■本の蒐集記録(2009年11-12月)




2009/12/26(Sat)
●P・G・ウッドハウス 著/森村たまき 訳
『でかした、ジーヴス! ウッドハウス・コレクション』『サンキュー、ジーヴス ウッドハウス・コレクション』(国書刊行会)

でかした、ジーヴス! (ウッドハウス・コレクション) お正月休みはジーヴスを読もう! と思い、奮発して2冊購入。『でかした、ジーヴス!』は短篇集、『サンキュー、ジーヴス』は長篇です。
こんなに読みやすくて面白い小説なのに、ジーヴスものは文庫にもなっておらず、国書刊行会の単行本はわたしなどにはやや価格が高めに感じられるので(とても個性的で信用できる版元さんなのですが!)、シリーズを揃えるにはお財布の中身が厳しいなあと思う…。

それはさておき、ジーヴスものの面白さのひとつは、すいすい読めるテンポの良い語り口にあると感じますが、ウッドハウスの愛娘レオノーラは父の作品について、こう述べています。「彼の文章が読みやすいのは、彼が楽しんで書いているからだと私は思う」(『でかした、ジーヴス!』訳者あとがきより)
実際、著者自身『でかした、ジーヴス!』の序文において「ジーヴス物語の執筆は私にたいそうな喜びをもたらし、お陰でパブに入り浸らずに済ませてもらっている」と書いているのです。
誰かが楽しんで書いたものが、他の多くの誰かを喜ばせ楽しませるとは、なんと素晴らしいことでしょう。単純だけれどなかなか成立しない、作家と読者のいい関係ですよね。
作家イヴリン・ウォーは、ウッドハウスの作品を評して「彼はこの世界を生きるに値し、楽しむに値するものにしてくれる」(→国書刊行会のサイトより引用)と語っているようですが、これは決して大袈裟な表現ではありませぬ。う〜ん、まさにその通り!! と、深く深く首肯せずにはいられません。

→「イギリスはおもしろい」はこちら

→Amazon「でかした、ジーヴス! (ウッドハウス・コレクション)
サンキュー、ジーヴス (ウッドハウス・コレクション)

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2009/12/21(Mon)
●内田也哉子 文/水口理恵子 絵
『ラプンツェル グリム童話』(フェリシモ出版)
●P・G・ウッドハウス 著/森村たまき 訳
『ウースター家の掟 ウッドハウス・コレクション』(国書刊行会)

ラプンツェル―グリム童話 (おはなしのたからばこ 16) 『ラプンツェル』は、網中いづるさんの『赤いくつ』と同じく、フェリシモ「おはなしのたからばこ」シリーズの一冊。
グリム童話の「ラプンツェル」は、小さい頃、そんなに親しんだという記憶がなく、今になって絵本があれば欲しいなと思っていたのです。
フェリクス・ホフマンの絵本は絶版になっているし、バーナデット・ワッツの絵本だと可愛らしすぎる気がする(塔に閉じ込められたラプンツェルのところに王子が人目を忍んで通ってきて、やがて彼女は身ごもるわけだから、これはかわいいおとぎ話ではないと思うので)…。
ということで、内田也哉子さんのテキストによる、新しい「ラプンツェル」絵本を購入しました。
この絵本はテキストも絵も、「ラプンツェル」という童話のエッセンスをよく伝えていて、大人っぽい、シンプルで美しい一冊に仕上がっています。
ラプンツェルを両親の手から奪い去り、王子との仲をも引き裂いた魔女は、一見、悪者のように見えるけど、赤ん坊のラプンツェルを抱いている表情や、ラプンツェルの長い髪を切り落とす年老いた手からは、彼女のラプンツェルへの愛情を感じとらずにはいられません。

ウースター家の掟 (ウッドハウス・コレクション) さて、もう「ジーヴス」なしでは一日もやっていけない!という有様に、いよいよなってまいりました。
ジーヴスの主人たるバーティだってそうでしょうが、読者であるわたしだって、なのです。
『ウースター家の掟』は、ウッドハウスの大傑作長編。細かい説明などいりません、読むべし!です。

