■本の蒐集記録(2008年1-2月)





2008/02/23(Sat)
●志村ふくみ 著『語りかける花』(ちくま文庫)
●志村ふくみ 文/井上隆雄 写真『色を奏でる』(ちくま文庫)

女性が書いた随筆に興味を抱いている今日この頃。『雀の手帖』に続きセレクトしたのは、志村ふくみさんの随筆集2冊。
志村ふくみさんは、草木染めによるすぐれた作品を発表しつづけ、1990年には人間国宝に認定されている染織家。 文筆にもすぐれ、『語りかける花』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞されています。
志村ふくみさんの草木染めによる作品を、よく知っているわけではないのですが、新聞で紹介されていた言葉が記憶に残っていて、いつか本を読んでみたいと思っていました。

その言葉というのは、『色を奏でる』に収録されている、「緑という色」で語られています。
緑という色は、草木がどんなに青々としていても、その染液から直接染めることはできず、青と黄をかけ合わせて得られる色なのだそう。
志村ふくみさんは、緑という色を生命の象徴ととらえ、光に近い色である黄色と、闇に近い色である青が合わさって、はじめて緑が生まれると書いていらっしゃいます。
ごく短い文章。ですが、とてもたいせつなことが語られていると感じます。
『色を奏でる』はカラー写真も多数収録されていて、草木で染められた糸の色の美しさが、なんとも興味深いです。

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2008/02/19(Tue)
●ミロスラフ・サセック 著/松浦弥太郎 訳
『ジス・イズ・ヴェニス』(ブルース・インターアクションズ)
●幸田 文 著『雀の手帖』(新潮文庫)

旅する絵本作家サセックが、世界中の都市を訪れ、その土地の魅力を紹介している旅行絵本<ジス・イズ・シリーズ>。
サセックの絵がとにかくおしゃれで、気になる都市の絵本を少しずつ集めていこうと、今回チョイスしたのは水の都ヴェニス。
世界遺産でもあるヴェニスの街には、以前から、つよい憧れがあります。
だって、あんな不思議な水上都市、ほかにあるでしょうか?
海の上に浮かぶ街、運河、そこにかかるたくさんの橋、迷路のように入り組んだ路地、美しい広場、歴史ある建造物…。まるで幻想小説の中に出てくる架空の都市のようではありませんか!
サセックの描くヴェニス紹介はやっぱりとても素敵で、この一冊の基調となる色は、さわやかな水色。
ロンドン編やアイルランド編のどんよりとした曇り空から一転、ページを繰るたびに、アドレア海のあかるい陽射しを感じさせる青空が広がっています。
ヴェニスは有名な都市ですから、紹介されている内容はすっかりおなじみのものかもしれませんが、サセックの筆になるヴェニスの風景というのがまた、味わい深くて良いのです。
夜のグランド・カナルの絵などは、とても幻想的で美しい一葉となっています。

女性が書いた”随筆”(語感として、なんとなく”エッセイ”ではない)に興味を抱いている今日この頃。
『燈火節』『今昔』に続いて購入したのは『雀の手帖』、これはわざわざ紹介する必要もないであろう、幸田 文の随筆集。
実は今まで幸田 文の作品はひとつも読んでこなかったわけではありますが…。
この随筆集は、一篇が見開き2ページ分におさまるように書かれていて、ちょっと空いた時間に読むのにちょうどよい。
また幸田さんの文章というのが、こう、ちゃきちゃきっとしていて歯切れよく、読んでいて気持ちがよいのです。
ふ〜む、幸田 文という作家はこういう文章を書く人であったか、などと、今さら感じ入っている次第であります。

→「ミロスラフ・サセックの絵本」はこちら

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2008/02/12(Tue)
●森田たま 著『今昔』(暮しの手帖社)

下記の片山廣子『燈火節』以外にも、昔の女性が書いた随筆を読みたくなり、購入。 表紙の、着物の柄のような、かわいい模様に惹かれて手にとりました。
著者についてはさして知識がなかったのですが、オビのプロフィールや、巻末の森田たま略年譜によると、なかなか波瀾に満ちた生涯を送った人のよう。
最初の夫とは離婚、自殺未遂を経て、大恋愛のすえ結婚した人とのあいだに子どもをもうけ、家庭に入り、 やがて随筆家として注目を浴び、1962年には参議院議員として当選もしています。

