■M.B.ゴフスタインの絵本

〜シンプルであること、それこそが洗練〜


●M.B.ゴフスタイン ― M.B. Goffstein ―

1940年、米国ミネソタ州セントポール生まれ。
ベニントン大学で美術・詩作を学び、卒業後、絵本の制作をはじめる。 1972年、ニューヨークタイムズ紙・年間最優秀児童絵本賞、1977年、コルデコット賞次席などを受賞。 子どもだけでなく大人の心にも響く絵本を、多数発表している。現在、ニューヨーク在住。

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「おばあちゃんのはこぶね」

「作家」

「ピアノ調律師」

「ふたりの雪だるま」

「ブルッキーのひつじ」



「おばあちゃんのはこぶね」

M.B.ゴフスタイン 作・絵/谷川俊太郎 訳(すえもりブックス)
おばあちゃんのはこぶね
90才になるおばあちゃん。子どもの頃にお父さんが作ってくれた、ちいさなノアの方舟を、今も大切にしています。
おばあちゃんは、それを作ってくれたときのお父さんの様子を、今でもはっきりと憶えています。 方舟に入っている木彫りの人形や動物たちは、もう塗りもはげてしまっているけれど、おばあちゃんはいつもそれを眺めて、ひとり心をあたためるのです。

小ぶりで薄手の絵本、まず表紙の絵が印象的です。
ひとりの部屋、サイドテーブルにそっと置かれた方舟、椅子から立ち上がり、窓の外の雨を見つめるおばあちゃんの後姿。窓外の雨音が、部屋のしずけさを際立たせて…。
本を開いてみると、ページの真ん中にちいさな線画と、短い言葉。 おばあちゃんの現在の状況についての詳しい説明はなく、淡々と、方舟にまつわる思い出が語られていきます。 おそらくご主人はすでに亡くなり、子どもたちも家を出てそれぞれの家庭をもっているのでしょう。長い人生を歩んできたおばあちゃんの感慨が、しみじみと胸にせまります。
よろこびとかなしみは
にじのよう、

それがわたしをあたためてくれる
おひさまのように。

『おばあちゃんのはこぶね』より

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「作家」

M.B.ゴフスタイン 作・絵/谷川俊太郎 訳(ジー・シー・プレス)
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彼女は庭師、
だが土地も、
そこにどんな種子が
根を下ろすかも
さだかではない。

『作家』より

『かぜはどこへいくの』『うさぎさんてつだってほしいの』などの絵本で有名な、シャーロット・ゾロトウに捧げられたちいさな絵本。
とにかく装幀が素晴らしいです。ちいさな絵本なのですが、布張りのベージュの表紙で、うすいブルーのカバーの上に、さらに薄紙がかけられています。 中身は余白をたっぷりとったレイアウト。淡いあわい水彩画に、短い言葉が添えられています。 ひかえめで上品で、さりげなく凝っていて…「本」そのものが好きな人間には、特別たいせつに扱いたくなる一冊です。
内容がまた素敵で、すべての文章を引用したいくらい、作家というものについての、深い思索と理解とが感じられます。 作家を庭師にたとえるところ…まさに、そのとおりだなあと思いました。

この絵本を読んだあと、『かぜはどこへいくの』でゾロトウの言葉にもとても感動し、両方の作品がさらに味わい深いものになりました。

→「シャーロット・ゾロトウの絵本」はこちら

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「ピアノ調律師」

M.B.ゴフスタイン 作・絵/末盛千枝子 訳(すえもりブックス)
ピアノ調律師
ピアノ調律師のルーベン・ワインストックは、二年前、よその町に住んでいた息子夫婦を突然亡くし、小さな孫娘デビーを引きとりました。
ルーベンはデビーにピアノを教え、将来はピアニストになってもらいたいと願います。 しかしデビーは、おじいさんの仕事ぶりを見つめるうち、自分もおじいさんのように、すぐれたピアノ調律師になりたいと考えるようになっていたのです。

