■渡邉良重の絵本

〜可憐な少女の心を、洗練のデザインで〜


●渡邉良重 ― わたなべ よしえ ―

1961年、山口県生まれ。
プロダクトデザイン・プロジェクト「D-BROS」のメインデザイナーとして、ステーショナリー、テキスタイル、インテリア雑貨の商品デザイン他、パッケージデザイン、店舗のアートディレクション等を手がける。
2004年に出版した処女絵本『ブローチ』(リトルモア)で、講談社ブックデザイン賞を受賞。

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「ブローチ」

「アンドゥ」



「ブローチ」

渡邉良重 絵/内田也哉子 文(リトルモア)
ブローチ
そっと 右手でおさえると
ここに あった
わたしのブローチ
この先も道は はるか遠くつづく
足りないことを数えすぎて
満ちているいまを 忘れてしまわないように
小さな祈りを 胸にかざる

『ブローチ』より

プロダクトデザイン・プロジェクト「D-BROS」のメインデザイナー渡邉良重さんが絵を、絵本画集『わたしのロバと王女』でも知られる内田也哉子さんがテキストを手がけた、可憐な一冊。

この絵本の最大の特徴は、すでによく知られているように、絵がトレーシングペーパーに印刷されているということ。
向こうが透けて見えるトレーシングペーパーの特徴を生かした、繊細なデザインが、幻想的な美しさを作り出しています。
透ける紙に印刷するという趣向は、ブルーノ・ムナーリの『闇の夜に』や『きりのなかのサーカス』を思い出させますが、なにしろこの『ブローチ』は、すべてのページがトレーシングペーパーなのです。こんなに薄いたくさんの紙をきれいに綴じるという、精緻な造本に胸がときめきます。

またごく薄い紙のため、ページはゆっくり慎重に繰らなければならず、自然、短いテキストを、ゆっくりと読んでいくことになります。内田也哉子さん独特の感性で紡がれた言葉を、時間をかけてかみしめるうち、心がしずかに落ち着いてくるのが不思議。

言い尽くされていることだろうけれど、大人の女性に、ぜひおすすめの絵本です。

→内田也哉子 文『わたしのロバと王女』の紹介はこちら
→「ブルーノ・ムナーリの絵本」はこちら

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「アンドゥ」

渡邉良重 絵/高山なおみ 文(リトルモア)
アンドゥ
UN アン きのう
DEUX ドゥ 今日
UN アン 今日と明日
DEUX ドゥ 歩いてゆきましょう
誰かとおなじ自分など いないって
今日とおなじ日などないって
だから
「味わいましょう」って

『アンドゥ』より

『ブローチ』で高い評価を得た渡邉良重さんの、第2弾絵本。
テキストは、『日々ごはん』シリーズなどエッセイでも知られる料理研究家、高山なおみさんが手がけています。

今回の造本の特徴は、ページの真ん中で紙がふたつに区切られていること。
表がつるつるしていて、裏がざらっとしている薄い茶色の紙が、ページ中央で切られていて、左、右、左、右と、交互にめくっていく仕掛けになっているのです。手触りのはっきりした紙をめくっていくことで、触覚も刺激されるような気がします。
紙の上には、シンプルなレイアウトで、少女、蝶、綿毛、お姫様のシルエット、小鳥、森の小路、白鳥、薔薇といった、おとぎばなしのようなモチーフが展開されます。少女の着ている服のピンク色も、あざやかで印象的。

また『ブローチ』のように透ける紙ではないけれど、薄くて真ん中で切られた紙は、やっぱりゆっくり繰っていかなければならず、テキストを自然に時間をかけて「味わう」ことになります。
エッセイを読んだことはなかったけれど、高山なおみさんのテキストは、やわらかくて甘くて、でもかたい種が中央にある果実のように、地に足がついていて、土のにおいがするような感じで、深く心の奥底にしみ入ってきます。とても好きだなと思いました。

可憐な、切ないような、甘いような、痛いような少女の心が、洗練されたデザイン性によって、際立って美しいかたちで、一冊の本に永遠に閉じ込められている。
渡邉良重さんの絵本は、そういう、たくさんの女の子(女性)にとっての、宝物のようなものなのではないでしょうか。

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