■ルドウィッヒ・ベーメルマンスの絵本

〜巧みな筆で描かれる、街や自然の風景〜


●ルドウィッヒ・ベーメルマンス ― Ludwig Bemelmans ―

1898年、オーストリアに生まれる。
16歳で単身アメリカへ渡り、ニューヨークのホテルで働きながら絵を学ぶ。 1925年にレストランの所有者となり、そのレストランの壁や自室の日よけに、 故郷チロルの山々の景色などを描いていたのが編集者の目に留まり、初めての絵本『山のクリスマス』を刊行。
1939年刊『げんきなマドレーヌ』で人気を博し、『マドレーヌといぬ』でコルデコット賞を受賞。1962年、没。
ベーメルマンスの生み出した元気な女の子<マドレーヌ>は、いまも世界中の子どもたちに愛され、親しまれている。

*<マドレーヌ>復刊情報(2009/05)
→Amazon「マドレーヌといたずらっこ (世界傑作絵本シリーズ)
マドレーヌとジプシー (世界傑作絵本シリーズ)



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「げんきなマドレーヌ」

「マドレーヌといぬ」

「ロンドンのマドレーヌ」

「パセリともみの木」

「山のクリスマス」



「げんきなマドレーヌ」

ルドウィッヒ・ベーメルマンス 作・画/瀬田貞二 訳(福音館書店)
げんきなマドレーヌ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
パリの蔦のからんだ、ある古い屋敷に、12人の女の子が暮らしていました。 2列になってパンを食べ、2列になって歯を磨き、2列になって休みます。 そして2列になって9時半に、降っても、照っても散歩に出ました。 なかでも一番おちびさんのマドレーヌは、一番元気な女の子。 ねずみなんか怖くないし、どうぶつえんの虎にも、「へいっちゃら」。
ところがある日の真夜中に、突然マドレーヌのおなかが痛くなり…。

表紙をひと目見ただけで、とても惹かれた一冊。
<マドレーヌ>シリーズは、グッズも人気があって、とっても有名だと思うのですが、原作絵本の素晴らしさといえば、 やはりベーメルマンスの巧みな筆で描かれるパリの美しい街並み!
エッフェル塔、コンコルド広場、オペラ座、ノートルダム寺院、ルーブル美術館…。ページを繰るだけでパリの雰囲気にひたれること間違いなし。
フルカラーでパリの街並みが描かれたページも美しいのですが、黄色の地にモノクロで描かれたページも、マドレーヌたちの生き生きとした明るさを感じさせて素敵。
12人の女の子たちがおそろいの帽子と制服で散歩する姿も可愛く、彼女たちを見守るミス・クラベル(シスターなのかな?)の眼差しもやさしくて、 子ども向けにも楽しい絵本だけれども、大人が眺めてもよしの、上質な絵本。瀬田貞二氏の訳も、読み聞かせにぴったりです。

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「マドレーヌといぬ」

ルドウィッヒ・ベーメルマンス 作・画/瀬田貞二 訳(福音館書店)
マドレーヌといぬ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
パリの蔦のからんだ、ある古い屋敷に、12人の女の子が暮らしていました。 2列になって9時半に、降っても、照っても散歩に出ました。 なかでも一番おちびさんのマドレーヌは、一番元気な女の子。 ねずみなんか怖くないし、どうぶつえんの虎にも、「へいっちゃら」。 先生のミス・クラベルは、何事にも驚かない人でした。
ところがある日マドレーヌが、橋からすべって川へ落ちてしまい…。

マドレーヌがなぜ橋から落ちたかというと、欄干の上を得意げに歩いていたから。 いたずらだけど、ちいさいからだに生命力がいっぱいつまった彼女の闊達さには、読者も元気をもらえます。
溺れそうになったマドレーヌはなんと犬に助けられ、ここからマドレーヌたちと、勇敢な犬ジュヌビエーブとの物語がはじまります。
ジュヌビエーブだなんて、犬の名前までなんだか優雅ですよね。
どの作品も絵が美しい<マドレーヌ>シリーズ、この「マドレーヌといぬ」は、コルデコット賞受賞作品。
やっぱりパリの風景が美しく、また童心そのままに描かれたような、勢いのある奔放な描線も魅力です。

