■本の蒐集記録(2005年9-10月)





2005/10/28(Fri)
●エルサ・ベスコフ 作・絵/小野寺百合子 訳
『ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん』(福音館書店)

とっても明るくて、やさしくて、かわいい絵本。
そして、絵が美しい!
原書から製版したという色鮮やかな絵が、片面印刷されているという、この贅沢さ。 子どもも大人も、大満足の一冊ではないでしょうか。

物語も素敵です。
おかあさんの誕生日の贈り物にするため、ブルーベリーとこけももを摘みに、森に入ったプッテ。 ブルーベリーもりのおうさまと名乗る、こびとのおじいさんの魔法で、ちいさくなったプッテは、ふしぎで楽しい冒険をします。

登場するキャラクターたちの愛らしさ。とりわけ、こけももの女の子たちが、かわいい♪
みつあみに結んだリボンや、ドレスのこけもも色。葉っぱのみどり色をしたタイツに、こけもも色のくつ。
女の子なら、こんなお洋服、きっと着てみたいと思うはず。
それから、こけももかあさんが作ってくれた「はちみつこけもも」って、一体どんな食べ物なんでしょう?
う〜、食べてみたい。とっても美味しそうなんですよ。

とにかくわたしは、プッテと一緒に、ブルーベリーもりの楽しさを満喫しました。子どもへの読み聞かせにも、おすすめの絵本です。

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2005/10/27(Thu)
●エルサ・ベスコフ 作・絵/石井登志子 訳
『おひさまのたまご』(徳間書店)
●J・R・R・トールキン 著/山本史郎 訳『サ−・ガウェインと緑の騎士 トールキンのアーサー王物語』(原書房)

『おひさまのたまご』は、おはなしがとても楽しい絵本。ベスコフの描く妖精や、小人、動物たちの絵は愛らしく、 子どもへの読み聞かせにぴったりだと思います。
『サ−・ガウェインと緑の騎士』は、トールキンが語りなおしたアーサー王物語。匂いたつファンタジーの香気。
読むのが、ほんとうに楽しみです。

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2005/10/20(Thu)
●リスベート・ツヴェルガー 絵/ヴィルヘルム・ハウフ 作/池内 紀 訳『鼻のこびと』(太平社)

自分にとって、手ごたえのある本を買うと、何だか気分がいい。
いい買い物した!って、じんわり嬉しくなる。

『鼻のこびと』は、すばらしい絵本。ツヴェルガーの丁寧で繊細で美しい絵。しゃれた装丁。おはなしも、毒がきいていて面白い。
うーん、やっぱりツヴェルガーの作品は、できるかぎり集めたい、と思ってしまう。
とにかく素敵な絵。構図といい、色といい、センスを感じさせるデフォルメといい。クールでしゃれてて、でも細部まで神経がゆき届いている。
こんなに質の高い絵本なのに、どうしてもっと流通しないんだろう。
現在はこうして手に入れることができているけど、一時はほとんど絶版状態だったようだし。

ニールセンの『太陽の東 月の西』にしてもそうだけど、質の高い本に限って、入手困難ということが多くて、 何故だろうと首をかしげたくなる。
日本の出版業界の、このていたらく。
いろいろややこしい事情はあるんだろうけど、できれば、もうちょっと、がんばってもらいたい。

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2005/10/18(Tue)
●アーサー・クィラ・クーチ 編/カイ・ニールセン 絵/岸田理生 訳『十二人の踊る姫君』(新書館)

細部まで丁寧に描きこまれ、様式美の際立つニールセンの絵。華やかなロココ調の雰囲気。ドレスのひだや模様、背景など、じっと見入ってしまいます。 イギリスでは、語り継がれてきた物語の再話に、こんな上質の絵を添えた、豪華な挿絵本が流行した時代があったというのですから、 うらやましい限りです。

当時の豪華挿絵本のひとつ、ニールセン絵の『太陽の東 月の西』。邦訳版が復刊されたら必ず購入しますので、 新書館さん、何卒よろしくお願い申し上げます。(←しつこい)

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2005/10/15(Sat)
●アーサー・クィラ・クーチ 編/カイ・ニールセン 絵/岸田理生 訳
『おしろいとスカート』(新書館)

ル・カインの画風と似ているという、カイ・ニールセン。
ニールセンに関しては、ここしばらくネットで調べまくっていたのですが。
そもそもル・カインは、アーサー・ラッカムやエドマンド・デュラック、カイ・ニールセンといった挿絵画家の後継者と言われていて、 彼らの画風から影響を受けているとのこと。そしてニールセンは、オーブリー・ビアズリーを敬愛し、 江戸の浮世絵などからもインスピレーションを得ていたのだそうです。
ル・カインの『キューピッドとプシケー』を見て、ビアズリーを彷彿したのですが、2人の画家の間に、 カイ・ニールセンが位置するようです。