それにしても「ジーヴス」ものの素晴らしさって、ジーヴスだけが賢くてバーティや皆を手のひらで踊らせてるわけじゃなく(一見そう見えるんですけど)、ジーヴスも一緒に踊ってるってところにあるんじゃないかと。
「もし僕にジーヴスの半分だって脳みそがあったら、総理大臣か何かになってみるとかしている」(『それゆけ、ジーヴス』より)と、主人たるバーティは思ったりしているわけですが、冴え渡る頭脳の持ち主ジーヴスは、総理大臣なんぞになりはせず、 『ウースター家の掟』においては、獰猛なアバディーン・テリアに追い詰められて、バーティと一緒に「ツバメのごとく戸棚の上にすべるように跳び上がった」りしているのです。
そもそも犬に追い詰められたのは、物語の鍵となる、ある手帖を探していたからなんだけど、戸棚の上なんかでジーヴスは冷静に「あの手帖はこちらにはないようでございます、ご主人様」とか言っているのです。この主従、まちがいなく阿呆です(ジーヴスが賢いと思っている人はごめんなさい、いい意味で言ってるんですよ)。

誰ひとり例外なく、みんなが阿呆で、みんなが踊っている。ぐるぐる自転しているこの世界の片隅で…。
そんなふうに考えると、なんだか心が軽くなります。「すべて世は事も無し」(『ウースター家の掟』より)なのです。

→「フェリクス・ホフマンの絵本」はこちら
→「バーナデット・ワッツの絵本」はこちら
→「イギリスはおもしろい」はこちら

→Amazon「ラプンツェル―グリム童話 (おはなしのたからばこ 16)
ウースター家の掟 (ウッドハウス・コレクション)

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2009/12/14(Mon)
●吉田昌太郎 編/鈴木るみこ 文/島 隆志 写真『糸の宝石』(ラトルズ)
●P・G・ウッドハウス 著/森村たまき 訳
『それゆけ、ジーヴス ウッドハウス・コレクション』(国書刊行会)

糸の宝石 編者の吉田昌太郎氏は、東京恵比寿の骨董のお店「antiques tamiser(アンティークス タミゼ)」の店主。
『糸の宝石』は、氏がパリの蚤の市で見つけた、古いレース編みのサンプルと図案帖を紹介した一冊。
巻頭に、編者の、このレース編みを見つけて本にすることになった経緯を記した短い文章、次に「糸と女」と題する鈴木るみこさんの文章で、ヨーロッパにおけるレース編みの歴史が紹介されています。
そしてこの本の大部分を占めるのが、レース編みのサンプルと図案帖の写真。
写真には、解説がついていません。たとえば図案帖にはレースのサンプルが貼られて、繊細な筆跡でフランス語が綴られているのだけれど、何と書いてあるものやら、皆目わからない(いや、フランス語読める人は問題ないのでしょうが)。
なので、ただ眺めるだけ。黒いバックに、白いレースのサンプル。その図案の美しさ。図案帖の筆跡さえも美しく、どんなエレガントな女性がこれをしたためたものか、想像してみずにはいられない。
解説をつけてほしかったような気もするけれど、素材を美しく並べただけのこのシンプルさが、さすがは「antiques tamiser」の店主のセンス、なのかもしれません。

完全にジーヴスものの面白さにハマッてしまいました。
『それゆけ、ジーヴス』は短篇集で、次々に登場するおバカな人々が巻き起こすしょーもないトラブルに、笑わされっぱなし。
エドワード朝のおおらかな雰囲気を体現する、おきらくごくらくなバーティと、「権謀術数の遣ひ手にして全能の服装決裁者」ジーヴスの掛け合い漫才は、英国中上流階級による植民地からの搾取!だとか、英国貴族が象徴する富の偏在の問題!だとか、ややこしいことを突っ込む気力をなくさせます。
それにしても、友人や親類やジーヴスから、さんざんバカにされコケにされているバーティの、語りの上手さは褒められても良いのではと思う。
バーティが常日頃恐れているアガサ叔母さんの友人で、厄介事を持ち込んで来たレディー・マルヴァーンについての描写はこんな感じ。
 レディー・マルヴァーンは、はしゃいで上機嫌で健康的で、人を圧倒する力をもったいまいましい種類の女性だった。 背はそれほど高くないが、向かって左手から右手までさし渡しが一八三センチくらいあり、それでもって背の分の埋め合わせはつけている。 うちで一番大きな肘掛け椅子に、今シーズンはきつめの肘掛け椅子を腰バキするのが流行、と承知してる誰かがあつらえて拵えてくれたみたいに、ぴっちり収まっている。

(『それゆけ、ジーヴス』70ページより)

肘掛け椅子を腰バキ…通勤バスの中で読みながら、笑いをこらえるのに必死でした。

→「イギリスはおもしろい」はこちら

→Amazon「糸の宝石
それゆけ、ジーヴス (ウッドハウス・コレクション)

