■本の蒐集記録(2009年9-10月)


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2009/10/28(Wed)
●ローラ・インガルス・ワイルダー 作/ガース・ウィリアムズ 画/恩地三保子 訳『大きな森の小さな家 インガルス一家の物語1』(福音館文庫)
●J・ウェブスター 著/松本恵子 訳『続あしながおじさん』(新潮文庫)
●エレナ・ポーター 著/村岡花子 訳『パレアナの青春』(角川文庫)

大きな森の小さな家 ―インガルス一家の物語〈1〉 (福音館文庫) 「大草原の小さな家」シリーズは、むかしテレビドラマでやっていたのを、ちらと見た記憶がありますが、原作を読んだことはありませんでした。
友人が面白いと言っていたので、子どもの物語とはいえぜひ読んでみたいと思い、さて原作について調べてみたら、このシリーズはいろいろあってややこしいのですね。
福音館文庫、岩波少年文庫、講談社文庫…値段の安さから講談社文庫が良いかなとも思ったのですが、やっぱり福音館文庫を選びました。
「大草原の小さな家」シリーズというのは、ローラの幼年・少女時代を描く福音館文庫「インガルス一家の物語」5冊と、それに続くローラの青春時代と結婚後を描く岩波少年文庫「ローラ物語」5冊で完結で、すべてガース・ウィリアムズの挿絵がついています。
講談社から出ているものには、ガースの挿絵はありません。
読んでみてよくわかったのですが、この世界的な人気絵本画家による、綿密で誠実な取材にもとづいた挿絵は、主人公ローラの暮らし、すなわちアメリカ開拓時代の生活を、現代の日本人が思い描く上で、とても貴重な手がかりになります。
このシリーズが、これほどまで細部にわたって、きっちりと記録されたものだとは知りませんでした。燻製肉やバターやチーズ、メイプル・シュガーのつくりかた…。大人が読んでもたいへん興味深いです。
それに、じいちゃんの家で開かれたダンス・パーティの楽しさ!当時の女性たちのおしゃれ心に共感できるし、ばあちゃんやかあさんたちが作るごちそうの美味しそうなこと。
また「大きな森」の動物たちの描写も克明で、シカやクマやウサギたちを描くガースの絵筆も冴えわたっています。

『続あしながおじさん』は、『あしながおじさん』の続編。主人公はシュディではなく、シュディの友人サリーで、続編だけれども独立したお話。
『パレアナの青春』は、『少女パレアナ』の続編。「大草原の小さな家」シリーズは、骨太の物語だけれど、昔ながらの可憐な少女小説というのも、やはり好きだなあと思う。

→「おすすめ児童文学」はこちら

→Amazon「大きな森の小さな家 ―インガルス一家の物語〈1〉 (福音館文庫)
あしながおじさん (続) (新潮文庫)
パレアナの青春 (角川文庫)

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2009/10/20(Tue)
●ジャンナ・ジー・ヴィッテンゾン 作/レオニード・シュワルツマン 絵/服部美鈴 翻案『ミトン』(河出書房新社)
●エレナ・ポーター 著/村岡花子 訳『少女パレアナ』(角川文庫)
●小沼 丹 著『村のエトランジェ』(講談社文芸文庫)

ミトン 『ミトン』は、同名の有名なロシア・アニメを絵本化したもの。
レオニード・シュワルツマンは、「チェブラーシカ」の生みの親として日本でもよく知られています。
アニメを観たこともなく、「チェブラーシカ」が好きというわけでもなかったのですが、表紙のかわいさに惹かれて買ってしまいました(またジャケ買い…^^;)。
シュワルツマンの素朴であたたかみのある絵、チェコ絵本の懐かしいような雰囲気に通じるものがあるかも。
おはなしも印象深い。犬を飼いたい主人公アーニャ。赤いミトンが、こいぬのように見えてきて…。切ないけれど、ハッピーエンドで良かった〜という感じです(^-^)