そんな森田たまの文章は、明治生まれの女性が書いたという気がしない、さらりとして読みやすいもの。
内容にも堅苦しさはまったくなく、着物のこと、料理のこと、暮らしまわりのことなど、女性にとっては普遍的なテーマが多くとりあげられています。
古臭さはありませんが、読んでいると、やはり昔の日本にタイムスリップした心地を味わえるのも魅力。 それに何と言っても、昔の人が書いた日本語は、とても美しいのです。

この本は、1951年に暮しの手帖社より刊行された同名の随筆集を復刻したものなのだそうで、旧版から新字新仮名遣いに改められています。
また、あとで気づいたのですが、森田たまについては、有名なネット古書店「海月書林」で特集が組まれていました。 新装版の装幀もかわいいのですが、旧版はもっと素敵だったみたいです。
多くは絶版になってしまっている森田たまの本ですが、気軽に読める軽やかでハイカラな随筆の数々は、現代女性にも楽しめること間違いなし。他の作品も復刻されると良いのになあと思いました。

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2008/02/05(Tue)
●片山廣子 著『新編 燈火節』(月曜社)

片山廣子は、大正期の歌人。松村みね子の筆名で、J.M.シングやロード・ダンセイニ、フィオナ・マクラウド等、多数のケルト圏の文学を翻訳し、日本に紹介したひとでもあります。
歌人としては歌集『翡翠(かわせみ)』『野に住みて』などを発表。また暮しの手帖社より刊行された随筆集『燈火節』は、1955年に、第3回日本エッセイスト・クラブ賞を受けています。

フィオナ・マクラウド『かなしき女王』の訳文に感銘を受けたことから、松村みね子の著作を読んでみたいと思い、月曜社から大部の集成本『燈火節―随筆+小説集』が出ていることを知って、迷ったすえに購入したのは2006年末のこと。
すっかり片山廣子/松村みね子の文章の魅力の虜になったのでしたが、けれども彼女の本が、安価でハンディなかたちではもはや流通していないことが、さびしくも感じられたのです。
ところが2007年12月に、同じく月曜社から、全48編に随筆8編を新規に加えた『新編 燈火節』が刊行されたとのこと。
さっそく入手してみると、これが初版本のハンディさに立ち返った、ソフトカバーの廉価版、しかも底本どおりの旧字旧仮名遣い。
ひそかに片山廣子/松村みね子の文章を愛する読者にとって、またいまだ彼女の文章に触れたことのない読者にとって、何と嬉しい知らせでしょう。

片山廣子/松村みね子を説明する言葉はいくつもあります。ニューヨーク領事をつとめた父をもち、ミッション系の女学校に通った深窓の令嬢。佐佐木信綱に師事した大正期の麗歌人。幻視の魂をもったアイルランド文学の紹介者。 あの芥川龍之介の最後の恋の相手と噂され、また堀辰雄『聖家族』のモデルとも言われる、孤高の才媛…。
そんな彼女が、夫や子どもの死、そして敗戦を乗り越え、晩年に至って著した生涯唯一の随筆集『燈火節』。
この一冊は、あえて言わせてもらうなら、まさに昨今はやり(?)の、「ガーリィ」な、「乙女」のための本ではないかと思うのです。
古書の愛好家には知られた名随筆かもしれませんが、こんなに美しい随筆集が、たくさんの「乙女」に知られずにいるのはもったいない!
本書の刊行により、より多くの読者が、片山廣子/松村みね子の文章に出会えることを願います。
 私は村里の小さな家で、降る雨をながめて乾杏子をたべる、三つぶの甘みを味つてゐるうち、遠い國の宮殿の夢をみてゐた、めざめてみれば何か物たりない。 庭を見ても、部屋の中をみても、何か一輪の花が欲しく思ふ。
 部屋の中には何の色もなく、ただ棚に僅かばかり並べられた本の背の色があるだけだつた。ぼたん色が一つ、黄いろと高ニ。
 私は小だんすの抽斗から古い香水を出した。外國の物がもうこの國に一さい來なくなるといふ時、銀座で買つたウビガンの香水だつた。 ここ數年間、麻の手巾も香水も抽斗の底の方に眠つてゐたのだが、いまそのびんの口を開けて古びたクツシヨンに振りかけた。ほのかな靜かな香りがして、どの花ともいひ切れない香り、庭に消えてしまつた忘れな草の聲をきくやうな、ほのぼのとした空氣が部屋を包んだのである。村里の雨降る日も愉しい。

