■本の蒐集記録(2006年9-10月)


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2006/10/31(Tue)
●フランソワーズ 作・絵/ないとうりえこ 訳
『まりーちゃんとおまつり』(徳間書店)
●Kay Nielsen 著
『Nielsen's Fairy Tale Illustrations in Full Color』(Dover Pubns)

『まりーちゃんとおまつり』は、まりーちゃんシリーズの中の一冊。
『まりーちゃんとひつじ』『まりーちゃんのくりすます』は、「岩波の子どもの本」として昔から親しまれていますが、 こちら『まりーちゃんとおまつり』は、徳間書店から、大型絵本として2005年に刊行されました。
この本では、まりーちゃんが、待ちに待ったおまつりで楽しく遊ぶ様子が、愛らしく描かれています。 ひとり残されたぱたぽんが、まりーちゃんを探しに行く姿も、かわいい!
しろくて、ふわふわの毛をまとったこひつじ、ぱたぽんを眺めるだけでも癒されます。

『Nielsen's Fairy Tale Illustrations in Full Color』は、20世紀初頭、イギリス挿絵黄金期に活躍した、カイ・ニールセンの画集。
ペーパーバックの量産品ですが、58点もの挿絵作品がフルカラーで収録されているにもかかわらず、安価なのが嬉しいところ。
日本ではながらく絶版となっている『太陽の東・月の西』の挿絵も、多数収録されています。
はっきり言って、この挿絵がすごい!
『おしろいとスカート』や『アンデルセン童話集』の挿絵も素敵だけれど、『太陽の東・月の西』の、北欧的な哀調を帯びた絵にこそ、ニールセンの真髄を感じます。

これは物語と一緒に味わいつくしたい挿絵。新書館から刊行されていた『太陽の東・月の西』…もし復刊されたら、必ず買います!

→カイ・ニールセンの紹介はこちら

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2006/10/27(Fri)
●フランソワーズ 作・絵/なかがわちひろ 訳
『たのしいABC』(徳間書店)

フランソワーズのABC絵本。AからZまで、26の言葉とみじかいおはなしに、愛らしい絵が添えられています。
表紙はつや消し。フランソワーズの絵は、ごく初期のもので、使われている色は水色・ピンク・黒・黄色とごく少ないです。
ここから、だんだんと、タッチがより洗練されて、『まりーちゃんとひつじ』等で知られる、シンプルでありながら美しい画風が確立されていったのですね。
水色とピンクと黄色、って、子どもが大好きな色味だと思うのですが、同時に使うのは意外に難しいのでは?
これだけの色で、単に子どもっぽい絵ではなく、眺めているだけで安心できるやさしい絵に仕上げられるなんて、ほんとうに洗練されたセンスだなと感じます。

フランソワーズの絵本は、子どもにとって親しみやすく、大人には幼心を思い出させる、すばらしい時間を与えてくれます。

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2006/10/26(Thu)
●フランソワーズ 作・絵/ないとうりえこ 訳
『ロバの子シュシュ』(徳間書店)
●フランソワーズ 作・絵/ないとうりえこ 訳
『みみちゃんとヤギのビケット』(徳間書店)

フランソワーズの絵本に関しては、語る言葉を失ってしまいます。
『ロバの子シュシュ』のページを一枚めくっただけで、もうにっこり〜♪
この色、この線、このしあわせ…(*´-`*)

一見、子どもが描いたような、だけど決して子どもには描けない、洗練されたシンプルな線。
子どもが大好きな、ピンクや水色や黄色をふんだんに使った、けれど派手すぎない絶妙な配色。
いろんなことが言えるけれども、このしあわせ感の前には、どんな小難しい言葉を連ねても、あまり意味がないかも。

実際に本を手にとって、フランソワーズの絵を眺めてみれば、きっと誰でも、子どもの頃のように、まあるい幸福な気分を味わうことができるはずです。

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2006/10/21(Sat)
●フランソワーズ 文・絵/与田準一 訳
『まりーちゃんとひつじ』『まりーちゃんのくりすます』(岩波書店)
●フランソワーズ 作/きしだえりこ 訳『こねこのミヌー』(のら書店)

のら書店のホームページで、『こねこのミヌー』の表紙や中の画像を見て、素敵! と思い、フランソワーズの代表作とあわせて購入。
…もう、やられました!
かわいくてやさしくてノスタルジックな絵。眺めているだけでこんなにも幸せな気分になれる絵を、他に知りません。
単純化された線といい、あかるい色使いといい、フランソワーズの絵は、子どもの感じている完全で安心な世界を描いており、大人にも絶大な癒し効果をもたらします。
おはなしの内容や訳文もほのぼのとしていて、『まりーちゃんとひつじ』のひつじの名前「ぱたぽん」という響きの愛らしさに、もうメロメロ♪