アーサー・ラッカム、エドマンド・デュラック、カイ・ニールセンは、 20世紀初頭にイギリスで流行した豪華ギフトブックの挿絵画家として活躍した、有名な人たち。
アーサー・ラッカムは、妖精画家として認識していたので、いつかラッカム挿絵の本を手に入れたいなと思っていたのですが、 ぼちぼちここらへんの挿絵画家についても、勉強していきたいです。

というわけで、まずはカイ・ニールセン。
今回購入した『おしろいとスカート』ですが、これはクーチ卿編集の原本 IN POWDER AND CRINOLINE のうち、半分だけが収載されていて、 残り半分は同じ新書館から、『十二人の踊る姫君』として刊行されているとのこと。
結局『十二人の踊る姫君』も追加注文しました。
カイ・ニールセンの残した挿絵本は、そう多くはなく、日本で刊行されているものは、ごく少数。
ニールセンの最高傑作と称される『太陽の東 月の西』は現在、日本では絶版になっていて、とても残念です。
復刊ドットコムで100票以上の投票がされていて、復刊交渉予定とのことですが…新書館さん、ぜひよろしくお願い致します。

『おしろいとスカート』は、タイトルどおり、おしろいの匂いを感じさせ、衣擦れの音が聞こえてくるような挿絵ばかり。
その雰囲気は、何というか、舞台の艶やかさ。
宮廷風の明るく美しい絵は、ル・カインの『おどる12人のおひめさま』や『いばらひめ』が好きな人なら、きっと気に入るはず。
だけどわたしは、北欧の伝説を描いた神秘的な挿画が満載という『太陽の東 月の西』こそ、 手にとって見てみたいのですが…新書館さん、何卒よろしくお願い致します。

追記:『太陽の東 月の西』の挿絵については、ネットで検索すると、たくさん画像がアップされていて、詳しく見ることができます。 でもやっぱり「本」というかたちで手に入れたいんですよね〜(^^)

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2005/10/08(Sat)
●ウォルター・ペーター 文/エロール・ル・カイン 絵/柴 鉄也 訳
『キューピッドとプシケー』(ほるぷ出版)
●アンドルー・ラング 再話/エロール・ル・カイン 絵/中川千尋 訳
『アラジンと魔法のランプ』(ほるぷ出版)

どちらも、とても美しい絵本です。

『キューピッドとプシケー』は、ギリシア・ローマ神話をもとにしたお話に、ル・カインが絵を添えたもの。 モノクロでありながら華麗な絵の数々が、読者を古代の神話世界へと誘います。
この作品は、ル・カインの異才を発揮したもので、大人むけの絵本と言えそうです。

『アラジンと魔法のランプ』は、ラングの再話によるアラビアンナイトの物語に、ル・カインが絵を寄せたもの。 こちらの絵はすべてカラーで、全頁に、彩りも鮮やかなファンタジー世界がひろがっています。
大人も子どもも楽しめる絵本に仕上がっているのではないでしょうか。

それにしても、ル・カインの描き出してみせる幻想世界の美しいこと。 絵本の向こう側にひろがる空間の、広大で深遠なことに、驚かされるばかりです。

さて、ファンタジーを愛するわたしが、そこでふと考えてしまうのは、幻想を描くのに優れているのは男性のほうなのかな、ということ。
バーバラ・クーニーやターシャ・テューダーは、大好きな絵本作家ですが、彼女たちが美しく描くのは、 土に咲く草花や生身の人間。身近な家具調度品、おいしそうな料理や、愛らしい動物たち。
アンネ・エルボーの描く作品は、ファンタジーですけれど、神々と人間、魔法や妖精たちの織りなす幻想に満ちた物語世界ではありません。 そういえばロード・ダンセイニやウィリアム・モリス、トールキンやC・S・ルイスも男性。 ダンセイニの作品に欠かせない挿絵を担当していたS・H・シーム(→Click!)も男性です。

『ゲド戦記』を書いたル=グウィンは女性ですが、シリーズ4作目以降は、フェミニズムの問題に深く切り込んでいて、 すばらしい作品ではありますが、ファンタジーとして成立するものかどうか疑問です。
幻想世界を創造する作業は、男性のほうが向いているのでしょうか。
女性作家によるファンタジーにも面白いものはたくさんありますが、ル・カインやS・H・シームの絵にその一端を垣間見ることのできる、 あの広大無辺の幻想世界、尽きせぬ魔法の泉の魅力は、男性作家の作にこそあるような気がするのです。

女性・男性と一概には括れませんが、わたし個人について言えば、女性の想像力ではたどり着けない遠くまで導いてくれるからこそ、 男性作家のファンタジーを好むのかもしれません。

→ル=グウィン『ゲド戦記』の紹介はこちら

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2005/09/29
●グリム童話より/エロール・ル・カイン 絵/矢川澄子 訳
『いばらひめ』(ほるぷ出版)
●アントニア・バーバー 文/エロール・ル・カイン 絵/中川千尋 訳
『まほうつかいのむすめ』(ほるぷ出版)
●冨原眞弓 編訳『トーベ・ヤンソン短篇集』(ちくま文庫)

本を買いすぎ…かもしれないんですけど。
でも、エロール・ル・カインが!

