■本の蒐集記録(2006年5-6月)





2006/06/28(Wed)
●デービッド・マレット 文/オラ・アイタン 絵/脇 明子 訳
『ぐんぐんぐん みどりのうた』(岩波書店)

あかるい色彩。レイアウトの妙。
大地の力をうたいあげるテキストとあいまって、眺めていると、ほんとうに癒されます。
簡単に、ざっと筆を走らせて描いただけのように見える、オラ・アイタンの絵。 だけどページを開くたび、いつも新鮮な気持ちがするのです。

→「オラ・アイタンの絵本」はこちら

▲トップ




2006/06/24(Sat)
●M.B.ゴフスタイン 作・絵/谷川俊太郎 訳
『おばあちゃんのはこぶね』(すえもりブックス)

一切の無駄をはぶいた線のみの絵と、少ない言葉。
90歳になる、ひとりのおばあちゃんの、大事にしているはこぶね。はこぶねにつまっている思い出のおはなし。
おばあちゃんの現在の背景については、何も語られていないけれど。
だからこそ、末尾のメッセージが、深く心に響きます。
よろこびとかなしみは
にじのよう、

それがわたしをあたためてくれる
おひさまのように。

→「M.B.ゴフスタインの絵本」はこちら

▲トップ




2006/06/23(Fri)
●M・B・ゴフスタイン 作/谷川俊太郎 訳
『ブルッキーのひつじ』(ジー・シー・プレス)

●ガブリエル・バンサン 作/もり ひさし 訳
『あめの ひの ピクニック ―くまのアーネストおじさん―』(BL出版)

●ガブリエル・バンサン 作/今江 祥智 訳
『テディ・ベアの おいしゃさん』(BL出版)

●イツァク・シュヴァイゲル・ダミエル 作/オラ・アイタン 絵/小風 さち 訳『ハンナのあたらしいふく』(福音館書店)

ガブリエル・バンサンは、ずっと気になっていた絵本作家さん。
『あめの ひの ピクニック』は、じめじめとして気分もふさぎがちな雨の日を、ぱっと楽しくしてくれる、梅雨の季節にぴったりの一冊。
アーネストおじさんの仕草のひとつひとつが、セレスティーヌへの深い愛情を感じさせて、とても素敵でした。
『テディ・ベアの おいしゃさん』は、バンサンの絵のちからを感じます。ほんの少しの線で、いろんなことを読者に伝えるちからを。
バンサンの絵本は、これから集めていきたいと思います。

オラ・アイタンも、気になっていた絵本画家さん。
『ハンナのあたらしいふく』は、ほんとうに心洗われる一冊でした。
絵の具の質感も、色づかいも素敵。
ハンナの、まっしろのあたらしい服が、最後、お月さまの銀色にひかりかがやく様子。 銀色に塗られているわけではないのに、ほんとうに銀色にひかっているように見えるのが、素晴らしいです。
オラ・アイタンの絵本も、もっと欲しいけど、この方の作品も在庫切れが目立つのが、とても残念。

そして、ゴフスタイン。
ゴフスタインの絵本は、ページをひらくと、なんだか静かな気持ちになれるなあ…なんて思っていたのですが。
『ブルッキーのひつじ』には、やられました。
これは、絶対おすすめの絵本です。かわいくて、やさしくて、ささやかで、押しつけがましくない。
こぶりの本の中に――ちいさな絵と、わずかな文章の中に、つまっている作者の思いの、なんと深くて愛らしいこと。
とてもシンプルな一冊に、涙が出そうになりました。
親しい誰かにこの絵本を贈りたい、そんな気持ちにもなりました。

ゴフスタインが、『ブルッキーのひつじ』を、ご主人に捧げたというのは、有名なお話のようですが…。
まあ、わたしには目下、この絵本を贈るべき伴侶もいないことなので、とりあえず自分に、同じくゴフスタインの『おばあちゃんのはこぶね』を、贈ることにしました(^^;)
気がつけば、すっかり、ゴフスタインのとりこです。

▲トップ




2006/06/17(Sat)
●はらだたけひで 絵・文
『パシュラル先生』(すえもりブックス)
●ローズマリ・サトクリフ 著/井辻朱美 訳
『トリスタンとイズー』(沖積舎)

『パシュラル先生』は、しずかな時間を過ごすために開くような絵本。
淡い色のちいさな絵に、いくきれかの言葉がそっと添えられています。 絵も文章も、ごくひっそりとしていて、どのページも余白の白さが際立ちます。
余白の多い本、って、わたしは好きです。