少女パレアナ (角川文庫クラシックス) 昔ながらの少女小説を見直そう計画、今度は、村岡花子訳による『少女パレアナ』です。
子どもの頃、アニメを見たことを憶えていますが、アニメはあんまり好きだとは思わなかったなあ。もうひねくれた年頃(思春期?)になっていたからか、主人公ポリアンナ(アニメではこの名前)の「しあわせ探し」というのが、ウソくさく感じられたのですよね。
村岡花子女子の確かな翻訳で、大人の目線で、原作を読んでみたら、また違った印象を受けるであろうと期待しています。
大人が買うときはちょっと恥ずかしいかもしれないけど、吉野朔美氏によるカバーイラストもかわいい。

『村のエトランジェ』は、この流れのなかで、なぜか渋い日本文学。
小沼 丹は、私小説や随筆にすぐれた作家で、早稲田大学名誉教授の英文学者でもありました。
牧歌的でレトロなミステリ作品『黒いハンカチ』(これは乙女的な本としても読める!)で魅了され、入手容易な小沼作品をいろいろ集めているのですが、この『村のエトランジェ』は、絶版になっていた作品が文庫として多数収録されていて、とても嬉しい。
小沼作品は、渋い日本文学ではあるけれども、どことなくイギリス文学的な、洋風な雰囲気もあって、洒落ていて素敵なんです。
それにしても巻末の解説に、小沼作品はチェーホフからも影響を受けているとあったのだけど、マンスフィールドもチェーホフの影響があるんだよね…これはチェーホフを読めということなのでしょうか。

→小沼丹『黒いハンカチ』の紹介はこちら
→キャサリン・マンスフィールドの紹介はこちら

→Amazon「ミトン
少女パレアナ (角川文庫クラシックス)
村のエトランジェ (講談社文芸文庫)

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2009/10/16(Fri)
●ヨハンナ・シュピリ 著/関 泰祐・阿部賀隆 訳
『アルプスの少女ハイジ』(角川文庫)
●J・ウェブスター 著/松本恵子 訳『あしながおじさん』(新潮文庫)

アルプスの少女ハイジ (角川文庫) 『アルプスの少女ハイジ』、子どもの頃、アニメで親しんだ作品です。
憧れたスイスの山暮らし。おじいさんが火であぶったチーズ、あの美味しそうにとろけるさまを、憶えている人も多いのではないでしょうか。
でも、原作を読んだことはありませんでした。今さらながらこの本を手にとったのは、『ジェーン・エア』がヴィクトリア朝イギリスの重苦しい空気に支配された小説だったので、爽やかな物語を読みたくなったからです。
ほんとうは福音館文庫か岩波少年文庫の訳が良いのだろうと思ったけど、値段の安さに負けて角川文庫版を購入。
やっぱりハイジは面白い!
アニメのイメージと、さほど違和感があるわけではありませんが、原作では、信仰について語られる場面が印象的です。
アニメと本という違いはあれど、子どものころ親しんだ世界に、もう一度ひたって息をすることは、とてもよい気持です。

『あしながおじさん』は、子どもの頃に一度は読んだのですが、そのときはさほど印象に残りませんでした。主人公の年齢が、少し上(ジルーシャ・アボットは大学生)だったからでしょうか。
「赤毛のアン」シリーズはじめ、昔ながらの少女小説(?)を見直そうといろいろ読んでいるので、『あしながおじさん』も再読してみようと思いました。
『小公女』がドラマ化(TBS系)されたりしていますが、古い少女小説って、なかなか面白いですよね。

→「おすすめ児童文学」はこちら

→Amazon「アルプスの少女ハイジ (角川文庫)
あしながおじさん (新潮文庫)

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2009/10/14(Wed)
●ジュール・シュぺルヴィエル 著/後藤信幸 訳
『帆船のように シュペルヴィエル詩集』(国文社)

ジュール・シュぺルヴィエルは、フランスの詩人。
日本では堀口大學の翻訳で戦前から知られ、戦後の詩壇に少なからぬ影響を与えているのだそうです。
シュぺルヴィエルはまた小説も書いていて、光文社古典新訳文庫の『海に住む少女』では、幻想的な、痛々しいほどに透明な、美しい短編が多数収録されています。
『海に住む少女』が、あまり痛々しくて、シュぺルヴィエルは苦手かもしれない、と思ったのでしたが、友人を通して詩作品のほうに興味をもち、この詩集を入手。 絶版が多いシュぺルヴィエルの詩集、この本もAmazonでは古書扱いで、すごい値段がついてますが、わたしは本やタウンでフツーに買いました(^^;

