■J.R.R.トールキンの本

〜ファンタジーを読むことの至福〜


オックスフォード大学教授をつとめた言語学者にして、あのファンタジーの金字塔『指輪物語』を生み出したJ.R.R.トールキン。
このページでは、管理人が読んだトールキン作品(物語・絵本・エッセイ)を、ごく簡単にではありますが紹介しています。
やっぱりトールキン教授の生み出した作品はどれも楽しいものばかり、ファンタジーを読むことの至福を教えてくれるのです。



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著者紹介

「ホビットの冒険」

「指輪物語」

「サー・ガウェインと緑の騎士」

「サンタ・クロースからの手紙」

「ブリスさん」

「妖精物語の国へ」




●著者紹介


J.R.R.トールキン

John Ronald Reuel Tolkien(1892.1.3-1973.9.2)

ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンはイギリスの作家、言語学者。
1892年、南アフリカで生まれる。サクソン系イングランド出身の銀行員だった父を四歳で亡くし、以後イギリスで暮らす。12歳のときに母も病死、弟とともにカトリックの司祭にひきとられた。
苦学して1915年オックスフォード大学を卒業、1915年から1918年まで第一次世界大戦に従軍。以後リーズ大学を経てオックスフォード大学教授となる。
古代、中世英語・英文学の権威として知られ、わが子に語った話をもとに書いた『ホビットの冒険』(1937)で、叙事詩ファンタジーというジャンルを創り、『指輪物語』(1954-1955)は世界的ベストセラーとなる。
1973年、81歳で永眠。

『指輪物語』はかつてアメリカで熱狂的に迎えられ、学生や知識人層でブームを巻き起こしたほどで、日本でもファンタジーの金字塔、現代のRPGの源泉として長くファンに親しまれてきたが、2002年春より映画「ロード・オブ・ザ・リング」3部作が公開されるや、ファン層はさらに広がりをみせた。

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●物語


「ホビットの冒険」

J.R.R.トールキン 作/瀬田貞二 訳(岩波書店)
ホビットの冒険 改版
平凡な暮らしを愛するホビット小人のビルボ・バギンズ。 ある日、魔法使いのガンダルフと13人のドワーフ小人に誘われて、とてつもない冒険の旅に出かけることに。
山脈を越え、地に潜り、森を抜けて、竜に奪われたドワーフの宝を取り返すため、ビルボと仲間たちの旅は続きます。

トールキンが自分の子どもたちに語り聞かせたお話がもとになった、壮大なファンタジー。
トールキンの物語の美点は、いくつも挙げられると思います。
古典や伝承を踏まえた、骨太の世界観。伝説の中から生き生きとよみがえったエルフやドワーフなどの登場人物たち。経験したものでなければ書けない、リアルな戦闘場面。苦しみを乗り越えたあとのハッピーエンド。
けれども何よりトールキンの物語の素晴らしいことは、ただストーリーという名のジェットコースターに乗っかって、結末まで猛スピードで連れていかれるような安易な読書体験ではなく、登場人物たちと一緒に、自分も旅に出かけ、一歩一歩、旅を続けなければ、幸福な結末を見ることはできない、そういった実感をともなう読書体験をさせてくれることだと思うのです。

→Amazon「ホビットの冒険

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「指輪物語」

第一部 旅の仲間
第二部 二つの塔
第三部 王の帰還
追補編
J.R.R.トールキン 著/瀬田貞二 訳(評論社)
新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫)
絶大な悪の力で世界を統べようと企むサウロンが作った、ひとつの指輪。 数奇な運命をたどって、ホビット小人ビルボ・バギンズの手にわたった指輪でしたが、ふたたびサウロンが手にすれば、世界は悪の力に支配されてしまうのです。
サウロンの野望を阻止する方法はただひとつ、力の指輪を、この世からなくすことだけ―。
ビルボの甥フロドは、指輪を火の山の「滅びの亀裂」に捨てるため、長く苦しい旅に出ます。 ホビット、人間、エルフ、ドワーフ…たくさんの仲間たちに助けられながら。

