■マリー・ホール・エッツの絵本

〜温もりのある、やさしい鉛筆画〜


●マリー・ホール・エッツ ― Marie Hall Ets ―

1895年、アメリカのウィスコンシン州に生まれる。
社会学と社会事業に関心をもち、第一次世界大戦の頃から、おもに子どもの福祉のために働くが、健康を害して活動ができなくなり、絵本をかきはじめる。
代表作「もりのなか」(福音館書店)は、シンプルでありながら長いあいだ読み継がれてきた、傑作絵本のひとつ。
1960年「クリスマスまであと九日 セシのポサダの日」でコルデコット賞を受賞。1984年、没。



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「クリスマスまであと九日 セシのポサダの日」

「わたしとあそんで」



「クリスマスまであと九日 セシのポサダの日」

マリー・ホール・エッツ&アウロラ・ラバスティダ 作/
マリー・ホール・エッツ 画/たなべ いすず 訳(冨山房)
クリスマスまであと九日―セシのポサダの日
もうすぐクリスマス。おかあさんが、自分のためにポサダをしてくれるというので、セシは大喜びです。
ポサダというのは、メキシコのクリスマス行事。ピニャタというねんどのつぼが入った紙の人形に、おかしや果物をつめ、ポサダの夜にみんなで割るのを、子どもたちは楽しみにしています。
セシは、星のかたちをした美しいピニャタを買ってもらいますが、自分のピニャタを割られてしまうのが、悲しくてなりません…。

マリー・ホール・エッツの、美しいクリスマス絵本。
メキシコのクリスマス行事ポサダについて、セシという少女の視点で丁寧に描いた作品で、クリスマス絵本としては異色かもしれません。
文章が長く、メキシコの人びとの生活の様子、セシの心の動きなどが細やかに描きこまれているので、読み聞かせより、ひとりでじっくり読むのに向いていると思います。
コルデコット賞を受賞したエッツの絵は素晴らしく、見返しを開いただけで、もうメキシコの空気がわっと伝わってきます。
オリーブ色の下地に、繊細な鉛筆画、そこに黄色・朱色・ピンク・白でアクセントがつけられていて、その色の選び方が素敵。
クライマックスの、夜のポサダの行列の絵などは、とても神秘的で美しいです。
メキシコのクリスマスの風景って、こんなふうなんですね。地域のひとびとがみんなで参加するにぎやかなポサダ、とっても楽しそうです(^-^)

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「わたしとあそんで」

マリー・ホール・エッツ 文・絵/よだ じゅんいち 訳(福音館書店)
わたしとあそんで (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
あさひが のぼって、くさには つゆが ひかりました。 わたしは はらっぱへ あそびに いきました。

『わたしとあそんで』より

ばった、かえる、かめ、りす、かけす、うさぎ、へび…わたしはいろんな動物たちに「あそびましょ」と誘いかけますが、みんな逃げ出してしまって、一緒に遊んでくれません。
さびしくなって、ひとりぼっち、しずかに池のそばの石に腰掛けていると、動物たちが一匹、また一匹と戻ってきて…。

表紙の女の子の表情にひかれ、購入した一冊。
やさしい絵と温もりのあるおはなしで、自然とともにあることの喜びが、しずかに伝わってくる絵本です。
ばった、かえる、へびなど、苦手な女の子も多いに違いない、ちいさな生き物たちの描写。 ちちくさのたねをぷっとふきとばす仕草や、みずすましが池の表面にすじをひいて移動する様子。 どの場面をとっても、作者自身が自然にしたしみ、ちいさな草花や生き物たちに愛情をもっていたことが、よく伝わってきます。
すべてのページで、女の子をやさしく見守るおひさまの表情が、なんといっても素敵。 表紙も中の絵も、淡い、おひさまの色を背景にした鉛筆画で、色数の少ないシンプルさも良いです。

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