□ 2011/02/22(Tue) |
●Robert Louis Stevenson 著/Tasha Tudor 絵『A Child's Garden of Verses』(Simon & Schuster Children's Publishing) ●Robert Louis Stevenson 著/Charles Robinson 絵『A Child's Garden of Verses (Everyman's Library Children's Classics)』(Everyman's Library) 『A Child's Garden of Verses』は、『宝島』『ジキル博士とハイド氏』などの作品で知られる、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの詩集。 この子どものための詩集には、これまで多くの挿絵画家が、美しい絵を寄せてきました。 今回購入したのは、ターシャ・テューダー挿絵のものと、チャールズ・ロビンソン挿絵のもの2冊。 ターシャ・テューダーの絵は、日本でもよく知られていますよね。 自分の子どもや孫たち、コーギー犬や猫や鳥たち、コーギーコテージと美しい庭の風景を、凝った飾り罫の中に描く、ターシャの絵の世界。 『A Child's Garden of Verses』でも、おなじみのコーギー犬が顔をのぞかせ、草花や小動物や玩具などが細かく描きこまれてテキストを縁取り、喜びや、恐れや、幻想に彩られた子どもの世界が、いかにもターシャらしく表現されています。 詩といっても、親しみやすく人気のある画家が絵を描いているこういう絵本は、邦訳版があっても良いのにと思いますが…やっぱり著作権とかの問題があるのでしょうか。 チャールズ・ロビンソンは、挿絵の世界で名高いロビンソン兄弟(トーマス・ロビンソンが長男、ウィリアム・ヒース・ロビンソンが三男)の二男。 英国挿絵黄金時代に活躍した画家で、『秘密の花園』や『幸福の王子』、そして『A Child's Garden of Verses』などの挿絵が知られています。 ロビンソン兄弟のなかでは、このチャールズの絵がいちばん幻想的で美しいという印象を受けます。 『A Child's Garden of Verses』の挿絵は、すべてモノクロですが、これが美しい。 各章の扉絵など、幻想にあふれた夢のような美しさ! 「The Land of Nod」の挿絵なども、奇妙なかたちの丘や尖塔など奇想にあふれた風景が描かれ、眠りの国の果てしなさと不思議さが感じられます。 ただこの「Everyman's Library Children's Classics」シリーズは、原本の版型と違っている場合(違っていることがほとんどのような気もしますが…)、無理に挿絵を縮小したり拡大したりして、印刷がつぶれたり、ぶれたりしていることがあるので、そこがちょっと惜しいかも。 シリーズとしては、布張り箔押しで装幀がそろっていて、本棚に並べても綺麗なんですけどね〜。 →Amazon「A Child's Garden of Verses」 |
□ 2011/02/15(Tue) |
●Robert Louis Stevenson 著/Cooper Edens 編『A Child's Garden of Verses: A Classic Illustrated edition』(Chronicle Books) ●ロバート・ルイス・スティーヴンソン 詩/イーヴ・ガーネット 絵/間崎ルリ子 訳『ある子どもの詩の庭で』(瑞雲舎) 『A Child's Garden of Verses』は、『宝島』『ジキル博士とハイド氏』などの作品で知られる、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの詩集。 この子どものための詩集には、これまで多くの挿絵画家が、美しい絵を寄せてきました。 『A Child's Garden of Verses: A Classic Illustrated edition』は、チャールズ・ロビンソン、ジェシー・ウィルコックス・スミス、ウィルビーク・ル・メールをはじめ、20世紀初頭の挿絵黄金時代に描かれた、クラシカルで美しい挿画が多数収録されています。 表紙カバーと見返しの魅力的な絵は、ウィリー・ポガニー。