〜挿絵とともにたのしむ〜
きみも、この本の窓をとおして、
遠くの遠くの、ある庭で ひとりの子どもが遊んでいるのを見るでしょう。 でも、いくら窓ガラスをコツコツと、たたいてみても、 その子にその音は聞こえない。 (略) なぜって、その子は、ほんとうは、 はるか昔に大きくなって、その庭から出ていって、 今はそこには、おりません。 その庭に今もいるのは、その子の心。 今も、心はその庭にとどまって、こうして遊んでいるのです。 ―間崎ルリ子 訳『ある子どもの詩の庭で』118ページより |
『A Child's Garden of Verses』は、『宝島』『ジキル博士とハイド氏』などの作品で知られる、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの詩集。 これは子どものための詩集で、韻文詩という性質上、邦訳版は少ないのですが、これまで数多くの画家たちが美しい絵を寄せてきました。 チャールズ・ロビンソン、ウィルビーク・ル・メール、ジェシー・W・スミス、ブライアン・ワイルドスミス、ターシャ・テューダー…。 何とそうそうたる名前の数々! 英語圏でこれほど親しまれている詩集、日本でも、挿絵とともにぜひたのしんでみませんか? |
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「A Child's Garden of Verses: A Classic Illustrated edition」
Tasha Tudor 絵「A Child's Garden of Verses」
Charles Robinson 絵「A Child's Garden of Verses」
Brian Wildsmith 絵「A Child's Garden of Verses」
ロバート・ルイス・スティーヴンソン ― Robert Louis Stevenson ―
1850年、スコットランドのエジンバラに生まれる。
生来病弱で、学校も休みがちだった。 エジンバラ大学で工学を学ぶも学位取得には至らず、その後、法科に転科して法律家となったが、長く続けることはなく、ヨーロッパ各地を旅しながら文筆をこころざす。 1879年に渡米、ファニー・オズボーンと結婚ののちも、療養のためヨーロッパ各地を転々とした。 1883年、息子のために書いた冒険小説『宝島』が出版されるやベストセラーとなり、世界的に著名となる。 1886年、『ジキル博士とハイド氏』出版。 1889年、自身の健康のため、家族ととともにサモア諸島に移住。 1894年、同地にて脳出血のため44歳で死去。 |
「A Child's Garden of Verses」A Classic Illustrated editionRobert Louis Stevenson 著/Cooper Edens 編(Chronicle Books) |
こちら『A Child's Garden of Verses: A Classic Illustrated edition』には、チャールズ・ロビンソン、ジェシー・ウィルコックス・スミス、ウィルビーク・ル・メールをはじめ、20世紀初頭の挿絵黄金時代に描かれた、クラシカルで美しい挿画が多数収録されています。
テキストもきちんと収録されているけれど、挿絵作品のアンソロジーとしても楽しめます。テキストと挿絵がきれいに見やすくレイアウトされていて、巻末に挿絵の索引があるのも嬉しい。 表紙カバーと見返しの魅力的な絵は、ウィリー・ポガニー(→Willy Pogany - Wikipedia, the free encyclopedia)によるもの。 ウィリー・ポガニーは、さまざまな画風を駆使して多くの挿絵を描いた人です。わたしの場合、愛らしく幻想的なこのカバー挿画に惹かれて、この本を買ってしまったとも言えるかも。 中身は、すべてのページにイラストが配され、カラーも、モノクロも、夢のあるやさしい絵ばかりです。 E. Mars、Ruth Mary Hallockによる、「Happry Thought」の挿絵など、眺めているだけで幸せな気持ちになれます。 →「ジェシー・W・スミスの絵本」はこちら →Amazon「A Child's Garden of Verses: A Classic Illustrated edition」 |
「A Child's Garden of Verses」Robert Louis Stevenson 著/Tasha Tudor 絵
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こちらは、ターシャ・テューダーの絵本。テキストもちゃんと収録されているけど、テキストより絵が主になっている本という感じです。
アメリカの絵本作家ターシャ・テューダーは、作品のみならずそのライフスタイルも、日本ではよく知られていますよね。 自分の子どもや孫たち、コーギー犬や猫や鳥たち、コーギーコテージと美しい庭の風景を、凝った飾り罫の中に描く、ターシャの絵の世界。 『A Child's Garden of Verses』でも、おなじみのコーギー犬が顔をのぞかせ、草花や小動物や玩具などが細かく描きこまれてテキストを縁取り、喜びや、恐れや、幻想に彩られた子どもの世界が、いかにもターシャらしく表現されています。 ターシャの絵本は、見返しにもたいてい凝った絵があるのが嬉しく、この本でも、すべての見返しにひとつずつ違った絵が刷られているので、要チェック。 詩といっても、親しみやすく人気のある画家が絵を描いているこういう絵本は、邦訳版があっても良いのにと思いますが…やっぱり著作権などさまざまな問題(?)があるのでしょうか。 →Amazon「A Child's Garden of Verses」 |
「A Child's Garden of Verses」Everyman's Library Children's ClassicsRobert Louis Stevenson 著/Charles Robinson 絵(Everyman's Library) |
こちらは、チャールズ・ロビンソン挿絵の詩集。絵本ではなく、テキストに絵が添えられた詩集という感じです。
