■本の蒐集記録(2005年5-8月)





2005/08/05
●トーバ・マーティン 文/リチャード・W・ブラウン 写真/食野雅子 訳『暖炉の火のそばで ターシャ・テューダー手作りの世界』(メディアファクトリー)

ずっと欲しかった、大判の写真集。ターシャの自給自足の暮らしぶり、質素で満ち足りた生活が、 丁寧な文章と美しい写真とで紹介されています。
文章を書いているトーバ・マーティンさんは、ターシャの親しい友人なので、 そのお話はファンにとって興味深いものとなっています。
そして何といっても、リチャード・W・ブラウン氏の写真が素晴らしい! 薄暗い室内での、窓からの陽光を頼りにした手作業の様子などは、まるでフェルメールの絵のように静謐で美しいのです。
リチャード・W・ブラウン氏は、ハーバード大学で絵画を学んだと言いますから、 写真の絵のような美しさも頷けますが、知識や技術だけでなく、ターシャの暮らしぶりへの敬愛の念があるからこそ、 こういったものを撮ることができたのだと思います。

すべての写真に驚嘆させられますが、わたしがとりわけ感心したのは、自家製バターの写真。
飼っている山羊の乳を搾って作るバターに、古めかしい木製の型で、鳥や草花の模様を型押ししてあります。
ターシャが手作りするものは、バターでさえも美しい…。
これ、ほんとうです。

とにかく『暖炉の火のそばで』は、読みごたえ、見ごたえたっぷりの癒し本。 あと『ターシャ・テューダーのガーデン』という、これも大判の写真集を、いずれは買いたいと思っています。

▲トップ




2005/07/27
●クリスティーナ・ロセッティ 詩/バーナデット・ワッツ 絵/高木あきこ 訳『とんでいけ海のむこうへ』(西村書店)

なんてやさしくて、あたたかい絵本。詩と絵と訳が、ぴったりと合っています。
詩と言っても、やさしい言葉で綴られた童謡のような味わい。有名なラファエル前派の画家ダンテ・G・ロセッティの妹、 クリスティーナ・G・ロセッティの初期の詩作品が、こういう童謡風の親しみやすいものだったと、この本で初めて知りました。 子どもも大人も楽しめる、よい絵本だと思います。
下記の引用は、なかでもお気に入りの一篇。
もしも 星が空からおりてきて
もしも 花がかわりに空でさいたら
空はやっぱり美しい
そして 地上もうつくしい

そんなことになったなら
きっと つばさをつけた天使たちが
地上の星の花つむために
空からおりてくるでしょう
けれど わたしたちは
雲のかなたの花に
ただ あこがれをいだくだけ

▲トップ




2005/07/16
●ターシャ・テューダー 著/内藤里永子 訳
『キャラコ・ブックス』(メディアファクトリー)
●ターシャ・テューダー 著/食野雅子 訳
『ローズマリーは思い出の花 ターシャ・テューダーのメモリーブック』(メディアファクトリー)

『キャラコ・ブックス』は、ターシャの処女作「パンプキン・ムーンシャイン」を含む初期作品の、原本からの復刻版。
装丁が、ほんとにかわいい! セピア色に古びた感じまで復刻されたカバーから、ちらりとのぞく水玉もようの表紙。 手にとって眺めるだけで、しあわせな気分になる絵本。
おまけに、奥付を見てはじめて知ったのだけど、ブックケース・デザインが、 クラフト・エヴィング商會の吉田浩美・吉田篤弘のお2人だったのです。 なんてしあわせな偶然の出会い!
これでターシャ・テューダーと、クラフト・エヴィング商會がつながったわけで、とても嬉しいです。