映画「ロード・オブ・ザ・リング」の原作、と紹介するほうが、わかりやすいかもしれません。 映画化で日本でも多くの人に知られるようになったこの物語は、半世紀ものあいだ読み継がれてきた、まさに”ファンタジーの金字塔”です。
北欧神話など古典伝承に深い造詣のあるトールキンが、子どもたちのために書いた「ホビットの冒険」から、 さらに壮大な世界観をひきだし、大人たちのために書いたのが、この「指輪物語」なのです。
現代のファンタジー、ことにRPGの源泉になっている作品。でもこの物語を読むことは、ゲームをすることとはまったく異なっています。 かなりの読書好きでも、途中で挫折しかけたという話をよく耳にするほど、艱難辛苦の長い旅路は、 けれど読み終えたとき、ファンタジーならではのカタルシス効果を読者に与えずにはおきません。

→Amazon「新版 指輪物語(単行本)」 「新版 指輪物語(評論社文庫)

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「サー・ガウェインと緑の騎士」

トールキンのアーサー王物語
J.R.R.トールキン 著/山本史郎 訳(原書房)
サー・ガウェインと緑の騎士―トールキンのアーサー王物語
「トールキンのアーサー王物語」という副題がついているとおり、トールキンが独自の解釈で中世の物語詩を語りなおした表題作 「サー・ガウェインと緑の騎士」ほか、「真珠」「サー・オルフェオ」「ガウェインの別れの歌」の4篇が収録された一冊。 さらに作品理解のため、トールキン自身の解題も添えられています。

「サー・ガウェインと緑の騎士」は、アーサー王の宮廷でも、もっとも高潔な騎士ガウェインが主人公の、騎士道物語。
ストーリーはまさに古典的というか、お約束どおりに展開していくのですが、そこがとっても良いのです。 現代の物語が忘れてしまった、 美しい形式が、ここに留められている、といった感があります。 描かれる自然の風物はみずみずしく、牧歌的で、宮廷・社交界の様子などは、華やかでありながら礼儀正しく、古き良き時代の美や高潔の精神がうかがえます。 何よりガウェインの、つよく、たくましく、誠実で、それでいて人間味あふれる人柄が魅力的。

→読書日記に書いた、この本の感想はこちら
→ル・カイン『サー・オルフェオ』の紹介はこちら

→Amazon「サー・ガウェインと緑の騎士―トールキンのアーサー王物語

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●絵本


「サンタ・クロースからの手紙」

J.R.R.トールキン 著/ベイリー・トールキン 編/せた ていじ 訳(評論社)
サンタ・クロースからの手紙 (評論社の児童図書館・絵本の部屋)
今年はいつもよりもっと手がふるえる。これも北極熊のせいだ! 世にたぐいなく大きなドカーンだった。それに今までにためしなく大きな大きな花火だったよ。おかげで北極柱(ノース・ポール)はまっくろ。星と云う星はゆすぶられて位置がずれてしまう。月は四つに割れ――月の男がうちの裏庭に落っこちてきおった。

『サンタ・クロースからの手紙』1926年の手紙より

『サンタ・クロースからの手紙』は、『ホビットの冒険』『指輪物語』などのすぐれたファンタジー作品を生み出したトールキンが、サンタ・クロースになりかわり、 自分の4人の子どもたちに毎年毎年送りつづけた手紙を、絵本のかたちにまとめた一冊。
つまり公表することを前提にして書かれたのではない、プライベートな書簡集なのですが、 それなのに、いえそれだからこそ、北極の切手や、サンタ・クロース独特のふるえた文字、雪のしみがついた封筒など、凝らされた趣向の何と楽しいこと!

トールキンはサンタ・クロースからの手紙に、実に愉快な物語を織り込み、自筆のユニークな絵を添えています。
北極に住むというサンタ・クロースの住まいの様子、北極熊やエルフ、地の精(ノウム)といった仲間たちの繰り広げるトラブルやイベント、そしてゴブリンの攻撃と、 この手紙に書かれた内容は、『ホビットの冒険』『指輪物語』の読者には、あの美しい中つ国の消息を伝えるものとも読みとれます。
もちろん『指輪物語』を読んだことがなくとも、子どもたちへの愛情にあふれた、そしてトールキン教授自身が何より楽しんでいるに違いない、この手紙の面白さが減ずることはありません。
またトールキン教授の絵というのが、とぼけた落書きのようでありながら、細部まで描きこまれていて、何とも味わい深いのです。
ちょっと風変わりなクリスマス絵本として、おすすめの一冊。