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2009/12/07(Mon)
●Arthur Rackham 著/Jeff A. Menges 編『The Arthur Rackham Treasury: 86 Full-Color Illustrations』(Dover Publications)
●P・G・ウッドハウス 著/森村たまき 訳
『よしきた、ジーヴス ウッドハウス・コレクション』(国書刊行会)

The Arthur Rackham Treasury: 86 Full-Color Illustrations リスベート・ツヴェルガーも影響を受けた、イギリス挿絵黄金時代の画家アーサー・ラッカム。
『The Arthur Rackham Treasury: 86 Full-Color Illustrations』は、ペーパーバックの量産品で安価、でも86点もの作品がフルカラーで楽しめるという挿絵作品集。
イラスト中心なので、英語が読めなくても安心して、ラッカムの絵の世界に浸ることができます。
ラッカムの挿絵本や作品集はすでにいくつか持っていて、重複する絵もあるのですが、この本には日本では絶版となっている『ウンディーネ』、それにマザーグースの挿絵が数点収録されているので、買ってしまいました。
他には『不思議の国のアリス』『夏の夜の夢』『ケンジントン・ガーデンのピーター・パン』『ニーベルンゲンの指輪』など代表的な挿絵が収録されているので、ラッカム初心者にはお買い得だと思います。
わたしは、アーサー王やシェイクスピア『テンペスト』、『ウェイクフィールドの牧師』に、クリスティーナ・ロセッティ『ゴブリン・マーケット』、さらにE.A.ポー『アッシャー家の崩壊』などの絵を見て、ラッカムってほんとうにたくさんの挿絵を描いていた、当代随一の人気画家だったんだなあと改めて感じ入りました。
『テンペスト』はデュラックのものは知っていたのだけれど、ラッカムも描いてたんですねえ。比較されることの多い二人ですが、デュラックの絵は上手くてシリアス、ラッカムのほうがユーモアがあるなあなんて感じます。

ウッドハウスのユーモア小説『比類なきジーヴス』が面白かったので、続いて『よしきた、ジーヴス』も購入。
こちらは長篇で、中だるみ感はあるものの、バーティとジーヴスの会話が最高に笑えます。

「今度はな、ジーヴス、もっと直接的な方法が必要となってくるんだ。オーガスタス・フィンク=ノトルの件に対処する際には、我々は常に屁みたいな奴を相手にしてるってことを念頭に置いていないといけない」
「オジギ草のごとき感受性の強いお方、というのがおそらくはより穏健なご表現かと存じますが」
「ちがう、ジーヴス。屁だ。屁に対しては強力で強硬、直截な方策をとらなくちゃならない。心理学なんかじゃどうにもならないんだ」

(『よしきた、ジーヴス』175ページより)

こういうやりとりを大真面目に繰り返すバーティとジーヴス…イギリス紳士って、こんなふうなんでしょうかね?

→ラッカム、デュラック、ニールセン「挿絵本のたのしみ」はこちら
→「リスベート・ツヴェルガーの絵本」はこちら
→「イギリスはおもしろい」はこちら

→Amazon「The Arthur Rackham Treasury: 86 Full-Color Illustrations
よしきた、ジーヴス (ウッドハウス・コレクション)

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2009/12/01(Tue)
●P・G・ウッドハウス 著/森村たまき 訳
『比類なきジーヴス ウッドハウス・コレクション』(国書刊行会)

比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション) 軽くて読みやすいものを、と購入した一冊。
ユーモア小説の大家ウッドハウス。名前は知っていたのだけれど、なぜか今まで読みそびれていました。
ジーヴスものは、富裕な有閑階級の紳士バーティと、有能な執事ジーヴスのコンビが繰り広げるコメディ。
もしかして面白くなかったら…なんてちらと思ったのは杞憂で、読めば読むほど面白さにひきこまれてしまいました。
語り手バーティはお金持ちでオックスフォード大学卒のはずなのに、おバカというか実際的な判断力に欠けていて、厄介事にいつもまきこまれてしまいます。
バーティは困ったときは比類なき有能な執事ジーヴスに相談をもちかけ、ジーヴスはあざやかな手並みで事件を解決してみせるのです。
『比類なきジーヴス』は、短篇として発表されたものに加筆して、長篇の体裁を整えたという一冊で、どのエピソードもこのパターンの繰り返し。それが最高に面白い!
アシモフの「黒後家蜘蛛の会」シリーズのごとき、偉大なるマンネリズム。
バーティはじめお金持ち中上流階級の人間たちが右往左往しているあいだに、執事のジーヴスが簡単に事件を解決してしまうところ、黒後家の給仕ヘンリーの役回りと似て、痛快な読み心地なんですよね。