『新編 燈火節』223-224ページより
*一部表記できない旧字は新字に置き換えてありますのでご了承ください。

→松村みね子 訳『ダンセイニ戯曲集』の紹介はこちら
→松村みね子 訳『かなしき女王』の紹介はこちら

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2008/01/28(Mon)
●巖谷國士 文/上野紀子 絵/中江嘉男 構成
『扉の国のチコ』(ポプラ社)

『扉の国のチコ』は、美術書のような絵本です。
巖谷國士氏は、仏文学者、評論家。たとえばアンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言;溶ける魚』(岩波文庫)の翻訳や、現代日本のアーティスト桑原弘明氏のスコープ作品を紹介する『スコープ少年の不思議な旅』のテキストなどを手がけていらっしゃいます。
上野紀子氏と中江嘉男氏は、コンビで数多くの絵本を発表。なかえよしを 作/上野紀子 絵による"ねずみくんの絵本"シリーズなどがよく知られています。
この三人のコラボレーションで生み出された『扉の国のチコ』は、日本に初めてシュルレアリスムを紹介した、有名な美術評論家であり詩人でもある、瀧口修造へのオマージュとも呼べる一冊。

生まれつき目がよく見えず、悲しい思いをしていた少女チコは、遠くのものを大きく見せる望遠鏡で見つけた、扉のむこうがわの国へと旅をします。 扉の国には年老いたひとりの旅人がいて、チコにいろんな不思議なものを見せてくれるのです。
この年老いた旅人こそ、瀧口修造その人。
そしてチコが目にする不思議なものたち、瀧口家の庭でとれたオリーヴの実の壜づめや、書斎で語りあうオブジェたち、焼けこげの穴がたくさんあいた本、マルセル・デュシャンの「大ガラス」「フレッシュ・ウィドウ」などなどは、 すべて実際にあるオブジェをもとに描かれているのです。
巖谷氏、上野氏、中江氏の3人が、1979年7月1日に亡くなった瀧口修造への思いを込めて作り上げた絵本。 物語の最後には、瀧口修造の詩作品「遺言」が、草稿そのままに引用されてもいます。

またこの絵本の装幀についてですが、”黒い絵本”とでも言うべきデザインで、表紙も中身も黒地、テキストが白抜きになっています。
見返しは赤い地に、なんだか奇妙な模様が刷られているのですが、これはもしかして、瀧口修造のデカルコマニー(ガラスなどの表面に絵の具を塗り、別のガラスや紙を上に重ねて転写する技法で描かれた絵で、瀧口修造のそれはとても神秘的な印象)をもとにしたデザインなのかな、と思うのですが。
同じく巖谷國士氏がテキストを手がけた『スコープ少年の不思議な旅』もこれと似た装幀で、見返しは赤地に、桑原弘明氏のスコープの表面に施されたものと似た模様が刷られていましたから。

チコがとおりぬけた扉のように、きっと、この絵本はすべての読者にとって、瀧口修造とシュルレアリスムの世界への扉となることでしょう。
そういえばこの絵本の中で、紙をこがすバーント・ドローイングをほどこされた穴のあいた本について、このように書かれていました。
「そう、本もまた扉ですからね。穴をのぞくこともできれば、ひらいて見ることもできます。ほら、ね!」
 老人がそういうと、本の扉がさっとひらかれ、また新しい光景があらわれました。

『扉の国のチコ』14ページより

*瀧口修造のデカルコマニーについては、よく知らなかったので、詳しい友人にいろいろと教えてもらいました。ありがとう!