チャールズ・ロビンソンは、挿絵の世界で名高いロビンソン兄弟(トーマス・ロビンソンが長男、ウィリアム・ヒース・ロビンソンが三男)の二男。 英国挿絵黄金時代に活躍した画家で、『秘密の花園』や『幸福の王子』、そして『A Child's Garden of Verses』などの挿絵が知られています。 ロビンソン兄弟のなかでは、このチャールズの絵がいちばん幻想的で美しいという印象を受けます。 『A Child's Garden of Verses』の挿絵は、すべてモノクロですが、これが美しい。 各章の扉絵など、幻想にあふれた夢のような美しさ! 「The Land of Nod」の挿絵なども、奇妙なかたちの丘や尖塔など奇想にあふれた風景が描かれ、眠りの国の果てしなさと不思議さが感じられます。 ただこの「Everyman's Library Children's Classics」シリーズは、原本の版型と違っている場合(違っていることがほとんどのような気もしますが…)、無理に挿絵を縮小したり拡大したりして、印刷がつぶれたり、ぶれたりしていることがあるので、そこがちょっと惜しいかも。 シリーズとしては、布張り箔押しで装幀がそろっていて、本棚に並べても綺麗なんですけどね〜。 →版は違いますが、Google booksでチャールズ・ロビンソンの挿絵をプレビューできます。 →Amazon「A Child's Garden of Verses (Everyman's Library Children's Classics)」 |
「A Child's Garden of Verses」Robert Louis Stevenson 著/Brian Wildsmith 絵(Star Bright Books) |
こちらは、ブライアン・ワイルドスミスの絵本。テキストも収録されているけど、テキストより絵が主になっている本という感じです。
わたしが入手したのは、(たぶん)最新のペーパーバック版ですが、この版では、もともとのスティーヴンソンの詩集とは、収録されている詩の順番も違いますし、割愛されている詩もあります。 ワイルドスミスの『A Child's Garden of Verses』は、版を変えて何度も出版されているようで、他の版がどのような構成になっているのかは確認できていません。 ブライアン・ワイルドスミスは、色彩の魔術師とも呼ばれるイギリスの人気絵本画家。日本でもよく知られていますよね。 ワイルドスミスの絵本は、これが初めて買ったものなのですが、やっぱりすごい絵だと思いました。 鮮やかな色、その大胆な組み合わせ方と構図。まるで子どもが奔放に描いたようでいて、芸術的で洗練されていて。 上記に紹介した、クラシカルな『A Child's Garden of Verses』とはまた違った、めくるめく色彩に彩られたワイルドスミス独特の世界が広がっています。 こういう芸術的な絵本は、安価なペーパーバック版も有難いけれども、やっぱり装幀も美しいハードカバー版が欲しいなあ…なんて思ってしまいました。 先に述べたように、版を変えて何度も出版されているこの絵本、とってもお高いヴィンテージ絵本もネットでは購入できるようですが…わたしには手が出ません(^^;) →版は違いますが、ブライアン・ワイルドスミスのHPで中の絵をプレビューできます。 →ワイルドスミス『A Child's Garden of Verses』のヴィンテージ絵本、「キュリオブックス」で購入可能、中の絵も確認できます。 →Amazon「A Child's Garden of Verses」(ペーパーバック) |
「ある子どもの詩の庭で」ロバート・ルイス・スティーヴンソン 詩/イーヴ・ガーネット 絵/
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現在、容易に入手できる『A Child's Garden of Verses』の全訳です。英文は併記されていません。絵本ではなく、テキストに絵が添えられた詩集という感じです。
絵を眺めるだけで英語が読めないわたしのような読者(^^;)は、挿絵の美しい洋書とともに、この邦訳版を併せ読むと、楽しさが倍増すること間違いなしです。 この瑞雲舎版は、イーヴ・ガーネット挿絵による『A Child's Garden of Verses』(左の画像、版がいろいろあります)の邦訳版で、ブルーのインクで刷られたやさしい鉛筆画に、心がなごみます。 詩の邦訳は、原詩で読んだときのリズムや脚韻が、どうしても失われてしまうわけですが、間崎ルリ子さんの丁寧な仕事によって、スティーヴンソンが詩に込めた思いが、じんと伝わってきます。 わたしの好きな詩もいろいろありますが…「点灯夫」「見えない友だち」「冬の絵本」…きっと、読者がそれぞれに、共感し、心あそばせるこのできる詩が見つかると思います。 スティーヴンソンの子ども時代の輝きを閉じ込めたこの詩集は、ごく個人的な思い出が歌われていながら、同時にすべての子どもたち、かつて子どもだった大人たちにとっても、普遍的な永遠の「詩の庭」であり続けていくことでしょう。 そして私の詩をたのしむ子どもたちが ―間崎ルリ子 訳『ある子どもの詩の庭で』献辞、6ページより →瑞雲舎「ずいずい・ぶろぐ」で、イーヴ・ガーネットの挿絵を確認できます。 →Amazon「ある子どもの詩の庭で」 |
「A Child's Garden of Verses」Golden Bks ClassicsRobert Louis Stevenson 著/
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「A Child's Garden of Verses」Golden Days nursery rhymesRobert Louis Stevenson 著/Henriette Willebeek Le Mair 絵(Philomel、Penguin Global)
マザーグース絵本で知られる、ウィルビーク・ル・メールの絵本。古い版と新しい版があります。ル・メールの絵のいくつかは、上記で紹介している Cooper Edens 編『A Child's Garden of Verses: A Classic Illustrated edition』に収録されています。
→Amazon「Child's Garden of Verse」(Philomel) |
「A Child's Garden of Verses」Robert Louis Stevenson 著/Jessie Willcox Smith 絵
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「子どもの詩の園」「続・子どもの詩の園」ロバート・ルイス スティーヴンスン 著/
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「童心詩集」R. L. Stevenson 原作/福原麟太郎〔ほか〕訳注 (英光社) |
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