■ジョン・バーニンガムの絵本

〜極上の絵と、巧みなストーリーテリング〜


●ジョン・バーニンガム ― John Burningham ―

1937年、イギリスのサリー州に生まれる。
兵役を拒否し、農場や森林で働いたり、スラム街で地域活動をしたりしながら、世界各地をまわった。その後、ロンドンのセントラル美術工芸学校でイラストの勉強をし、クリスマス・カードのデザインやポスター作成の仕事をする。
1964年、はじめて手がけた絵本『ボルカ』(ほるぷ出版)でケイト・グリーナウェイ賞を受賞。1970年、『ガンピーさんのふなあそび』(ほるぷ出版)で再び同賞を受ける。
英国の現代絵本作家の巨匠であり、多くの作品が邦訳され親しまれている。奥様は絵本作家のヘレン・オクセンバリー。

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「ガンピーさんのふなあそび」

「ガンピーさんのドライブ」

「ずどんといっぱつ」

「はたらくうまのハンバートとロンドン市長さんのはなし」

「はるなつあきふゆ」

「ボルカ」



「ガンピーさんのふなあそび」

ジョン・バーニンガム 作/光吉夏弥 訳(ほるぷ出版)
ガンピーさんのふなあそび
川べりに住むガンピーさん。ある日、ふねで漕ぎ出すと、こどもたちにうさぎ、ねこ、いぬ、ぶた、ひつじ、にわとり、こうし、やぎたちが、次々にわたしも乗せてとやって来ました。「いいとも」とガンピーさんはみんなを乗せて、はじめは楽しかった川下りでしたが…。

ケイト・グリーナウェイ賞を受賞した、バーニンガムの有名な作品。ちいさな子どもにも楽しめる、単純なくりかえしのストーリーは、のんびり、ほのぼのしています。
ほのぼのしたお話にぴったり寄り添う、やさしいタッチの絵は、ネットで表紙画像を見ているだけでは分からないのだけれど、軽やかで爽やかなだけでなく、深みや渋みもあるバーニンガム独特の色合いで描かれていて、とても美しい。
ガンピーさんが、自分の家の前で舟を漕ぎ出すシーンの、静かなみどりいろの絵を見て、もう「大好き〜」と思ってしまいました。
にぎやかな川下りのしめくくりに、みんなでティータイムを楽しむというのも、イギリスらしくて素敵。
夏に読むのにぴったりの、なんとも涼やかな一冊です。

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「ガンピーさんのドライブ」

ジョン・バーニンガム 作/光吉夏弥 訳(ほるぷ出版)
ガンピーさんのドライブ
赤いくるまを持っているガンピーさん。今日は、ドライブにおでかけです。すると途中で、こどもたちにうさぎ、ねこ、いぬ、ぶた、ひつじ、にわとり、こうし、やぎが、いっしょに行くと乗り込んできました。「いいとも」とガンピーさんは、気持ちよく車を走らせはじめましたが…。

『ガンピーさんのふなあそび』の姉妹編。
ガンピーさんのシリーズでは、軽やかで爽やかな絵のタッチと、のんびりほのぼのとしたおはなしの雰囲気が絶妙。ページを繰れば読者もいっしょに、ガンピーさんたちとふなあそびやドライブを楽しみながら、田舎の風景を心ゆくまで堪能することができます。
この『ドライブ』では、赤いくるまで、みどりの野原をゆく風景が心地好く、草のにおいのする爽やかな風を感じることができます。
「また、いつか のりに おいでよ」
ガンピーさんの、肩の力のぬけた最後の科白が、良いです。

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「ずどんといっぱつ」

すていぬシンプだいかつやく
ジョン・バーニンガム 作/渡辺茂男 訳(童話館出版)
ずどんと いっぱつ―すていぬシンプ だいかつやく 醜いめすの仔犬シンプは、飼い主のおじさんに「おはらいばこ」にされ、ゴミ捨て場のそばに捨てられます。 途方に暮れてさまよい、危険な目にあいながら、やがてサーカスのテントに迷い込んだシンプは、ピエロのおじさんに助けられ…。