この詩集は、戦後の詩壇に影響を与えたとされる作品群より前に書かれた、いわゆる若書きということで、シュぺルヴィエル独特の詩法はまだ見られない…らしい。
でも、だからでしょうか。難解でなく、素直な、とても爽やかな詩篇が多く、詩に詳しくないわたしのような読者には、たいへん読みやすいです。
「魂」「空」「太陽」「鳥」などといったキーワードの中に、南米に暮らした経験からくるイメージなのでしょう、「大草原(パンパ)」「ユーカリ」という語句が混じってくるのが印象的。
また原書の形を生かしたというこの詩集、白い(汚れやすい)表紙カバーが使われたシンプルな装幀も美しいです。
ユーカリの大木が月光を浴び、
銀色の森の奥に 夜があまねく流れる、
褐色の大地に軽く触れ 香りをかきたて、
器用な指で 色たちを静めながら。

枝はもう黒くはなく 草はもはや緑色ではない、
オパール色の靄が 遠方で野原を虹色にする、
鳥たちは森の香りにつつまれ 心地よげに眠っている、
翼を閉じ 魂を大きく開いて。

『帆船のように』79ページより

→「おすすめ詩集」はこちら

→Amazon「帆船のように―シュペルヴィエル詩集 (1985年)

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2009/10/08(Thu)
●ブルーノ・ムナーリ 作/谷川俊太郎 訳
『きりの なかの サーカス』(フレーベル館)

きりのなかのサーカス ブルーノ・ムナーリは、イタリアのミラノ生まれ。インダストリアル・デザイナー、グラフィック・デザイナーでもあったアーティストです。
ムナーリのデザイン性にあふれた絵本は日本でもよく知られていると思います。
『きりの なかの サーカス』は、『闇の夜に』と同じく、ムナーリのすぐれた仕掛け絵本。
「霧」をあらわすのに透け感のあるトレーシングペーパーが使われているのが特色で、洗練されたデザインは大人が見ても楽しめます。
ずっと絶版だったのですが、詩人、谷川俊太郎氏の新訳で2009年9月に復刊。さっそく購入しました。

Amazonにリンクを貼っていますが、すでに品切れ状態(ユーズド商品出品されてますが、新品より高いです)。現在(2009/10/18)確認した範囲では、ビーケーワン・JUNKUDO BOOK WEB・紀伊國屋書店BookWebで入手可能です。
興味ある方は急いでチェックしてみてください!

→「ブルーノ・ムナーリの絵本」はこちら

→Amazon「きりのなかのサーカス

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2009/10/03(Sat)
●チャルカ 著『チャルカの旅と雑貨と喫茶のはなし』(産業編集センター)

チャルカの旅と雑貨と喫茶のはなし 久保よしみさんと藤山なおみさん、旅友たちの女性ふたりが作った、大阪北堀江にある有名なお店、東欧を旅する雑貨店[チャルカ] 。
この本は、10周年をむかえたチャルカの最新刊です。

チャルカの初めての本は、『チャルカの東欧雑貨買いつけ旅日記』というオレンジ色の表紙カバーの本(左下の画像です)。
10周年の節目に、「オレンジ本」と同じメンバーで、これまでのチャルカをふりかえる本として作られたのが、この「緑本」なのだそうです。
チャルカの本は、紙自体がざらっとした手触りで味があって素敵。表紙をめくると見返しの模様がとてもかわいくて楽しくなります。もちろん中身も東欧とチャルカのかわいさ満載。ページのレイアウトも凝っているので要チェックです!
チャルカの東欧雑貨買いつけ旅日記 旅、雑貨、喫茶、花、文房具…。久保さんと藤山さん、おふたりの好きなことをすべて詰め込んだ雑貨店チャルカ。そのチャルカのすべてが書かれたこの本。
読んでいると、自分でも、何かものを作ったり、何かを「好き」な気持を発信したりしたくなってきます。