『いばらひめ』の絵はほんとうに美しくて、細部まで描きこまれた衣装や背景など、中世の絵画のような趣があります。
『まほうつかいのむすめ』は、これぞル・カインならでは、という感じのオリエンタリズムあふれる絵。 西洋と東洋のあわいにたゆたう、広くて深い幻想世界が、絵本というかたちで定着されています。 「まほうつかいのむすめ」というタイトルもいいし、おはなしも好みです。
幻想を愛するわたしは、こういうのを見せられちゃうと、もう駄目で、エロール・ル・カインの絵本を集めないわけにはゆかなくなりました。
ル・カインの絵、かなり好きです。
ほるぷ出版から出てる画集、欲しいかも…。

『トーベ・ヤンソン短篇集』は、筑摩書房から出ている、全8冊の<トーベ・ヤンソン・コレクション>から編まれたアンソロジー。 <トーベ・ヤンソン・コレクション>は買おうかどうしようか迷って、結局買わずにいたのですが、文庫から短篇集が出たと知り、これは買いだなと。
たぶんすぐには読めないけど、買っておかないと、いつ絶版になるともしれないので。
道をつくることにした。
<中略>
だがそんなにうまくはいかない。道はせますぎたうえ、ぐるりと円をかいてしまったらしい。 ほとんどはじめとおなじ場所にもどってきた。こういうこともある。 だけど、そもそも道なんかつくる必要があるだろうか。 あってもなくても、行きたいところには行けるのだ!
冨原眞弓 編訳『トーベ・ヤンソン短篇集』(ちくま文庫)所収
「夏について」より

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2005/09/27
●オー・ヘンリー 文/リスベート・ツヴェルガー 画/矢川澄子 訳
『賢者のおくりもの』(冨山房)
●グリム童話より/エロール・ル・カイン 絵/矢川澄子 訳
『おどる12人のおひめさま』(ほるぷ出版)

どちらも、それは美しい絵本です。

『賢者のおくりもの』は、ツヴェルガーの初期の頃の挿絵。『クリスマス・キャロル』もそうですが、色調が淡く抑え目で、わたしは好きです。
で、『鼻のこびと』も欲しいなあと「本やタウン」を見に行ったら、一冊あった在庫が、もう品切れになっていました。 品切れ、となるとますます欲しくなったりして…。

そして、ル・カイン。ついにル・カインの世界に足を踏み入れました!
クーニーやベスコフ、ターシャ・テューダーの、明るくやさしい絵本とはまた違う美しさ。めくるめく夢幻の世界です。 ひとたびページを繰れば、現実からすっと離れて、夢のように美しく不思議な世界へ連れていかれてしまいます。素晴らしい。
もう、次に購入するル・カイン作品を、あれこれと検討中です。
そういえばル・カインについて、友人と、あまり子ども受けしないんじゃないか、と話したことがあるのですが、 『おどる12人のおひめさま』については、おひめさま好きの女の子なら、きっと宝物になるんじゃないかな、と感じました。

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2005/09/17
●リスベート・ツヴェルガー 絵/H・C・アンデルセン 作/大畑末吉 訳『アンデルセン コレクション』(太平社)
●リスベート・ツヴェルガー 絵/チャールズ・ディケンズ 作/吉田新一 訳『クリスマス・キャロル』(太平社)

どちらも長い間読み継がれてきた名作に、ツヴェルガーの抑制のきいた挿絵が添えられた、美しく上質な絵本。
『アンデルセン コレクション』は、アンデルセン生誕200年に、 大人も子どもも、改めてアンデルセン童話を読み返すのにふさわしい絵本だと思います。 『クリスマス・キャロル』の挿絵は、色調が淡く抑え目で、派手さはないけれども繊細で、すべての絵が美しいです。
ツヴェルガーの挿絵は、ここぞ!という見せ場を決して描かず、まさに行間を埋める感じのもので、 挿絵の向こうにひろがる広大な物語世界を、読者自身に想像させます。

