、神を見失った近代人の心象風景のかげりを見てとったのである。

千足伸行 解説『ユトリロ 新潮美術文庫 46』85ページより

→写真集『ウジェーヌ・アジェのパリ』の紹介はこちら

→Amazon「ユトリロ (新潮美術文庫 46)
→Amazon「ユトリロと古きよきパリ (とんぼの本)

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2010/11/30(Tue)
●渡辺 晋輔 著
『ジョットとスクロヴェーニ礼拝堂』(小学館)
●Marilyn Aronberg Lavin 著『Piero Della Francesca: San Francesco, Arezzo』(George Braziller)

ジョットとスクロヴェーニ礼拝堂 (Shotor Museum) 須賀敦子のエッセイを読んでいて、どうしても興味が湧いてきてしまうのは、イタリアをはじめとするヨーロッパの美術や建築について。

ジョットは、西洋美術を語る上で決定的に重要な画家であり、もちろん須賀敦子もエッセイのなかでその作品について幾度も触れています。
『ジョットとスクロヴェーニ礼拝堂』は、イタリア、パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂に描かれたジョットの壁画を、カラー写真と簡潔な解説文で紹介した好著。
礼拝堂の壁一面に描かれた壁画は、実際に見学するとしたら、高いところにある絵などは鑑賞しづらいと思いますが、この本は、見開きにひとつの絵のカラー写真と短い解説という構成で、見やすく分かりやすい。
教会の壁画というのは、おそらく文字が読めない人たちのために、聖書の物語を説明する役割があったと思うのですが、この本はわたしにとっても、聖母マリアやキリストの生涯を概観するのに良かったです。とくに聖書(の正典)には記述がない、ヨアキム伝・マリア伝が興味深かった。
ジョットの絵の素晴らしさについては、わたしなぞが何か言うのはおこがましいのですが…、おお、これが「ジョットの青」か〜、とか平凡な感想を抱きながら眺めました。
→「サルヴァスタイル美術館」で、ジョットの作品を確認!

Piero Della Francesca: San Francesco, Arezzo (The Great Fresco Cycles of the Renaissance) 『Piero Della Francesca: San Francesco, Arezzo』は、ピエロ・デッラ・フランチェスカの絵が見たくて、価格が安いので購入した洋書。
須賀敦子のエッセイにも登場する、サン・フランチェスコ聖堂礼拝堂の壁画「聖十字架伝説」がおさめられた画集です。
相変わらず英語が読めないので、解説文がわからないのがもったいないけど…(とほほ)
この表紙が「シバの女王の聖十字架の木の礼拝とソロモン王との会見」の部分で、この絵について須賀敦子は『時のかけらたち』の中で、「自分にとって、存在のひとつの基本になるようなもの」と書いています。
人についても、絵画についても、彫刻についても、建築についても、須賀さんの対象を見つめる目は、すごいと思う。
何事も軽く流したり、適当にやりすごしたりしない。まっすぐで、繊細で、深い眼差し。
→「サルヴァスタイル美術館」で、ピエロ・デッラ・フランチェスカの作品を確認!

→Amazon「ジョットとスクロヴェーニ礼拝堂 (Shotor Museum)
→Amazon「Piero Della Francesca: San Francesco, Arezzo (The Great Fresco Cycles of the Renaissance)

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2010/11/23(Tue)
●須賀敦子 著
『須賀敦子全集 第2巻』『須賀敦子全集 第3巻』(河出文庫)

須賀敦子全集 第2巻 (河出文庫) 須賀敦子全集〈第3巻〉 (河出文庫) 夢中になる作家と出会ったら、その人の作品を一刻も早く手にいれておかなければ、と思ってしまいます。
そんなわけで、『須賀敦子全集 第2巻』『須賀敦子全集 第3巻』をさっそく購入。

『須賀敦子全集 第2巻』には、『ヴェネツィアの宿』『トリエステの坂道』と、20歳代からのエッセイ24篇収録。
『須賀敦子全集 第3巻』には、『ユルスナールの靴』『時のかけらたち』『地図のない道』と、エッセイ18篇収録。
『ヴェネツィアの宿』や『トリエステの坂道』は、須賀さんの家族についての、突っ込んだ、私小説的な内容が綴られているということで、読む前はまだ、やっぱり難しいかも…なんて思っていたのだけど、読み始めたらひきこまれて、どんどん読んでしまいます。
あっという間に読んだらもったいないので、あえてひと息つきながら、ゆっくり読むように心がけています。