この絵本では、ゴフスタインの他の作品と異なり、少し長めの物語が展開されています。絵はおはなしの合間に、数葉添えられているといった感じ。 けれどもモノクロの線画は存在感たっぷりで、独特の、静謐であたたかい空気が、ページから漂ってきます。
長めの物語ではありながら、絵にも文章にも余白があり、いろいろなことを思いめぐらしながら読みました。 ルーベン・ワインストックはきっと、自分が若い頃、ピアニストになりたかったんだよね、だとか。 だけど今、長く続けてきた調律師という仕事―この仕事で子どもを孫を食べさせてきた―にも、誰よりも誇りをもっているんだよね、だとか…。
この本も、カバーをはずすと布張りの表紙に、調律道具のかたちが箔押しされているという素敵な装幀。 巻末には調律道具の名前も載っていて、調律という仕事について、興味をそそられる一冊になっています。

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「ふたりの雪だるま」

M.B.ゴフスタイン 作/谷川俊太郎 訳(すえもりブックス)
ふたりの雪だるま
くる日もくる日も雪が降りつづいたあと、やっと太陽が顔を出した朝。 「私」と弟は庭に出て、いっしょに雪だるまを作って遊びます。
「私」が弟に作り方を教えてあげて、おかしな顔の雪だるまが出来上がりました。
でも家に入ってから、「私」は悲しくなってしまいます。雪だるまはひとりぼっち、夜になっても。
「雪だるま作らなければよかった」、「私」は弟に言いますが…。

シンプルな線画がよく知られているゴフスタインですが、この『ふたりの雪だるま』は、珍しくパステルが使われ、ゴフスタイン独特の「線」が描かれていません。 グレーの、ざらっとした風合いのある紙に、パステルで、輪郭線のない簡略化された絵が描かれています。
雪の白、スノー・スーツの赤と水色、手袋のカーキとオレンジ…。描きこみすぎない画面に、パステルの色とりどりが、効果的にあたたかい雰囲気を醸し出しています。
人物の表情も描かれていない、ざっくりとしたタッチなのだけれど、「私」と弟の仲の良さや、お父さんとお母さんのやさしさがよく伝わってくる、想像の余地のある絵です。
テキストは短く、読みやすく、大人であれば読んでいるうち、自分の雪の日の思い出が浮かんでくることでしょう。谷川俊太郎氏の訳というのも見どころ(読みどころ?)。
表紙カバーのこっくりとした緑と、見返しの深い赤というコントラストもおしゃれで、部屋に飾っても素敵。これはクリスマス仕様の装幀なのかな?
寒い冬の日にページを繰ると、ほっこりあたたかくなるような一冊です。

→「冬の絵本」はこちら

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「ブルッキーのひつじ」

M.B.ゴフスタイン 作・絵/谷川俊太郎 訳(ジー・シー・プレス)
ブルッキーのひつじ
だいすきだいすき かわいいこひつじ
みみのうしろを かいてやる。
こひつじは いった
めえ めえ めえ
そうして ぴったりよりそった。

『ブルッキーのひつじ』より

ゴフスタインの絵本の中でも、とりわけ大好きな一冊。
まず、手のひらにおさまるほどの、ちいさなサイズがかわいい。 きみどり色の地に、ピンク色の小花が散りばめられた、愛らしいノートのようなメモ帳のような表紙デザインも、かわいい。 本を開くと、標題紙の左のページに、楽しそうにスキップするブルッキーとこひつじの絵……もう最高にかわいい!
内容は、ブルッキーとこひつじとの、つつましい愛情の物語。 シンプルな線画と短い言葉で表現された、あっという間に読み終わってしまう絵本の中に、つまっている作者の思いの、なんと深くて愛らしいこと。 かわいくて、やさしくて、ささやかで、押しつけがましくない。とてもシンプルな一冊に、涙が出そうになりました。
作者がこの本をご主人に捧げたというのは、有名なお話のよう。わたしも親しい誰かにこの絵本を贈りたい、そんな気持ちになりました。
ちなみに、シンガーソングライター遊佐未森さん(わたしも大好き)が、「ブルッキーのひつじ」という曲を歌っていらっしゃるのも、有名なお話のようです。 もちろん、この絵本へのオマージュとしてつけられたタイトルなのでしょうね。

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