とにかくツヴェルガーにハマッたと言うべきか、もっともっと彼女の絵本が欲しい!です。
ターシャ・テューダーやエルサ・ベスコフは、メジャーな作家だけに、ゆっくり集めようと落ち着いてもいられますが、 ツヴェルガーの絵本は、いま手に入れないと絶版になったら困る、なんて思ってしまい、 マニア心、コレクター心がくすぐられます。危ない、危ない。こういうマニア心が、 ツヴェルガーの絵本を子どもから遠ざけているような気がするのです。

ツヴェルガーの絵は、一般うけしないというか、マニアうけするものと受けとられがちのようで、 そのために初期の作品はとくに、絶版・品切れの危機にさらされている感があります。 そもそも、邦訳版が出版されていなかったり。
でも、子どもが、わかりやすくカラフルな、アニメっぽい絵ばかりを好むと思うのは、大人の偏見じゃないでしょうか。 13日の記録で、わたし自身もその偏見に陥った発言をしていますが。
よく思い返してみれば、子どもの頃って、不思議や闇を感じさせるものに大人以上に敏感だから、 はっとさせられる構図、絵具のにじみぐあいにも雰囲気があるツヴェルガーの絵なんか、 一度見たら、きっと印象に残るんじゃないかな、と思います。頭で考えるんじゃなくて、直感でわかるんじゃないかな。 絵の奥にひそむ、深みが。

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2005/09/13
●リスベート・ツヴェルガー 絵/テオドーア・シュトルム 作/池内 紀 訳『ちいさなへーヴェルマン』(太平社)

これは…美しい。とても美しい絵本です。シュトルムが長男ハンスのために書いた作品とのことですが、 子どもむけと言うよりは、大人が絵を楽しむ絵本ではないかなと思います。
いやまあ、子どもが読んでも、もちろん良いのだけれど。
でもやっぱり、ツヴェルガーの絵は素敵です。繊細で品のよい色彩感覚。洗練された構図。どこかに不思議な影があって。
絵だけ眺めていても、幻想的な世界にひたれます。

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2005/09/12
●ターシャ・テューダー 絵・文/食野雅子 訳
『コーギビルの村まつり』(メディアファクトリー)
●エルサ・ベスコフ 作・絵/石井登志子 訳
『どんぐりぼうやのぼうけん』(童話館出版)

どちらも、とっても可愛らしい絵本。
動物や妖精や小人たちの、ちいさくて豊かな世界。

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2005/09/10
●アンネ・エルボー 作/木本 栄 訳
『おつきさまは よる なにをしているの?』(ひくまの出版)

『おつきさまは よる なにをしているの?』を、しあわせな気もちで眺めていたら、お月様つながりで、 リスベート・ツヴェルガー『ちいさなへーヴェルマン』のことを思い出しました。 いままでずっと品切れ状態で、入手困難だと聞いていたので、無理かなと思いながらネットで探してみたら、 Yahooショッピングでもアマゾンでも品切れだったのに、「本やタウン」に1冊在庫が。 運命を感じ、すかさず注文。

次は、エロール・ル・カインの絵本も研究してみようかなと思う、今日この頃。

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2005/09/08
●エリス・ピーターズ 著/大出 健 訳
『修道士カドフェル(17) 陶工の畑』(光文社文庫)

未読の本がどんどん積み上がっていく感じ。でも、またそろそろ絵本を買いたいなあという欲求が、湧き上がってきている。

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2005/09/06
●ロード・ダンセイニ 著/中野善夫 他 訳
『時と神々の物語』(河出文庫)

台風、近づく。午後から、風がつよくなる。
そんな嵐の予感のさなか、仕事帰りに本屋さんへ。
ついに、やっと、ぺガーナ神話の全訳が読める! という歓喜につき動かされ、ごうごうと風の吹きすさぶ中、本の入ったかばんを、ひしと抱えて家路を急ぐ。
帰り着いて、本を手にとり、ためつすがめつ、目次を見てにやにや、訳者あとがきを読んでにまにま。
…かなり変。でも嬉しくて。
これから、ゆっくりじっくり味わうけれども、感動した言葉があったので、書きとめておこうと思う。

――アフリカを目指す小さな船の上で過ごすマルセイユ湾の夜、アラブ人が一人、素早い指さばきで弦楽器を奏で、 もう一人がゆっくりと唄っている。大勢の浅黒い顔の男たちがデッキに集まり二人の周りで、 そこかしこにもたれるように腰を降ろし、その演奏と唄を楽しんでいる。それに耳を傾けている私には、 機械がもっと導入されている国よりも、陽の光に満ちた物憂げな国にこそ喜びは多いように思える。 この唄が日々、いくつもの畑から、雲雀のように舞い上がる国々である。――
『時と神々』序文(G・P・パットナムズ・サンズ版)より抜粋

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