■マーク・シーモント(サイモント)の絵本

〜人間や動物の仕草を描く、筆の運びのあたたかさ〜


●マーク・シーモント(サイモント) ― Marc Simont ―

1915年、フランスのパリに生まれる。幼少期をスペインで過したのち、米国ニューヨーク州へ移住。
パリで本格的に絵の勉強を始め、その後再び渡米して、ニューヨークのナショナル・デザイン学校で学ぶ。
1957年『木はいいなあ』(偕成社)でコルデコット賞を受賞。
他に『はなをくんくん』(福音館書店)、『オーケストラの105人』(すえもりブックス)などの作品があり、どの絵本でも違ったタッチの魅力的な絵を描いている。


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「オーケストラの105人」

「木はいいなあ」



「オーケストラの105人」

カーラ・カスキン 作/マーク・サイモント 絵/岩谷時子 訳
(すえもりブックス)
オーケストラの105人
金曜日の夜。そとがだんだん暗く、寒くなってくる頃、家々の窓にあかりがともりはじめる頃。
町のあちこちでは、105人のひとたちが、仕事に出かけるしたくをはじめます。
からだを洗ってからだをふいて、下着をつけて靴下はいて、黒い服を着てそれから楽器を持って。バスやタクシー、自分の車や地下鉄で、彼らはひとつの場所に向かいます。町のまんなかにある、フィルハーモニック・ホールの大きい舞台へと・・・。

表紙画像だけ見ると、何がなにやら分からないこの絵本。よく調べてみると、面白そうな絵本だし、版元も信頼できるし・・・と思い購入したのですが、結果は大当たりでした。
とっても、とっても素敵な一冊。
オーケストラの105人が、仕事に出かける様子を、ユーモアたっぷりに描いた作品。 コミカルでありながら品のある絵と、オーケストラを構成するメンバーひとりひとりを見つめる、あたたかい眼差しが際立っています。
おふろの中で本を読むひと、寒がりなのであったかい下着をつけるひと、靴下に穴があいているひと、女のひとたちがいろいろな下着をつける様子、みんなの身支度の描写がほんとに面白くて、すみずみまでじっくり眺めてしまいます。
そんな人間味あふれる105人が、最後に奏でる音色の感動的なこと!
秋の夜長に、音楽を聴くように、ページを繰りたい絵本です。

※すえもりブックス版は絶版ですが、2012年6月、あすなろ書房より『105にんのすてきなしごと』として復刊されています。

→秋の絵本の紹介はこちら

→Amazon「オーケストラの105人
→Amazon「105にんのすてきなしごと」(あすなろ書房より復刊、改題)

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「木はいいなあ」

ユードリイ 作/シーモント 絵/さいおんじ さちこ 訳(偕成社)
木が たくさん あるのは いいなあ。
木が そらを かくしているよ。

木は、川べりにも たにそこにも はえる。
おかの うえにも はえる。

『木はいいなあ』より

木はいいなあ ただただ、「木はいいなあ」というシンプルなメッセージを込めたユードリイのテキストに、シーモントの味わい深い絵が添えられた一冊。
縦長の変わった版型が目をひく装幀。カラーの見開きとモノクロの見開きが交互になっています。
眺めているだけで、のんびりまったりした気分になれる絵本で、シーモントの絵が、やっぱり素晴らしいです。
上記『オーケストラの105人』とはタッチがまったく違うのだけど、人間の仕草のひとつひとつを描く、あったかい筆の運びが、共通しているなあと感じました。
「木はいいなあ」と語りかける、きわめて単純な文章と、くっきり太い線で描かれた絵とが、しっくり調和していて、ほんとうに良い絵本だなあと思ったら、これは1957年のコルデコット賞受賞作品。
絵が高く評価されているとともに、長く読み継がれてきている絵本ということでもあります。
多くの人が良いと言うものは、やはり良いものなのだなあと、しみじみ感じたことでした。

→Amazon「木はいいなあ

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