というわけで、これからしばらく、フランソワーズの絵本を蒐集していこうと思います。 あれも、これも、欲しい作品がいっぱいです(^^)

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2006/10/19(Thu)
●レーナ・ラウラヤイネン 著/荒牧和子 訳
『魔術師のたいこ』(春風社)

ラップランドに住むサーメ人のあいだで語り伝えられてきた、12篇の民話がおさめられています。
ファンタジーが大好きなので、まずタイトルが目にとまり、サーメ人の民話というのでさらに興味をひかれ、装幀も素敵だったので、ぜひ読んでみたいと購入しました。
言葉はやさしく、わかりやすく、ごく短いお話ばかり。
魔術師ツァラオアイビが残した魔法のたいこが、百年に一度だけ語る、しずかで美しい物語。
読んでいると、心がしん、と落ち着きます。

アマゾンでは、表紙・裏表紙・目次ほか、本文も少しだけ見ることができます。

→『魔術師のたいこ』の読書日記はこちら

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2006/10/13(Fri)
●ヤンティーン・バウスマン 作・絵/よこやま かずこ 訳
『ケースとケーチェ』(岩崎書店)

赤いチェックの表紙がとってもキュートな絵本。
細い線で描かれた、はりねずみのケースとケーチェの仕草が、なんとも可愛い。
モノクロの線画なのですが、ケーチェのスカーフだけが赤く塗られているのが、効いてます。

仲良しのケースとケーチェ。ふたりで暮らしていたけれど、お互いのささいな癖が気になりだし、とうとう大ゲンカ。 家財道具もふたつにわけて、別々に暮らすことになりますが…。
ふふ。身につまされる人や、苦笑いの人も多いのでは?

惜しむらくは「愛する人へのプレゼントに」なんて書いてあるオビ。
これは興ざめしてしまうので、できればやめてほしい! と思いました。 (わざわざ言われなくても、みんなわかってますから)

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2006/10/11(Wed)
●M.B.ゴフスタイン 作/谷川俊太郎 訳
『ふたりの雪だるま』(すえもりブックス)
●M.B.ゴフスタイン 作/末盛千枝子 訳
『ゴールディーのお人形』(すえもりブックス)

『ふたりの雪だるま』は、ゴフスタインの絵本では珍しく、パステルが使われており、これが効果的に、あったか〜い雰囲気を醸し出しています。
ゆきの日のやさしい記憶。家族の思い出。寒い冬の日にページを繰ると、ほっこりあたたかくなるような一冊。

『ゴールディーのお人形』は、少し長めの物語。
版元である「すえもりブックス」のホームページでも品切れ中と表示されていて、ずっと入手困難だと思っていたのですが、たまたまセブンアンドワイに在庫があったようで、すかさず注文。
やっぱりとっても素敵な絵本でした。絵も、おはなしも。
ひとりぼっちの寂しさや、仕事に対する誇りと愛情。お人形をひとつひとつ、丁寧に作り続けるゴールディーに共感します。
布張りの表紙の緑と、カバーの「Goldie the Dollmaker」の文字の緑とがぴったり調和した、おしゃれな装幀もGood!

入手可能なゴフスタインの絵本は、これですべて集めたことになりますが、 現在絶版になっている『おとなりさん』も、そのうち復刊されないかな…なんて思います。

→「M.B.ゴフスタインの絵本」はこちら

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2006/10/09(Mon)
●片山令子 文/ささめや ゆき 絵『ブリキの音符』(アートン)

ながいあいだ絶版だった、ささめや ゆき氏の絵本『ブリキの音符』が復刊。
ずっと気になっていた絵本だったし、アマゾンで見た表紙画像が素敵だったので、迷わず購入しました。
片山令子さんのわかりやすい詩に、ささめや氏独特のグレイッシュな色彩の絵が調和した、大人のための絵本。
表紙にもなっている、「誰かがきっと見ていてくれる」という詩に添えられた絵が、なんとも魅力的です。
 いいことばかり、あるわけじゃない。霧のようにきえてしまいたいと思う時。 萎れたキャベツのように悲しい時。でも、そこから逃げないで立っていると、誰かがきっと見ていてくれる。 何もしてくれなくても、何も言ってくれなくても。