『ローズマリーは思い出の花』は、とても美しい絵本。これはメモリーブックということで、書き込みができる12ヶ月分のカレンダーに、 ターシャの絵と、イェーツやエマーソンなどの引用が、ひとこと添えられています。
「結婚の贈り物や、赤ちゃん誕生のお祝いにも最適」と帯に書かれていますが、わたしは自分のために買いました(^^)
ターシャの絵に、ターシャのお気に入りの言葉が添えられているというのは、『喜びの泉』(メディアファクトリー)と似た趣向。 わたしは『喜びの泉』で、詩を味わうことの楽しさを教えられましたが、この本に引用されている言葉たちも素敵。
もちろん、言葉のイメージを喚起するターシャの絵がすばらしく、挿絵画家としての力を感じさせられます。

ではでは、『ローズマリーは思い出の花』からの引用をひとつ。
心密かに勝ち誇れ
われわれの知るかぎり
それがいちばん難しい
ウィリアム・バトラー・イェーツ

▲トップ




2005/07/13
●エリス・ピーターズ 著/岡 達子 訳
『修道士カドフェル(16) 異端の徒弟』(光文社文庫)

今回も楽しみ〜♪ カドフェル大好き。

▲トップ




2005/07/06
●グロリア・ウィーラン 著/代田亜香子 訳「家なき鳥」(白水社)

表紙がやさしくあたたかい雰囲気。読むのが楽しみ。

▲トップ




2005/06/30
●銀色夏生 著「川の向こう つれづれノートM」(角川文庫)

銀色夏生は、たぶんもう15年くらい前に流行っていた詩人、というか何と言うか。
はじめは作詞家をしていて、大沢誉志幸「そして僕は途方に暮れる」などの詞を書いた人でもあります。 この「そして僕は途方に暮れる」の歌詞は、素晴らしいと思います。 …昔、中山美穂も銀色夏生が好きだって言ってたなあ、確か。

若い頃は、銀色夏生の詩集を集めていたりしたけど、年を重ねた現在では、 もっぱらエッセイを楽しんでいます。
「つれづれノート」のシリーズは、銀色さんの私生活を楽しくつづった、日記風エッセイ。
写真やイラストもあって、読みやすく、癒し効果は絶大です。
はっきり言って、わたしの座右の書。
ごはんを食べながら(行儀がわるいけど)、お風呂につかりながら、通勤バスの中、もちろんおやすみ前にも。
肩のこらない平明な語り口の中に、銀色さんの、たいらな物の考え方、さっぱりとして真摯な眼差しが感じられ、 これを読めば、いつでもどこでも癒されまくりです。おすすめ(^^)

▲トップ




2005/06/21
●ウィリアム・モリス 著/川端康雄、兼松誠一 訳
『世界のはての泉 上・下』(晶文社)

カバーの美しい模様は、モリスがデザインしたもの。
ウィリアム・モリスは、装飾デザイナーであり、社会主義運動家であり、理想の書物を追求するためケルムスコット・プレスを創設し、 ファンタジー文学の始祖でもあるという、偉大な人。
ヴィクトリア朝時代を生き、産業革命を目の当たりにしたモリスは、美が失われゆくのを悲しみ、自ら行動しました。 ほんとうに、心から美しいものを愛していたのだなあと思います。
もちろん、J・R・R・トールキン、C・S・ルイスなどは、モリスの物語作品に多大な影響を受けています。 産業革命を目の当たりにして、美が失われゆくのを悲しんだというのは、ロード・ダンセイニの感性とも、重なるものがありますね。

…なんて、まあ、いろいろ言ってますが、まだ1ページも読んでないんですけど(^^;)
でももう、目次を見ただけでも、想像力が膨らんでいます。

▲トップ




2005/06/15
●新倉俊一 訳編『ディキンスン詩集 海外詩文庫2』(思潮社)

きれいな水をほしがるわたしに、エミリーの詩は、汲めども汲めどもつきない泉のように、 恵みを与えてくれます。

でもこの本を最初に読んでいたら、彼女の詩の味わいをわからぬまま、通り過ぎていたことでしょう。
この記録を目にして、もしエミリー・ディキンソンに興味を持つ方がいらっしゃいましたら (あまりいないかも、とは思いますが)、 まずマイケル・ビダード 作/バーバラ・クーニー 絵/掛川恭子 訳『エミリー』(ほるぷ出版)を読んでみてください。 それから亀井俊介 編『対訳ディキンソン詩集―アメリカ詩人選(3)』(岩波文庫)、 しかるのちに、お好みのディキンソン詩集を味わう、という順番が良いのではないかと思います。