『トリスタンとイズー』は、有名な悲恋の物語。
『アーサー王と円卓の騎士』でも、一挿話として語られていましたが、 ケルトの伝説を源泉とするこのお話を、サトクリフがどんなふうに描き出してみせてくれるのか、楽しみ。
三角関係って、単純に、おもしろいですよね〜(読むだけなら…(^^;)

→サトクリフ『アーサー王と円卓の騎士』の紹介はこちら

▲トップ




2006/06/12(Mon)
●M.B.ゴフスタイン 作/谷川俊太郎 訳
『作家』(ジー・シー・プレス)

装幀が素晴らしい。この、カバーが薄紙で包まれているところが。
淡いあわい水彩画も、心に染みる。
絵本は大好き。本を読むのは、とても楽しい。

→「M.B.ゴフスタインの絵本」はこちら

▲トップ




2006/06/08(Thu)
●バーバラ・クーニー 再話・絵/末盛千枝子 訳
『ちいさな曲芸師 バーナビー』(すえもりブックス)
●M・B・ゴフスタイン 作・絵/末盛千枝子 訳
『ピアノ調律師』(すえもりブックス)
●ワイルド 作/福田恒存 訳『サロメ』(岩波文庫)

『ちいさな曲芸師 バーナビー』は、大好きな絵本作家バーバラ・クーニーの作品。
40年以上も前にアメリカで出版された作品の邦訳版が、この6月5日に、すえもりブックスから発売されたのです。
これは買わねばなるまい! と思って注文したのでしたが、感想は、大満足。ほんとうに美しい絵本なんです。

「聖母マリアの曲芸師」のお話は、フランスではよく知られた古い伝説なのだそう。 クーニーはこのお話をラジオで耳にし、感銘を受け、絵本を作ることにしたのです。
『エミリー』を読んだとき、アマーストの風景や、エミリー・ディキンソンの生家などを、精密にスケッチした上で描かれた絵の数々に驚き、 クーニーの絵本に対する思い入れの深さに感動しました。
この『ちいさな曲芸師 バーナビー』のためにも、クーニーはフランスで精力的に取材を行い、「聖母マリアの曲芸師」のお話がおさめられた、 13世紀の写本までを実際に確かめてから、絵本の制作にとりかかったのだそうです。
このことは、絵本の最初で、クーニー自身の言葉で語られています。

自分の息子を「バーナビー」と名づけるほどの思い入れをもって描かれた絵の数々は、美しく、あたたかく、そして厳かです。
中世の古めかしい街並み、城、修道院。開かれた写本のさりげない描写も、そのページの挿絵が「受胎告知」の場面であるとわかるほど、 綿密に描きこまれているのです。
聖母マリアと天使たちが現れる奇跡の場面も、神聖な美しさの中に、クーニー独特の、あたたかでやさしい手触りも感じられ、ほんとうに素晴らしいです。
クーニーの再話による物語も、とっても素敵。もちろんキリスト教的なお話だし、聖母マリアが現れるという「奇跡」など、日本人にはなじみにくい部分もあるかもしれません。
けれども、バーナビーの純粋な思いを、彼の見出した希望を、周囲の人々がちゃんと受けとめてくれるという結末は、誰の心も、あたたかい灯火で照らすはず。
字を知らないバーナビーにできる唯一のことである「曲芸」が、「ほかの誰にもできないお祈り」であると、修道院長に認められたことは、ほんとうに嬉しく、 生きとし生けるものの、ひたむきに生きる姿こそ、祈りそのものなんだなあと、深く心に染み入りました。

カバーをはずすと、表紙が赤い布張りという装幀までが美しく、クーニーファンにも、本好きの皆様にも、おすすめの一冊です。

『ピアノ調律師』は、わたしにとって初めてのゴフスタイン。
独特の、静謐であたたかい空気が、本の中から漂ってきます。絵にも文章にも余白があって、いろんなことを思いめぐらしながら読みました。
これまたカバーをはずすと、布張りの表紙に調律道具のかたちが箔押しされているという、素敵な装幀。
そんなこんなで、ゴフスタインの『作家』という絵本も、間をおかず注文してしまいました。ああ楽しみ。

『サロメ』は、ただただオーブリー・ビアズリー(→Click!) の挿絵のために購入したのですが、こんな小さな文庫本で見ても、やっぱり凄い迫力ですね。
ほんとうはビアズリーについては、バーン=ジョーンズの影響下で描かれた「アーサー王の死」の挿絵のほうが好みなんですが、 筑摩書房から出ている『アーサー王物語』は、値段が高いしなあ…などと、苦悩しているところです。
挿絵のために買ったわりには、福田恒存の訳の美しいことに、感じ入ったりもしています。