『ブリキの音符』より

→「ささめや ゆきの絵本」はこちら

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2006/10/05(Thu)
●ゼリーナ・ヘンツ 文/アロイス・カリジェ 絵/大塚勇三 訳
『フルリーナと山の鳥』(岩波書店)

スイスの山村の農家で生まれ、数々の美しい絵本を描き、国際アンデルセン賞画家賞を受賞した絵本作家アロイス・カリジェ。
カリジェの絵本がどうしてもどうしても欲しくて、今週の図書購入費は予算オーバーぎみなのに、買ってしまった一冊。
子どもの頃、アニメ「アルプスの少女ハイジ」が大好きだったわたし。
『フルリーナと山の鳥』は、まさにハイジの世界!

少女フルリーナとその家族の、夏の山での暮らしを描いたこの絵本。牧場にヤギを放ち、ニワトリの面倒をみ、ほし草をつくる…。
自然に寄り添ったつつましい生活が、実際にそれを知っている画家の手によって描かれており、非常に読みごたえのある作品になっています。
ゼリーナ・ヘンツによる物語がまた素晴らしく、自然の美しさとともに、厳しい一面も描写されています。

見開きの右側にカラー絵、左側にテキストとモノクロの線画がレイアウトされていますが、カラー絵の美しさは言うまでもなく、 ちいさく描きこまれたモノクロ絵も、見逃せない味わい深さです。

→「アロイス・カリジェの絵本」はこちら

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2006/10/04(Wed)
●佐々木マキ 作・絵『やっぱりおおかみ』(福音館書店)

『変なお茶会』がとても素敵な絵本だったので、佐々木マキ氏の他の絵本はどんなかな? と思い、手にとりました。
なんとなくタイトルや、佐々木マキ氏独特のコミカルなタッチから、面白い絵本なのかなと想像していたら大間違い。
ここまで主人公の孤独を描ききった絵本というのも、珍しいのでは。
エンディングはことに素晴らしいです。

この絵本、とても有名な作品なので、ネットで検索すると実はあちこちで、おはなしの内容を知ることができてしまいます。
でも、まっさらな気持ちで読んでみるほうが良いかもしれません。
とりわけ、「絵本なんて子どものもの」と思っている、大人たちは。

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2006/10/02(Mon)
●M.B.ゴフスタイン 作/谷川俊太郎 訳
『私の船長さん』(ジー・シー・プレス)
●M.B.ゴフスタイン 作/谷川俊太郎 訳
『画家』(ジー・シー・プレス)

結局、ゴフスタインの絵本を集めることになってしまった。
初めて手にとったときに、劇的な感動があるというわけではないのだけれど。
何度も味わううちに、この上なく愛おしくなってくる。
読むたびに、新しい何かが見えてくる。
語りすぎない、シンプルな作品だからこそ。
「洗練」って、こういうことだなと思う。

→「M.B.ゴフスタインの絵本」はこちら

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2006/09/26(Tue)
●サラ・ミッダ 作/江國香織 訳『おとなになること』(ほるぷ出版)
●M.B.ゴフスタイン 作/谷川俊太郎 訳
『生きとし生けるもの』(ジー・シー・プレス)

『おとなになること』は、イギリス出身のイラストレーター、サラ・ミッダの絵本。
三越が扱っている、サラ・ミッダのイラストを使った雑貨は、とても人気があるんですよね。 わたしは雑貨は持っていないのですが、サラ・ミッダって、なんとなく可愛らしいイメージで捉えていたのです。
この絵本を手にとってみて、いい意味で裏切られました。
皮肉とユーモアたっぷり。けっこうブラックな部分もあったりして、大人が読んでもたのしい一冊。
甘すぎない絵が、人気の秘密?
カバーのピンク色や、表紙の濃いブルーの微妙な色合い。凝った見返しや、カバーの折り返しの端にちょこっと描かれた絵などが、とっても素敵です。

『生きとし生けるもの』は、おやすみ前に読んだのですが…泣きました…。この絵本のメッセージを、現代を生きる世界じゅうの人が受けとめられれば…そんなふうに思えて。
ゴフスタインの絵本は、親しい誰かにプレゼントしたくなるようなものが多くて、この一冊も、まさにそう。
ほんとうに小ぶりで、色使いも淡くて、主張しない本なのだけれど。
こんなにもシンプルな線と、簡潔な言葉で、深い大きなメッセージを伝えられるなんて。
改めて、ゴフスタインのすごさ、を感じさせられました。
谷川氏の訳も、ほんとうに心にしみいります。布張りの表紙に薄紙のかかったカバーという装幀も、素晴らしいです。