詩って、難解なイメージがつきまとうものだけど、この順番で読むと、 孤高の女性詩人と言われるディキンソンの世界にも、とっても入りやすいと思うのです。
ただ、ディキンソンの詩は、やっぱりほんとうは英語で味わうべきものだなあと感じています。 日本語以外はさっぱりなので、なかなか難しいのですが。

思潮社の「ディキンスン詩集」から、ひとつだけ引用します。
わたしは何故だか、こういう詩が好きです。

小石はなんてしあわせだろう
道端にひとりで転がって
履歴など気にも留めず
いざという時も恐れない
小石の自然な褐色の上衣に
ゆきずりの宇宙も着けて
また太陽のように独立して
他の者と交わったりただひとりで光って
なに気ない単純さで
絶対の天命によく服している
新倉俊一 訳

→バーバラ・クーニー『エミリー』の紹介はこちら

▲トップ




2005/06/01
●ターシャ・テューダー 文/リチャード・W・ブラウン 写真/ウィンズロー・テューダー 写真/食野雅子 訳『今がいちばんいい時よ ターシャ・テューダーの言葉3』(メディアファクトリー)

●ターシャ・テューダー 編・絵/内藤里永子 訳
『心に風が吹き、かかとに炎が燃えている ターシャ・テューダーと家族が愛する詩』(メディアファクトリー)

『今がいちばんいい時よ』は、エッセイと写真の本。ターシャの最新の言葉を味わうことができ、 写真はオールカラー。ウィンズロー・テューダー氏は、ターシャの孫で、文筆家・写真家なのだそう。 ターシャの母親は肖像画家だったということですが、やはりクリエイティブな才能というのは、遺伝するのでしょうか。 環境因子も、もちろんあるでしょうけれど。
『心に風が吹き、かかとに炎が燃えている』は、ターシャが編んだ美しい詩集。60編を超える詩のすべてに、 モノクロでありながら、色彩と温もりを感じさせる、素敵な挿絵がついています。

ターシャ・テューダーの世界は、やっぱり素晴らしくて、美しくて、憧れ止みがたいものがあります。 彼女の本は、絵本・写真集・エッセイ・ガーデニング関連と、とにかくたくさんあるけれども、 ゆっくり集めていきたいと思います。

▲トップ




2005/05/21
●ターシャ・テューダー 絵・文/食野雅子 訳『輝きの季節 ターシャ・テューダーと子どもたちの一年』(メディアファクトリー)

絵本作家ターシャ・テューダーの、家族との暮らし、季節ごとの楽しい行事の様子が、 やさしい色彩の水彩画で、細部まで丁寧に描かれたすばらしい絵本。
やっぱり、買って良かったー、と思いました。絵を眺めているだけで、このあたたかい家族の輪の中に入り込んだように、 幸せな気持ちになれるのです。 描かれている花や小物はほんとうに可愛らしく、趣向をこらした手作りの行事の数々は、 誰だって参加してみたいと思うはず。

しかも、ターシャ・テューダー&リチャード・ブラウン著/相原真理子 訳 『ターシャ・テューダーの世界―ニューイングランドの四季―』(文藝春秋)を見れば、 この絵本に描かれている夢のように楽しく美しい日々の暮らしが、けっして幻ではなく、 ターシャがいまでも実際に続けている生活なのだとわかるのです。

ターシャの絵本のページを繰ると、いつも気づかされます。世界はこんなにも、美しいものだったのだと。

→『ターシャ・テューダーの世界』の紹介はこちら

▲トップ




2005/05/15
●エリス・ピーターズ 著/岡本浜江 訳
『修道士カドフェル(15) ハルイン修道士の告白』(光文社文庫)
●ジビュレ・フォン・オルファース 作/秦 理絵子 訳
『うさぎのくにへ』(平凡社)