ウィリー・ポガニーは、さまざまな画風を駆使して多くの挿絵を描いた人。愛らしく幻想的な、このカバー挿画に惹かれて、この本を買ってしまったとも言えるかも。 中身は、すべてのページにイラストが配され、カラーも、モノクロも、夢のあるやさしい絵ばかりです。 E. Mars、Ruth Mary Hallockによる、「Happry Thought」の挿絵など、眺めているだけで幸せな気持ちになれます。 さて、絵を眺めるだけで英語が読めないわたしのような読者(^^;)のためには、『A Child's Garden of Verses』の全訳である、『ある子どもの詩の庭で』を併せ読むと、楽しさが倍増すること間違いなしです。 この瑞雲舎版は、イーヴ・ガーネット挿絵による『A Child's Garden of Verses』(左の画像)の邦訳版で、ブルーのインクで刷られたやさしい鉛筆画に心がなごみます。 詩の邦訳は、原詩で読んだときのリズムや脚韻が、どうしても失われてしまうわけですが、間崎ルリ子さんの丁寧な仕事によって、スティーヴンソンが詩に込めた思いが、じんと伝わってきます。 そして私の詩をたのしむ子どもたちが ―間崎ルリ子 訳『ある子どもの詩の庭で』献辞、6ページより →「ジェシー・W・スミスの絵本」はこちら →Amazon「A Child's Garden of Verses: A Classic Illustrated edition」 |
□ 2011/02/08(Tue) |
●Fronia E. Wissman 著『Bouguereau』(Pomegranate) ●P・G・ウッドハウス 著/森村たまき 訳 『お呼びだ、ジーヴス』(国書刊行会) ウィリアム・ブーグローは、19世紀フランス新古典主義の画家。 当時のフランス画壇の代表的画家でしたが、後年、印象主義の評価が高まると、アカデミックな作風のブーグローらの作品は忘れられていったのだとか。 しかし最近ではまた新古典主義が再評価されているとのことです。 わたしはそういう美術史的なことはよくわかりませんが、単純に、ブーグローの絵ってきれいですよね〜。 神話を主題とした絵や、宗教画が有名ですが、ブーグローの描くマリア様の美しさには思わず目を奪われます。ここまで美人のマリア様って他に見ない、と思う。 「Song of the Angels」(→ウィキペディアで確認!)など、音楽を奏でる乙女の姿をした天使たちが美人で、宗教画という雰囲気はしません。 画集の表紙にあるような、あり得ないくらい美しい白い肌の、ちょっと憂いを帯びた表情の少女たち、子どもの肖像も多いです。 どれも美しくて愛らしくて(そのため、ときに通俗的に受け取られることもあるようですが)、眺めていると現実逃避できます(^^; そして、ついに出た『お呼びだ、ジーヴス』、国書刊行会のウッドハウス・コレクション最新刊です。 今回のお話は、バーティの語りではなく三人称、つまりバーティが登場しないということで、ファンとしてはどうなんだろうという感じですが。 巻末の訳者あとがきでは、このお話をジーヴスがジーヴス役を演じる舞台と見立て、ご主人様をバカにするセリフが出るたびに赤面したりむっとするバーティが観客席にいて、でも最後に「わたくしのいるべき場所は、あの方のお側であると感じております」というセリフにホロリときて…という「脳内進行」で楽しむのがお勧め、とありました(なんだそれ〜、笑)。 バーティがいないと淋しい、というわたしのような読者のためには、バーティが語り手の短編「ジーヴス、オムレツをつくる」も収録されています。 →Amazon「Bouguereau」 |
□ 2011/02/01(Tue) |