→「M.B.ゴフスタインの絵本」はこちら

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2006/09/21(Thu)
●ヤーノシュ 作/やがわすみこ 訳『おばけリンゴ』(福音館書店)
●ルドウィッヒ・ベーメルマンス 作/江國香織 訳
『ロンドンのマドレーヌ』(BL出版)

ヤーノシュは、洋古書絵本のネットショップで絵を見かけて、素敵だなあと思い、邦訳版で入手しやすい『おばけリンゴ』を購入しました。
『おばけリンゴ』は、ヤーノシュ初期の画風で描かれていて、たっぷり塗り重ねられた絵の具の質感と、奔放な筆づかいが魅力的。
主人公ワルターのリンゴの木に、夜、一輪の白い花が咲く絵は、出色です。
こういうプリミティブな画風は、大好き。

『ロンドンのマドレーヌ』は、とってもかわいいマドレーヌシリーズの中の一冊。
『げんきなマドレーヌ』『マドレーヌといぬ』の2冊はすでに購入したのだけれど、残念なことにマドレーヌ絵本って、絶版のものが多いんですよね…。 で、この『ロンドンのマドレーヌ』は、現在も流通しているベーメルマンス晩年の作品。
シリーズ初期の2作にくらべ、ストーリーについては荒唐無稽の感が否めませんが、ベーメルマンスの巧みな筆で描かれるロンドンの街並みは、やはり圧巻です。

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2006/09/14(Thu)
●ジョン・バーニンガム 作/神宮輝夫 訳『はたらくうまのハンバートとロンドン市長さんのはなし』(童話館出版)
●ジョン・バーニンガム 作/渡辺茂男 訳
『ずどんといっぱつ すていぬシンプだいかつやく』(童話館出版)

一読して大好きになった2冊。
バーニンガムって、絵だけでなく、ストーリーテリングも巧みなんだなあと、感動してしまいました。

『はたらくうまのハンバートとロンドン市長さんのはなし』は、すこし昔のロンドンの町を舞台にした、一発逆転の痛快な物語。
荷車をひく馬ハンバートと、くず鉄あつめのファーキンさん。ファーキンさんは、親切でやさしい働き者ですが、けっして裕福とはいえません。 ビール工場の自慢屋の馬たちは、くず鉄の荷車をひいているハンバートを馬鹿にします。 ハンバートは、ロンドン市長さんの金の馬車をひくことのできる、ビール工場の馬たちを羨みますが…。
単純明快なストーリーの中に、階級差別、労働者の悲哀などが描かれて、最後の一発逆転の展開に、スッキリさせられます。

バーニンガムの初期作品となるこの絵本は、太く力強い描線に、厚く塗り重ねられた色彩といった、どちらかというと油絵タッチの画風。
全体の色味も暗いのだけれど、この暗さがイギリス庶民の生活の実相をよくあらわしているのではないでしょうか。
暗く沈んだロンドンの町の描写が印象的です。

『ずどんといっぱつ』は、サーカスを舞台に、捨て犬シンプが活躍するおはなし。
醜いめすの仔犬シンプは、飼い主のおじさんに「おはらいばこ」にされて、ゴミ捨て場のそばに捨てられます。 途方に暮れてさまよい、危険な目にあいながら、やがてサーカスのテントに迷い込んだシンプは、ピエロのおじさんに助けられ…。
「ずどんといっぱつ」の意味は、読んでみてのお楽しみ。
前半の辛い展開があるからこそ、後半、シンプが活躍するサーカスの、華やかな雰囲気に魅せられます。

この絵本も、バーニンガムの初期作品。深く厚みのある色彩で描かれるサーカスの情景が、とっても素敵。
「みにくい めすのこいぬ」とされているシンプの、けなげな姿が、最高にかわいいです。

どちらも王道のストーリー展開なのだけれど、これがやっぱり面白い!
動物と人間の絆を、ストレートに描くバーニンガムの初期の作風。物事をまっすぐ見つめる、作者の真摯な眼差しを感じます。

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2006/09/12(Tue)
●ジョン・バーニンガム 作/岸田衿子 訳
『はるなつあきふゆ』(ほるぷ出版)