→バーバラ・クーニー『エミリー』の紹介はこちら

▲トップ




2006/05/31(Wed)
●ウィリアム・モリス 著/小野二郎 訳
『世界のかなたの森 ウィリアム・モリス・コレクション』(晶文社)
●ハインリッヒ・ホフマン 作/佐々木田鶴子 訳
『もじゃもじゃペーター ほるぷクラシック絵本』(ほるぷ出版)

アーサー王の物語などを読んでみて、ロマンスの面白さを実感している今日この頃。
ウィリアム・モリスは「アーサー王の死」や「ニーベルンゲンの歌」、ホメーロスの叙事詩などを、「文学以上の文学」と位置づけていたのだとか。
そんなモリスが、多忙な日々のなか、自分の楽しみのために書いたというロマンスのひとつが、『世界のかなたの森』です。
モリスの最高傑作と言われる『世界のはての泉』は、すでに読了したのですが、他の作品も読んでみたくなって、購入しました。
晶文社のウィリアム・モリス・コレクションは、装幀が素敵で、カバーにモリス自身がデザインした、優美な壁紙の模様が使われています。
また、『世界のはての泉』、『世界のかなたの森』ともに、ケルムスコット・プレス版のバーン=ジョーンズの挿絵が収録されているのも嬉しいです。
できれば本の中身も、ケルムスコット・プレス版のトータルデザインの形式を再現してくれたらなあ…なんて思うのは、現代日本の出版事情から考えて、贅沢な望みというものでしょうか。

『もじゃもじゃペーター』は、1845年の初版から、600版以上を重ね読み継がれてきた、歴史に残る傑作絵本。
大人の感性で読むと、絵の稚拙さと話の残酷さに驚かされるかもしれませんが、これはもう、童心にかえって眺めてこそ、真価のわかる絵本でしょう。
火あそびをして、炎が自分に燃え移り、灰になってしまった女の子。指しゃぶりをして、仕立て屋さんに親指をちょきんと切られてしまった男の子。
子どもの頃、「おなかを出して寝ているとかみなり様におへそをとられる」だとか、「嘘をつくと閻魔さまに舌を抜かれる」だとか、親や祖父母に言われたことを思い出します。
そうは言っても、おなかを出して寝てしまうし、マッチを触りたくなってしまうし、指しゃぶりもやめられない。子どもの頃って、誰しも、そんなふうだったんですよね。
<ほるぷクラシック絵本>は、黎明期の絵本づくりの名匠・名工の技を、原本から複版し甦らせた贅沢なシリーズ絵本。
ですが、現在でも流通しているのは、ケイト・グリーナウェイ『窓の下で』と、ハインリッヒ・ホフマン『もじゃもじゃペーター』の2冊だけ。
コルデコット、イワン・ビリービン、エルンスト・クライドルフなどの美しい絵本がラインナップされているこのシリーズ、ぜひぜひ、全作品、復刊してほしいものです。
…だけど、これもやっぱり、贅沢な望みなのでしょうか?

→ウィリアム・モリス『世界のはての泉』の紹介はこちら

▲トップ




2006/05/26(Fri)
●グリム 著/リスベート・ツヴェルガー 画/池田香代子 訳
『あかずきん』(冨山房)
●アリステア・マクラウド 著/中野恵津子 訳
『彼方なる歌に耳を澄ませよ』(新潮社)

「本やタウン」で何となく検索をかけたら、ツヴェルガーの『あかずきん』が「在庫あり」になっていたので、思わず注文してしまいました。
やっぱり、ツヴェルガーの絵は大好き。バーナデット・ワッツの『赤ずきん』とは、また違った魅力があります。
くらくて淋しくて繊細。洗練された構図。透明感のある色彩に、想像力をかきたてる絵の具のにじみぐあい…これらの特徴は、毎回書いてることなのですが。
なんというかツヴェルガーの絵は、見れば見るほど味わいが深まってくるのです。
この『あかずきん』に関しては、おおかみが何ともユーモラス。ツヴェルガーの描く動物は、いつもかわいいです。
あと、おおかみのおなかの中から、おばあさんが出てくる場面がきちんと描かれている絵本というのは、珍しいのではないでしょうか?