須賀敦子が敬虔なカトリック信者だったことは、随筆を読むまで知りませんでした。
なんとなく、なるほどと思いました。
『ヴェネツィアの宿』の中の「大聖堂まで」という1篇で、教会建築、ことにカテドラル(大聖堂)につよく惹かれたことが書かれていて、胸を打たれました。
ファサードを、内部空間の緊張を外から支えるというアルク・ブゥタン(飛び梁)を、人の手で切り出され、運ばれ、積み重ねられた石を、製法が職人といっしょに絶えてしまったというステンド・グラスの青を、どうしても自分の手でふれ、自分の目でたしかめなければ、その先のことがなにも見えないと思い込むほど、カテドラルが私を捉えた。

『須賀敦子全集 第2巻』127ページより

こんな人だからこそ、パリのノートル・ダム大聖堂の、あの薔薇窓の美しさについて、「白い石の繊細な枠ぐみにふちどられた幾何もようの花びらが、凍てついた花火のように、暗黒のガラスの部分を抱いたまま、しずかにきらめいている」(同じく「大聖堂まで」より、『須賀敦子全集 第2巻』125-126ページ)と、表現することができたのでしょう。
雑誌クウネルVol.41のフランス特集の記事のなかで、この須賀さんの文章が引用されていて、ゴシック様式の教会建築を、なんとなく好きだなと思っていたから、印象に残っていたのでした。

→Amazon「須賀敦子全集 第2巻 (河出文庫)
→Amazon「須賀敦子全集〈第3巻〉 (河出文庫)

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2010/11/16(Tue)
●須賀敦子 著『須賀敦子全集 第1巻』(河出文庫)
●イサク・ディーネセン 著/桝田啓介 訳
『バベットの晩餐会』(ちくま文庫)

須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫) バベットの晩餐会 (ちくま文庫) 東京出張の新幹線の中で、集中して読もうと思い購入した、文庫2冊。
『バベットの晩餐会』は、映画が有名なのですよね。観たことはないのだけれど、なんとなく舞台設定やストーリーが今の気分かなと思ったのです。

須賀敦子は、ずっと気になっていた随筆家。
酒井駒子 画『こうちゃん』(河出書房新社)を、酒井駒子への興味から手にとって読んだのでしたが、須賀敦子の美しい文章にも、つよく惹かれました。
ただ読んでいて胸が痛むような、繊細な、孤独感や喪失感、また言葉はやさしいのに、真意をなかなか汲みとれないようでもどかしい、難解とも思えるテキストに、須賀敦子を読むには覚悟がいるという印象を受けてしまって、なかなか本格的に須賀作品を読むには至らなかったのでした。
本が届いてすぐに、もしかして難しくて途中で読めなくなるかもしれないと心配しながらも、『須賀敦子全集 第1巻』のページをめくってみると、巻頭に収録された「遠い霧の匂い」という随筆、その1篇で、あまりの素晴らしさ完璧さに打ちのめされて、これは須賀作品を集中して読まなければ!と、たちまち須賀敦子のファンになってしまったのでした。
『須賀敦子全集 第1巻』には、女流文学賞を受賞した『ミラノ 霧の風景』、『コルシア書店の仲間たち』、また単行本未収録の連作エッセイ『旅のあいまに』が収録されており、「遠い霧の匂い」は『ミラノ 霧の風景』の冒頭に置かれた、珠玉の1篇です。

きっとわたしのような読者は、たくさんいることだろうと思います(^^;
須賀作品については、全集が文庫化されるくらい人気があるのだから、わたしが今さら言うことは何もないのだけれど、もし難しいかも?と、気になりながらも読むのを躊躇している人がいるなら、ぜひ臆せずに読んでみてくださいと言いたいです。

それから、『須賀敦子全集』のカバー写真は、ルイジ・ギッリという写真家が、イタリアの画家モランディのアトリエを撮影したものから選ばれています。
『須賀敦子全集』に使われた作品を含む、静謐で美しい写真集『Atelier Morandi』は、リムアート(http://www.limart.net/)のオンラインショップで購入可能です。
モランディの絵みたいだけどそうじゃない、このカバー写真がとても気になって、写真集があれば欲しいなと調べたけれど、けっこうなお値段だったので、わたしはあきらめたのですが…(^^;