●Carl Larsson 著『Unser Heim』(Langewiesche K.R.) ●Carl Larsson 著 『A Family: Paintings from a Bygone Age』(Floris Books) どちらも、カール・ラーションの画集。絵本といっても良いのでしょうか。 カール・ラーション(Carl Larsson)は、19世紀後半から20世紀初頭に生きた、スウェーデンの画家。家族と、田舎の家、家具調度、家をとりまく風景を、はっきりした輪郭線と明るい水彩で描いて、人気を博しました。 現代の日本でも、「クウネル」系の女子には、ラーションの人気が高いのでは。 ラーションの奥様カーリンが手がけたという、テーブルクロスやカーテンなどのテキスタイル、子どもの服や家具のデザイン、古き良き暮らしぶりなど、とても素敵な絵ばかりですから。 『Unser Heim』は、ドイツ語版で、23点のカラー絵を収録。見開きの左がテキストページ、右がカラー絵1点というレイアウト。テキストページにはモノクロの小さい絵が載っている個所もあります。収録作品は、ラーションの家のインテリアが細部までよく描かれたものが多いです。 『A Family』は、英語版で、見開きの左がテキストページ、右がカラー絵という構成ですが、大きく1点がレイアウトされた絵もあれば、家族の絵など何点か並んだものもあり、また絵の全体像に細部のクローズアップが配されている場合もあります。収録作品は、ラーションの家族を描いたものが多いです。 ドイツ語版も英語版も、ラーションの画集がシリーズとして何冊か刊行されているようですが、収録作品がよくわからなくて、重複している場合もあるかもしれないし、どちらを購入すべきか悩みます。 ただ、表紙カバーがついていないぶん、ドイツ語版のほうが価格が少し安いです。 →Amazon「Unser Heim」 |
□ 2011/01/23(Sun) |
●須賀敦子 著『須賀敦子全集 第7巻』(河出文庫) ●バーバラ・ピム 著/芦津かおり 訳『よくできた女』(みすず書房) 『須賀敦子全集 第7巻』には、コルシア書店から刊行された自費出版の小冊子「どんぐりのたわごと」と、1971年1月16日〜7月22日までの日記が収録されています。 この第7巻で特筆すべきは、「どんぐりのたわごと」に、あの「こうちゃん」が含まれているということでしょうか。 酒井駒子が絵を寄せた、絵本『こうちゃん』を読んだとき、あまり繊細で、読んでいて少し胸が痛むほどだと思った、あの文章。 でも、須賀さんの著書をいろいろ読んでみて、いまテキストのみの、この「こうちゃん」に向かい合うと、すんなりと言葉が胸に入ってくるようでした。 ああ、これは、松山 巌氏が巻末の解説に書かれているとおり、「信仰の意味を童話によって語りかける」作品だったのだなと。 『よくできた女』は、すでにレビューを「イギリスはおもしろい」にアップしているので、よろしければそちらをご覧ください。 「出版ダイジェスト」で紹介されているのを見て、すぐに買って、すぐに読んでしまいました。とっても面白い「おひとりさま」小説です。 →酒井駒子『こうちゃん』の紹介はこちら →Amazon「須賀敦子全集〈第7巻〉どんぐりのたわごと・日記 (河出文庫)」 |
□ 2011/01/18(Tue) |
●金沢百枝 小澤 実 著 『イタリア古寺巡礼 ミラノ→ヴェネツィア』(新潮社) ●ミロスラフ・サセック著/松浦弥太郎 訳 『ジス・イズ・ローマ』(ブルース・インターアクションズ) 『イタリア古寺巡礼』は、新潮社の「とんぼの本」シリーズの一冊。これまた須賀敦子のエッセイを読んで興味がわいた、イタリアの教会建築について、ちょっと知りたいなと思って購入。 この本では、美術史家の金沢百枝氏と、歴史家の小澤 実氏が、イタリアのロマネスク様式の教会をとりあげ、その建築様式や美術、教会創建当時の歴史について、わかりやすく解説してくれています。 ゴシックの大聖堂は荘厳で美しいけれど、ロマネスクの教会は、壁画や彫刻など、なんとも素朴でおおらか。 そしてこの本で紹介されている、トルチェッロのサンタ・マリア・アッスンタ大聖堂の、聖母子のモザイクは、須賀敦子のエッセイのなかでもとりわけ印象的に描かれています。 その瞬間、それまでに自分が美しいとした多くの聖母像が、しずかな行列をつくって、すっと消えていって、あとに、この金色にかこまれた聖母がひとり、残った。これだけでいい。そう思うと、ねむくなるほどの安心感が私を包んだ。 『須賀敦子全集 第3巻』所収「地図のない道」より ゴシックの教会建築がなんとなく好きだなと思っていたけど、ロマネスクの教会も興味深い。「とんぼの本」シリーズは写真もきれいで、見応え、読み応えがあります。教会を撮ったものだけでなく、路傍の花や、教会の管理人さんがふるまってくれたランチの様子、夕暮時のヴェネツィアの路地の写真などが収められているのも、素敵だなと思いました。 