これで、現在平凡社から刊行されているオルファースの絵本6冊は、すべて集めたことになります。 本棚に並べると、ちょっとした満足感がありました。

もちろん本棚に並べただけではなく、ちゃんと中身も楽しみました。 『うさぎのくにへ』は、お話も絵もほんとうに愛らしくて、子どもにとって楽しい絵本になっていると思います。 読み聞かせにも、ぴったりではないでしょうか。とにかくうさぎが可愛い!です。

カドフェルの新刊は、これから大事に読むところ。

▲トップ




2005/05/11
●ジビュレ・フォン・オルファース 作/秦 理絵子 訳
『ちょうちょのくに』(平凡社)

肺を病み、若くして亡くなったオルファース。この絵本は、彼女の死後まもなく出版された遺作とのこと。
とおいとおいはるかな、ちょうちょのくにを描いた絵は、荘厳な雰囲気さえ漂い、 天国もかくやと思われる美しさです。

▲トップ




2005/05/07
●ジビュレ・フォン・オルファース 作/秦 理絵子 訳
『ゆきのおしろへ』(平凡社)

本との出会いは、季節を大切にしたいなとの思いもあるのですが(わかりやすい例で言うと、クリスマスの絵本などは、 やっぱりクリスマスに買いたいとか)、自分のなかで気持ちが盛り上がってるとき(?)に、一気に買ってしまいたいという衝動もあり、 悩むところです。現在は財布と相談しながら、オルファース絵本を収集しています。

それにしても、やっぱりオルファース作品は美しいです。『ゆきのおしろへ』は、彼女の処女作とのことですが、 ほんとうに素晴らしい絵本です。主人公マリーレンちゃんを、ゆきのおしろに誘う<ゆきのこ>たちの愛くるしさ。 おしろに住んでいる女王さまの神々しくもやさしい眼差し。ゆきのおしろから帰ってきたマリーレンちゃんを出迎える、 美人のおかあさんの横顔は、どことなく、作者オルファースの写真の横顔と似ているような気がします。

あと『うさぎのくにへ』と『ちょうちょのくに』の2冊が欲しいのですが、懐具合が…。 でも近いうちには必ず買うぞ、と思っています。
どうもわたしは、古典と呼ばれるような作品、何十年も読みつがれてきた本が好きなようです。 いい意味で、 古めかしい感じのする作品世界に、とても癒されます。

▲トップ




2005/05/02
●ジビュレ・フォン・オルファース 作/秦 理絵子 訳
『森のおひめさま』『風さん』(ともに平凡社)

ほんとうに美しい絵本!なんというか、やはり神々しいのです、全体の雰囲気が。

自然を擬人化した絵が多く、『森のおひめさま』には、<つゆのこ>や、 <こけのぼうや><きのこぼっこ><星のこども>たちが登場するのですが、彼らの姿は、 まさに宗教画に出てくる天使のよう。左右対称に草花の縁取りが施された絵(ユーゲント様式というのだそうです)は、 おとぎの国へと開かれた、魔法の窓をのぞくような気持ちにさせてくれます。

『風さん』は、エルサ・べスコフ『ラッセのにわで』を思い出させる作品ですが、 べスコフの絵が素朴な愛らしさに満ちているのと比べて、やはり様式美が際立っています。 この絵本も、とんでもなく美しいです。

オルファース作品の特徴として、短くリズミカルな文章があげられますが、 日本語訳もリズムがあって、わかりやすく、子どもの心をとらえることと思います。 おはなし自体も短く、子どもの感性によりそった楽しい内容です。

なんだかんだ言っても、すばらしいものは、すばらしいです。
大人のわたしとしては、宗教画を思わせる美しさを、もっともっと味わいたいという欲望に抗しきれず、 また1冊、注文してしまいました。
平凡社から刊行されているオルファースの絵本は、全部で6冊。すべて集めきるまで、オルファース熱は冷めそうにありません。

▲トップ

本の蒐集記録 Index へ戻る



■HOME