少しお値段がはるのだけれど、バーニンガムの絵の世界に、どっぷり浸りたくなって購入。
四季の風景が、大判のページいっぱいに、色鮮やかに描かれており、そこにごく短い言葉が、そっと添えられています。
驚きなのは、はる、なつ、あき、ふゆ、それぞれの季節に一葉ずつ、本体の大きさの四倍になる、大きなページが挿入されていること。
折りたたまれたこのページをひらくと、圧倒されそうな、バーニンガム独特の色彩!
個人的な印象としては、この絵本は、バーニンガム初期の油絵タッチの絵と、後期の軽やかな色彩の絵との、中間にあたる画風のよう。
描線は細く繊細、色彩には深みがあって…。こういうタッチ、わたしは大好きです。

涼しくなった空気の中、秋のページを繰りながら、深い色味をじっくり眺めて、楽しんでいます。
ああ、秋はいいなあ。


(注意:とっても素敵なこの絵本。ですが、折りたたまれた大判ページを開くのが難しい。 そうっと、慎重に扱わなければ、折り目のところから、すぐに破れてしまいそうなのです。
ちいさい子どもは必ず破ってしまうに違いないので、子どもが楽しむ絵本としては、そこが難点かもしれません)

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2006/09/08(Fri)
●ジョン・バーニンガム 作/光吉夏弥 訳
『ガンピーさんのふなあそび』(ほるぷ出版)
●ユードリイ 作/シーモント 絵/西園寺祥子 訳
『木はいいなあ』(偕成社)

『ガンピーさんのふなあそび』は、ずっと気になっていた絵本作家ジョン・バーニンガムの、とても有名な作品。 よく、夏にぴったりの一冊として、紹介されているのを見かけます。
夏真っ盛りではなく、なぜか今ごろ手にとってしまったけど、やっぱり、とても素敵な絵本でした。
川べりに住むガンピーさん。ある日、ふねで漕ぎ出すと、こどもたちや動物たちが次々に、わたしも乗せてとやって来て…。
ちいさな子どもにも楽しめる、単純なくりかえしのストーリーは、のんびり、ほのぼのしています。
そして、絵。この絵が、とってもとっても、好き。
ネットで表紙画像を見ているだけでは分からなかったのだけど、バーニンガムの絵は、軽やかで爽やかなだけでなく、深みや渋みもあるんですね〜。
ガンピーさんが、自分の家の前で、舟を漕ぎ出すシーンの、静かなみどりいろの絵を見て、もう「大好き〜」と思いました。
とにかくバーニンガムの絵本が、もっと欲しい、と思わせた一冊。
ちなみに、『ガンピーさんのふなあそび』は、ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品です。

『木はいいなあ』は、『オーケストラの105人』のマーク・サイモント(シーモント)が絵を描いていて、それで購入したのですが、 これがまた、とっても素敵な一冊でした。
縦長の変わった版型、『木はいいなあ』というシンプルなメッセージ、シーモントの味わい深い絵。 眺めているだけで、のんびりまったりした気分になれる絵本。
シーモントの絵も、やっぱりいいです。 『オーケストラの105人』とはタッチがまったく違うのだけど、人間の仕草のひとつひとつを描く、あったかい筆の運びが、共通しているなあと感じました。
「木はいいなあ」と語りかける、きわめて単純な文章と、くっきり太い線で描かれた絵とが、しっくり調和していて、ほんとうに良い絵本だなあと思ったら、 これはコルデコット賞受賞作品だったのでした。

多くの人が良い絵本だと言うものは、やはり良い絵本なのだなあと、しみじみ感じた2冊。
バーニンガムの絵本については他にもたくさんあるので、初期作品を中心に、もっと集めたいなあと思っています。

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2006/09/04(Mon)
●カーラ・カスキン 作/マーク・サイモント 絵/岩谷時子 訳
『オーケストラの105人』(すえもりブックス)

以前から、気になっていた絵本。
表紙画像だけ見ると、何がなにやら分からないのですが、よく調べてみると、面白そうな絵本だし、版元も信頼できるし…と思い、購入。
結果は、大当たりでした。
とっても、とっても素敵な一冊。

オーケストラの105人が、仕事に出かける様子を、ユーモアたっぷりに描いたこの絵本。
コミカルでありながら品のある絵と、オーケストラを構成するメンバーひとりひとりを見つめる、あったかい眼差し。
シャワーを浴びたり、下着をつけたりといった、みんなの身支度の描写がほんとに面白くて、すみずみまでじっくり眺めてしまいます。
人間味あふれる105人が、最後に奏でる音色の感動的なこと!

秋の夜長に、音楽を聴くように、ページを繰りたい絵本です。

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