さて、もうちょっと若いときにこれを読んでいたなら、ジーヴスの、有能だけど何だか人をバカにしたようなキャラクターにしか目がいかなかっただろうけれど、このトシになってみると、いやいやそうは言っても物語の語り手、おバカなバーティの人となりを考えてみずにはいられません。
バーティは、自分が働きもしないお気楽者で、判断力もないことをよく知っているし、ちっとも勘違い人間ではありません。それに主人であるバーティをバカにしてさえいるような素振りも見せるジーヴスの有能さを、高く評価して信頼しているのです。
バーティのもとでこそ、ジーヴスの有能さが発揮できるというもの。
そんなバーティとジーヴスだからこそ、広く愛されるコンビになり得ているのでしょうね。

→アシモフ「黒後家蜘蛛の会」の紹介はこちら
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→Amazon「比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)

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2009/11/16(Mon)
●角田光代 文/網中いづる 絵
『赤いくつ アンデルセン童話』(フェリシモ出版)
●マーガレット・ワイズ・ブラウン 作/ガース・ウィリアムズ 絵/いぬいゆみこ 訳『さんびきのちいさいどうぶつ』(ペンギン社)

赤いくつ―アンデルセン童話 (おはなしのたからばこ 11) 『赤いくつ』は、フェリシモの「おはなしのたからばこ」シリーズの一冊。角田光代さんと網中いづるさんのコラボレーションで、アンデルセンの怖ろしくも美しい作品が繊細に描き出されています。
網中いづるさんの絵は、以前から好きなタッチだなあと思っていたので、こんな絵本が出たと知り、うれしく購入。
メルヘンの世界を描くのにぴったりの、網中さんの画風。カーレンがとても美人で、随所に乙女心をくずぐるディテールが散りばめられています。
水色の地に白で、木や草花のからみあった模様が刷られている見返しが、さりげなく素敵。
角田光代さんのテキストで、この童話を改めて読んでみると、「赤いくつ」というのは、自分をきらびやかに飾って、実際以上のものに見せたいという、人間の虚栄心をあらわしているのかなあ、なんて考えさせられました。
虚栄心にとりつかれ、いつしか踊りたくもないダンスを踊らされ、いばらの森や冷たい川や荒れ野に踏み込んでしまう…。
アンデルセン童話は読むたびに新たな発見があって、ほんとうに面白いなあと感じ入りました。

『さんびきのちいさいどうぶつ』は、マーガレット・ワイズ・ブラウンとガース・ウィリアムズのゴールデンコンビによる絵本。
カバーの折り返しに松岡享子さんが推薦文を寄せていて、「ガース・ウィリアムズの描く動物、なかんずく毛の生えた動物には、えもいわれぬ愛らしさがある」と書いておられて、うむうむと深く共感。
この絵本では大判の画面いっぱいに、あどけない「さんびきのちいさいどうぶつ」の素朴な暮らしが描かれて、思わずどうぶつたちを、なでなでしたくなってしまいます。
マーガレット・ワイズ・ブラウンのおはなしは、意味深く、子どもにも大人にもつよく訴えかけてくるものがあります。

→「アンデルセン童話の世界」はこちら

→Amazon「赤いくつ―アンデルセン童話 (おはなしのたからばこ 11)
さんびきのちいさいどうぶつ

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2009/11/09(Mon)
●Brothers Grimm 著/Lisbeth Zwerger 絵
『Hansel and Gretel』(Minedition)
●ジーン・ウェブスター 著/内田 庶 訳
『おちゃめなパッティ 大学へ行く』(ブッキング)

Hansel and Gretel 『Hansel and Gretel』は、グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」に、国際アンデルセン賞受賞画家リスベート・ツヴェルガーが絵を寄せた作品。
ツヴェルガー初期の絵本で、邦訳版は絶版になっており、洋書を購入しました。
「ヘンゼルとグレーテル」のおはなしは日本人にもなじみ深いので、英語は読めないけれど、描かれた場面の意味はよくわかります。
初期のツヴェルガーの絵は、繊細な描線やおさえた色味など、アーサー・ラッカムの影響をつよく感じます。
日本の子どもが喜びそうな感じはしない、くらーい色合いの画面。背景は省略されていて、ヘンゼルとグレーテルがさまよう森の木々など描きこまれてはいないのだけれど、茶色い絵の具のにじみ具合が、昔のドイツの黒い森の雰囲気をよく伝えてくれます。
印象的な魔女の姿は、目は赤くておそろしいのだけれど、体はまるくふくらんでいて、どことなくユーモラス。
お菓子の家の前で、お菓子をむしゃむしゃ食べるヘンゼルとグレーテル、それを見つめる魔女が見開きいっぱいに描かれた絵は、圧巻です。(表紙にもなっているけれど、これは見開きでぜひ見てほしい!)