アリステア・マクラウドについては、『灰色の輝ける贈り物』を読み、『冬の犬』も読んで、 もうこれは唯一の長篇『彼方なる歌に耳を澄ませよ』を読まないわけにはいかないだろうということで、購入しました。
『冬の犬』については、いずれ詳しく感想をアップしたいと思います。

→バーナデット・ワッツ『赤ずきん』の紹介はこちら

▲トップ




2006/05/20(Sat)
●ゲルダ・ミューラー 作/ささき たづこ 訳
『ぼくたちのかしの木』(文化出版局)

とってもやさしい感じの絵。森の昼、夜、四季の風景がていねいに描かれている。
巻末には森の生き物たちのこともわかりやすく解説されていて、子どもが読むのにとても良いと思う。

→「ゲルダ・ミューラーの絵本」はこちら

▲トップ




2006/05/19(Fri)
●ジョージ・マクドナルド 著/中村妙子 訳
『北風のうしろの国』(ハヤカワ文庫)
●W・デ・ラ・メア 著/脇 明子 訳
『九つの銅貨』(福音館文庫)
●市川里美 作
『バラがさいた』(偕成社)
●ゲルダ・ミューラー 作/ささき たづこ 訳
『ぼくの庭ができたよ』(文化出版局)

『ぼくの庭ができたよ』は、とても素敵な作品で、ゲルダ・ミューラーの絵が大好きになってしまったので、 同じく文化出版局から刊行されている、『ぼくたちのかしの木』も、さらに注文する。

→「ゲルダ・ミューラーの絵本」はこちら

▲トップ




2006/05/13(Sat)
●フェリクス・ホフマン 絵/せた ていじ 訳
『おおかみと七ひきのこやぎ グリム童話』(福音館書店)
●グリム童話/フェリックス・ホフマン 絵/大塚勇三 訳
『つぐみのひげの王さま』(ペンギン社)

やっぱり、わたしはホフマンの絵が好きです。
描きこみすぎないのに、多くを物語ってくれる、芸術的な絵。
描線のひとつひとつが、物語の秘密を語りかけてくるようで、何度眺めても見飽きることがありません。

グリム童話のすぐれた絵本をいくつも世に送り出したホフマン。 自ら童話集を編み、絵を添えているくらいですから(※注)、グリム童話にはよほど思い入れがあったのでしょう。
『つぐみのひげの王さま』のあとがきで、訳者の大塚勇三氏が、グリム童話についてこう述べています。
「数多くの無名の人たちによって語りつがれ、その人たちの望みによって、すこしずつみがかれ、変化してきた」 「そういう、いわば、みんなの心が結晶したような話を、グリム兄弟は「できるだけ純粋に」受けとめ、語りついだ」のだと。

サトクリフのアーサー王物語も、いま読んでいるところですが、 長いながい時間をかけて、多くの無名の人たちによって語りつがれてきた物語の奥深さには、とても興味をひかれます。
昔話や童話、民話。伝説に神話群。
そういった物語にこめられた思いこそ、人間の夢――わたしたちもまた受け継いでゆくべき、人類の遺産なのではないでしょうか。
そうして生きものたちは悟ったのだ――この地球で最も偉大なものは人間の夢だったということを。

ロード・ダンセイニ 著/中野善夫 他 訳
『最後の夢の物語』(河出文庫)所収
「五十一話集 劫火のあと」より

(※注 フェリクス・ホフマン 編・画/大塚勇三 訳『グリムの昔話』(福音館書店)。全3巻で、愛蔵版と文庫版があります)

→「フェリクス・ホフマンの絵本」はこちら
→ロード・ダンセイニ『最後の夢の物語』の紹介はこちら

▲トップ




2006/05/10(Wed)
●ローズマリ・サトクリフ 著/山本史郎 訳
『アーサー王と聖杯の物語』(原書房)
●アリステア・マクラウド 著/中野恵津子 訳
『冬の犬』(新潮社)

まったくジャンルの違う本のようだけど、実はこの2冊はケルトつながり。 剣と魔法の物語にしろ、去りゆく民族の物語にしろ、なぜこうも、ケルトの匂いにひきつけられてしまうのだろう。

さて、フェリクス・ホフマンの絵本を、また注文してしまう。
『おおかみと七ひきのこやぎ』『つぐみのひげの王さま』の2冊。
この年になって『おおかみと七ひきのこやぎ』…と、思わないでもなかったのだけど。でもいいんです、フェリクス・ホフマンの絵と瀬田貞二氏の訳なんだから。
ああ、やっぱり絵本はいいなあ。

わたしはなんだか、宗教画っぽい雰囲気の絵や、古めかしさを感じさせる絵が好きらしい。
ジョージ・マクドナルド『リリス』(ちくま文庫)に収載された、エリナー・ヴェレ・ボイルの挿絵も素敵だった。

→アリステア・マクラウドの紹介はこちら
→ジョージ・マクドナルド『リリス』の紹介はこちら

▲トップ

本の蒐集記録 Index へ戻る



■HOME