→『スコープ少年の不思議な旅』の紹介はこちら

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2008/01/21(Mon)
●ミロスラフ・サセック 著/松浦弥太郎 訳
『ジス・イズ・ロンドン』(ブルース・インターアクションズ)
●シュペルヴィエル 著/永田千奈 訳
『海に住む少女』(光文社古典新訳文庫)

旅する絵本作家サセックが、世界中の都市を訪れ、その土地の魅力を紹介している旅行絵本<ジス・イズ・シリーズ>。
サセックの絵がとにかくおしゃれで、気になる都市の絵本を少しずつ集めたいなと思い、アイルランドに続いてチョイスしたのはロンドン。
一冊ずつに基調となる色があるこのシリーズ、『ジス・イズ・ロンドン』の表紙の色は灰色。ロンドン特有の濃い霧の色、どんより曇った空の色です。
見返しも霧、標題紙をめくってみても、霧でなんにも見えません。
でも次にページを繰ると、暗い霧がさあっと晴れて、ロンドンの街が姿を現します!
サセックが案内してくれるロンドンは、なんとも魅力的な都市。
スーツ姿の紳士たちや、たくさんの歴史的建造物、赤い2階建てバスや、くまの毛皮で作った帽子をかぶったバッキンガム宮殿の衛兵さんたち。
また水色のギンガムチェックのワンピースを着た学生さんたちや、紅茶のために1日4回のおやすみをとることや、みんなが芝生のある公園でくつろぐ様子までもきちんと描かれているところが、サセックの旅行案内の素晴らしさではないでしょうか。
まだ見ぬ憧れの街ロンドン。
うらやましいのはやっぱり、紅茶のための休息時間、かなあ(日本人も、こんなふうに優雅に休み時間を過ごすべきですよね〜)。

『海に住む少女』は、ジュール・シュペルヴィエルという見知らぬ作家の幻想的な短篇集。
見知らぬ、と思ったのはわたしが無知なだけで、シュペルヴィエルは詩人として日本でも有名であり、堀口大學や安藤元雄などによる翻訳が多数あるのだそう。 訳者あとがきによれば「フランス版宮沢賢治」と紹介されていて、たしかにそうとも言えるのかもしれませんが。
この記録をつけるのがとっても遅れているせいで、すでに読了してしまったシュペルヴィエルの作品群、実を言うとそれほど好みの幻想小説というわけではありませんでした。
文章はやさしい感じで、さらっとしていて読みやすく、表題作の「海に住む少女」の、海に浮かぶ町の描写など、とても美しいのですが…。
シュペルヴィエルの作品は、”癒しの”物語ではない、ということなのでしょうか。 たしかに宮沢賢治の作品も、”癒しの”物語ではない、と思えるのですけれど。
そうは言っても、”癒しの”物語の定義とは何かなどと問われても、これまたはっきりとは答えられないわけで…(^^;
本の好みって、とても不思議。
でもこういう、どちらかと言えば広く知られていない作品も訳しおろしてとりあげる、光文社古典新訳文庫のラインナップは、要チェックだと思います。

→「ミロスラフ・サセックの絵本」はこちら

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2008/01/15(Tue)
●ミロスラフ・サセック著/松浦弥太郎 訳
『ジス・イズ・アイルランド』(ブルース・インターアクションズ)

最近、『アルネ』という雑誌を気に入って読んでいるのですが、これはイラストレーターの大橋歩さんがひとりで企画、編集、写真取材をして作っておられる、ほのぼのとした良い雑誌。
この『アルネ』のBOOKページにレビューを寄せていらっしゃるのが、古書店「COW BOOKS」の代表であり、また雑誌『暮しの手帖』の編集長でもある松浦弥太郎氏。
そして『アルネ』の17号で、松浦弥太郎氏が紹介していたのが、ミロスラフ・サセックの絵本<ジス・イズ・シリーズ>の中の一冊『ジス・イズ・ロンドン』。
翻訳を氏が手がけて復刻されたこのシリーズ、著者のサセックが世界中の都市を旅して、その土地の魅力を紹介している旅行絵本のシリーズで、 ずっと表紙絵には惹かれていたのだけれど、『アルネ』のレビューをきっかけに、手にとってみようという気になりました。