→須賀敦子 文/酒井駒子 画『こうちゃん』の紹介はこちら

→Amazon「須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)
→Amazon「バベットの晩餐会 (ちくま文庫)

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2010/11/09(Tue)
●Clement C. Moore 著/Niroot Puttapipat 絵『The Night Before Christmas: A Magical Cut-Paper Edition』(Candlewick Press)

The Night Before Christmas: A Magical Cut-Paper Edition クレメント・クラーク・ムーアの詩『The Night Before Christmas』の仕掛け絵本です。
仕掛け絵本といっても、大きなポップアップは最後の見開きだけで、A Magical Cut-Paper Editionとあるように、絵の窓の部分の紙が切り抜かれていて、向こう側が見えるといったような、ごくシンプルなものです。
おなじ『The Night Before Christmas』の仕掛け絵本なら、紙の魔術師ロバート・サブダの目をみはるようなポップアップがありますが、この絵本の特徴は、絵が繊細なシルエット画で、サブダの世界とはまた違ったクラシカルな雰囲気を作り上げているということでしょうか。
西洋ならではのシルエット画に、赤、緑、金のさし色が映えて、クリスマスらしい画面になっているし、最後の見開きのポップアップも繊細で美しいです。
わたしが購入したのは洋書版。邦訳版も出ていますが、洋書版にくらべて割高です。
英語が読める、または『The Night Before Christmas』の詩の内容を知っている人なら、洋書版を買ったほうがお得かもしれません(テキストが英語のほうが、なんとなくおしゃれな気もする…^^;)。
小学校以上の女の子、またはクラシカルな絵本が好きな大人の女性への、クリスマスプレゼントに良さそうな一冊です。

→「The Night Before Christmas―特選クリスマスの絵本―」はこちら

→Amazon「The Night Before Christmas: A Magical Cut-Paper Edition」(洋書)
→Amazon「クリスマスのまえのよる (しかけえほん)」(邦訳版)

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2010/11/02(Tue)
●エロール・ル・カイン 文・絵/灰島かり 訳
『アーサー王の剣』(ほるぷ出版)
●アンシア・デイビス 再話/エロール・ル・カイン 絵/灰島かり 訳
『サー・オルフェオ』(ほるぷ出版)

アーサー王の剣 サー・オルフェオ 『アーサー王の剣』は、エロール・ル・カインの処女絵本。
アーサー王伝説のなかでもよく知られた、魔法の剣エクスカリバーのエピソードが、ル・カインらしい様式美に満ちた、それでいてどこかユーモラスな絵で描かれています。
やっぱりル・カインの絵は魔法の空気をよく伝えてくれるなあ、と思いながら読んだのでしたが、訳者あとがきによれば、ル・カインはこの絵本にケルトの文様を巧みにとりいれているとのこと。
ケルトの文様といえば、左下の本のカバー装画など典型的だと思います。文字をもたず吟遊詩人のみが伝承を語り伝え、ドルイドを信じた民族の古い文様は、魔法の雰囲気をぐっともりあげてくれます。
この絵本はまた、見開きの絵の美しさも際立っています。
金の翼をもち、金のラッパを吹きならす人たちが、塔のある城の絵のまわりに、ぐるっと円になって描かれており、中世の天使像に通うものがあるなと思いました。

ケルトの神話―女神と英雄と妖精と (ちくま文庫) 『サー・オルフェオ』は、中世イギリスで、吟遊詩人たちによって語り伝えられたロマンスを短く再話したものに、ル・カインがクラシカルな絵を寄せた美しい一冊。
このロマンスは、トールキンの『サー・ガウェインと緑の騎士』(原書房)にも収録されていて、ル・カインの絵本も読んでみたいと思っていたのでした。
この絵本でもル・カインはケルトの意匠を使っていて、『アーサー王の剣』よりもケルティックな雰囲気が前面に出ています。
ギリシャ神話とケルトの伝承がまざりあっているというこのロマンスに、ケルトの文様はこの上なくしっくりきます。
表紙にもなっている、白妙の衣装をきた女人ばかりの狩りの一団が、螺旋を描くように山肌に開いた不思議な扉のなかへ消えていく一葉は、ことにケルトの妖精譚を思い出させる妖しさに満ちています。

→「エロール・ル・カインの絵本」はこちら
→トールキン『サー・ガウェインと緑の騎士』の紹介はこちら

→Amazon「アーサー王の剣
→Amazon「サー・オルフェオ

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