→「かわいい旅と雑貨の本」はこちら

→Amazon「チャルカの旅と雑貨と喫茶のはなし

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2009/09/28(Mon)
●デュ・モーリア 著/茅野美ど里 訳『レベッカ 上・下』(新潮文庫)
●C・ブロンテ 著/大久保康雄 訳『ジェーン・エア』(新潮文庫)

レベッカ〈上〉 (新潮文庫) オースティン『ノーサンガー・アベイ』を読み、また『ジェイン・オースティンの手紙』でもオースティンがゴシック小説をとても楽しんでいたようなので、ゴシックロマンへの興味がふたたび湧いてきました。
ゴシックロマン…それはわたしにとって、イギリスの広大な「お屋敷」が出てくる小説。執事と女中頭と小間使いと朝の間と大理石のマントルピース、そして薔薇園や菜園を含む広大な庭が出てくる小説なのです!(…偏見かな〜^^;)
『レベッカ』は、言わずと知れたゴシックロマンの金字塔。デュ・モーリアは、オースティンよりずっと新しい時代の作家だけど、やっぱりゴシックロマンといえばこれか!と思って。
う〜ん、面白かった。一気読みしてしまいました。
「ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た」
この書き出しの一文からして、イギリス人の「家」に対する思い入れ、執着心をまざまざと感じますね〜(マンダレーっていうのは、お屋敷の名前)。ほんと興味深い。
さて訳についてですが、わたしは大久保康雄氏による旧訳のほうを知らないので、気にせず新訳を読んだのけど、旧訳を知ってる人は賛否両論のようです(Amazonのレビューを見ると…)。
読後の印象としては、読みやすいけど、確かにゴシック〜って雰囲気は、少ないかもしれないですね。

ジェーン・エア (上) (新潮文庫) 『レベッカ』は、『ジェーン・エア』の設定と、とても似ているところがあるのだそう。
『ジェーン・エア』もまた、言わずと知れた名作。ゴシック小説ではないけれど、ゴシックの要素がたくさん盛り込まれているのだとか。
こんな名作も読んだことなかったのかと、世の読書好きには呆れられそうですが、知ったかぶりせず、今から読んでみることにします。
で、またもや訳についてですが、この新潮文庫版『ジェーン・エア』は、『レベッカ』の旧訳も手がけられた大久保康雄氏の訳。
店頭で、光文社古典新訳文庫版と、岩波文庫版と、出だしのところだけ読み比べてみたのですが、まったく印象が違う!
とくに光文社古典新訳文庫の訳だと、ゲーツヘッド邸の人々の、ジェーンに対する言葉が、あまりに酷い、品の無いののしり方だな〜と思えたのだけど、大久保康雄氏の訳だと、いかにも子どもの悪口雑言という感じが出ているし、保母のベッシイの科白にも少しばかり愛情が感じられる。
わたしは結局、この新潮文庫版を買ったわけですが。
でも文学作品の訳って、どちらが正しいとか、断定的には決められないものですし。『レベッカ』の新訳の賛否両論もそうだけど、翻訳って難しいものなんだなと、改めて感じたことでした。

→「おすすめ英米女流文学」はこちら

→Amazon「レベッカ〈上〉 (新潮文庫)」「レベッカ〈下〉 (新潮文庫)
ジェーン・エア (上) (新潮文庫)」「ジェーン・エア (下巻) (新潮文庫)

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2009/09/24(Thu)
●ディアドリー・ル・フェイ 著/川成 洋 監訳/太田美智子 訳『図説ジェイン・オースティン シリーズ作家の生涯』(ミュージアム図書)
●バーネット 著/伊藤 整 訳『小公女』(新潮文庫)

図説 ジェイン・オースティン (シリーズ作家の生涯) これも、オースティン関連本です。
この「シリーズ作家の生涯」は、大英図書館が秘蔵する貴重な資料や多数のカラー図版を示しながら、有名な作家たちの生涯をたどるというもの。
著者のディアドリー・ル・フェイは、『ジェイン・オースティン料理読本』も手がけているオースティン研究家で、テキストは一般の読者向けに書かれた、丁寧でわかりやすいものです。
ジェインや家族の肖像画、ジェインが暮らしたスティーブントンの牧師館の絵やチョートン・コテージの写真、ジェインが生きた時代のベイジングストークやバースの社交会館の絵などの図版が、多数掲載されています。
オースティンと彼女が生きた時代に関する、視覚的な情報が得られるのがありがたく、『ジェイン・オースティンの手紙』とあわせ読むと、なお面白いです。
偉大な作家の平凡な生涯と、日常生活から創作のヒントをどう得ていたのか、どうしても想像力をたくましくしてしまいます。