→「クリスマスの絵本」はこちら

→Amazon「サンタ・クロースからの手紙
→セブンネットショッピング「サンタ・クロースからの手紙icon

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「ブリスさん」

J.R.R.トールキン 著/田中明子 訳(評論社)
ブリスさん てんじょうが高く入り口も高い、赤い屋根の白い家に住み、ノッポぼうしをかぶっているブリスさん。ある朝、自転車に乗って、自動車を買いに出かけます。ビンクスさんの店で、首尾よく目のさめるような黄色い自動車を手に入れたブリスさんは、さっそくドライブを始めますが・・・。

『ブリスさん』は、『ホビットの冒険』『指輪物語』などのすぐれたファンタジー作品を生み出したトールキンが、自分と子どもたちの楽しみのために書いた、ユーモアとナンセンスに満ちたたのしいお話。
トールキン教授の自筆の絵が添えられ、手ずから本の形に綴じられていたというこの作品は、 『サンタ・クロースからの手紙』同様、公表することを前提にして書かれたものではなく、生前には出版に至らなかったとのこと。
この本は、原書の構成に準じ、右にトールキンの自筆原本、左にそのテキストを日本語訳にして配してあり、 トールキン教授の味わいある(まるでビルボやフロドが書いたのかと思わせる!?)筆蹟も楽しむことができます。

この自筆原本をしみじみ眺めて思うことは、『サンタ・クロースからの手紙』にしてもそうなのですが、やっぱりトールキン教授、こういった趣向は、子どもを喜ばせるためと言いつつ、ご自身がいちばん楽しんでおられたに違いない!ということ。
プライベートな書簡や手作り本まで公表されてしまう、ということについて、トールキン教授自身がどのように考えていたのかは分かりませんが、 『サンタ・クロースからの手紙』や『ブリスさん』からは、トールキン教授の、すぐれた学者でありながら子ども心を失わない、素敵な人柄が伝わってきて、ファンにとってはやっぱり嬉しい。

こぶりで横長の判型、函入り、装幀も美しいユーモア絵本。
訳者あとがきによればブリスさんという名前は、「しあわせさん」というような意味なのだそうで、『指輪物語』のファンも、そしてファンでなくても楽しめる、愉快でほのぼのした一冊になっています。

→Amazon「ブリスさん

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●エッセイ


「妖精物語の国へ」

J.R.R.トールキン 著/杉山洋子 訳(ちくま文庫)
妖精物語の国へ (ちくま文庫)
児童文学やファンタジーについて考えるとき、必ず思い出すのが、トールキン教授のこの本。
収録されている長篇エッセイ「妖精物語について」では、あの『指輪物語』の作者、 中つ国を創造したトールキンが、妖精物語とは何か、その起源と魅力について、詳しく解き明かしています。

トールキンはオックスフォード大学教授をつとめた言語学者。専門用語を使っていないエッセイとはいえ、その内容はハイレベルすぎてついていけない部分もありますが、ファンタジーが流行らなかった時代に、あえてファンタジー擁護を訴えた文章には、とても勇気づけられます。
「妖精物語の<慰め>は、古くからの願いを想像力によって満たすのとはまた別の面を持っている。<幸福な結末(ハッピー・エンディング)の慰め>だ。これこそなによりも大切なのである。これがなくては妖精物語とはいえない、とわたしは声を大にしたいほどだ」(120ページより)という意見をはじめ、ここで意外なほど熱く語られていることのすべてに、ほんとうに深く頷かされます。

「妖精物語について」は、もともと「アンドリュー・ラング記念講演」のための原稿として書かれ、短くした形で1938年にセント・アンドリューズ大学で講演されたのだといいます。けれども文明への批判精神に富んだこの古いエッセイは、21世紀の今こそ、もう一度熟読されるべきではないでしょうか。
ファンタジーはこの世界ではかなわぬ願いだからこそ不滅である。
『妖精物語の国へ』97-98ページより

→Amazon「妖精物語の国へ (ちくま文庫)

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