「いやしの本棚」ではおなじみ、ミロスラフ・サセックの旅行絵本「ジス・イズ・シリーズ」。 『ジス・イズ・ローマ』は、須賀敦子が母親に贈った本とのことで(『須賀敦子が歩いた道』(新潮社)より、須賀さんが贈ったのは洋書版で、自筆の日本語訳つき)、また須賀さんはローマについても多く語っているので、「ジス・イズ・シリーズ」は他にもたくさん持っているのだけど、購入してしまいました。 サセックの絵はやっぱり素敵。須賀さんがエッセイに「優雅に流れ落ちる白い滝をまねたかと思える」「曲線の美しさ」と書いていた、スペイン階段の絵など、「おお、なるほど!」という感じです。 →Amazon「イタリア古寺巡礼―ミラノ→ヴェネツィア (とんぼの本)」 |
□ 2011/01/12(Wed) |
●Andrew Wyeth 著『Andrew Wyeth: Autobiography』(Bulfinch) アンドリュー・ワイエスは、日本でもよく知られた人気の高い画家のひとりで、父は有名挿絵画家のN.C.ワイエス。 なぜか日本で刊行されたアンドリュー・ワイエスの画集は、入手困難なものがほとんどなので、今回わたしが購入したのは、洋書のペーパーバック版。 英語が読めないからよくわからないのですが、この本は、タイトルのとおりワイエスの自選画集で、画家自身が絵にコメントを添えたもののようです。 詳しい技法など、難しいことはよくわからないのだけど、ワイエスの絵は、観た人だれもが感じるように、しん、と静謐で、誠実で、淡々と小さな世界を描いていて、好きだなと思う。 色使いもシブくて、そんななかに咲いているコーンフラワーや、麦わら帽子のリボンの青がきれいだったり。 この画集は、ワイエスの有名な「クリスティーナの世界」などは載っていないけど、137点の作品図版はどれも印刷がきれいで、1ページに1点、大きくレイアウトされているのがほとんどで、値段もお手頃。 わたしのように何となくワイエスのことが気になっている人には、おすすめの一冊だと思います。 →「幻想美術館」で、アンドリュー・ワイエスについて確認! →Amazon「Andrew Wyeth: Autobiography」 |
□ 2011/01/06(Thu) |
●木俣元一 都築響一 著『フランス ゴシックを仰ぐ旅』(新潮社) ●渡部雄吉 著『ヨーロッパの教会とステンド・グラス』(クレオ) 須賀敦子のエッセイから、西洋の教会建築への興味がふくらんだので購入した2冊。 『フランス ゴシックを仰ぐ旅』は、新潮社の「とんぼの本」シリーズの一冊で、これは「芸術新潮」2002年8月号の特集を再編集したものということです。 『図説 大聖堂物語』を読んでいて、もっとゴシックの大聖堂の写真を見たいなと思ったのでしたが、この『フランス ゴシックを仰ぐ旅』は素晴らしい写真が満載で、大当たりでした。 表紙は、アミアン大聖堂のファサードを見上げる角度で取られた写真ですが、中身もゴシックの大聖堂の特徴とその美しさをよく伝えてくれる写真がいっぱい。 アミアンのファサードを埋め尽くす彫刻や、高い場所(トリフォリウム)から西正面の薔薇窓に向かって身廊を見はるかす写真は、いかにもゴシックの大聖堂!って感じで、美しい〜。 サン=ドニの死体墓像、ランスの《微笑みの天使》、シャルトルのステンドグラスの青、ストラスブール大聖堂の薔薇色のファサード、どれをとっても見応えあり。 専門用語や、ステンドグラスの読み方の解説など、初心者にもわかりやすく書かれていて、まさにわたしのようなミーハーな読者におすすめの一冊。 『ヨーロッパの教会とステンド・グラス』は、クレオのフォト・データ・ブックシリーズの一冊。 この本は、解説文などは何もなく、まさに資料としての写真がずらり並んで、教会の名前と場所だけが小さく添えられています。 ソフトカバーで、写真は、1ページに1枚と大写しの場合もありますが、小さいものになると1ページに9枚というレイアウトになっています。すべてカラー写真です。 西欧9ヶ国の教会の、ファサード、絵画、彫刻、ステンドグラスを撮った、800余点のカラー写真は、なんといっても圧巻。 眺めるだけでも、教会建築がなんとなく好きという読者には面白いですが、やはりそれぞれの建築様式についていくらかでも知識を得ると、もっと楽しめそうな一冊です。 →Amazon「とんぼの本 フランス ゴシックを仰ぐ旅」 |