『小公女』は、わたしの子ども時代の座右の書。
古き良き(?)イギリスに興味をもつようになり、『小公女』を読み返してみようと思い立つ。
子どもの頃は、子ども用に省略された本を読んでいたようで、こんなエピソードもあったかと新たな発見をしながら再読しました。
やっぱりとても面白くて、一晩で読了してしまった。でも大人ならではの感想もいろいろあります。
今読んでもミンチン先生はひどい人だけど、こういう人はいくらでもいるし、ジェイン・オースティンならユーモラスな登場人物にしてしまったかもな〜だとか。 そもそも主人公サアラのお父さんの富は、インドから搾取したものなんだよな〜とか。 だいたいインド人のラム・ダスの描写なんて、インド人への偏見に満ちていないか、とか。
まあ、そうは言っても名作は名作で、辛い暮らしに陥ったサアラ自身を支え続けたゆたかな想像力には、うんうんと深く共感。
サアラはミンチン先生にいじめられても、自分を公女さまだと想像して耐えたり、みすぼらしい屋根裏部屋でも、宮廷の大広間のつもりになって楽しんだりしています。
子どもならではの想像力、ごっこ遊びともとれるけれど、これはサアラの生きる知恵だし、大人でもストレスを減らすコツとして仕えるかも!? なんて思います。

→「おすすめ英米女流文学」はこちら

→Amazon「図説 ジェイン・オースティン (シリーズ作家の生涯)
小公女 (新潮文庫)

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2009/09/14(Mon)
●マギー・ブラック,ディアドレ・ル・フェイ 著/中尾真理 訳
『ジェイン・オースティン料理読本』(晶文社)

ジェイン・オースティン料理読本 オースティン関連本、今度はお料理について。
オースティンが生きた、200年前のイギリスの生活で、服装とともに気になったのが料理です。
オースティンの小説は、食べ物に関する描写はあまり多くはないのだけれど、”ディナーに招かれる”という場面はよく出てくるし、そこでいったいどんなものが食されていたのか、知りたくなりました。

『ジェイン・オースティン料理読本』は、200年前のイギリスのレシピと、それを現代版にアレンジしたレシピを併記した、ユニークな料理本。
当時のレシピは、ジェインと姉キャサンドラの友人で、チョートン時代はジェイン母娘とともに暮らしていた、マーサ・ロイドのレシピ・ノートからとられたもの。
『ジェイン・オースティンの手紙』でも、マーサ・ロイドの名はよく登場しますし、ジェインがマーサに宛てた手紙もいくつか収録されています。マーサのレシピは、オースティン家の食卓の様子、200年前のイギリスの食生活を伝えてくれるものなのです。
この本では、最初の50ページほどで、「オースティンの時代の社交と暮らし」「作品と手紙にみる食卓」「マーサ・ロイドのレシピ・ノート」として、当時の食習慣について、オースティンの作品や書簡などをひきながら解説してくれていて、これが興味深いです。
以降はレシピ集で、現代のレシピ本とは違って完成写真などは載っていません。ですが、当時のレシピは現代のレシピとは違って、文章で「おっとりと」書かれていて面白いです。社交が盛んだった時代のこと、華やかに見える盛り付けの工夫などが随所に記されています。
この当時のレシピを再現するにはということで、材料や分量をわかりやすく示した現代版レシピが併記されているので、こちらも参考になります。

現代のそれとはかなり異なる当時の食卓の風景を知れば、オースティン作品がさらに面白く読めること間違いなしです。

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→Amazon「ジェイン・オースティン料理読本

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2009/09/08(Tue)
●ぺネロープ・バード 著/能澤慧子 監訳/杉浦悦子 訳
『ジェイン・オースティン ファッション』(テクノレヴュー)