シリーズもので世界中の都市が紹介されているし、どの本から手にとろうかなと考えたとき、やっぱりまずはアイルランドだろうということで(ケルト文化に興味があるので)、『ジス・イズ・アイルランド』を購入。
これがとっても素敵な一冊だったんです。

<ジス・イズ・シリーズ>は、一冊ずつに基調となる色があり、見返しもそれぞれに工夫があるのですが、アイルランドにふさわしい色といえば、やっぱり緑ですよね。
『ジス・イズ・アイルランド』の表紙は、深い緑。見返しには緑の中に、ハープやパブや、三つ葉のクローバーやケルト十字といった、アイルランドのシンボルが描かれていて。
最初にアイルランドという国の苛酷な歴史が簡単に紹介され、それからはサセックの筆で描かれる、緑あふれるアイルランドの風景が、たっぷりと楽しめます。
緑の中に白い石垣が積み上げられた、どこか荒涼としてものがなしいアイルランドの農村の風景は、J.M.シングの紀行文『アラン島』の描写を思い起こさせます。
やっぱりわたしはアイルランドになぜだか惹かれる。

ですが、アイルランドにとくに興味がないという人でも、この絵本には名所旧跡、パブがたくさんある街並み、ギネスビール、街行く人々の様子などなど、 アイルランドの魅力が美しい絵でわかりやすく紹介されていて、きっと楽しめると思います。
サセックの絵がなんとも味わい深いんですよ〜。
まさに、絵本で旅気分、なのです。

→「ミロスラフ・サセックの絵本」はこちら
→J.M.シング 著『アラン島』の読書日記はこちら

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2008/01/08(Tue)
●石亀泰郎 写真『イエペはぼうしがだいすき』(文化出版局)
●ハンス・リマー 文/レナート・オスベック 写真/松岡享子 訳
『わたしのろばベンジャミン』(こぐま社)

タナ・ホーバン 写真『パリのおつきさま』や、マルセル・イムサンド 写真『モミの木』の美しさに触れ、写真絵本への興味が高まってきた今日この頃。
さっそく、代表的な写真絵本を手にとってみることにしました。

『イエペはぼうしがだいすき』は、初版が1978年というロングセラー絵本で、写真絵本のなかでもとりわけ有名な作品とのこと。
手にとってみるとなるほどこれが、とってもキュートで魅力的な一冊!
写真家の石亀泰郎氏が、デンマークの公園で出会ったイエペという少年を撮影したもので、ソフト帽を目深にかぶった姿は、巻末の石亀氏の言葉のとおり、まるで童話の主人公のよう。
イエペ少年はぼうしが大好きで、いちばん好きな茶色のぼうし以外にも、何と100ものぼうしを持っているのだそう。
家族に囲まれ、幼稚園に通い、元気に遊ぶイエペ少年の表情や仕草が、カラー写真でたっぷり楽しめ、なんとも愛らしい〜。
またデンマークの家や幼稚園の様子、かわいい雑貨類など、大人の読者にとっても見所満載。 家族の朝ごはんのテーブルに並んだ、牛乳パックのデザインなんか、すごくかわいいんですよ♪

『わたしのろばベンジャミン』もまた、原書が1968年の刊行で、日本、アメリカ、イギリス、フランスなど、各国で翻訳出版されているロングセラー絵本。
こちらはモノクロ写真で、少女スージーとろばのベンジャミンとの交流を、地中海の島の海辺の村を背景に、美しく切り取ってあります。
スージーのふくふくと健康そうな丸顔と、産まれたばかりの幼いろばベンジャミンの愛くるしさ!
大人の読者の見所といえば、やはり地中海の島の暮らしの様子。
スージーの家はおしゃれだし、村の石だたみの路地や、地中海の光に映える家々の白壁には何とも言えぬ味わいがあり、青い海(モノクロなんだけど)の表情も美しく、どの写真も素敵です。

『パリのおつきさま』にしてもそうだけれど、写真絵本というのはなんだか、おしゃれな暮らしまわりの雑誌を眺めるのに似た楽しみがありますね。

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