■シャーロット・ゾロトウの絵本

〜自由な視点、わかりやすい言葉〜


●シャーロット・ゾロトウ ― Charlotte Zolotow ―

1915年、アメリカのヴァージニア州に生まれる。
ウィスコンシン大学卒業。出版社で児童図書の編集をしながら、絵本作家としても活躍、80冊にのぼる作品を出版している。
主な作品に『ねえさんといもうと』(福音館書店)、『うさぎさんてつだってほしいの』(冨山房)、『はるになったら』(徳間書店)などがある。
自由な視点で世界をとらえ、それを子どもにわかりやすい言葉で語りかけるゾロトウのテキストは、心に残る魅力にあふれている。

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「うさぎさんてつだってほしいの」

「かぜはどこへいくの」

「パリのおつきさま」



「うさぎさんてつだってほしいの」

シャーロット・ゾロトウ 文/モーリス・センダック 絵/こだま ともこ 訳(冨山房)
うさぎさんてつだってほしいの
「うさぎさん、てつだってほしいの。」
おんなのこは、おかあさんの誕生日のプレゼントをどうするか、うさぎさんに相談します。
おかあさんの好きなものは、あか、きいろ、みどり、あお。でも「あか? あかなんて あげられないさ」と、うさぎさんは言います。
ふたりは、おかあさんの好きな色から、プレゼントをあれこれ考えてみます…。

ゾロトウとセンダックという、絵本界の大御所(?)ふたりが組んだ作品。
手にとってみて意外だったのが、とても小ぶりな絵本だったということ。でもこれが手にしっくりなじむ感じで、とても良いのです。
センダックの絵は、やっぱり上手い、のひとこと。一日の時間の流れが、陽光の色の変化を描写することによって、巧みに表現されています。
女の子が、なぜかダンディで格好いいうさぎさんに手伝ってもらって、おかあさんの誕生日プレゼントを探しながら、森のなかを、奥へ奥へと歩いてゆく。
場面ごとに移り変わる風景が、ふしぎに幻想的なタッチで描かれていて、ほんとうに美しいです。
青く光る湖のほとり、花々の咲き乱れる美しい場所に、腰をおろした女の子、傍らにすらりと立つうさぎさん。うさぎさんが女の子をかき口説いてるようにしか見えない…とか思ってしまうのは、わたしだけでしょうか…(^^;

ゾロトウのテキストは、子どもの喜ぶくりかえしが多用されて読みやすく、あかいもの、きいろいもの、みどりいろのもの、あおいもの、プレゼントを決めるまでの、色についての考察が面白いです。

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「かぜはどこへいくの」

シャーロット・ゾロトウ 作/ハワード・ノッツ 絵/松岡享子 訳(偕成社)
かぜはどこへいくの 一日のおわり、お日さまがしずもうとするころ、小さなおとこの子は、思いました。昼間がおしまいになって、ざんねんだなと。きょうは、とてもいい日だったから。友だちど庭であそんだり、木の下でレモネードをのんだり、おとうさんがベランダで本をよんでくれたり。
おとこの子は、お母さんにたずねます。「どうして、ひるはおしまいになってしまうの?」「かぜはやんだら、どこへいくの?」お母さんは、おとこの子の質問に、やさしく答えていきます…。

ネット上で見かけた表紙画像にひかれたのですが、わたしにとって、シャーロット・ゾロトウとの出会いの一冊となりました。
「かぜはどこへいくの?」男の子の問いかけは、子どもらしいものですが、急にそう訊かれて答えるのは、大人にとっていくらか難しいことではないかなと思います。
そんな、子どもの心が抱く、たくさんの不思議、たくさんの「なぜ? どうして?」に、わかりやすく答える母親の―おそらくは、ゾロトウ自身の―言葉は、ほんとうに心にしみ入ります。
おしまいに なってしまうものは、なんにもないの。
べつのばしょで、べつのかたちで はじまるだけのことなの。

『かぜはどこへいくの』8ページより

自分だったら、こんなふうに答えられるでしょうか…。

ハワード・ノッツの鉛筆画も魅力的で、見開きでひとつながりの絵が、左ページと右ページ、それぞれのテキストに対応していて、細部まで神経がゆきとどいているなあと感じました。

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「パリのおつきさま」

シャーロット・ゾロトウ 文/タナ・ホーバン 写真/みらい なな 訳(童話屋)
パリのおつきさま シャーロット・ゾロトウのテキストと、パリの街を美しく切りとったタナ・ホーバンのカラー写真とで構成された、写真絵本の名作。

最初のページ。ゾロトウの言葉は、ごく静かに語りかけてきます。
おかあさんとおとうさんがパリへ行くことになり、おるすばんをする「わたし」。 パリですてきなものを見つけたら教えてねと、「わたし」はおかあさんに頼みます。
次のページからは、タナ・ホーバンの写真に圧倒されます。
まずは朝日に輝く花ざかりのマロニエの木の下を、少女が遊んでいる写真に「わあきれい」とひきつけられ、 虹やセーヌ川、バゲットを抱えて歩くパリジェンヌ、次々にあらわれるパリの風景に目を奪われます。
けれどもとりわけ素晴らしいのは、やっぱり最後のページの、ゾロトウの言葉。
パリで何がいちばんすてきだったのかとたずねる「わたし」に、おかあさんはこう答えるのです。
「あなたにも ぎんいろのひかりが とどいたでしょう。
パリのおつきさまは おしえてくれたのよ
あなたが おかあさんの すぐそばに みえるって」

『パリのおつきさま』より

おつきさまから見れば、わたしたち地球上の生き物は、みんなすぐそばで、寄り添って生きている。
シャーロット・ゾロトウの、この視点の転換の自由さには、いつも感動させられます。

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シャーロット・ゾロトウの絵本に興味をもったなら…

M.B.ゴフスタインは『作家』という作品を、シャーロット・ゾロトウに捧げています。

「M.B.ゴフスタインの絵本」はこちら


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