『おちゃめなパッティ』の続編、『おちゃめなパッティ 大学へ行く』。
『あしながおじさん』の作者ウェブスターの作品で、実は『おちゃめなパッティ』より前に書かれた処女作なのだそうです。
主人公パッティは、おちゃめというかハチャメチャで天衣無縫な、元気いっぱいのいたずらっ子。
ときにいたずらが過ぎるくらいに思えるときもあるのだけれど、『続あしながおじさん』では、サリーが孤児院の院長になって奮闘しながらも、 子どもは従順であるより、いたずらするくらいの元気があったほうが好きだと書いてあって、これはそのままウェブスター女史の意見なのだろうなと、しみじみ感じたことでした。
サリーの考えにしても、パッティの行動力にしても、ウェブスター女史は子どもたちの自主独立の精神を大切にした人だったと感じます。

→「リスベート・ツヴェルガーの絵本」はこちら
→アーサー・ラッカムの紹介はこちら

→Amazon「Hansel and Gretel
おちゃめなパッティ 大学へ行く (fukkan.com)

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2009/11/02(Mon)
●マーガレット・ワイズ・ブラウン 作/ガース・ウィリアムズ 絵/松岡享子 訳『まんげつのよるまでまちなさい』(ペンギン社)
●ローラ・インガルス・ワイルダー 作/ガース・ウィリアムズ 画/恩地三保子 訳『大草原の小さな家 インガルス一家の物語2』(福音館文庫)
●ジーン・ウェブスター 著/遠藤壽子 訳
『おちゃめなパッティ』(ブッキング)

まんげつのよるまでまちなさい 「大草原の小さな家」シリーズを読むと、ガース・ウィリアムズの誠実な挿絵に感嘆せずにはおれません。
『大きな森の小さな家』(福音館文庫)では、森の野生の動物たちの絵がとてもかわいくて、やっぱりガース・ウィリアムズの動物を描いた絵本が欲しくなってしまいました。
『まんげつのよるまでまちなさい』は、あらいぐまのぼうやとおかあさんのお話。
夜を見たいと何度もせがむぼうやに、おかあさんは「まんげつになるまでまちなさい」と言いつづけます。そして満月の夜になったとき…。
マーガレット・ワイズ・ブラウンのお話はわかりやすいのに深みがあって、繰り返しのテキストは、おやすみ前の読み聞かせにもぴったりという感じ。
そしてガース・ウィリアムズの描くふわふわの毛の動物たちは、あまりにかわいい!あらいぐまの目元、口元、毛並み、ちょっとした仕草。まちがいなくあらいぐまなのに、とっても人間的。これぞ絵本やなあ〜と思う。
おかあさんのネッカチーフやスカートがかわいく、あらいぐまの「おおきなくりのきの ねかたにある すみごこちのよい いえ」の家具や雑貨も見逃せない!
標題紙の前の口絵と、最後のページの絵だけがカラー、あとはモノクロの画面にアクセントとして茶色が重ねられています。この色合いがまた味わい深い。

『大草原の小さな家』は、シリーズ第二巻。幌馬車で草原をゆく牧歌的なイメージをもっていたのだけど、こんなにシリアスなお話だとは知りませんでした〜!
アメリカ大陸の先住民インディアンの人々との争いが、実体験にもとづいて描かれていて、子どもだけでなく大人もぜひじっくり読むべきだと思う。
ローラの純粋で素朴な眼差しと、おとうさんやおかあさんの大人の理屈との違いが際立っています。

おちゃめなパッティ (fukkan.com) 『おちゃめなパッティ』は、『あしながおじさん』の作者ウェブスターの作品で、女学生の寄宿学校もの、つまり少女小説。
絶版になっていたのが、復刊ドットコムの投票を多数獲得、ブッキングから復刊されたのだそうです。
聖アーシュラ学園を舞台に、パッティとプリシラとコニーの陽気な3人組が、ときに元気すぎて皆を困らせながら、のびのび学校生活を楽しんでいます。
こういう少女小説って、甘い話のように思われるかもしれないけれど、やっぱり好きなんですよね〜(^^;

→Amazon「まんげつのよるまでまちなさい
大草原の小さな家 ―インガルス一家の物語〈2〉(福音館文庫)
おちゃめなパッティ (fukkan.com)

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