→Amazon「マドレーヌといぬ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

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「ロンドンのマドレーヌ」

ルドウィッヒ・ベーメルマンス 作/江國香織 訳(BL出版)
ロンドンのマドレーヌ
パリの蔦のからんだ、ある古い屋敷に、12人の女の子が暮らしていました。 2列になって9時半に、降っても、照っても散歩に出ました。 なかでも一番おちびさんのマドレーヌは、一番元気な女の子。 ねずみなんか怖くないし、どうぶつえんの虎にも、「へいっちゃら」。
おとなりに住んでいた、スぺイン大使の息子ぺピートと仲良くなったマドたレーヌたちは、 今はイギリスに赴任している大使一家を訪ねて、飛行機でロンドンへひとっとび。

グッズが大人気の<マドレーヌ>シリーズですが、残念なことに原作絵本となると、絶版のものも少なくありません。(→2009年、福音館書店よりマドレーヌシリーズ2冊が復刊されました)
『ロンドンのマドレーヌ』は、現在も流通しているベーメルマンス晩年の作品。 シリーズ初期の上記2作にくらべ、ストーリーについては荒唐無稽の感が否めませんが、ベーメルマンスの巧みな筆で描かれるロンドンの街並みはやはり圧巻で、じっと見入ってしまいます。
馬に乗ってロンドンの街中へ飛び出していってしまったマドレーヌとぺピートを、ミス・クラベルたちが探しに出かけますが、途中で赤い2階だてバスや、素敵な紅茶とケーキのお店が出てきたりして、 イギリスならではの雰囲気でいっぱいの一冊です。

→Amazon「ロンドンのマドレーヌ

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「パセリともみの木」

ルドウィッヒ・ベーメルマンス 作/ふしみ みさを 訳(あすなろ書房)
パセリともみの木
深いふかい緑の森のはずれに、一本の、たいそう古いもみの木がありました。 ふきつける風や凍える雪、きびしい自然とたたかいながら、もみの木は切り立った崖にしがみつくように生長します。
ほかの森の木たちはみんな人間に切り倒され、家や家具や、暖炉の薪になりましたが、もみの木は崖にねじまがって立っていたので、誰も欲しがる人がいませんでした。
やがて緑のテントのように大きく茂ったもみの木の根元に、「パセリ」と呼ばれるシカが住み着き…。

<マドレーヌ>シリーズで有名なベーメルマンスの、初邦訳作品。
やっぱりベーメルマンスの絵は素敵です。 一見、子どもが描いたように素朴なタッチ、だからこそ、あたたかみがあって。
<マドレーヌ>シリーズでは、パリをはじめとする街の風景が巧みに描かれていますが、この絵本では、もみの木と動物たちが暮らす、森の自然の様子が表現されています。
見開き右側にフルカラーの絵、左のテキストのページには、野の花の絵があしらわれていて、とても愛らしいです(^-^)
少し黄味のあるマットな紙質については、絵の発色という点でちょっと疑問なのですが、原書の装幀がわからないので何とも言えません。
初版が50年以上も前であることを考えれば、黄味がかった紙も、古びた雰囲気やぬくもりを感じさせて、むしろ味わい深いかもしれませんね。

あすなろ書房のサイトで、中の画像を見ることができます。(→Click!

→Amazon「パセリともみの木

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「山のクリスマス」

ルドウィヒ・ベーメルマンス 文・絵/光吉夏弥 訳編(岩波書店)
山のクリスマス (岩波の子どもの本)
町の子ハンシは、クリスマスのお休みに、山で暮らすハーマンおじさんの家へ出かけます。 汽車と馬ぞりを乗りついでたどり着いた、ハーマンおじさんの山の家では、初めての楽しいことがいっぱい。
ハンシはいとこのリーザール、犬のワルドルといっしょに、山暮らしならではの体験をしながら、神聖なクリスマスを迎えます。

『山のクリスマス』は、<マドレーヌ>シリーズで知られるベーメルマンスの、初めての絵本。
おはなしが長く、絵は少なめですが、冬の山の暮らしを描いたベーメルマンスの絵は、素朴なあたたかみがあります。 故郷チロルの山々を想うベーメルマンスの心が、味わいのある描線から、しみじみと感じられるのです。
主人公である町の子ハンシが、山暮らしで少し成長するというおはなしも、とても読み応えあり。
<岩波の子どもの本>シリーズの中の一冊で、地味なのだけれども、クリスマス絵本としても冬の絵本ととしてもぜひおすすめの、たいへん良質な一冊です。

→クリスマスの絵本の紹介はこちら

→Amazon「山のクリスマス (岩波の子どもの本)

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