サーカスを舞台に、捨て犬シンプが活躍するおはなし。王道のストーリー展開なのだけれど、これがやっぱり面白い!
前半の辛い展開があるからこそ、後半、シンプが活躍するサーカスの、華やかな雰囲気に魅せられます。
「ずどんといっぱつ」の意味は、読んでみてのお楽しみ(^ ^)
バーニンガム初期のこの作品では、深く厚みのある色彩で描かれるサーカスの情景が、とっても素敵。
「みにくい めすのこいぬ」とされているシンプの、けなげな姿が、最高にかわいいです。

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「はたらくうまのハンバートとロンドン市長さんのはなし」

ジョン・バーニンガム 作/神宮輝夫 訳(童話館出版)
はたらくうまのハンバートとロンドン市長さんのはなし
荷車をひく馬ハンバートと、くず鉄あつめのファーキンさん。ファーキンさんは、親切でやさしい働き者ですが、けっして裕福とはいえません。 ビール工場の自慢屋の馬たちは、くず鉄の荷車をひいているハンバートを馬鹿にします。 ハンバートは、ロンドン市長さんの金の馬車をひくことのできる、ビール工場の馬たちを羨みますが…。

すこし昔のロンドンの町を舞台にした、痛快な物語。
単純明快なストーリーの中に、階級差別、労働者の悲哀などが描かれて、最後の一発逆転の展開に、スッキリさせられます。
バーニンガムの初期作品となるこの絵本は、太く力強い描線に、厚く塗り重ねられた色彩といった、どちらかというと油絵タッチの画風。
全体の色味も暗いのだけれど、この暗さがイギリス庶民の生活の実相をよくあらわしているのではないでしょうか。
暗く沈んだロンドンの町の描写が印象的です。
兵役を拒否して、働きながら各地をまわり、スラム街で地域活動をしたこともあるというバーニンガムの経験が生かされた作品とも言えるかもしれません。

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「はるなつあきふゆ」

ジョン・バーニンガム 作/岸田衿子 訳(ほるぷ出版)
はるなつあきふゆ
少しお値段ははりますが、バーニンガムの絵の世界にどっぷり浸ることのできる、画集とも呼べる一冊。

四季の風景が、大判のページいっぱいに、色鮮やかに描かれており、そこにごく短い言葉が、そっと添えられています。
驚きなのは、はる、なつ、あき、ふゆ、それぞれの季節に一葉ずつ、本体の大きさの四倍になる、大きなページが挿入されていること。
折りたたまれたこのページをひらくと、圧倒されそうな、バーニンガム独特の色彩!
個人的な印象としては、この絵本は、バーニンガム初期の油絵タッチの絵と、後期の軽やかな色彩の絵との、中間にあたる画風のよう。
描線は細く繊細、色彩には深みがあって…。こういうタッチ、わたしは大好きです。

(注意:とっても素敵なこの絵本。ですが、折りたたまれた大判ページを開くのが難しい。 そうっと、慎重に扱わなければ、折り目のところから、すぐに破れてしまいそうなのです。
ちいさい子どもは必ず破ってしまうに違いないので、子どもが楽しむ絵本としては、そこが難点かもしれません)

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「ボルカ」

はねなしガチョウのぼうけん
ジョン・バーニンガム 作/木島 始 訳(ほるぷ出版)
ボルカ―はねなしガチョウのぼうけん
ガチョウのポッテリピョン夫婦が授かった、六羽のあかちゃんガチョウたち。よく似た兄弟たちのなかで、めすのボルカだけは、生まれつき羽がはえていませんでした。 ボルカはお母さんに灰色の毛を編んだセーターをもらいましたが、みんなに笑われてしまいます。
ひとりぼっちで、飛ぶことも泳ぐことも覚えられないボルカは、冬を前に旅立つ仲間たちから取り残されてしまい…。

バーニンガムの処女作にして、ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品。
『はたらくうまのハンバートとロンドン市長さんのはなし』『ずどんといっぱつ』などの作品に通ずる、王道のストーリーテリングと、力強い描線が魅力の油絵タッチの画風。
”ガンピーさん”のようなやさしい画風も素敵だけれど、バーニンガム初期のこのプリミティブともいえるタッチは、やっぱり大好き。
動物と人間の絆を、ストレートに描くバーニンガム初期の作風からは、物事をまっすぐ見つめる、作者の真摯な眼差しが感じられます。

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