ジェイン・オースティン ファッション オースティン関連本、続きます。
オースティンを読んでいて、生き生きとした登場人物たちの姿を思い描くとき、でも200年前のイギリスの服装って、どんな??と悩むことがしばしば。
まあ正確に細かいことはわからなくとも、オースティンの小説は十分面白いのですけど、当時の風俗に興味をおぼえた方(それはわたしです)には、この本は参考になります。

ジェイン・オースティンが生きた時代の服飾文化について、オースティンの作品や書簡をひいて解説した一冊。
「ファッション・プレート」と呼ばれる、当時、流行を雑誌で紹介するために描かれた版画が、カラーで34枚収録されており、目にも楽しくわかりやすい。 また、この本やオースティンの小説に出てくるテキスタイル・ファッション用語の解説があり、モスリンとポプリンの違いがわかって、なるほど〜と思ったりして。
『若草物語』や『赤毛のアン』を読んでいても、モスリンってどんな生地なんだろうと思っていたので、よくわかって嬉しい。
オースティンが刺繍したモスリンのスカーフや、書簡に登場する弟チャールズが姉ジェインとキャサンドラに贈ったトパーズの十字架の写真などが掲載されているのも、ファンには興味津々。
チャールズが贈ったトパーズの十字架は、『マンスフィールド・パーク』のファニーの琥珀の十字架のアイデアになったとも言われるので、小説世界を想像するための助けになります。

エマ (下) (ちくま文庫) あと、ちくま文庫『分別と多感』『エマ』『説得』の雰囲気たっぶりのカバーは、この本にも収録されている「ファッション・プレート」が使われていたことがわかり、ますます楽しい(^-^)
『エマ』の下巻の表紙なんか、とってもかわいい!と思っていたから。(左の表紙画像です。『ジェイン・オースティン ファッション』には、こういう「ファッション・プレート」が多数収録されており、身に着けているものについての、詳しい解説もついてます)

オースティンの世界にどっぶりひたりながら、いつの世も変わらぬ女性のファッションへの関心の高さに、共感することしきりです。

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→Amazon「ジェイン・オースティン ファッション

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2009/09/04(Thu)
●ほし よりこ 著『きょうの猫村さん 4』(マガジンハウス)
●新井潤美 訳『ジェイン・オースティンの手紙』(岩波文庫)

きょうの猫村さん 4 待望の、『きょうの猫村さん』第4巻目が発売!
この表紙の、鼻歌うたいながら洗濯物ほしてる猫村さんを見るだけで、心が和む〜。
4巻目では、またまた気になる新たなキャラクターが登場! その名も岸カオル。どうやら犬神家の奥様に気があるらしい!?
ここらへんの展開が、ドラマ大好き猫村さんの新たな注目ドラマ『黒い別珍』と連動して進んでいきます。
ああ、奥様の出会いはいったいどう発展するの〜!? とは思うのですが、4巻目にいたってもまだ尾仁子おじょうさまの集会は開かれていない。ストーリーの歩みは遅々としているのです。う〜ん、もうちょっとスピーディに進めてもいいのでは…?
ともあれ、村田の奥さんの人生達観してるような言葉が、胸にしみいる今日この頃…。
「どこの家でもいろいろ悩みかかえながら全部やり過ごしてさ、やるべき事やってんのさ」
「テレビのドラマはリモコンでポチッと電源切っちまったら終わるけど現実はそうじゃないんだからね」

『きょうの猫村さん 4』101、103ページより、村田の奥さんのセリフ

さて、オースティンの長編6編の蒐集はおしまいとなりましたが、オースティン関連本は、まだまだあるのだった!
『ジェイン・オースティンの手紙』は、オースティンが姉キャサンドラなどに宛てた手紙を精選した書簡集。
この手紙の文章、オースティンの小説の中に出てくる手紙みたい。
オースティンの生活も小説そのまんまという感じで、昨夜の舞踏会が楽しかっただの、誰それの馬車に乗せてほしいだの、絹のストッキングを買う買わないだの、そんなことばかり書いてあります。
でも、そんなこと、が面白いんだよね〜。
解説もたくさんあり、オースティンの人生の断片や、200年前のイギリスの風俗を垣間見るのが楽しみな一冊。

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→Amazon「きょうの猫村さん 4
ジェイン・オースティンの手紙 (岩波文庫)

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